住宅ローンの利息計算方法とは?総返済額と月々の利息を理解する
住宅ローンを検討する際、「毎月の返済額のうち、いくらが利息なのか」「総額でいくら利息を支払うことになるのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、住宅ローンの利息計算の基本公式から、元利均等返済・元金均等返済での計算の違い、繰上返済による利息削減効果まで、具体例とシミュレーションツールを交えて分かりやすく解説します。
住宅金融支援機構や各金融機関の公式情報を元に、初めて住宅ローンを検討する方でも実践的に利息を理解できる内容です。
この記事のポイント
- 住宅ローンの利息は「借入残高 × 年利 ÷ 12」で計算される
- 元利均等返済と元金均等返済では総利息額が約68万円異なる(借入3,000万円・年利1.5%・35年の場合)
- 繰上返済は実行時期が早いほど利息削減効果が大きい
- シミュレーションツールは便利だが概算であり、必ず金融機関に確認が必要
- 変動金利の場合は将来の金利上昇リスクを想定したストレステストが重要
利息の基本的な計算方法:残高 × 金利 ÷ 12
住宅ローンの利息は、毎月の借入残高と金利から計算されます。基本公式は以下の通りです。
月々の利息額 = 借入残高 × 年利 ÷ 12
毎月の利息額の算出例(借入3,000万円、金利1.5%)
具体的な計算例を見てみましょう。
- 借入残高:3,000万円
- 年利:1.5%
- 初回の月利息:3,000万円 × 1.5% ÷ 12 = 37,500円
返済が進むと借入残高が減るため、利息も徐々に減少していきます。例えば、残高が2,000万円まで減った場合、月利息は約25,000円(2,000万円 × 1.5% ÷ 12)になります。
年利から月利への変換方法
金融機関の金利表示は通常「年利」で示されますが、実際の利息計算では「月利」を使用します。
月利 = 年利 ÷ 12
例:
- 年利1.5% → 月利0.125%
- 年利2.0% → 月利0.167%
この基本公式を理解することで、毎月の返済額の内訳(元金返済額と利息額)を把握できるようになります。
元利均等返済と元金均等返済の利息計算の違い
住宅ローンの返済方式には、元利均等返済と元金均等返済の2種類があり、それぞれ利息の減り方が異なります。
元利均等返済:毎月の返済額一定、当初は利息が多い
元利均等返済は、毎月の返済額(元金+利息)が一定の返済方式です。
特徴:
- 毎月の返済額が一定で返済計画が立てやすい
- 当初は利息の割合が多く、元金返済額が少ない
- 時間経過とともに元金返済額が増え、利息が減る
住宅金融支援機構によると、元利均等返済は返済額が変わらないため、家計管理がしやすいというメリットがあります。
元金均等返済:元金返済額一定、当初の返済額が多い
元金均等返済は、毎月の元金返済額が一定の返済方式です。
特徴:
- 毎月の元金返済額が一定
- 当初の返済額は多いが、徐々に減少する
- 総利息額は元利均等返済より少ない
総利息額の比較シミュレーション
具体的な数値で比較してみましょう。
| 項目 | 元利均等返済 | 元金均等返済 | 差額 | 
|---|---|---|---|
| 借入額 | 3,000万円 | 3,000万円 | - | 
| 年利 | 1.5% | 1.5% | - | 
| 返済期間 | 35年 | 35年 | - | 
| 初回返済額 | 約91,855円 | 約108,929円 | +17,074円 | 
| 総返済額 | 約3,857万円 | 約3,789万円 | -68万円 | 
| 総利息額 | 約857万円 | 約789万円 | -68万円 | 
(試算例、実際の金額は金融機関の計算により異なる場合があります)
どちらを選ぶべきか:
- 元利均等返済:返済計画の立てやすさを重視する場合
- 元金均等返済:総利息を抑えたい場合(ただし当初の返済負担が大きい)
返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)の審査基準も考慮し、金融機関と相談して決定しましょう。
総利息額の計算方法とシミュレーションツール
総利息額の計算式:総返済額 - 借入元金
総利息額は以下の式で算出できます。
総利息額 = 総返済額 - 借入元金
例:
- 借入元金:3,000万円
- 総返済額:3,857万円
- 総利息額:857万円(3,857万円 - 3,000万円)
この計算により、返済期間全体で支払う利息の合計額を把握できます。
金融機関のシミュレーションツール活用法
各金融機関は無料の返済シミュレーションツールを提供しています。
主なツール:
使い方:
- 借入額、金利、返済期間を入力
