「絶対通らない人」は存在しない:審査の仕組みを理解する
「住宅ローンの審査に絶対通らない人はいるのか」と不安を感じる方は少なくありません。
結論から言うと、「絶対通らない人」は存在しません。住宅ローン審査で不利になる要因はありますが、それらを改善すれば借入可能性は上がります。
この記事では、住宅ローン審査に通らない人の特徴7選、信用情報の確認方法、対策を、金融庁の最新調査(2025年1月)を元に解説します。
過去に審査に落ちた経験がある方でも、原因を特定し対策を実行すれば、住宅ローンを組める可能性は十分にあります。
この記事のポイント
- 「絶対通らない人」は存在せず、審査で不利になる要因を改善すれば借入可能
- 主な要因は信用情報、返済負担率、勤続年数、健康状態、他の借入、雇用形態、担保価値の7つ
- 信用情報はCIC・JICC・KSCで開示請求して確認すべき(費用500-1,000円)
- 返済負担率を下げる、他の借入を完済する等の対策が有効
- フラット35は団信加入が任意・雇用形態不問で審査基準が柔軟
住宅ローン審査に通らない人の特徴7選
金融庁の調査によると、金融機関が重視する審査指標はLTV(担保価格/貸出額)・DTI(年間返済額/年収)・信用情報・健康状態等です。
審査で不利になる7つの要因を詳しく解説します。
①信用情報に延滞・債務整理の記録がある
信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に異動情報(いわゆるブラックリスト)が残っていると、審査に通りにくくなります。
異動情報の例:
- クレジットカードやローンの延滞(3ヶ月以上)
- 債務整理(自己破産、個人再生、任意整理)
- 代位弁済(保証会社が代わりに返済)
保管期間:
- 延滞解消後5年
- 債務整理後5-10年(KSCの自己破産は10年)
異動情報が残っている間は、住宅ローン審査に通るのは難しいとされています。
②返済負担率が高すぎる(年収の35%超)
返済負担率(返済比率)とは、年収に占める年間返済額の割合です。
フラット35の審査基準:
- 年収400万円未満: 30%以下
- 年収400万円以上: 35%以下
例: 年収400万円の場合、年間返済額140万円(月約11.7万円)が上限
返済負担率が基準を超えると、審査に通らない可能性が高くなります。
③勤続年数が短い(1年未満等)
多くの金融機関は、勤続年数1年以上を目安としています。
転職直後や入社1年未満の場合、収入の安定性が疑われ、審査で不利になることがあります。
ただし、同業種への転職でキャリアアップした場合は、柔軟に判断されることもあります。
④健康状態が悪く団信に加入できない
**団体信用生命保険(団信)**とは、住宅ローン契約者が死亡・高度障害時に残債を保険で返済する制度です。
健康状態が悪いと団信に加入できず、一般的な住宅ローン審査に通らないことがあります。
団信加入が難しい例:
- 過去5年以内の入院・手術歴
- 高血圧、糖尿病等の持病
- がん等の重大疾病
対策として、フラット35(団信加入が任意)を検討する方法があります。
⑤他の借入が多い(カードローン等)
カードローン、自動車ローン、リボ払い等の借入が多いと、返済負担率が上がり審査で不利になります。
特に、年収の3分の1を超える借入がある場合、返済能力が疑われることがあります。
対策: 住宅ローン申込前に、カードローン・リボ払いを完済する
⑥雇用形態が不安定(非正規雇用、個人事業主)
正社員に比べ、以下の雇用形態は審査が厳しくなることがあります。
- 契約社員、派遣社員、パート・アルバイト
- 個人事業主、フリーランス
個人事業主の場合、直近3年分の確定申告書の提出を求められることが多く、所得が安定していないと審査に通りにくくなります。
フラット35は雇用形態不問のため、非正規雇用や個人事業主でも審査可能です。
⑦物件の担保価値が低い(LTVが高い)
**LTV(Loan To Value)**とは、担保価格に対する貸出額の割合です。
例: 物件価格3,000万円、借入額2,700万円 → LTV 90%
物件の担保価値が低い(築年数が古い、立地が悪い等)と、LTVが高くなり審査で不利になることがあります。
対策: 頭金を増やしてLTVを下げる(80%以下が望ましい)
信用情報を確認する方法:CIC・JICC・KSCへの開示請求
