仲介手数料1.1ヶ月は違法?賃貸契約の正しい相場を解説

公開日: 2025/11/11

仲介手数料1.1ヶ月とは?なぜ疑問を持たれるのか

賃貸物件を探していると、「仲介手数料1.1ヶ月分」と表示されていることがあります。この「1.1」という数字に疑問を感じる方は少なくありません。

結論から言うと、「1.1ヶ月」の「0.1」は消費税です。本体は家賃1ヶ月分で、消費税10%を加えて1.1ヶ月分となります(2019年10月より消費税率10%)。

しかし、宅地建物取引業法では、借主から受け取れる仲介手数料は原則として家賃0.5ヶ月分が上限とされています。それなのに、なぜ多くの不動産会社が1ヶ月分(+消費税)を請求するのでしょうか。

この記事では、仲介手数料1.1ヶ月の法的根拠、内訳、違法性の有無、交渉のポイントを、国土交通省の公式情報を元に解説します。

この記事のポイント

  • 仲介手数料1.1ヶ月は「本体1ヶ月+消費税0.1ヶ月」
  • 宅建業法の原則は借主0.5ヶ月分だが、借主の承諾があれば1ヶ月分まで請求可能
  • 承諾は申込書への署名で成立することが多く、署名前の交渉が重要
  • 事前説明がなかった場合、0.5ヶ月分が上限となる判例がある
  • 申込前に交渉すれば、0.5ヶ月分に減額できる可能性がある

仲介手数料1.1ヶ月の法的根拠:宅建業法の規定

宅建業法第46条と報酬告示

仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法第46条に基づく**報酬告示(昭和45年建設省告示第1552号)**で定められています。

国土交通省によると、賃貸借の仲介報酬は、借主・貸主の双方から合計で家賃1ヶ月分+消費税が上限とされています。

借主から受け取れる報酬の上限

報酬告示では、借主から受け取れる報酬について、以下のように規定されています。

  • 原則: 家賃0.5ヶ月分(+消費税)が上限
  • 例外: 借主の承諾があれば、家賃1ヶ月分(+消費税)まで請求可能

つまり、借主の承諾がなければ0.5ヶ月分、承諾があれば1ヶ月分まで請求できるということです。

借主の承諾が必要な理由

0.5ヶ月を超えて1ヶ月分を請求する場合、不動産会社は借主から事前に書面による承諾を得る必要があります。

実務では、以下のタイミングで承諾を求めることが多いです。

  • 内見申込書への署名時
  • 入居申込書への署名時
  • 重要事項説明時

申込書に「仲介手数料1ヶ月分(+消費税)に承諾します」という文言があり、署名・捺印すると、承諾したとみなされます。

仲介手数料1.1ヶ月の内訳:本体1ヶ月+消費税0.1ヶ月

「1.1ヶ月」の内訳を明確に説明します。

項目 割合 計算例(家賃10万円の場合)
仲介手数料本体 家賃1ヶ月分 10万円
消費税(10%) 本体の10% 1万円
合計 1.1ヶ月分 11万円

(出典: 国土交通省

2019年10月に消費税率が10%に引き上げられたため、仲介手数料1ヶ月分に消費税10%を加えて1.1ヶ月分となります。

消費税込みの表記が義務付けられているため、広告等では「1.1ヶ月」と表示されることが一般的です。

仲介手数料1.1ヶ月は違法?合法?

承諾があれば合法

結論として、借主の承諾があれば、仲介手数料1.1ヶ月は合法です。

宅建業法の報酬告示では、借主の承諾があれば家賃1ヶ月分(+消費税)まで請求できると明記されています。

実務では、申込書への署名で承諾が成立するため、多くの賃貸契約で1.1ヶ月分が請求されています。

事前通知がなければ無効の判例

ただし、事前に説明がなかった場合、承諾は無効とされる判例があります。

国土交通省の相談対応事例集によると、東京地裁2019年の判決では、契約後に仲介手数料1ヶ月分を請求した不動産会社に対し、事前通知がなかったため無効と判断されました。

このケースでは、借主は0.5ヶ月分を超える部分の返還を求めることができるとされています。

実務での運用実態

実務では、内見申込書や重要事項説明の際に、仲介手数料1ヶ月分(+消費税)に承諾する旨が記載されていることが多いです。

  • 申込書に「仲介手数料1.1ヶ月分に承諾します」と明記
  • 署名・捺印で承諾が成立

そのため、申込書署名前に交渉することが重要です。署名後は承諾済みとみなされ、交渉は難しくなります。

仲介手数料を交渉するポイントと注意点

交渉のタイミング(申込前が理想)