- 返済方式(元利均等・元金均等)を選択
- 毎月の返済額、総返済額、総利息額を自動計算
注意点:
シミュレーション結果は概算であり、実際の返済額は金融機関の独自計算や端数処理により若干異なる可能性があります。必ず金融機関に確認し、正式な返済計画表を取得してください。
繰上返済による利息削減効果の計算
繰上返済は、毎月の返済とは別に元金の一部を返済することで、利息を削減できる方法です。
期間短縮型:総利息を大幅削減
期間短縮型は、返済期間を短縮する繰上返済方式です。
特徴:
- 毎月の返済額は変わらない
- 返済期間が短縮される
- 総利息額を大幅に削減できる
効果の例:
- 借入残高:3,000万円(返済開始10年後、残高約2,300万円)
- 繰上返済額:100万円
- 利息削減効果:約30万円
(効果は金利・残存期間により異なります)
返済額軽減型:月々の返済負担を軽減
返済額軽減型は、毎月の返済額を減らす繰上返済方式です。
特徴:
- 返済期間は変わらない
- 毎月の返済額が減る
- 総利息削減効果は期間短縮型より小さい
どちらを選ぶべきか:
- 期間短縮型:総利息を最大限削減したい場合
- 返済額軽減型:月々の返済負担を軽くしたい場合
繰上返済のシミュレーション例
繰上返済の効果は、実行時期により大きく異なります。
| 実行時期 | 繰上額 | 期間短縮 | 利息削減額 | 
|---|---|---|---|
| 5年目 | 100万円 | 約2年 | 約35万円 | 
| 10年目 | 100万円 | 約1年半 | 約30万円 | 
| 20年目 | 100万円 | 約1年 | 約15万円 | 
(借入3,000万円、年利1.5%、35年返済の試算例)
繰上返済の原則:
- 早い時期ほど効果が大きい
- 借入直後は残高が多く利息も多いため、早期実行で大幅削減が可能
- ただし、緊急予備資金(生活費の6ヶ月分程度)を確保した上で実行すべき
手元資金が枯渇すると、万が一の際に高金利のカードローン等に頼らざるを得なくなるリスクがあります。
金利タイプ別の利息計算の注意点
住宅ローンには固定金利と変動金利があり、それぞれ利息計算の注意点が異なります。
固定金利:計算が確定、シミュレーション通り
全期間固定金利(フラット35等):
- 借入時の金利が返済終了まで変わらない
- 利息計算が確定しているため、シミュレーション通りになる
- 将来の金利上昇リスクを回避できる
当初固定金利:
- 当初一定期間(3年、5年、10年等)は固定金利
- 固定期間終了後は変動金利または再度固定金利を選択
- 固定期間中はシミュレーション通り
変動金利:将来の金利上昇リスクあり、シミュレーション通りにならない可能性
変動金利の特徴:
- 半年ごとに金利が見直される
- 将来の金利上昇により、利息が増加する可能性がある
- シミュレーション通りにならない可能性がある
2025年の金利環境:
住宅金融支援機構によると、2025年時点では低金利環境が続いていますが、日銀の金融政策変更により金利上昇の可能性もあります。
ストレステストの実施:
変動金利でシミュレーションする場合は、金利上昇を想定したストレステストを実施し、返済余力を確認すべきです。
| シナリオ | 金利 | 月返済額 | 総利息額 | 
|---|---|---|---|
| 現在 | 0.5% | 約77,876円 | 約270万円 | 
| +1%上昇 | 1.5% | 約91,855円 | 約857万円 | 
| +2%上昇 | 2.5% | 約106,482円 | 約1,472万円 | 
(借入3,000万円、35年返済の試算例)
金利が2%上昇すると、総利息額が約1,200万円増加します。このような最悪シナリオでも返済可能かを事前に確認しておきましょう。
まとめ:利息計算を理解して賢い住宅ローン選択を
住宅ローンの利息は「借入残高 × 年利 ÷ 12」で計算され、元利均等返済と元金均等返済では総利息額が約68万円異なります(借入3,000万円・年利1.5%・35年の場合)。
総利息額を把握するには、金融機関のシミュレーションツールが便利ですが、結果は概算であるため必ず金融機関に確認してください。繰上返済による利息削減効果は実行時期が早いほど大きいですが、手元資金枯渇リスクも考慮する必要があります。
変動金利の場合は将来の金利上昇リスクを想定したストレステスト(金利+1%、+2%での試算)も重要です。
次のアクション:
- 金融機関のシミュレーションツールで総利息を試算
- 複数の返済方式・金利タイプを比較
- 繰上返済計画を検討(緊急予備資金を確保した上で)
信頼できる金融機関や住宅ローンアドバイザーに相談しながら、ご自身に合った返済計画を立てましょう。
