住宅ローンの金利選択で迷ったら:正解はない前提で考える
住宅購入を検討する際、「固定金利と変動金利、どっちがお得なの?」という疑問は多くの方が抱く悩みです。しかし、金融庁の調査や住宅金融支援機構のデータを見ても、どちらが絶対に有利とは言い切れません。
この記事では、固定金利と変動金利の特徴、メリット・デメリット、向いている人の条件を、2025年時点の最新情報を元に解説します。ライフプランやリスク許容度に応じて、自分に合った選択ができる判断材料を提供します。
この記事のポイント
- 固定金利と変動金利のどちらがお得かは、ライフプラン・リスク許容度・返済期間によって異なる
- 固定金利(2025年時点で約1.84%)は返済額が変わらない安心感、変動金利(0.5-0.9%)は低金利で総返済額を削減
- 変動金利には5年ルール・125%ルールの保護措置があるが、未払い利息のリスクも
- 2025年の金利上昇局面では、リスク分散の金利ミックス型も選択肢
- 複数の金融機関でシミュレーションし、専門家に相談して判断することが重要
固定金利の特徴:安心感と計画性を重視
固定金利は、借入時の金利が返済完了まで変わらないタイプの住宅ローンです。代表的な商品として住宅金融支援機構のフラット35があり、2025年時点で金利は約1.84%となっています。
固定金利の仕組み(フラット35等)
固定金利は、契約時に設定された金利が35年間(または返済期間中)一切変動しません。そのため、市場金利が上昇しても返済額に影響を受けることはありません。一方で、金利が下がった場合も恩恵を受けられないという特徴があります。
メリット:返済額が変わらない安心感
固定金利の最大のメリットは、毎月の返済額が一定で変動しない点です。これにより、以下のような利点があります。
- 長期的な家計管理がしやすい: 将来の支出が明確なため、教育費や老後資金の計画が立てやすい
- 金利上昇リスクがない: 将来金利が上昇しても返済額は変わらず、安心して生活設計ができる
- 予算管理が苦手な人にも安心: 返済額の変動に対応する必要がないため、計画的な家計管理がしやすい
デメリット:金利が高く総返済額が増える
固定金利のデメリットは、変動金利に比べて金利が高く設定されている点です。
具体例(3,000万円を35年で借入):
- 変動金利0.7%の場合: 月々約7.9万円、総返済額約3,320万円
- 固定金利1.84%の場合: 月々約9.8万円、総返済額約4,120万円
総返済額の差は約800万円にもなります。金利が上昇しなければ、変動金利の方が有利になる計算です。
変動金利の特徴:低金利だがリスクあり
変動金利は、市場金利に連動して半年ごとに金利が見直されるタイプの住宅ローンです。2025年時点で金利は0.5-0.9%程度と、固定金利より大幅に低い水準です。
変動金利の仕組み(半年ごとに見直し)
変動金利は、日本銀行の政策金利や市場金利の動向に応じて、半年ごとに金利が見直されます。金利が下がれば返済額も減りますが、金利が上昇すれば返済額が増加します。
メリット:低金利で総返済額を削減
変動金利の最大のメリットは、低金利により総返済額を大幅に削減できる点です。
具体例(3,000万円を35年・変動0.7%で借入):
月々約7.9万円の返済で、総返済額は約3,320万円です。固定金利1.84%と比較すると、約800万円もの節約になります。
この差額を繰上返済に充てたり、教育費や老後資金に回したりできるため、経済的なメリットは大きいです。
デメリット:金利上昇リスクと返済額増加
変動金利の最大のリスクは、金利が上昇した場合に返済額が増えることです。
金利上昇シミュレーション:
- 金利が0.7%→1.7%(1%上昇): 月々の返済額が約7.9万円→約10万円に増加(約2万円増)
- 金利が0.7%→2.2%(1.5%上昇): 月々の返済額が約7.9万円→約11万円に増加(約3万円増)
特に、収入が限られている場合や教育費負担が重なる時期に金利が上昇すると、家計が圧迫される可能性があります。
5年ルール・125%ルールとは
変動金利には、急激な返済額増加を防ぐための保護措置が設けられています。
5年ルール:
金利が上昇しても、返済額は5年間据え置かれます。ただし、返済額の内訳(元本と利息の割合)は変動するため、金利が上昇すると利息の割合が増え、元本の減りが遅くなります。
125%ルール:
返済額を見直す際、前回の返済額の1.25倍までしか増額されません。例えば、月々8万円の返済の場合、次回見直し時には最大10万円までしか増えません。
ただし、これらのルールには注意点があります。金利が急上昇した場合、未払い利息が発生し、元本に繰り入れられるリスクがあります。この場合、返済期間が延びたり、最終的な返済額が増えたりする可能性があります。
固定金利と変動金利の比較表:どこが違う?
