マイナス金利解除後の住宅ローンはどうなる?
2024年3月、日本銀行は約8年間続いたマイナス金利政策を解除しました。「住宅ローンの金利が急上昇するのでは?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、マイナス金利解除後の金利動向、変動金利と固定金利の選び方、今後取るべき対策を、日本銀行・住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
変動金利で住宅ローンを利用中の方、これから借り入れを検討している方が、今後の金利動向を正しく理解し、最適な選択ができるようになります。
この記事のポイント
- マイナス金利解除後も住宅ローン金利は急上昇していない(変動金利0.3-0.5%、固定金利は緩やかな上昇)
- 中長期的には金利上昇圧力がかかる可能性があるが、急激な上昇は想定しにくい
- 変動金利利用者は5年ルール・125%ルールの仕組みを再確認すべき
- 固定金利への借り換えは「今すぐ必須」ではなく、諸費用と金利差を比較して判断
- 繰上返済は将来の金利上昇リスクを軽減する有効な対策
マイナス金利政策とは何か
マイナス金利政策とは、日本銀行が2016年1月から2024年3月まで実施した金融政策です。金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に-0.1%の金利を適用することで、金融機関が資金を貸し出しに回すよう促し、経済を活性化させる狙いがありました。
この政策により、住宅ローン金利は過去最低水準まで押し下げられました。変動金利は0.3%台、固定金利(フラット35)は1%前後という低金利が長期間続き、多くの人がマイホームを取得しやすい環境が整いました。
マイナス金利解除後の金利動向
2024年3月の解除から2025年1月までの推移
2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除し、政策金利をゼロ%に引き上げました。その後、2024年7月に0.25%、2025年1月に0.5%へと段階的に引き上げが行われています。
政策金利の引き上げは、住宅ローン金利に影響を与える要素の一つですが、解除直後も住宅ローン金利は大きく上昇していません。
変動金利への影響(実態)
変動金利型住宅ローンの金利は、短期プライムレート(銀行が優良企業に短期で貸し出す際の最優遇金利)を基準に決まります。マイナス金利解除後も短期プライムレートは大きく変動せず、変動金利は0.3-0.5%程度で推移しています。
ただし、一部金融機関では引き上げが始まっています。例えば、みずほ銀行の公式発表によると、2025年10月に変動金利を0.25%引き上げるとしています。金融機関により対応が異なるため、今後の動向に注意が必要です。
固定金利への影響(実態)
固定金利型住宅ローン(フラット35等)の金利は、長期金利(10年国債利回り等)を基準に決まります。マイナス金利解除後、長期金利は緩やかに上昇しており、固定金利も連動して上昇傾向にあります。
2025年10月時点で、固定金利は約1.9%程度となっています。変動金利(約0.8%)と比較すると依然として高い水準ですが、急激な上昇は起きていません。
今後の金利見通しと住宅ローン選びのポイント
中長期的な金利上昇の可能性
日本銀行が政策金利を段階的に引き上げていることから、中長期的には住宅ローン金利にも上昇圧力がかかる可能性があります。エコノミストの予測では、2026年末には政策金利が約1.1%まで上昇するという見方もあります(ただし、これはあくまで参考値であり、確実ではありません)。
ただし、急激な金利上昇は日本経済への悪影響が大きいため、日本銀行は慎重に政策を進めると考えられています。
変動金利と固定金利の比較(2025年10月時点)
2025年10月時点での金利水準は以下の通りです。
| 金利タイプ | 金利水準 | 利用者割合 | 
|---|---|---|
| 変動金利 | 約0.8% | 79% | 
| 固定金利(フラット35等) | 約1.9% | 21% | 
変動金利利用者の79%が選択する理由
住宅ローン利用者の約79%が変動金利を選択しています。理由としては以下が挙げられます。
- 低金利メリット: 固定金利より約1%低い金利で借り入れ可能
- 総返済額の削減: 借入期間全体で見ると、変動金利の方が総返済額を抑えられる可能性が高い(金利が大幅に上昇しない場合)
- 5年ルール・125%ルール: 金利上昇時も返済額の急激な増加を抑える仕組みがある
ただし、個々の状況(収入の安定性、返済期間、リスク許容度等)により最適な選択は異なります。
変動金利利用者が今すぐ確認すべきこと
5年ルールと125%ルールの仕組み
変動金利型住宅ローンには、金利上昇時の急激な返済負担増を防ぐ仕組みがあります。
5年ルール:
金利が上昇しても、5年間は返済額を据え置く仕組みです。金利上昇分は元本返済に充当され、利息の割合が増えます。
125%ルール:
5年ごとの返済額見直し時に、新返済額は従来の1.25倍までに制限される仕組みです。例えば、月々の返済額が10万円の場合、見直し後も12.5万円までしか上がりません。
これらのルールにより、金利が急上昇しても返済額が一気に増えることはありません。ただし、金利上昇分の支払いが猶予されているだけで、最終的には返済する必要があることを理解しておく必要があります。
固定金利への借り換えのタイミング
「今すぐ固定金利に借り換えないと損をする」という情報を目にすることがあるかもしれませんが、必ずしも「今すぐ」である必要はありません。
借り換えには以下の諸費用がかかります。
- 融資手数料(借入額の2%程度)
- 登記費用(抵当権抹消・設定)
- 印紙税
これらの費用は数十万円に及ぶため、金利差と比較して本当に有利かどうかを慎重に判断する必要があります。
また、FP(ファイナンシャルプランナー)によると、「固定金利への借り換えより、より低金利の変動金利への借り換えの方が有利なケースもある」という見解もあります。借り換えを検討する際は、複数の金融機関で見積もりを取り、専門家(FP、銀行)に相談することを推奨します。
繰上返済の検討ポイント
繰上返済は、元本を減らすことで将来の金利上昇リスクを軽減する有効な対策です。
繰上返済のメリット:
- 元本が減るため、金利上昇時の利息負担が軽減される
- 総返済額を減らせる
- 返済期間を短縮できる
繰上返済の注意点:
- 手元資金が減るため、緊急時の備えを確保した上で実施すべき
- 繰上返済手数料がかかる場合がある(金融機関により異なる)
金利上昇局面では、繰上返済により元本を減らしておくことが、長期的なリスク対策として有効です。
まとめ
マイナス金利解除後も、住宅ローン金利は急激に上昇していません。変動金利は0.3-0.5%、固定金利は緩やかな上昇にとどまっています。ただし、中長期的には金利上昇圧力がかかる可能性があります。
変動金利利用者は、5年ルール・125%ルールの仕組みを再確認し、固定金利への借り換えや繰上返済を検討するタイミングです。ただし、個々の状況により最適解は異なるため、諸費用と金利差を比較し、専門家(FP、銀行)に相談しながら判断することを推奨します。
金利動向を注視しつつ、無理のない返済計画を立てることが、安心してマイホームを維持する鍵となります。
