自営業者が住宅ローンを組む際の基礎知識
自営業者が住宅ローンを検討する際、「審査が厳しいと聞くけど本当に借りられるのか」「必要な書類は何か」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、自営業者が住宅ローンを組む際の審査基準、必要書類、対策を、国土交通省等の公的機関や金融機関の情報を元に解説します。
自営業者でも、事前準備と対策をしっかり行えば、住宅ローンを組むことは十分可能です。
この記事のポイント
- 自営業者は会社員と比べて審査が厳しく、3年分の確定申告書や事業の安定性が重視される
- 申告所得を増やす、頭金を多く用意する、配偶者の収入を合算するなどの対策が有効
- フラット35は自営業者でも審査が通りやすく、年収基準が民間ローンより緩やか
- 事前審査で金融機関の反応を確認し、複数の金融機関に申し込むことが重要
- 開業3年未満でも一部の金融機関では審査可能な場合がある
自営業者の住宅ローン審査が厳しい理由
自営業者は会社員と比べて住宅ローン審査が厳しい傾向にあります。理由は以下の通りです。
収入の安定性が不透明
会社員は毎月一定の給与が支給されるため、収入が予測しやすい一方、自営業者は事業の業績により収入が変動します。金融機関は返済能力を重視するため、収入の安定性が不透明な自営業者に対して慎重に審査を行います。
確定申告書3年分が必要
会社員は源泉徴収票1-2年分で審査されますが、自営業者は確定申告書3年分の提出が求められる場合が一般的です。3年間の所得推移を確認し、事業の安定性を判断するためです。
申告所得が実態より低い場合がある
自営業者は節税目的で経費を多く計上し、申告所得を抑えるケースがあります。住宅ローン審査では申告所得を基準とするため、実際の収入が高くても申告所得が低いと審査に不利になります。
自営業者が住宅ローンを組むための審査基準
自営業者の住宅ローン審査で重視される項目は以下の通りです。
| 審査項目 | 内容 | 対策 | 
|---|---|---|
| 申告所得 | 3年分の確定申告書の所得金額 | 申告所得を増やす(節税と両立) | 
| 事業の安定性 | 3年間の所得推移が安定しているか | 赤字年度を避け、黒字を継続 | 
| 自己資金 | 頭金の金額 | 物件価格の20-30%を用意 | 
| 信用情報 | クレジットカード等の延滞履歴 | 延滞を避け、信用情報を良好に保つ | 
| 事業の継続年数 | 開業から3年以上が目安 | 開業3年未満は一部金融機関で審査可能 | 
申告所得の目安
申告所得は借入希望額により異なりますが、一般的には年収400万円以上が目安とされています。ただし、金融機関により基準は異なるため、事前審査で確認することが重要です。
返済負担率の基準
返済負担率(年間返済額÷年収)は、民間ローンで35%以下、フラット35で30%以下が一般的な基準です。他のローン(自動車ローン、カードローン等)がある場合、合算して計算されるため注意が必要です。
自営業者が住宅ローン審査を通過するための対策
申告所得を増やす(節税と両立)
住宅ローン審査では申告所得が重視されるため、ローン申込の2-3年前から申告所得を増やすことが有効です。ただし、過度な節税を控えることと税負担増加のバランスを考慮する必要があります。
具体的には、住宅購入を検討し始めた時点で、経費計上を見直し、申告所得を実態に近づけることが推奨されます。税理士に相談しながら進めることが重要です。
頭金を多く用意する(物件価格の20-30%)
頭金が多いほど借入額が減り、金融機関の審査が通りやすくなります。一般的には物件価格の20-30%を目安とします。頭金が少ない場合、審査が厳しくなるだけでなく、金利が高くなる可能性もあります。
配偶者の収入を合算する(ペアローン・連帯債務)
配偶者に安定した収入がある場合、収入合算することで借入可能額を増やせます。収入合算の方法には以下の3種類があります。
