住宅ローン返済中の家を賃貸に出すのは違反?相談手順を解説

公開日: 2025/11/6

住宅ローン返済中の家を賃貸に出すのは契約違反?

住宅ローン返済中の家を、転勤や家族構成の変化により賃貸に出すことを検討している方は少なくありません。しかし、「無断で賃貸に出すと契約違反になるのでは?」「一括返済を求められるのでは?」と不安に感じる方も多いでしょう。

この記事では、住宅ローン返済中の家を賃貸に出す際の注意点、銀行への相談手順、無断賃貸のリスクを国税庁住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。

転勤や介護などやむを得ない事情がある場合は金融機関も柔軟に対応するケースが多いため、正しい手順を理解すれば安心して賃貸に出すことができます。

この記事のポイント

  • 住宅ローンは「自己居住用」が前提で、無断で賃貸に出すと契約違反になる
  • 金融機関への事前相談・承諾が必須で、転勤等のやむを得ない事情なら承諾されるケースが多い
  • 無断賃貸は期限の利益喪失(一括返済請求)・住宅ローン控除停止のリスクがある
  • フラット35は転勤等で住所変更届を提出すれば賃貸可能、民間銀行は個別審査
  • 定期借家契約の活用や賃貸事業用ローンへの借り換えも検討が必要

無断で賃貸に出した場合のリスク

住宅ローンは「自己居住用」の住宅購入を目的とした融資であり、無断で賃貸に出すと契約違反(資金使途違反)になります。金融機関に発覚した場合、以下のリスクがあります。

期限の利益喪失と一括返済請求

住宅ローン契約には「資金使途違反時には期限の利益を喪失する」という条項が含まれています。期限の利益喪失とは、分割払いの権利を失い、残債を一括返済しなければならなくなる状態です。

例えば、住宅ローン残高が2,000万円ある場合、金融機関から一括返済を求められると、すぐに2,000万円を用意する必要があります。多くの場合、一括返済は現実的に困難であり、最悪の場合は物件を売却せざるを得なくなります。

住宅ローン控除の停止

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、自己居住が要件の税額控除制度です。国税庁の公式見解によると、家屋を賃貸の用に供している期間は住宅ローン控除が適用停止されます。

住宅ローン控除は年間最大35万円(借入額・控除率により異なる)の税額控除が受けられるため、賃貸期間中はこの税制上のメリットを失うことになります。

最悪の場合は詐欺罪に該当する可能性

悪質な場合(当初から賃貸目的で住宅ローンを組んだ等)は、民法上の詐欺(民法96条)や刑法上の詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性があります。金融機関を欺いて低金利の住宅ローンを不正に利用したと判断されるためです。

銀行への相談と承諾を得る手順

住宅ローン返済中の家を賃貸に出す際は、金融機関への事前相談・承諾が必須です。以下のステップで進めましょう。

ステップ1: 金融機関の窓口に連絡(理由を説明)

住宅ローン契約を結んだ金融機関のローン相談窓口または担当者に連絡します。転勤・介護・家族構成の変化など、やむを得ない理由を正直に説明することが重要です。

金融機関は「一時的な賃貸」と「永続的な賃貸事業」を区別しており、転勤等のやむを得ない事情であれば承諾されるケースが多いです。

ステップ2: 必要書類の提出(転勤辞令・賃貸契約書等)

金融機関から求められる必要書類は以下の通りです(金融機関により異なります)。

書類 内容
転勤辞令 会社発行の転勤命令書(転勤の場合)
賃貸契約書案 賃貸借契約の概要(賃料・期間等)
住民票 転勤先の住所を確認
収入証明書 返済能力の確認

ステップ3: 審査・承諾(2-4週間程度)

金融機関は提出書類を元に審査を行います。審査期間は2-4週間程度が一般的です。承諾後、正式に賃貸募集を開始できます。

承諾されない場合は、賃貸事業用ローン(アパートローン)への借り換えを検討する必要があります。

フラット35と民間銀行の違い

金融機関により、賃貸に出す際の対応が異なります。

フラット35: 転勤等のやむを得ない事情なら住所変更届で対応

住宅金融支援機構のフラット35では、転勤・介護・療養等のやむを得ない事情であれば、住所変更届を提出することで賃貸に出すことが可能です。金利変更はありません。

フラット35は公的融資の性格が強いため、民間銀行に比べて柔軟な対応がとられています。

民間銀行: 個別審査・金利変更の可能性あり

民間銀行(メガバンク・地方銀行等)は個別審査となり、賃貸を承諾しても以下のような条件が付く場合があります。

  • 金利変更(住宅ローン金利→賃貸事業用金利)
  • 追加担保の要求
  • 賃貸期間の制限(3-5年程度)