住宅ローン申込前に、自分の信用情報を確認することが重要です。
信用情報機関は3つあり、それぞれに開示請求できます。
CIC(株式会社シー・アイ・シー)への開示請求
対象: クレジットカード、信販会社のローン
開示方法:
- オンライン: 1,000円(即時)
- 郵送: 1,000円(10日程度)
- 窓口: 500円(その場で確認可)
CIC公式サイトから手続き可能です。
確認すべき項目:
- 異動情報(延滞・債務整理の記録)
- 延滞記録(「A」マークが3ヶ月以上続いていないか)
JICC(日本信用情報機構)への開示請求
対象: 消費者金融、銀行カードローン
開示方法:
- スマホアプリ: 1,000円(即時)
- 郵送: 1,000円(10日程度)
- 窓口: 500円
KSC(全国銀行個人信用情報センター)への開示請求
対象: 銀行ローン(住宅ローン、自動車ローン等)
開示方法:
- オンライン: 1,000円(即時)
- 郵送: 1,000円(10日程度)
重要: 自己破産の記録はKSCに10年間保管されるため、必ず確認してください。
住宅ローン審査に通るための対策
審査で不利な要因を改善する具体的な対策を紹介します。
返済負担率を下げる(借入額削減、頭金増額)
返済負担率が高すぎる場合、以下の方法で下げることができます。
対策①: 借入額を減らす
- 例: 3,000万円 → 2,500万円に削減
- 月々返済額: 84,685円 → 70,571円(金利0.7%、35年)
対策②: 頭金を増やす
- 例: 頭金100万円 → 300万円に増額
- 借入額が200万円減り、返済負担率が下がる
他の借入を完済する
カードローン、リボ払い、自動車ローン等の借入がある場合、住宅ローン申込前に完済することを強くおすすめします。
完済すると:
- 返済負担率が下がる
- 信用情報が改善される
- 審査に通りやすくなる
勤続年数を延ばす・転職を避ける
勤続年数が1年未満の場合、住宅ローン申込を1年以上経過後に延期することを検討してください。
また、住宅購入を検討している間は、転職を避けることが望ましいです。
ペアローン・収入合算を検討する
配偶者と一緒に借入する方法で、審査に通りやすくなる場合があります。
ペアローン: 夫婦それぞれが住宅ローンを組む(2本のローン)
収入合算: 夫婦の収入を合算して1本のローンを組む
メリット:
- 借入可能額が増える
- 返済負担率が下がる(世帯収入で計算)
注意点: どちらも配偶者に返済義務が生じるため、慎重に検討してください。
それでも通らない場合の選択肢:フラット35や他行への申込
一般的な住宅ローン審査に通らない場合、以下の選択肢があります。
フラット35(団信任意、雇用形態不問)
住宅金融支援機構のフラット35は、審査基準が柔軟です。
メリット:
- 団信加入が任意: 健康状態が悪くても借入可能
- 雇用形態不問: 個人事業主・非正規雇用も対象
- 物件の技術基準を満たせば審査可能
デメリット:
- 金利はやや高め(固定金利)
- 団信に加入しない場合、死亡・高度障害時の保障がない(別途生命保険を検討すべき)
複数の金融機関に申し込む
住宅ローンの審査基準は金融機関により異なります。
1-2社で審査落ちしても、他行では審査に通る可能性があります。
注意点: 短期間に複数申込すると、信用情報に記録され多少不利になる可能性があるため、1-2社ずつ順番に申し込むことを推奨します。
住宅ローン審査の専門家(FP)に相談
ファイナンシャルプランナー(FP)や住宅ローン専門家に相談すると、以下のサポートを受けられます。
- 審査落ちの原因を特定
- 返済計画の見直し
- 適切な金融機関の紹介
重要: 虚偽申告や信用情報改ざんは違法です。絶対に行わないでください。
まとめ:審査に通らない原因を特定し、対策を実行する
「絶対通らない人」は存在せず、不利な要因を改善すれば借入可能性は上がります。
次のアクションとして、以下を検討してください。
- 信用情報の開示請求(CIC・JICC・KSC)
- 返済負担率の計算(年収の35%以内か確認)
- 他の借入の完済(カードローン、リボ払い等)
- フラット35等の選択肢検討(団信任意、雇用形態不問)
- FPへの相談(審査落ちの原因を特定)
焦らず、計画的に対策を進めることで、住宅ローンを組める可能性は十分にあります。
