土地・建物の名義変更手続き完全ガイド|費用・必要書類・流れ

公開日: 2025/10/26

土地・建物の名義変更とは?3つのパターンと義務化

不動産の所有権が移転したとき、法務局で登記を変更する手続きを「名義変更(所有権移転登記)」と言います。相続・贈与・売買の3つのパターンがあり、それぞれ必要書類・費用・期限が異なります。

特に相続による名義変更は、2024年4月から義務化されました。法務局によると、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。また、登記を放置すると不動産の売却・担保設定ができなくなるリスクもあります。

この記事では、3つのパターンごとの手続きの違い、費用の目安、自分でやる場合と司法書士に依頼する場合の比較を、法務局・国税庁の公式情報を元に解説します。

この記事のポイント

  • 名義変更は相続・贈与・売買で必要書類・費用・期限が大きく異なる
  • 相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内に申請しないと過料が科される
  • 費用は登録免許税(相続0.4%、贈与・売買2%)+司法書士報酬(5-10万円)が目安
  • 複雑なケース(共有不動産、複数相続人)は司法書士への依頼が推奨される
  • 境界が不明確な場合は境界確定測量が必要(費用数十万円)

パターン別の必要書類・費用・期限

名義変更は相続・贈与・売買の3つのパターンで大きく異なります。以下の表で比較します。

項目 相続 贈与 売買
登録免許税 0.4% 2% 2%(土地は2026年3月末まで1.5%)
主な必要書類 戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書 贈与契約書、印鑑証明書 売買契約書、印鑑証明書
期限 相続を知った日から3年以内(義務化) 贈与税申告期限(翌年2-3月) なし(売買後速やかに)
税務申告 相続税申告(10ヶ月以内) 贈与税申告(翌年2-3月) 譲渡所得税申告(翌年2-3月)

(出典: 国税庁法務局

相続による名義変更

被相続人(亡くなった方)名義の不動産を相続人名義に変更する手続きです。2024年4月から義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。

必要書類:

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印)
  • 固定資産税評価証明書

登録免許税: 固定資産評価額の0.4%

注意点: 遺産分割協議が長引く場合、相続人申告登記(自分が相続人であることを申告する暫定措置)で義務を履行したとみなされます。

贈与による名義変更

生前に不動産を無償で譲渡する手続きです。贈与税の申告義務があり、翌年2月1日~3月15日が期限です。申告を忘れると延滞税・無申告加算税が課される可能性があります。

必要書類:

  • 贈与契約書
  • 贈与者・受贈者の印鑑証明書
  • 固定資産税評価証明書

登録免許税: 固定資産評価額の2%

注意点: 年間110万円までの贈与は基礎控除により贈与税は非課税です。また、相続時精算課税制度(2500万円まで非課税、相続時に精算)や住宅取得等資金の贈与の特例もあります。詳細は国税庁や税理士にご確認ください。

売買による名義変更

不動産を売買したときの手続きです。売買契約締結後、速やかに名義変更を行うのが一般的です。

必要書類:

  • 売買契約書
  • 売主・買主の印鑑証明書
  • 固定資産税評価証明書
  • (抵当権がある場合)抵当権抹消書類

登録免許税: 固定資産評価額の2%(土地は2026年3月31日まで1.5%に軽減)

名義変更にかかる費用の内訳

名義変更にかかる費用は、主に以下の3つです。

登録免許税の計算方法(相続0.4%、贈与・売買2%)

登録免許税は、固定資産評価額に税率を乗じて計算します。税率は以下の通りです。

  • 相続: 0.4%
  • 贈与: 2%
  • 売買: 2%(土地は2026年3月31日まで1.5%に軽減)

計算例(固定資産評価額2000万円の土地の場合):

  • 相続: 2000万円 × 0.4% = 8万円
  • 贈与: 2000万円 × 2% = 40万円
  • 売買: 2000万円 × 1.5%(軽減措置適用) = 30万円

