固定資産税の延滞金とは何か
固定資産税の納期限を過ぎてしまった場合、本税に加えて延滞金が発生します。延滞金とは、納期限の翌日から納付日までの日数に応じて加算される金額で、いわば「税金を遅れて払ったことに対するペナルティ」です。
「数日遅れただけだから大丈夫だろう」と思われがちですが、延滞金は納期限の翌日から発生し、長期間放置すると本税以上の金額になることもあります。
総務省によると、令和6年(2024年)分の延滞金の税率は以下の通りです。
- 納期限翌日〜1カ月以内: 年率2.4%
 - 納期限から1カ月経過後: 年率8.7%
 
税率は特例基準割合(市場金利に連動)により毎年変動するため、最新の税率は自治体の公式サイトで確認する必要があります。
この記事のポイント
- 延滞金は納期限の翌日から発生し、1カ月以内は年率2.4%、1カ月経過後は年率8.7%(令和6年分)と2段階で増加
 - 計算式は「税額 × 延滞金率 × 延滞日数 ÷ 365」で、1,000円未満は免除されるが長期滞納では数万円〜数十万円に
 - 督促状を無視すると差押え(預金・給与・不動産等)のリスクがあり、督促状送付から10日経過で法律上は差押え可能
 - 支払いが困難な場合は早期に自治体に相談し、分割納付や納税の猶予を申請すべき
 
延滞金の税率と計算方法
税率の2段階構造(1カ月以内・1カ月経過後)
延滞金の税率は、納期限からの経過期間により2段階に分かれています。
| 期間 | 税率(令和6年分) | 内訳 | 
|---|---|---|
| 納期限翌日〜1カ月以内 | 年率2.4% | 特例基準割合1.4% + 1% | 
| 納期限から1カ月経過後 | 年率8.7% | 特例基準割合1.4% + 7.3% | 
(出典: 総務省)
特例基準割合とは、市場金利に連動して毎年変動する基準で、令和6年分は1.4%です。この基準に1%または7.3%を加算した税率が適用されます。
重要なのは、1カ月を境に税率が約3.6倍に跳ね上がるという点です。1カ月以内に納付すれば延滞金を最小限に抑えられますが、それを過ぎると負担が急増します。
延滞金の計算式と具体例
延滞金の計算式は以下の通りです。
延滞金 = 税額 × 延滞金率 × 延滞日数 ÷ 365
具体例1: 固定資産税10万円を30日滞納(1カ月以内)
- 税額: 10万円
 - 延滞金率: 2.4%
 - 延滞日数: 30日
 - 延滞金 = 10万円 × 2.4% × 30日 ÷ 365 = 約197円
 
具体例2: 固定資産税10万円を60日滞納(1カ月超)
1カ月以内の期間(30日):
- 10万円 × 2.4% × 30日 ÷ 365 = 約197円
 
1カ月経過後の期間(30日):
- 10万円 × 8.7% × 30日 ÷ 365 = 約715円
 
延滞金合計: 約912円
具体例3: 固定資産税30万円を180日滞納(約6カ月)
1カ月以内の期間(30日):
- 30万円 × 2.4% × 30日 ÷ 365 = 約591円
 
1カ月経過後の期間(150日):
- 30万円 × 8.7% × 150日 ÷ 365 = 約10,726円
 
延滞金合計: 約11,317円
横浜市によると、延滞金が1,000円未満の場合は免除されます。つまり、具体例1と2は延滞金が免除されますが、具体例3のように長期滞納では1万円を超える延滞金が発生します。
1,000円未満は免除のルール
延滞金には1,000円未満は免除というルールがあります。
ただし、これは「最終的な延滞金額が1,000円未満の場合」に限られます。長期滞納では数万円〜数十万円の延滞金が発生する可能性があるため、「1,000円未満なら大丈夫」と過信してはいけません。
また、本税が1,000円未満の場合は延滞金が課されない自治体もあります。詳細は自治体の公式サイトで確認しましょう。
滞納後の流れと差押えのリスク
督促状の送付(納期限から20日以内)
固定資産税を納期限までに納付しなかった場合、自治体は納期限から20日以内に督促状を送付します。
神戸市FAQによると、督促状が届いた時点で速やかに納付すれば、延滞金は最小限に抑えられます。
督促状には以下の内容が記載されています。
- 未納の税額
 - 延滞金の額(発生している場合)
 - 納付期限(督促状の日付から10日程度)
 - 納付しない場合の財産調査・差押えの予告
 
督促状を無視すると、次の段階(催告書、財産調査)に進み、最終的には差押えに至るリスクがあります。
催告書と財産調査
督促状を無視して納付しない場合、催告書が送付されます。催告書は督促状よりも強い口調で納付を促す文書で、「このまま納付しない場合は財産調査を行い、差押えを実行する」という警告が記載されています。
この段階で自治体は財産調査を開始します。具体的には:
- 預金口座の照会(金融機関に対して残高照会)
 - 給与の照会(勤務先に対して給与額照会)
 - 不動産の登記情報確認
 - 生命保険の解約返戻金照会
 
