戸建て購入の基礎知識と全体像
初めて戸建て購入を検討される方にとって、「どんな流れで進めるのか」「どれくらい費用がかかるのか」「何に注意すべきか」は大きな疑問です。
この記事では、戸建て購入の流れを時系列で整理し、各段階でかかる費用の内訳、新築・中古の違い、初心者が見落としがちな注意点を実践的に提示します。国土交通省や住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
この記事のポイント
- 戸建て購入の流れは、物件探し→資金計画→申し込み→契約→ローン審査→引き渡しの6段階
- 物件価格以外の諸費用が物件価格の6~9%(新築一戸建て)かかる。4,000万円の場合、240万~360万円が目安
- 新築は価格が高いが税制優遇・性能で有利、中古は価格が安いがリフォーム費用がかかる場合がある
- 戸建て特有の注意点は、土地の権利関係、境界確定、建ぺい率・容積率の確認が必要
- 住宅ローン控除等の税制優遇を活用し、無理のない返済計画を立てることが重要
戸建て購入は人生で最も大きな買い物の一つです。全体像を把握し、各段階で何をすべきか理解することで、スムーズに進められます。
戸建て購入の流れ(全体像)
戸建て購入の流れを時系列で整理します。一建設の解説によると、物件探しから引き渡しまで一般的に3~6ヶ月程度かかります。
| ステップ | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| ①物件探し | 希望条件の整理、物件検索、内覧 | 1~3ヶ月 |
| ②資金計画 | 予算の確認、住宅ローンの事前審査 | 数週間 |
| ③申し込み | 購入申込書の提出、手付金の支払い | 数日 |
| ④契約 | 重要事項説明、売買契約の締結 | 1週間~1ヶ月 |
| ⑤ローン審査 | 住宅ローンの本審査・契約 | 1~2週間 |
| ⑥引き渡し | 残金決済、所有権移転登記、鍵の受領 | 1~2週間 |
各段階で必要な手続きと費用を詳しく見ていきましょう。
①物件探し:希望条件の整理と内覧
まず、希望条件を整理します。立地、価格、間取り、築年数、周辺環境等の優先順位を決めましょう。
不動産ポータルサイトや不動産会社で物件を検索し、気になる物件を内覧します。内覧時は、建物の状態だけでなく、周辺環境(騒音、日当たり、交通アクセス等)も確認しましょう。
②資金計画:予算と住宅ローンの事前審査
物件価格だけでなく、諸費用(物件価格の6~9%)も含めた総予算を確認します。住宅ローンを利用する場合、事前審査で借入可能額を把握しましょう。
③申し込み:購入申込書の提出
購入を決めたら、購入申込書を提出し、手付金(物件価格の5~10%)を支払います。この時点ではまだ契約は成立していません。
④契約:重要事項説明と売買契約
宅地建物取引士による重要事項説明を受け、内容を十分理解した上で売買契約を締結します。契約時に手付金を支払い、契約が成立します。
⑤ローン審査:本審査と金銭消費貸借契約
住宅ローンの本審査を受け、承認されたら金融機関と金銭消費貸借契約(ローン契約)を締結します。
⑥引き渡し:残金決済と所有権移転
残金を支払い、所有権移転登記を行います。鍵を受け取り、引き渡し完了です。
戸建て購入にかかる費用(内訳と相場)
戸建て購入には、物件価格以外に諸費用がかかります。LIFULL HOME'Sの解説によると、新築一戸建てで物件価格の6~9%、中古一戸建てで5~10%が目安です。
諸費用の内訳(4,000万円の物件の場合)
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 不動産会社への報酬(中古の場合) | 最大138.6万円 |
| 登記費用 | 所有権移転登記、抵当権設定登記 | 30~50万円 |
| 不動産取得税 | 土地・建物の取得時の税金 | 0~数十万円 |
| 印紙税 | 売買契約書・ローン契約書の印紙 | 2~6万円 |
| ローン手数料 | 融資手数料・保証料 | 50~100万円 |
| 火災保険 | 10年一括払いの場合 | 20~30万円 |
| 固定資産税 | 引き渡し後の日割り分 | 数万円 |
| その他 | 引っ越し費用、家具・家電購入費 | 50~100万円 |
| 合計 | 約240~360万円 |
新築の場合、仲介手数料がかからないことが多いため、中古よりやや安くなります。
仲介手数料の計算方法
仲介手数料は、法定上限が物件価格に応じて決定されます。
計算式:
- 物件価格が400万円超の場合:
物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税 - 4,000万円の場合:
4,000万円 × 3% + 6万円 = 126万円 + 消費税12.6万円 = 138.6万円
