専任媒介契約の仲介手数料とは:上限と計算方法
不動産の売却を検討する際、「専任媒介契約の仲介手数料はいくらなのか」「一般媒介と違いはあるのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、専任媒介契約の仲介手数料の上限・計算方法・支払い時期を、国土交通省の公式情報を元に解説します。専任媒介・専属専任媒介・一般媒介の違いも整理し、どの契約形態を選ぶべきかの判断材料を提供します。
初めて不動産を売却する方でも、この記事を読めば仲介手数料の仕組みを正確に理解できます。
この記事のポイント
- 専任媒介契約の仲介手数料は一般媒介と同じで、物件価格の3%+6万円+消費税が上限
- 仲介手数料は成功報酬で、売買契約が成立しなければ支払い不要
- 専任媒介は1社のみと契約し、REINS登録義務・定期報告義務がある
- 支払い時期は契約時50%・引き渡し時50%が一般的だが、引き渡し時一括も可能
- 仲介手数料の上限を超える請求は宅建業法違反
専任媒介契約の仲介手数料:上限と計算式
国土交通省の宅地建物取引業法により、仲介手数料の上限は物件価格に応じて定められています。
仲介手数料の上限(速算式)
仲介手数料の上限は以下の速算式で計算できます。
物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税
| 物件価格 | 仲介手数料の上限(税込) |
|---|---|
| 1000万円 | 39.6万円 |
| 2000万円 | 72.6万円 |
| 3000万円 | 105.6万円 |
| 5000万円 | 171.6万円 |
(出典: 国土交通省)
例えば、物件価格3000万円の場合:
- 3000万円 × 3% = 90万円
- 90万円 + 6万円 = 96万円
- 96万円 × 1.1(消費税10%)= 105.6万円
仲介手数料の内訳(正式な計算方法)
速算式は簡便的な方法で、正式には物件価格を3段階に分けて計算します。
| 物件価格の区分 | 料率 |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5% |
| 200万円超400万円以下の部分 | 4% |
| 400万円超の部分 | 3% |
(出典: 国土交通省)
物件価格3000万円の場合:
- 200万円 × 5% = 10万円
- 200万円 × 4% = 8万円
- 2600万円 × 3% = 78万円
- 合計96万円 + 消費税 = 105.6万円
速算式と同じ結果になります。
専任媒介・専属専任媒介・一般媒介の違い
媒介契約は不動産会社に売却の仲介を依頼する際の契約で、専任媒介・専属専任媒介・一般媒介の3種類があります。
契約形態の比較表
| 項目 | 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 |
|---|---|---|---|
| 複数社契約 | 可 | 不可(1社のみ) | 不可(1社のみ) |
| REINS登録義務 | なし | あり(7日以内) | あり(5日以内) |
| 定期報告義務 | なし | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
| 自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
| 契約期間 | 制限なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
| 仲介手数料 | 上限同じ | 上限同じ | 上限同じ |
(出典: 国土交通省)
REINS(レインズ)とは
REINS(レインズ)は国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営する物件情報ネットワークです。宅建業者間で物件情報を共有し、買主を見つけやすくします。専任媒介・専属専任媒介ではREINS登録が義務付けられています。
自己発見取引とは
自己発見取引は売主が自分で買主を見つけて契約することです。専任媒介では可能ですが、専属専任媒介では不可です。自己発見取引の場合でも、不動産会社との媒介契約が有効な間は仲介手数料が発生する場合があるため、契約内容を事前に確認してください。
仲介手数料の支払い時期と方法
仲介手数料は成功報酬で、売買契約が成立しなければ支払い不要です。
支払い時期
一般的な支払い時期は以下の通りです。
- 契約時50% + 引き渡し時50%(最も一般的)
- 引き渡し時一括100%(売主の資金負担を軽減)
支払い時期は不動産会社との取り決めにより異なるため、媒介契約締結時に確認してください。
支払い方法
支払い方法は振込または現金が一般的です。高額になる場合は振込が推奨されます。
契約が途中で解除された場合
売買契約が成立する前に媒介契約を解除した場合、仲介手数料は原則不要です。ただし、不動産会社が広告費等の実費を既に支出している場合、実費相当額の請求がある場合があります。媒介契約書の「契約解除時の取り決め」を確認してください。
仲介手数料を抑える方法と注意点
仲介手数料を抑える方法と注意点を解説します。
仲介手数料の値引き交渉
仲介手数料は上限規制であり、不動産会社と交渉して値引きしてもらうことは可能です。ただし、値引きを要求することでサービスの質が低下するリスクがあります。
値引き交渉は媒介契約締結前に行い、値引き後の金額を契約書に明記してください。
仲介手数料無料・半額の不動産会社
一部の不動産会社は仲介手数料無料・半額を謳っています。ビジネスモデルとして成立している場合もありますが、以下の点に注意が必要です。
- サービスの質が低下する可能性
- 買主から仲介手数料を多く取る「両手仲介」を狙う可能性
- 広告費等の名目で別途費用を請求される可能性
仲介手数料無料・半額の理由を確認し、契約内容を慎重にチェックしてください。
仲介手数料の上限を超える請求は違法
仲介手数料の上限(物件価格の3%+6万円+消費税)を超える請求は宅建業法違反です。上限を超える請求を受けた場合は、都道府県の宅建業担当部署に相談してください。
広告費・コンサルティング費等の名目で別途請求される場合もありますが、通常の販売活動の範囲内の費用は仲介手数料に含まれるべきです。特別な広告(大規模な新聞広告等)を依頼した場合を除き、追加費用の請求は原則認められません。
専任媒介契約を選ぶべきケース
専任媒介契約を選ぶべきケースを解説します。
信頼できる1社がある場合
信頼できる不動産会社が1社ある場合、専任媒介契約を結ぶことで、不動産会社が積極的に販売活動を行う可能性が高まります。REINS登録義務・定期報告義務があり、販売状況を把握しやすいです。
早く売却したい場合
専任媒介契約では不動産会社が1社のみのため、広告費を集中的に投入しやすく、早期売却が期待できる場合があります。ただし、複数社に依頼した方が買主が見つかりやすいケースもあるため、物件の特性・エリアにより判断が必要です。
複数社管理の手間を避けたい場合
一般媒介契約で複数社に依頼すると、各社への対応(内覧調整・報告確認等)が手間になります。専任媒介契約なら1社のみの対応で済みます。
まとめ:専任媒介契約の仲介手数料を正しく理解しよう
専任媒介契約の仲介手数料は、一般媒介と同じで物件価格の3%+6万円+消費税が上限です。仲介手数料は成功報酬で、売買契約が成立しなければ支払い不要です。
専任媒介は1社のみと契約し、REINS登録義務・定期報告義務があります。信頼できる1社がある場合や早期売却を希望する場合に向いていますが、複数社比較したければ一般媒介を選びます。
仲介手数料の上限を超える請求は宅建業法違反です。媒介契約締結前に契約内容を慎重にチェックし、信頼できる不動産会社と相談しながら、無理のない売却計画を立てましょう。