などが行われます。これらの調査結果を基に、差押えの対象となる財産が特定されます。
差押えの対象財産(預金・給与・不動産等)
地方税法第368条により、督促状を送付してから10日を経過しても納付しない場合、自治体は法律上、財産を差し押さえることができます。
差押えの対象となる財産は以下の通りです。
| 財産の種類 | 差押えの内容 | 生活への影響 | 
|---|---|---|
| 預金 | 銀行口座の残高を全額差押え | 生活費・光熱費の引き落とし不能 | 
| 給与 | 手取りの最大25%を差押え | 毎月の収入が減少 | 
| 不動産 | 不動産を差押え、最終的に公売 | 自宅を失う可能性 | 
| 生命保険 | 解約返戻金を差押え | 保険が解約される | 
| 動産 | 自動車、貴金属等を差押え | 日常生活に支障 | 
(出典: アットホーム、住宅ローン滞納問題相談室)
特に預金の差押えは全額が対象となるため、生活費や他の支払いに充てる予定だった資金が一瞬で消えてしまいます。給与の差押えは手取りの最大25%ですが、毎月継続して差し押さえられるため、生活が困窮するリスクがあります。
最終的に起こること(公売)
差押えた財産の中でも、不動産が対象となった場合は公売に進みます。公売とは、差押えた不動産を強制的に売却する手続きで、競売と似た制度です。
公売では:
- 市場価格よりも安く売却されることが多い
 - 買い手が少なく、売却まで時間がかかる場合もある
 - 売却代金から滞納税と延滞金を回収し、残額があれば元の所有者に返還
 
自宅が公売にかけられると、住む場所を失うリスクがあります。固定資産税の滞納は、自己破産でも免除されない(非免責債権)ため、逃げ道がありません。早期に対処することが重要です。
支払いができない場合の対処法
自治体への早期相談が重要
固定資産税の支払いが困難な場合、最も重要なのは自治体に早期に相談することです。督促状が届く前、あるいは届いた直後に相談することで、以下のような対応が可能になる場合があります。
- 分割納付の許可
 - 納税の猶予
 - 減免措置の適用(災害・生活困窮等の場合)
 
MeetsMoreによると、自治体は納税者の個別事情を考慮して柔軟な対応をする場合があります。ただし、何も連絡せずに放置すると、差押えに直結するリスクが高まります。
相談する際は、以下の情報を準備しておくとスムーズです。
- 納税通知書または督促状
 - 収入・支出の状況を示す書類(給与明細、預金通帳等)
 - 支払いが困難な理由(失業、病気、災害等)
 
分割納付の申請方法
一括での納付が困難な場合、分割納付を申請できる場合があります。分割納付とは、滞納税を複数回に分けて納付する方法です。
申請手順:
- 自治体の税務課に電話または窓口で相談
 - 分割納付を希望する旨を伝える
 - 収入・支出の状況を説明
 - 分割納付計画書を提出(毎月〇万円ずつ納付する等)
 - 自治体が審査し、承認されれば分割納付が可能
 
分割納付が認められた場合でも、延滞金は発生し続ける点に注意が必要です。ただし、完済までの期間を短縮することで、延滞金の総額を抑えることができます。
納税の猶予制度
地方自治法に基づき、以下のような事情がある場合、納税の猶予が認められる可能性があります。
- 災害や盗難により財産に損害を受けた
 - 本人または生計を一にする親族が病気や負傷した
 - 事業を廃止または休止した
 - 事業に著しい損失を受けた
 
納税の猶予が認められると:
- 最長1年間、納税が猶予される
 - 猶予期間中の延滞金が軽減または免除される場合がある
 - 財産の差押えが猶予される
 
申請には、災害証明書や医師の診断書など、事情を証明する書類が必要です。詳細は自治体の税務課に問い合わせましょう。
減免措置の可能性
生活保護を受けている場合や、災害により不動産に被害を受けた場合など、特定の条件を満たすと固定資産税の減免が認められる場合があります。
減免が認められる主なケース:
- 生活保護を受けている
 - 災害(地震、火災、水害等)により不動産に損害を受けた
 - 公益のために使用する不動産(自治体により異なる)
 
減免の割合は自治体により異なりますが、災害の場合は損害の程度に応じて10%〜100%の減免が認められることがあります。
申請期限は納期限前または災害発生後一定期間内と定められている場合が多いため、該当する場合は早めに自治体に相談しましょう。
まとめ:延滞金を最小限に抑え、早期の対応を
固定資産税の延滞金は、納期限の翌日から発生し、1カ月以内は年率2.4%、1カ月経過後は年率8.7%(令和6年分)と2段階で増加します。計算式は「税額 × 延滞金率 × 延滞日数 ÷ 365」で、1,000円未満は免除されますが、長期滞納では数万円〜数十万円の負担となります。
督促状を無視すると、催告書→財産調査→差押え(預金・給与・不動産等)と進み、最終的には公売により自宅を失うリスクもあります。固定資産税の滞納は自己破産でも免除されないため、逃げ道がありません。
支払いが困難な場合は、督促状が届く前、または届いた直後に自治体の税務課に相談しましょう。分割納付や納税の猶予が認められる可能性があります。早期の対応が、延滞金を最小限に抑え、財産を守る唯一の方法です。
「少し遅れても大丈夫」と軽く考えず、納期限を守ることを最優先にしましょう。
