「隣の土地は買ってはいけない」は本当か?
自宅の隣地が売りに出された際、「駐車場や庭を広げられる」と考える一方で、「隣の土地は買うな」という話を聞いて迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、隣地購入のリスクとメリット、購入前のチェックリストを、法務省・国土交通省の公式情報を元に解説します。
境界トラブル、税負担増、適正価格の判断など、見落としがちなリスクを理解し、後悔しない判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 「隣の土地は買ってはいけない」は一概に言えず、状況次第でメリット・デメリットが変わる
- 主なリスクは境界トラブル、高額取得、税負担増の3つ
- 主なメリットは敷地拡張、建築自由度向上、売却時訴求力の3つ
- 購入前に境界確定の有無、建ぺい率・容積率の変化、接道義務、合筆の要件、適正価格を確認
- リスクが大きい場合は専門家(土地家屋調査士、不動産鑑定士)への相談を推奨
隣の土地を購入する3つのリスク
隣地購入の主なリスクを3つ明示します。
境界トラブルを引き継ぐリスク
境界が未確定の土地を購入すると、隣地所有者との境界トラブルを引き継ぐことになります。
法務省によると、境界トラブルの解決には数ヶ月〜数年かかることもあります。
中古住宅のミカタでは、境界トラブルが近隣トラブルに発展し、刑事事件に至った実例も紹介されています。
境界確定とは: 隣地との境界を土地家屋調査士が測量し、境界標(杭・プレート)を設置して確定すること。官民境界(道路との境界)と民民境界(隣地との境界)があります。
購入前に境界確定書の存在を必ず確認しましょう。
市場価格より高額で購入するリスク
隣地は「増分価値」を上乗せして市場価格より高額取引されることが多いです。
増分価値: 隣地を購入することで生まれる追加的な価値。敷地が広がることで建築自由度が高まり、資産価値が上昇する効果。
しかし、増分価値を過大評価すると、購入後に資産価値が想定より上がらず損失を被るリスクがあります。
HOME4Uによると、不動産鑑定士に査定依頼(費用20-30万円程度)して妥当性を確認することを推奨しています。
固定資産税・都市計画税の負担増
敷地面積の増加に伴い、固定資産税・都市計画税が増額されます。
年間の税負担を事前に試算しておくことが重要です。市区町村の税務課で固定資産評価額を確認し、増加額を計算しましょう。
隣の土地を購入する3つのメリット
隣地購入のメリットを3つ提示します。
敷地拡張による利便性向上
駐車場や庭の拡張により、生活の利便性が向上します。
- 駐車スペースの確保
- 子供の遊び場やペットのスペース
- 家庭菜園やガーデニング
敷地が広がることで、住環境が大きく改善される可能性があります。
建築自由度の向上
敷地が広がることで建ぺい率・容積率の制限が緩和され、増築や建て替えの自由度が高まります。
例: 敷地面積が50㎡から100㎡に増えた場合
- 建ぺい率60%: 建築可能面積が30㎡から60㎡に増加
- 容積率200%: 延床面積が100㎡から200㎡に増加
将来の増築や建て替え時に選択肢が広がります。
将来の売却時の訴求力
将来の売却時に「広い敷地」として訴求力が高まり、買い手がつきやすくなる可能性があります。
ただし、リスクとのバランスを考慮した判断が必要です。増分価値を過大評価すると、売却時に想定価格で売れないリスクもあります。
購入前に確認すべき5つのチェックリスト
隣地購入前に確認すべき5項目をリスト化します。
1. 境界確定の有無
境界標の設置、境界確定書の存在を確認しましょう。官民境界と民民境界の両方を確認する必要があります。
国土交通省 関東地方整備局で道路との境界確定の手続きが確認できます。
境界が未確定の場合、土地家屋調査士に測量・境界確定を依頼(費用30-50万円程度)することで、リスクを大幅に軽減できます。売主と費用負担を交渉することも可能です。
2. 建ぺい率・容積率の変化
隣地購入により建ぺい率・容積率が変わり、当初想定していた建築プランが実現できないリスクを回避しましょう。
市区町村の建築指導課で確認し、建築士に相談することを推奨します。
3. 接道義務の確認
建築基準法43条により、建築物の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。
隣地購入により接道条件が変わる場合、建築確認が下りるか事前に確認しましょう。
4. 合筆の要件
複数の土地を1つにまとめる登記手続きを合筆と言います。
合筆の要件:
- 隣接していること
- 同一地目であること
- 同一所有者であること
- 抵当権等の権利が同一であること
購入前に法務局で登記簿を確認し、地目や抵当権の有無を確認すべきです。
5. 適正価格の見極め
増分価値を考慮しても、市場価格と比較して妥当かを判断しましょう。
不動産鑑定士に査定依頼(費用20-30万円程度)して妥当性を確認することを推奨します。
| 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 境界確定の有無 | 境界確定書の取得、土地家屋調査士への相談 |
| 建ぺい率・容積率 | 市区町村の建築指導課、建築士への相談 |
| 接道義務 | 建築基準法43条の確認、建築士への相談 |
| 合筆の要件 | 法務局で登記簿確認 |
| 適正価格 | 不動産鑑定士への査定依頼 |
専門家への相談が必要なケース
以下のケースでは専門家への相談が必要です。
境界が未確定の場合
土地家屋調査士に測量・境界確定を依頼(費用30-50万円程度)しましょう。
建ぺい率・容積率の変化や接道義務の確認が必要な場合
建築士に相談し、建築プランが実現可能か確認しましょう。
価格が妥当か判断できない場合
不動産鑑定士に評価依頼(費用20-30万円程度)しましょう。
専門家への相談費用を惜しむと、後に大きな損失を被るリスクがあります。
購入すべきケース・避けるべきケース
購入すべきケース
- 境界が確定している
- 適正価格で購入できる(増分価値を過大評価していない)
- 敷地拡張による具体的なメリットがある(駐車場、庭の拡張等)
- 建ぺい率・容積率の変化がプラスに働く
避けるべきケース
- 境界が未確定で、売主が境界確定に協力しない
- 市場価格より大幅に高額(増分価値を過大評価)
- 接道義務が変わり、建築確認が下りないリスクがある
- 合筆の要件を満たさない(地目が異なる、抵当権が残る等)
まとめ
「隣の土地は買ってはいけない」は一概に言えず、状況次第でメリット・デメリットが変わります。
購入前に境界確定の有無、建ぺい率・容積率の変化、接道義務、合筆の要件、適正価格を確認しましょう。リスクが大きい場合は専門家への相談を推奨します。
次のアクションとして、①境界確定書の取得、②土地家屋調査士への測量依頼、③不動産鑑定士への価格査定依頼を検討してください。
後悔しない判断のために、慎重に情報収集と専門家への相談を進めましょう。