(出典: 国税庁

司法書士報酬の相場(5-10万円)

司法書士に登記手続きを依頼する場合、報酬が発生します。相場は以下の通りです。

  • 相続登記: 5-10万円程度
  • 贈与・売買の登記: 5-10万円程度

報酬は不動産の数や相続人の数により変動します。複数の司法書士事務所に見積もりを依頼することをおすすめします。

その他の費用(書類取得費用等)

戸籍謄本・印鑑証明書等の取得費用が数千円程度かかります。また、境界が不明確な場合は境界確定測量が必要で、費用は数十万円が目安です。

名義変更の手続きの流れ(6ステップ)

名義変更の手続きを6ステップで説明します。

ステップ1: 必要書類を収集する

戸籍謄本・印鑑証明書等を市区町村・法務局で取得します。相続の場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。

ステップ2: 登録免許税を計算する

固定資産評価額に税率を乗じて計算します。固定資産評価額は、毎年送付される固定資産税の納税通知書や市区町村窓口で確認できます。

ステップ3: 登記申請書を作成する

法務局HPのひな型を使用して作成します。手書きまたはオンラインで作成できます。

ステップ4: 法務局に申請する

窓口・郵送・オンラインで申請します。原本提出が原則で、コピーは不可です。

ステップ5: 登記完了を確認する

申請から1-2週間後、登記識別情報通知を受領します。

自分でやる場合と司法書士に依頼する場合の比較

自分でやる場合と司法書士に依頼する場合を比較します。

項目 自分でやる場合 司法書士に依頼する場合
費用 登録免許税+書類取得費用のみ 上記+司法書士報酬(5-10万円)
メリット 費用節約 正確・迅速、専門家の助言
デメリット 書類不備で何度も法務局に通うリスク、時間がかかる 報酬が発生
おすすめ シンプルなケース(単独相続、共有なし) 複雑なケース(共有不動産、複数相続人、遺産分割協議)

(出典: そうぞくドットコム

自分でやる場合のメリット・デメリット

メリット:

  • 司法書士報酬(5-10万円)が不要

デメリット:

  • 書類不備で何度も法務局に通うリスク
  • 時間がかかる
  • 共有不動産や複数相続人がいる場合は複雑

司法書士に依頼する場合のメリット・デメリット

メリット:

  • 正確・迅速
  • 専門家の助言が得られる

デメリット:

  • 報酬(5-10万円)が発生

複雑なケース(共有不動産、相続人が多数、遺産分割協議が必要)は司法書士に依頼することをおすすめします。

名義変更の注意点とよくあるトラブル

名義変更で陥りがちなトラブルと対策を説明します。

相続登記の放置(義務化により10万円以下の過料)

相続登記は2024年4月から義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。また、登記を放置すると不動産の売却・担保設定ができなくなります。

遺産分割協議が長引く場合、相続人申告登記(自分が相続人であることを申告する暫定措置)で義務を履行したとみなされます。詳細は法務局にご確認ください。

贈与税申告漏れ(延滞税・無申告加算税のリスク)

贈与による名義変更時、贈与税の申告義務があります。翌年2月1日~3月15日が期限で、申告を忘れると延滞税・無申告加算税が課される可能性があります。詳細は国税庁にご確認ください。

共有不動産の場合の権利者全員の同意

共有不動産の名義変更(所有権移転登記)には共有者全員の同意と署名が必要です。1人でも反対すると手続きが進まないため、事前に共有者全員と協議してください。

司法書士法違反のリスク

司法書士以外の者が登記申請代理や相談を受けることは司法書士法違反です。不動産会社等から「登記も代行します」と言われた場合、司法書士資格の有無を確認してください。

まとめ:パターンと費用を確認して早めに手続きを

土地・建物の名義変更は、相続・贈与・売買の3つのパターンで必要書類・費用・期限が異なります。

特に相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内に申請しないと過料が科される可能性があります。費用は登録免許税(相続0.4%、贈与・売買2%)+司法書士報酬(5-10万円)が目安です。

複雑なケース(共有不動産、複数相続人、遺産分割協議が必要)は司法書士に依頼することをおすすめします。

次のアクションとして、法務局や司法書士に相談し、必要書類を確認してください。早めの手続きでトラブルを防ぎましょう。

よくある質問

相続登記を3年以内にしないと必ず過料が科されますか?