住宅ローンの借入可能額
住宅ローンは年収の5~7倍程度が目安です。住宅金融支援機構のフラット35は最大8,000万円まで借入可能ですが、無理のない返済計画を立てることが重要です。
新築と中古の違い(価格・税制・性能)
新築と中古のどちらを選ぶべきかは、予算と優先事項により異なります。IEULの比較によると、首都圏の平均価格は新築4,128万円、中古3,753万円です。
新築戸建てのメリット・デメリット
メリット:
- 最新の性能・設備(耐震性、断熱性、省エネ性能)
- 税制優遇が手厚い(住宅ローン控除の控除額が大きい、登録免許税・不動産取得税の軽減措置)
- 瑕疵担保責任が10年間義務化(構造耐力上主要な部分等)
- メンテナンス費用が当面かからない
デメリット:
- 価格が高い
- 立地の選択肢が限られる(都心部では土地が少ない)
中古戸建てのメリット・デメリット
メリット:
- 価格が安い
- 立地の選択肢が豊富
- 実物を見て購入できる(新築は完成前の場合もある)
- リフォーム・リノベーションで自分好みにカスタマイズ可能
デメリット:
- リフォーム費用がかかる場合がある(設備の老朽化)
- 耐震性・断熱性が低い場合がある
- 瑕疵担保責任が2~3ヶ月程度と短い(売主が個人の場合)
- 住宅ローン控除の控除額が新築より少ない場合がある
戸建て購入の注意点(初心者向け)
戸建て購入には、マンション購入にはない特有の注意点があります。さくら事務所の解説を参考に、重要なポイントを紹介します。
土地の権利関係(所有権・借地権)
土地の権利が「所有権」か「借地権」かを確認しましょう。借地権の場合、土地の所有者に地代を支払う必要があり、将来の売却時に制約があります。
境界確定の有無
隣地との境界が確定しているかを確認しましょう。境界未確定の場合、将来トラブルになる可能性があります。境界確定測量図を確認し、境界標が設置されているかを現地で確認します。
インフラ整備状況(上下水道・ガス)
上下水道、ガス等のインフラが整備されているかを確認しましょう。未整備の場合、引き込み工事に数十万円~数百万円かかる場合があります。
建ぺい率・容積率の確認
建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)と容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)を確認しましょう。将来の増改築に影響します。
建築基準法で地域ごとに制限が定められており、重要事項説明で説明されます。
旧耐震基準・新耐震基準の確認
中古戸建ての場合、建築時期を確認しましょう。1981年6月以降の新耐震基準の物件が安心です。旧耐震基準の場合、耐震診断・耐震補強の実施状況を確認します。
ホームインスペクション(住宅診断)の活用
中古戸建ての場合、ホームインスペクション(住宅診断)を依頼することをおすすめします。専門家が建物の劣化状況を診断し、修繕が必要な箇所を指摘してくれます。費用は5~10万円程度です。
住宅ローン控除と税制優遇
戸建て購入時は、住宅ローン控除等の税制優遇を活用しましょう。2025年時点の制度を確認し、適用条件を満たすことが重要です。
住宅ローン控除(2025年時点)
住宅ローンを借りて住宅を購入した場合、年末残高の一定割合を所得税から控除できます。2025年時点の制度を確認しましょう。
適用条件:
- 自己居住用の住宅であること
- 床面積が50㎡以上(合計所得金額1,000万円以下の場合は40㎡以上)
- 借入期間が10年以上
- 合計所得金額が2,000万円以下
控除額:
- 新築住宅、買取再販住宅:年末残高の0.7%を最長13年間
- 中古住宅:年末残高の0.7%を最長10年間
- 借入限度額は住宅の性能により異なる(認定長期優良住宅は最大5,000万円等)
その他の税制優遇
- 登録免許税の軽減: 新築住宅で0.15%(通常0.4%)
- 不動産取得税の軽減: 新築住宅で最大1,200万円控除
- 固定資産税の軽減: 新築住宅で3年間(認定長期優良住宅は5年間)1/2に減額
適用には条件があるため、購入前に確認しましょう。
まとめ:戸建て購入は計画的に進めよう
戸建て購入は、物件探しから引き渡しまで3~6ヶ月程度かかる大きなプロジェクトです。流れを理解し、各段階で必要な手続きと費用を把握することで、スムーズに進められます。
物件価格の6~9%の諸費用がかかることを忘れず、総予算を確認しましょう。新築・中古のメリット・デメリットを比較し、自分の優先事項に合った選択をすることが重要です。
戸建て特有の注意点(土地の権利関係、境界確定、建ぺい率・容積率等)を確認し、住宅ローン控除等の税制優遇を活用して、無理のない返済計画を立てましょう。
信頼できる不動産会社や金融機関に相談しながら、人生で最も大きな買い物を成功させてください。
