長期金利上昇が住宅ローンに与える影響と対策【2025年】

公開日: 2025/11/6

長期金利上昇と住宅ローンへの影響:2025年の状況と対策

住宅ローンを検討する際、「長期金利が上昇すると返済額はどうなるのか」「変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか」と悩む方は多いでしょう。特に2025年は、日銀のマイナス金利解除後の長期金利動向が注目されています。

この記事では、長期金利上昇が住宅ローンに与える影響、変動金利と固定金利の違い、金利上昇局面での対策を、日本銀行・住宅金融支援機構の公式情報をもとに解説します。リスクを理解し、適切な金利タイプを選ぶポイントがわかります。

この記事のポイント

  • 長期金利は固定金利(フラット35等)に影響、変動金利は短期金利に連動
  • 2024年マイナス金利解除後、長期金利は上昇傾向(フラット35は1.8-1.9%台へ)
  • 金利上昇局面では固定金利の返済額確定メリットが大きい
  • 変動金利は低金利だが将来上昇リスクあり、繰上返済や借り換えで対応可能

長期金利とは:住宅ローンとの関係を理解する

長期金利とは、新発10年物国債の利回りを指します。日本銀行によると、長期金利は固定金利型の住宅ローン(フラット35等)の基準となります。一方、変動金利は短期プライムレートに連動し、長期金利とは異なる動きをします。

長期金利が上昇する理由

長期金利が上昇する主な理由は以下の通りです。

  • 日銀の金融政策変更: 2024年3月にマイナス金利政策が解除され、長期金利の上限誘導も撤廃されました。これにより長期金利が市場の需給で決まるようになり、上昇しやすくなっています。
  • インフレ期待の高まり: 物価が上昇すると、投資家は将来のインフレを見込んで高い利回りを求めるため、長期金利が上昇します。
  • 海外金利の影響: 米国等の海外金利が上昇すると、日本の長期金利も連動して上昇する傾向があります。

長期金利と住宅ローン金利の関係

住宅金融支援機構(フラット35)によると、フラット35の金利は長期金利に0.8-1.0%程度を上乗せした水準(一般的な水準)で設定されます。長期金利が0.5%なら、フラット35は1.3-1.5%程度です。2025年1月時点では、長期金利が約1.0%前後で推移しており、フラット35は1.8-1.9%台となっています。

2024-2025年の長期金利上昇と住宅ローンへの影響

2024年3月の日銀のマイナス金利解除以降、長期金利は上昇傾向にあります。

2024年のマイナス金利解除と長期金利の動き

2024年3月、日銀はマイナス金利政策を解除し、政策金利を0-0.1%程度に引き上げました。同時に、長期金利の上限誘導(YCC: Yield Curve Control)も撤廃されました。ダイヤモンド不動産研究所によると、この政策変更により長期金利は0.5%前後から1.0%前後へ上昇し、フラット35の金利も1.5%台から1.8-1.9%台へ上昇しました。

固定金利の上昇と変動金利の安定

長期金利上昇の影響を受けたのは固定金利です。フラット35は2024年に1.8-1.9%台へ上昇し、2023年と比較して約0.3-0.4%上昇しました。一方、変動金利は短期プライムレートに連動するため、長期金利上昇の影響は限定的で、0.4-0.5%前後で安定推移しています。

金利上昇が返済額に与える影響

借入額3,000万円、返済期間35年の場合、金利が0.3%上昇すると月々の返済額は以下のように変わります。

金利 月々返済額 総返済額 増加額(月)
1.5% 約9.2万円 約3,857万円 -
1.8% 約9.6万円 約4,028万円 +約0.4万円

月々約4,000円の増加は、年間約4.8万円、35年間で約168万円の負担増となります。

長期金利上昇局面での金利タイプの選び方

長期金利が上昇する局面では、変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきでしょうか。

固定金利のメリット・デメリット

住宅金融普及協会によると、固定金利のメリットは返済額が確定することです。長期金利が今後さらに上昇しても、契約時の金利で固定されるため、将来の金利上昇リスクを回避できます。家計の見通しを立てやすく、教育費等の支出計画を確実に実行できます。

デメリットは、変動金利より金利が高いことです。2025年時点では、変動金利0.4-0.5%(2025年1月時点の主要金融機関の平均水準)に対し、フラット35は1.8-1.9%と約1.4%の差があります。総返済額が増える可能性がありますが、長期金利が今後さらに上昇すれば、固定金利を選んだメリットが大きくなります。

変動金利のメリット・デメリット

変動金利のメリットは低金利(0.4-0.5%)で、月々の返済額を抑えられることです。短期プライムレートは長期金利ほど変動しておらず、2025年時点でも安定しています。繰上返済で早期完済を目指す方、リスク許容度が高い方に向いています。