仲介手数料を0.5ヶ月分に交渉する場合、申込書署名前が理想的なタイミングです。

  • 内見前: 「仲介手数料0.5ヶ月分で対応可能ですか?」と確認
  • 内見後、申込前: 「仲介手数料を0.5ヶ月分にしていただけませんか?」と交渉
  • 申込後: 申込書に署名済みのため、交渉は難しい

申込書に署名すると、承諾したとみなされるため、署名前に交渉することが重要です。

交渉の文言例

以下のような文言で交渉することが効果的です。

  • 「宅建業法では借主0.5ヶ月分が原則と聞きました。0.5ヶ月分でお願いできませんか?」
  • 「他の物件では0.5ヶ月分だったのですが、こちらも0.5ヶ月分にしていただけますか?」

丁寧な言葉遣いで交渉することで、不動産会社が柔軟に対応してくれる場合があります。

交渉が難しいケース

ただし、以下のようなケースでは交渉が難しいことがあります。

  • 人気物件: 他に借りたい人が多く、交渉の余地が少ない
  • 繁忙期(1-3月): 不動産会社が多忙で、交渉に応じにくい
  • 初期費用が安い物件: 敷金・礼金ゼロ等で初期費用を抑えている場合、仲介手数料で補っている可能性がある

交渉が難しい場合は、仲介手数料無料の物件を選ぶという選択肢もあります。ただし、物件の選択肢が限られる場合があるため、総合的に判断することが重要です。

まとめ:仲介手数料1.1ヶ月は原則合法、ただし交渉の余地あり

仲介手数料1.1ヶ月は、借主の承諾があれば合法です。しかし、宅建業法の原則は借主0.5ヶ月分であることを覚えておきましょう。

交渉のタイミング(申込前)と文言を工夫すれば、0.5ヶ月分に減額できる可能性があります。

次のアクションとして、以下を検討してください。

  • 内見前に仲介手数料を確認(1.1ヶ月か0.5ヶ月か)
  • 申込書署名前に交渉(署名後は承諾済みとみなされる)
  • 仲介手数料無料物件の検討(物件の選択肢は限られるが初期費用を抑えられる)

不明点があれば、宅地建物取引業協会や消費生活センターに相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1仲介手数料1.1ヶ月は違法ですか?

A1違法ではありません。借主の承諾があれば合法です。宅建業法の報酬告示では、借主から受け取れる仲介手数料は原則として家賃0.5ヶ月分(+消費税)が上限ですが、借主の承諾があれば家賃1ヶ月分(+消費税、つまり1.1ヶ月分)まで請求可能とされています。承諾は申込書への署名で成立することが多いため、署名前に交渉することが重要です。

Q2仲介手数料を0.5ヶ月に交渉できますか?

A2交渉可能ですが、タイミングが重要です。申込書署名前に「宅建業法では借主0.5ヶ月分が原則と聞きました。0.5ヶ月分でお願いできませんか?」と交渉することが効果的です。署名後は承諾済みとみなされるため、交渉は難しくなります。ただし、人気物件や繁忙期(1-3月)は不動産会社が交渉に応じにくい場合があります。

Q3承諾していないのに1.1ヶ月請求されました。支払う必要はありますか?

A3承諾がなければ0.5ヶ月分が上限です。事前に説明がなかった場合、東京地裁2019年の判決では承諾が無効とされ、0.5ヶ月分を超える部分の返還が認められました。国土交通省の相談対応事例集でもこの点が明記されています。承諾していないのに1.1ヶ月分を請求された場合は、宅地建物取引業協会や消費生活センターに相談することをおすすめします。

Q4仲介手数料無料の物件はありますか?

A4あります。仲介会社が貸主から報酬を受け取る場合、借主側を無料にできる仕組みです。ただし、物件の選択肢が限られる場合があります。また、初期費用が安い分、敷金・礼金や家賃が高めに設定されていることもあるため、総合的に比較することが重要です。

Q5仲介手数料1.1ヶ月を払った後で返金を求められますか?

A5承諾していなかった場合、理論上は0.5ヶ月分を超える部分の返還を求められる可能性があります。ただし、申込書署名時に承諾したとみなされるケースが多く、実際の返金は難しい場合があります。事前説明がなかった等、明確な理由がある場合は、消費生活センターや宅地建物取引業協会に相談することをおすすめします。