民間銀行は営利企業であり、リスク管理の観点から厳格な審査を行う傾向があります。

賃貸に出す際のその他の注意点

定期借家契約の検討(転勤から戻れなくなるリスク)

普通借家契約で賃貸に出すと、オーナーが一方的に契約解除できず、転勤から戻っても入居者が住み続ける可能性があります。

定期借家契約は契約期間終了後に更新がない賃貸契約で、転勤等で一時的に貸し出す際に有効です。契約期間(2-3年等)を設定し、期間終了後は確実に契約を終了できます。

賃貸事業用ローンへの借り換え(金利上昇)

賃貸事業として継続する場合、賃貸事業用ローン(アパートローン)への借り換えが必要です。金融庁の調査によると、賃貸事業用ローンの金利は3-6%程度で、住宅ローン(0.5-1.5%程度)より大幅に高くなります。

ローン種別 金利(目安) 月々返済額(借入2,000万円・35年)
住宅ローン 0.5-1.5% 5.1-5.8万円
賃貸事業用ローン 3-6% 7.7-10.7万円

月々の返済額が2-5万円増加するため、賃貸収入で返済をカバーできるか慎重に検討する必要があります。

転勤終了後の住宅ローン控除再開要件

国税庁の規定によると、転勤等のやむを得ない事情で一時的に居住できない場合、一定の要件を満たせば転勤終了後に再入居した際に住宅ローン控除を再開できます。

要件は以下の通りです。

  • 転勤等のやむを得ない事情であること
  • 転勤終了後、速やかに再入居すること
  • 再入居した年の翌年に確定申告を行うこと

まとめ:金融機関への相談が最優先

住宅ローン返済中の家を賃貸に出すには、金融機関への事前相談・承諾が必須です。無断で賃貸に出すと契約違反により一括返済請求・住宅ローン控除停止等のリスクがあります。

転勤・介護などやむを得ない事情であれば承諾されるケースが多く、特にフラット35は柔軟に対応しています。民間銀行は個別審査となり、金利変更や追加担保を求められる場合もあります。

金融機関により対応が異なるため、まず契約内容を確認し、早めに相談することが重要です。定期借家契約の活用や転勤終了後の再入居も視野に入れた総合的な計画が成功の鍵となります。

よくある質問

Q1無断で賃貸に出していることが金融機関にバレる可能性はありますか?

A1住民票異動・住宅ローン控除の未申請・郵便物の転送・賃貸募集広告等で発覚する可能性があります。金融機関は定期的に契約内容の確認を行う場合があり、発覚時には一括返済請求のリスクがあるため、無断賃貸は避けるべきです。

Q2賃貸に出している期間中、住宅ローン控除はどうなりますか?

A2賃貸期間中は住宅ローン控除が適用停止されます(自己居住が要件)。国税庁によると、転勤等のやむを得ない事情で一時的に居住できない場合、一定の要件を満たせば転勤終了後に再入居した際に控除を再開できます。

Q3賃貸を承諾してもらえない場合、どうすればいいですか?

A3賃貸事業用ローン(アパートローン)への借り換えを検討する必要があります。金利は3-6%程度に上昇し、月々の返済額が増加します。または住宅ローンを完済してから賃貸に出す選択肢もあります。

Q4定期借家契約と普通借家契約の違いは何ですか?

A4定期借家契約は契約期間終了後に更新がなく、確実に契約を終了できます。普通借家契約はオーナー側の一方的な解約が困難で、入居者が退去を拒否した場合は住み続けられます。転勤等で一時的に賃貸に出す場合は定期借家契約が推奨されます。

Q5転勤の期間がどれくらいまでなら賃貸に出せますか?

A5金融機関により異なりますが、フラット35では転勤期間の制限は明示されていません。民間銀行では3-5年程度の一時的な転勤を想定しているケースが多いです。永続的な賃貸事業は住宅ローンの趣旨に反するため、長期化する場合は賃貸事業用ローンへの借り換えを求められる可能性があります。