土地のセットバックとは?必要性と注意点を解説

公開日: 2025/11/6

土地のセットバックとは?接道義務を満たすための後退

土地購入を検討する際、不動産広告で「セットバック」という言葉を見て、意味が分からず不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、セットバックの定義、2項道路(みなし道路)との関係、建ぺい率・容積率への影響、費用負担、固定資産税への影響を、国土交通省・自治体の公式情報を元に解説します。

土地購入前に確認すべき点が明確になり、セットバックの必要性を正しく判断できるようになります。

この記事のポイント

  • セットバックは道路幅員4m未満の2項道路に接する土地で建物を建てる際、道路中心線から2m後退する必要がある措置
  • セットバック部分は私有地のまま公道として扱われ、建ぺい率・容積率の計算から除外される
  • 費用は30-80万円程度で原則は土地所有者負担だが、自治体により助成金制度がある
  • セットバック後も固定資産税・都市計画税の非課税申告が必要(自動適用されない)
  • 購入前に市区町村の建築指導課で道路査定図を確認し、2項道路の指定有無を確認すべき

2項道路(みなし道路)とは|建築基準法第42条2項

建築基準法第42条2項に基づき、幅員4m未満でも建築基準法施行前(1950年11月23日前)から存在し、特定行政庁が指定した道路を「2項道路(みなし道路)」と呼びます。

この道路に接する土地では、道路中心線から2m後退してセットバックが必要です。接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接する)を満たすための措置です。

2項道路の定義と成り立ち

2項道路は、建築基準法施行前から存在していた道路で、幅員が4m未満でも「道路」として認められたものです。建築基準法施行時に既に建物が建ち並んでいた道路を「みなし道路」として扱い、建て替え時にセットバックすることで、将来的に4mの幅員を確保する仕組みです。

国土交通省の運用指針によると、2項道路の指定は特定行政庁(都道府県・市区町村)が行い、道路査定図で確認できます。

なぜ「みなし道路」と呼ばれるのか

建築基準法第42条1項では「道路の幅員は4m以上」と定められていますが、2項道路はこの基準を満たしていません。しかし、建築基準法施行前から存在していたため、特例として「道路とみなす」という扱いになっています。このため「みなし道路」と呼ばれます。

セットバック部分の計算方法と利用制限

セットバック部分は道路中心線から2mの位置まで境界を後退させます。向かい側が崖や川の場合は、道路境界線から4m後退します。

道路中心線から2m後退する計算方法

例えば、道路幅員が3mの場合、道路中心線から2m後退すると、両側で合計4mの幅員が確保されます。自分の土地側は道路中心線(1.5mの位置)から2m後退するため、0.5m分の土地がセットバック部分となります。

道路幅員 道路中心線の位置 後退距離 セットバック部分
3m 1.5m 2m 0.5m
3.5m 1.75m 2m 0.25m

建ぺい率・容積率への影響

セットバック部分は敷地面積から除外されるため、建ぺい率・容積率の計算基礎が減少します。

例えば、100㎡の土地で5㎡がセットバック部分の場合、建築可能面積の計算は95㎡を基準とします。建ぺい率60%なら建築面積は57㎡、容積率200%なら延床面積は190㎡までとなります。

セットバック部分の利用制限(門・塀・駐車場設置不可)

セットバック部分は私有地のまま公道として扱われ、以下の利用制限があります。

  • 門・塀の設置不可: 道路として扱われるため、建築物や工作物の設置が禁止されます
  • 駐車場として利用不可: 車両を常時停めることはできません
  • 物置・自販機の設置不可: 道路の通行を妨げるものは一切設置できません

セットバックの費用|測量費・舗装費の目安

セットバックにかかる費用の目安は30-80万円です。

費用の内訳(境界確定・測量費45-65万円、分筆登記費5-6万円、舗装費等)

項目 内容 費用の目安
境界確定・測量費 土地家屋調査士への依頼 45-65万円
分筆登記費 セットバック部分を登記上分割 5-6万円
舗装費 アスファルト舗装等 自治体により異なる