デメリットは、将来金利が上昇すると返済額が増えるリスクがあることです。125%ルール(返済額は直前の1.25倍までしか増えない仕組み)により急増は防げますが、金利上昇分が元本に組み込まれる「未払い利息」が発生する可能性があります。

ミックスローンという選択肢

ミックスローンは、変動金利と固定金利を組み合わせる方法です。例えば、借入額3,000万円のうち1,500万円を変動金利、1,500万円を固定金利にすることで、両方のメリットを活用できます。変動金利部分は低金利で返済額を抑え、固定金利部分は将来の金利上昇リスクを回避できます。

長期金利上昇に備えた対策

長期金利が今後さらに上昇する可能性を考慮し、以下の対策を検討しましょう。

固定金利への借り換え

変動金利で借りている方は、固定金利への借り換えを検討する好機です。長期金利は上昇しているものの、歴史的に見れば依然低水準です。今のうちに固定金利へ借り換えることで、将来の金利上昇リスクを回避できます。ただし、借り換えには事務手数料・保証料・登記費用で30-100万円程度かかるため、手数料込みで試算が必須です。

繰上返済で元本を減らす

繰上返済により元本を減らすことで、将来の金利上昇の影響を軽減できます。変動金利で借りている方は、金利が低いうちに積極的に繰上返済を行い、残債を減らすことが有効です。ただし、繰上返済手数料(無料~数万円)や、手元資金の確保とのバランスを考慮しましょう。

返済期間の短縮

返済期間を短縮することで、金利上昇の影響を受ける期間を減らせます。例えば、35年返済を25年返済に短縮すれば、10年分の金利上昇リスクを回避できます。ただし、月々の返済額が増えるため、家計に余裕があるか確認が必要です。

金融機関の試算ツールを活用

金融機関が提供する返済シミュレーションツールを活用し、変動金利・固定金利・ミックスローンの各パターンで試算しましょう。将来の金利上昇シナリオ(年0.5%上昇、年1.0%上昇等)を想定し、返済額がどう変わるかを確認することが重要です。

まとめ:長期金利上昇局面では固定金利のメリットが大きい

長期金利は固定金利型の住宅ローンに影響します。2024年のマイナス金利解除後、長期金利は上昇傾向にあり、フラット35は1.8-1.9%台へ上昇しました。一方、変動金利は短期プライムレートに連動し、0.4-0.5%前後で安定しています。

金利上昇局面では、固定金利の返済額確定メリットが大きくなります。変動金利は低金利ですが、将来の金利上昇リスクを考慮する必要があります。ミックスローンで両方のメリットを活用する方法もあります。

家族構成・リスク許容度・将来の支出計画を考慮し、金融機関の試算ツールまたは専門家(ファイナンシャルプランナー)に相談しながら、適切な金利タイプを選びましょう。

よくある質問

Q1長期金利が上昇すると変動金利も上がりますか?

A1直接的には連動しません。変動金利は短期プライムレートに連動し、長期金利とは異なる動きをします。2024年のマイナス金利解除後、長期金利は上昇しましたが、変動金利は0.4-0.5%前後で安定推移しています。ただし、日銀が追加利上げを行えば、短期金利も上昇し、変動金利に影響する可能性があります。

Q2今から固定金利へ借り換えるべきですか?

A2長期金利が今後さらに上昇すると予想する場合、固定金利への借り換えを検討する好機です。2025年時点では、フラット35は1.8-1.9%台で、歴史的には依然低水準です。今のうちに固定金利へ借り換えることで、将来の金利上昇リスクを回避できます。ただし、借り換えには手数料(30-100万円)がかかるため、手数料込みで試算し、削減効果が手数料を上回るか確認しましょう。

Q3長期金利は今後どうなりますか?

A3将来の長期金利を正確に予測することはできません。日銀の政策正常化が進めば段階的に上昇する可能性がある一方、経済状況により低水準が維持される可能性もあります。複数シナリオ(緩和継続・段階的上昇・急上昇)を想定し、リスク許容度に応じて変動・固定を選択することが推奨されます。専門家やファイナンシャルプランナーへの相談も検討しましょう。

Q4変動金利で借りていますが、繰上返済すべきですか?

A4変動金利で借りている方は、金利が低いうちに繰上返済を行い、元本を減らすことが有効です。将来の金利上昇の影響を軽減できます。ただし、繰上返済手数料(無料~数万円)や、手元資金の確保とのバランスを考慮しましょう。教育費・老後資金等の将来の支出を優先すべき場合もあります。金融機関の試算ツールで効果を確認してください。