固定金利と変動金利の違いを表形式で整理しました。
| 項目 | 固定金利 | 変動金利 |
|---|---|---|
| 金利水準(2025年時点) | 約1.84% | 0.5-0.9% |
| 金利の変動 | なし(完済まで固定) | 半年ごとに見直し |
| 総返済額(3,000万円・35年) | 約4,120万円 | 約3,320万円(0.7%の場合) |
| 金利上昇リスク | なし | あり |
| 返済計画の立てやすさ | 立てやすい | 立てにくい |
| 保護措置 | なし | 5年ルール・125%ルール |
| 向いている人 | 収入安定・返済余裕小 | 繰上返済可能・リスク許容度高 |
(出典: 住宅金融支援機構フラット35利用者調査)
住宅金融支援機構の調査によると、利用者の約8割が変動金利を選択していますが、金利上昇局面では固定金利への切り替えを検討する人も増えています。
固定金利が向いている人・変動金利が向いている人
固定金利と変動金利のどちらが向いているかは、個人のライフプランやリスク許容度によって異なります。
固定金利が向いている人(こんなケース)
- 収入が安定しているが返済余裕が少ない: 毎月の返済額が増えると家計が圧迫される
- 金利上昇リスクを避けたい: 将来の金利変動に不安を感じる
- 長期借入(30-35年)を予定: 返済期間が長いほど金利上昇の影響が大きい
- 家計管理が苦手: 返済額が変動すると対応が難しい
- 教育費負担が重なる時期がある: 支出が増える時期に返済額が上がると困る
変動金利が向いている人(こんなケース)
- 繰上返済が可能: 余裕資金があり、元本を早く減らせる
- リスク許容度が高い: 金利上昇時にも柔軟に対応できる
- 短期(10-20年)で完済予定: 返済期間が短いほど金利変動の影響が小さい
- 収入が増加する見込みがある: 昇給や収入増により、返済額増加に対応できる
- 金利動向を定期的にチェックできる: 市場金利を把握し、借り換えなどの判断ができる
金利ミックス型という選択肢
固定金利と変動金利の両方のメリットを享受したい場合、「金利ミックス型」も検討の価値があります。
金利ミックス型の例:
借入額3,000万円を、固定金利1,500万円+変動金利1,500万円に分ける。この場合、金利が上昇しても半分は固定金利で保護され、金利が低いままなら変動金利部分で総返済額を削減できます。
金融機関によって対応が異なるため、事前に確認が必要ですが、リスク分散の有力な選択肢です。
住宅ローン金利の選び方:5つのチェックポイント
金利選択時には、以下の5つのポイントを確認しましょう。
- 返済期間: 長期(30-35年)なら固定金利、短期(10-20年)なら変動金利が比較的安全
- 繰上返済の可能性: 余裕資金があり繰上返済できるなら変動金利が有利
- 収入の安定性: 安定しているが余裕が少ないなら固定金利、収入増が見込めるなら変動金利
- 金利上昇リスクの許容度: リスクを避けたいなら固定金利、許容できるなら変動金利
- 今後のライフイベント: 教育費等の大きな支出予定があるなら、返済額が固定されている方が安心
金融機関選びのポイント:
金利だけでなく、団体信用生命保険(団信)の内容、保証料、事務手数料も比較しましょう。複数の金融機関でシミュレーションを取り、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談することで、より適切な判断ができます。
まとめ:自分のライフプランに合わせて選択する
固定金利と変動金利のどちらがお得かは、一概には言えません。過去のデータでは変動金利の方が総返済額が少ないケースが多いですが、今後の金利上昇リスクを考慮すると、固定金利の安心感も大きな魅力です。
自分のライフプラン、リスク許容度、返済期間を踏まえて、最適な選択をすることが重要です。複数の金融機関でシミュレーションを取り、FPや金融機関の担当者に相談しながら、無理のない返済計画を立てましょう。
2025年の金利動向を注視しつつ、変動金利から固定金利への借り換えも視野に入れ、定期的に見直すことをおすすめします。
