売れない土地を手放す5つの方法:寄付・国庫帰属・放棄を解説

公開日: 2025/11/6

売れない土地を手放す5つの方法とは

「相続した田舎の土地が売れない」「固定資産税だけ払い続けている」と悩む方は少なくありません。売却以外にも、寄付・相続土地国庫帰属・所有権放棄など、複数の選択肢があります。

この記事では、売れない土地を手放す5つの方法、それぞれのメリット・デメリット、手続きの流れを法務省国土交通省の公式情報を元に解説します。

土地の状況に応じた最適な選択肢を見つけられるようになります。

この記事のポイント

  • 売れない土地を手放す方法は、売却・寄付・相続土地国庫帰属・所有権放棄・管理放棄の5つ
  • 相続土地国庫帰属制度は2023年4月開始、審査料・負担金(20万円~)が必要
  • 自治体への寄付は公益目的がない限り受け入れられないケースが多い
  • 所有権放棄は原則不可だが、特別な事情があれば裁判で認められる場合がある
  • 管理不全土地管理命令により所有権を維持したまま管理を第三者に委ねることも可能

売れない土地を手放す5つの方法の比較

売れない土地を手放す方法には、以下の5つがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、土地の状況に応じて選択してください。

5つの方法の比較表

方法 費用 難易度 所有権の移転
売却(不動産会社・買取業者) 仲介手数料等 あり
自治体・法人への寄付 なし~数万円 あり
相続土地国庫帰属 審査料14,000円+負担金20万円~ あり(国へ)
所有権放棄 弁護士費用等 極めて高 あり(裁判で認められた場合)
管理不全土地管理命令 予納金等 なし(管理のみ委託)

方法1:不動産買取業者に売却する

一般の不動産市場で売れない土地でも、買取専門業者なら買い取ってくれる可能性があります。

買取業者のメリット・デメリット

メリット:

  • 市場価格より安くても確実に手放せる
  • 仲介と違い、買い手を探す期間が不要
  • 固定資産税の負担から解放される

デメリット:

  • 買取価格は市場価格の5-7割程度
  • 条件が悪い土地(接道義務を満たさない、傾斜地等)は買取不可の場合もある

売却の流れ

  1. 複数の買取業者に査定依頼
  2. 買取価格・条件を比較
  3. 契約・決済

「売れない土地専門」を謳う業者もあり、無料査定を利用して現実的な価格を把握することが第一歩です。

方法2:自治体や法人に寄付する

自治体(市区町村)や公益法人、隣地所有者への寄付も選択肢の一つです。

自治体への寄付

多くの自治体は、公益目的(道路・公園・公共施設等)がない限り寄付を受け入れません。「処分に困っているから」という理由だけでは受け入れられないのが現実です。

受け入れられやすいケース:

  • 道路拡幅に必要な土地
  • 公園・緑地として活用できる土地
  • 公共施設建設に適した土地

自治体の窓口(管財課等)に相談し、受け入れ可能性を確認してください。

隣地所有者への寄付

隣地所有者にとって、土地を拡張できるメリットがあれば、無償譲渡でも受け入れてもらえる可能性があります。ただし、贈与税が発生するため、隣地所有者の税負担も考慮が必要です。

方法3:相続土地国庫帰属制度を利用する

2023年4月27日に開始された相続土地国庫帰属制度は、相続等により取得した土地を国に帰属させることができる制度です。

(出典: 法務省 相続土地国庫帰属制度について

制度の要件

対象となる土地:

  • 相続または遺贈により取得した土地
  • 建物がない土地(更地)
  • 担保権等が設定されていない土地
  • 境界が明確な土地

対象外となる土地:

  • 建物がある土地
  • 担保権・使用収益権が設定されている土地
  • 土壌汚染・埋設物がある土地
  • 境界が不明確な土地

手続きと費用

  1. 法務局に承認申請(審査料14,000円)
  2. 法務局による審査(現地調査等)
  3. 承認されたら負担金を納付(20万円~、面積・管理コストにより異なる)
  4. 国庫に帰属

負担金の目安:

  • 宅地: 面積に応じて20万円~数百万円
  • 農地・山林: 面積に応じて20万円~

負担金が高額になる場合、売却や寄付の方が経済的に有利な場合もあります。

方法4:所有権放棄を裁判で争う

不動産の所有権放棄は原則として認められません。民法上、所有権を一方的に放棄することはできないとされています。

ただし、特別な事情(高齢で管理不能、経済的に固定資産税を払えない等)があれば、裁判で所有権放棄が認められる可能性があります。

裁判の流れ

  1. 弁護士に相談
  2. 所有権放棄の訴訟を提起
  3. 裁判所が特別な事情を認めれば所有権放棄が認められる

デメリット:

  • 弁護士費用・裁判費用が高額(数十万円~)
  • 認められる保証がない
  • 時間がかかる(数ヶ月~数年)

現実的には、相続土地国庫帰属制度や管理不全土地管理命令の方が実現可能性が高いです。

方法5:管理不全土地管理命令を利用する

管理不全土地管理命令は、所有者が適切に管理できない土地について、裁判所が選任した管理人に管理を委ねる制度です(2023年4月施行)。

(出典: 法務省 所有者不明土地・建物管理制度等について

制度の仕組み

  • 利害関係人(隣地所有者、自治体等)が裁判所に申立て
  • 裁判所が管理人(弁護士等)を選任
  • 管理人が土地の管理(売却含む)を行う
  • 所有権は維持されるが、管理責任は管理人に移る

費用: 予納金(管理人の報酬等)として数十万円が必要

注意: 所有者自身が申立てることも可能ですが、管理人の報酬は所有者負担となります。

手放す前に検討すべき3つのポイント

ポイント1: 固定資産税と手放す費用の比較

売れない土地を手放すには、費用がかかります(相続土地国庫帰属なら20万円~、買取なら市場価格の5-7割で売却)。

比較の例:

  • 固定資産税: 年3万円
  • 相続土地国庫帰属の負担金: 20万円
  • → 約6.7年分の固定資産税に相当

長期的な視点で、手放す費用と固定資産税負担を比較してください。

ポイント2: 将来的な活用可能性

現時点で売れなくても、将来的に開発計画が進む、交通インフラが整備される等で価値が上がる可能性もゼロではありません。

自治体の都市計画や開発情報を確認し、将来的な活用可能性を検討してください。

ポイント3: 専門家への相談

土地の状況、費用、法的リスク等は個別に異なります。弁護士・司法書士・不動産会社に相談し、最適な方法を選択することをおすすめします。

まとめ:売れない土地でも手放す方法はある

売れない土地を手放す方法は、売却・寄付・相続土地国庫帰属・所有権放棄・管理不全土地管理命令の5つがあります。

それぞれメリット・デメリット、費用、難易度が異なるため、土地の状況や経済的な事情に応じて選択してください。2023年4月に開始された相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらえる新しい選択肢として注目されています。

まずは不動産会社や弁護士、司法書士に相談し、具体的な費用や手続きを確認することから始めましょう。

よくある質問

Q1相続土地国庫帰属制度の負担金はどのように決まりますか?

A1負担金は、土地の面積と国による管理コストに応じて決定されます。宅地の場合、面積に応じて20万円から数百万円となります。農地や山林は20万円からです。具体的な金額は法務局の審査で決定されるため、事前に見積もりを確認することをおすすめします。負担金が高額になる場合、売却や寄付の方が経済的に有利な場合もあります。

Q2自治体に寄付を断られた場合、他の選択肢はありますか?

A2はい、あります。相続土地国庫帰属制度(国に引き取ってもらう)、不動産買取業者への売却、隣地所有者への寄付、管理不全土地管理命令(管理を第三者に委託)などの選択肢があります。自治体が受け入れないのは公益目的がないためであり、他の方法なら手放せる可能性があります。まずは不動産会社や司法書士に相談してください。

Q3所有権を放棄すれば固定資産税を払わなくて済みますか?

A3いいえ、所有権放棄は原則として認められません。民法上、不動産の所有権を一方的に放棄することはできないとされています。固定資産税は所有者に課税されるため、所有権が移転しない限り納税義務は継続します。特別な事情があれば裁判で所有権放棄が認められる可能性はありますが、現実的には相続土地国庫帰属制度の利用を検討すべきです。

Q4買取業者の査定価格が0円でも引き取ってもらえますか?

A4査定価格が0円の場合でも、「引取り費用」として数万円~数十万円を支払えば引き取ってくれる業者もあります。ただし、悪質な業者も存在するため、複数の業者に見積もりを依頼し、契約内容を慎重に確認してください。法務省や国土交通省が認める相続土地国庫帰属制度の方が安全な場合もあります。