- ペアローン: 夫婦それぞれが債務者となり、2本のローンを組む
- 連帯債務: 1本のローンを夫婦で連帯して返済
- 連帯保証: 主債務者(例:夫)のローンに配偶者(例:妻)が連帯保証人となる
ペアローンや連帯債務の場合、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるメリットがあります。
フラット35を検討する(自営業者に有利)
フラット35は住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンで、自営業者でも審査が通りやすい特徴があります。民間ローンと比較した違いは以下の通りです。
| 項目 | フラット35 | 民間ローン | 
|---|---|---|
| 年収基準 | 総返済負担率30%以下(年収400万円未満)、35%以下(年収400万円以上) | 金融機関により異なる(一般的に35%以下) | 
| 確定申告書 | 1年分でも可能な場合あり | 3年分が一般的 | 
| 勤続年数 | 不問 | 3年以上が目安 | 
| 団体信用生命保険 | 任意加入 | 加入必須が多い | 
(出典: 住宅金融支援機構 フラット35)
フラット35は金利が固定されるため、将来の金利上昇リスクを回避できるメリットもあります。
複数の金融機関に申し込む
金融機関により審査基準が異なるため、複数の金融機関に事前審査を申し込むことが推奨されます。1社で審査に落ちても、他社で承認される可能性があります。ただし、短期間に多数の申込をすると信用情報に記録され、審査に不利になる場合があるため、3-5社程度に絞ることが推奨されます。
自営業者の住宅ローンに必要な書類
自営業者が住宅ローンを申し込む際に必要な書類は以下の通りです。
基本書類
- 確定申告書: 3年分(税務署の受付印があるもの、e-Taxの場合は受信通知)
- 納税証明書: 直近1-2年分(市区町村役場で取得)
- 本人確認書類: 運転免許証、パスポート等
- 住民票: 家族全員分
- 印鑑証明書: 実印の印鑑証明書
物件関連書類
- 売買契約書: 物件の売買契約書(コピー可)
- 重要事項説明書: 不動産会社から交付
- 物件の登記簿謄本: 法務局で取得
- 建築確認済証: 新築物件の場合
- 固定資産税評価証明書: 市区町村役場で取得
その他の書類(金融機関により異なる)
- 事業の決算書: 法人の場合
- 営業許可証: 業種により必要
- 預金通帳: 過去6ヶ月-1年分
金融機関により必要書類が異なるため、事前審査の際に確認することが重要です。
開業3年未満の場合の対処法
開業3年未満の自営業者は、一般的に住宅ローン審査が厳しくなりますが、以下の対策が有効です。
フラット35を検討
フラット35は確定申告書1年分でも審査可能な場合があります。開業1-2年目でも、事業が安定していれば審査が通る可能性があります。
配偶者の収入を主とする
配偶者が会社員等で安定した収入がある場合、配偶者を主債務者とし、自営業者を連帯保証人とする方法も検討できます。この場合、配偶者の審査基準が適用されるため、審査が通りやすくなります。
地方銀行・信用金庫を検討
地方銀行・信用金庫は大手銀行より審査基準が柔軟な場合があります。地域密着型の金融機関は、事業内容や将来性を総合的に判断するケースがあるため、相談する価値があります。
まとめ:自営業者でも住宅ローンは組める
自営業者は会社員と比べて審査が厳しく、3年分の確定申告書や事業の安定性が重視されます。しかし、申告所得を増やす、頭金を多く用意する、配偶者の収入を合算する、フラット35を検討するなどの対策により、住宅ローンを組むことは十分可能です。
審査基準は金融機関により異なるため、事前審査で金融機関の反応を確認し、複数の金融機関に申し込むことが重要です。開業3年未満でも一部の金融機関では審査可能な場合があるため、諦めずに相談してください。
不明点は住宅ローンアドバイザーや税理士に相談し、計画的に準備を進めることをおすすめします。