自治体の助成金制度

原則は土地所有者負担ですが、自治体により買取・助成金制度があります。例えば、東京都特別区では測量費・舗装費の一部助成を行っている区もあります。

購入前に市区町村の建築指導課に助成金制度の有無を確認し、費用負担を正確に把握すべきです。

固定資産税への影響|非課税申告の手続きが必要

セットバック部分は公道として扱われるため、固定資産税・都市計画税が非課税になる可能性があります。

セットバック後の固定資産税・都市計画税

セットバック部分は道路として利用されるため、固定資産税・都市計画税の課税対象から除外される場合があります。ただし、自動適用されないため、市区町村の資産税課に非課税申告が必要です。

非課税申告の手続き(自動適用されない)

申告をしなければ課税されたままになります。セットバック後すぐに市区町村の資産税課に問い合わせ、以下の書類を準備して申告を行ってください。

  • セットバック部分の測量図
  • 分筆登記の証明書
  • 建築確認済証

申告時期・必要書類は自治体により異なるため、セットバック後すぐに確認することが重要です。

購入前に確認すべきこと|道路査定図・建築計画概要書の閲覧

土地購入前に市区町村の建築指導課で道路査定図を確認し、2項道路の指定有無を確認してください。

役所での道路査定図の確認方法

道路査定図は、特定行政庁(都道府県・市区町村)が管理する図面で、2項道路の指定状況を確認できます。市区町村の建築指導課で閲覧可能(無料または手数料数百円)です。

地番を伝えれば、その土地が2項道路に接しているか、セットバックが必要かを確認できます。

建築計画概要書で過去の建築状況を確認

建築計画概要書は、過去に建築確認を受けた建物の記録で、セットバックが既に行われているかを確認できます。市区町村の建築指導課で閲覧可能です。

セットバック済みの場合、費用負担が不要になる可能性があります。

重要事項説明でのセットバック説明

重要事項説明では、宅建業者がセットバック必要性を説明する義務があります。不明点は専門家(不動産鑑定士・土地家屋調査士)に相談してください。

まとめ|セットバックを理解して土地購入の判断を

セットバックは道路幅員4m未満の2項道路に接する土地で必要な措置です。敷地面積が減少し、建ぺい率・容積率の計算に影響します。

費用は30-80万円で、助成金制度を活用することで負担を軽減できる場合があります。固定資産税の非課税申告を忘れずに行ってください。

購入前に市区町村の建築指導課で道路査定図を確認し、セットバック必要性を把握しましょう。信頼できる不動産会社や専門家に相談しながら、適切な土地選びを進めてください。

よくある質問

Q1セットバックは必ず必要ですか?

A1道路幅員が4m以上ある場合、または接道義務を満たす土地ではセットバック不要です。必要なのは、幅員4m未満の2項道路(みなし道路)に接する土地で建物を建てる場合のみです。購入前に役所の建築指導課で道路査定図を確認し、2項道路の指定有無を確認すべきです。

Q2セットバック部分の所有権はどうなりますか?

A2セットバック部分は私有地のままですが、公道として扱われます。所有権は失いませんが、門・塀・駐車場等の設置が禁止され、利用制限があります。固定資産税・都市計画税は非課税になる可能性がありますが、市区町村への非課税申告が必要です。

Q3セットバックの費用は誰が負担しますか?

A3原則は土地所有者負担(30-80万円)です。ただし、自治体により買取・助成金制度があります。例えば、東京都特別区では測量費・舗装費の一部助成を行っている区もあります。購入前に市区町村の建築指導課に助成金制度の有無を確認し、費用負担を正確に把握すべきです。

Q4セットバック済みの土地でも固定資産税がかかっていますが、なぜですか?

A4セットバック後も非課税申告をしなければ課税されたままです。固定資産税・都市計画税の非課税は自動適用されません。市区町村の資産税課に非課税申告が必要です。申告時期・必要書類は自治体により異なるため、セットバック後すぐに確認してください。