正当な理由があれば過料は科されません。遺産分割協議が長引く等の事情がある場合、相続人申告登記(自分が相続人であることを申告する暫定措置)で義務を履行したとみなされます。ただし、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料が科される可能性があります。詳細は法務局にご確認ください。

贈与による名義変更で贈与税がかからないケースはありますか?

はい、あります。年間110万円までの贈与は基礎控除により贈与税は非課税です。また、相続時精算課税制度(2500万円まで非課税、相続時に精算)や住宅取得等資金の贈与の特例もあります。ただし、非課税でも贈与税の申告は必要な場合があるため、国税庁や税理士に確認してください。

登録免許税の軽減措置はいつまで適用されますか?

土地売買の登録免許税軽減措置(2%→1.5%)は2026年3月31日までです。相続で評価額100万円以下の土地の免税措置も期限が設定されている場合があるため、法務局国税庁の公式情報を確認してください。

共有不動産の名義変更は共有者全員の同意が必要ですか?

はい、必要です。共有不動産の名義変更(所有権移転登記)には共有者全員の同意と署名が必要です。1人でも反対すると手続きが進まないため、事前に共有者全員と協議してください。相続の場合、遺産分割協議で共有者を決定する必要があります。

自分で名義変更をしようとして失敗しました。途中から司法書士に依頼できますか?

はい、可能です。書類不備で法務局から補正指示を受けた場合、そこから司法書士に依頼することもできます。ただし、すでに取得した書類や申請書は使えない場合があるため、最初から司法書士に依頼する方が効率的です。複雑なケース(共有不動産、複数相続人)は最初から専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1相続登記を3年以内にしないと必ず過料が科されますか?

A1正当な理由があれば過料は科されません。遺産分割協議が長引く等の事情がある場合、相続人申告登記(自分が相続人であることを申告する暫定措置)で義務を履行したとみなされます。ただし、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料が科される可能性があります。詳細は法務局にご確認ください。

Q2贈与による名義変更で贈与税がかからないケースはありますか?

A2はい、あります。年間110万円までの贈与は基礎控除により贈与税は非課税です。また、相続時精算課税制度(2500万円まで非課税、相続時に精算)や住宅取得等資金の贈与の特例もあります。ただし、非課税でも贈与税の申告は必要な場合があるため、国税庁や税理士に確認してください。

Q3登録免許税の軽減措置はいつまで適用されますか?

A3土地売買の登録免許税軽減措置(2%→1.5%)は2026年3月31日までです。相続で評価額100万円以下の土地の免税措置も期限が設定されている場合があるため、法務局や国税庁の公式情報を確認してください。

Q4共有不動産の名義変更は共有者全員の同意が必要ですか?

A4はい、必要です。共有不動産の名義変更(所有権移転登記)には共有者全員の同意と署名が必要です。1人でも反対すると手続きが進まないため、事前に共有者全員と協議してください。相続の場合、遺産分割協議で共有者を決定する必要があります。

Q5自分で名義変更をしようとして失敗しました。途中から司法書士に依頼できますか?

A5はい、可能です。書類不備で法務局から補正指示を受けた場合、そこから司法書士に依頼することもできます。ただし、すでに取得した書類や申請書は使えない場合があるため、最初から司法書士に依頼する方が効率的です。複雑なケース(共有不動産、複数相続人)は最初から専門家に相談することをおすすめします。