変動金利型住宅ローンの金利見直しの仕組みと注意点

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/22

変動金利型住宅ローンの金利見直しが重要な理由(2024年の利上げ環境)

住宅ローンの変動金利は、市場の金利動向に応じて定期的に見直される仕組みです。2024年以降、日本銀行のマイナス金利解除や利上げにより、変動金利型住宅ローンの金利見直しがこれまで以上に注目されています。

この記事では、変動金利の金利見直しの頻度、返済額への影響、5年ルール・125%ルール、固定金利との比較を住宅金融支援機構全国銀行協会の公式情報を元に解説します。

変動金利を利用中の方も、これから借入を検討する方も、金利上昇に備えた返済計画を立てられるようになります。

この記事のポイント

  • 変動金利の金利見直しは年2回(4月と10月)が一般的だが、返済額変更は5年ルールで緩和される
  • 5年ルール・125%ルールは元利均等返済のみ適用され、金融機関により採用状況が異なる
  • 2024年3月のマイナス金利解除以降、大手5行が変動金利を0.15%〜0.35%利上げ
  • 未払利息が発生すると元金返済が行われず、ローン残高が減らないリスクがある
  • 変動金利から固定金利への切り替えは、固定金利が低いうちに検討することが重要

(1) 2024年3月のマイナス金利解除と2025年1月までの2回の追加利上げ

日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後2024年7月と2025年1月に追加利上げを実施しました。2025年4月時点で政策金利は0.5%となっています。

マイナス金利政策は2016年から2024年3月まで続いていましたが、解除後は金利上昇の局面に入りました。変動金利型住宅ローンは短期プライムレートに連動するため、この政策金利の変化が返済額に影響を与える可能性があります。

(2) 2024年10月からの大手5行による変動金利利上げ(0.15%)

2024年10月から大手5行が既契約の変動金利を0.15%利上げし、2025年4月には0.15%〜0.35%の上昇となりました。これは日銀の利上げを受けた動きで、今後も上昇傾向が続く可能性があります。

変動金利を利用している方は、金融機関から送られる金利見直しの通知を確認し、返済額への影響を把握することが重要です。

変動金利の金利見直しの仕組み:頻度とタイミング

変動金利型住宅ローンの金利見直しは、一般的に年2回(4月と10月)行われます。ただし、金融機関により見直しの頻度やルールが異なるため、契約内容を必ず確認してください。

(1) 半年ごとの金利見直し(4月と10月が一般的)

変動金利(半年型)は、半年に一度、適用金利の見直しが行われます。4月と10月の年2回が見直しタイミングとなるのが一般的です。

金利が見直されても、5年ルール(後述)が適用される場合は、すぐには返済額が変わりません。金利見直しと返済額変更のタイミングは異なる点に注意が必要です。

(2) 短期プライムレート連動の仕組み

変動金利型住宅ローンは、短期プライムレート(金融機関が優良企業向けに貸し出す際の最優遇金利)に連動します。短期プライムレートは日銀の政策金利の影響を受けるため、日銀の利上げ・利下げが変動金利に反映されます。

2024年以降、日銀が利上げを実施したことで、短期プライムレートも上昇し、変動金利型住宅ローンの金利も上昇傾向にあります。

(3) 金融機関により異なる見直しルール

5年ルール・125%ルールを採用していない金融機関もあります。例えば、SBI新生銀行は5年ルール・125%ルールを採用していないため、金利上昇時には即座に返済額が増加します。

契約時にどのようなルールが適用されるのかを確認し、金利上昇に備えた返済計画を立てることが重要です。

5年ルールと125%ルール:返済額変更を緩やかにする措置

5年ルールと125%ルールは、変動金利型住宅ローンで金利上昇時の返済額変更を緩やかにするための措置です。ただし、元利均等返済のみ適用され、元金均等返済では適用されません。

(1) 5年ルール:金利上昇でも5年間は返済額が変わらない

5年ルールとは、金利が上昇しても5年間は毎月の返済額が変わらない仕組みです。返済額が変更されるのは5年ごとのタイミングとなります。

金利見直しは半年ごとに行われますが、5年ルールが適用される場合、返済額は5年間固定されます。この間、金利が上昇しても毎月の返済額は変わりませんが、返済額に占める利息の割合が増え、元金返済が減ることになります。

(2) 125%ルール:返済額増加は従前の125%まで

125%ルールとは、5年経過後に返済額が変更される際、従前の返済額の125%までしか上がらない上限ルールです。

例えば、従前の返済額が月10万円だった場合、次回の変更時には最大12.5万円までしか上がりません。これにより、急激な返済額増加を防ぐことができます。

ただし、金利上昇が大きい場合、返済額が利息だけで埋まり、元金返済が行われない「未払利息」が発生する可能性があります(後述)。

(3) 元利均等返済と元金均等返済の違い(5年ルール等は元利均等のみ適用)

元利均等返済は、毎月の返済額(元金+利息)が一定になる返済方式です。5年ルール・125%ルールはこの返済方式にのみ適用されます。

元金均等返済は、毎月の元金返済額が一定で、利息が減るため総返済額が少なくなる返済方式です。5年ルール・125%ルールは適用されないため、金利上昇時には即座に返済額が増加します。

返済方式により適用されるルールが異なるため、契約時に確認することが重要です。

金利上昇が返済額に与える影響と未払利息のリスク

金利上昇により、返済額が増加したり、未払利息が発生したりするリスクがあります。5年ルール・125%ルールが適用されている場合でも、未払利息が発生する可能性があることを理解しておく必要があります。

(1) 未払利息の発生メカニズム(返済額が利息だけで埋まるケース)

未払利息とは、金利上昇により毎月の返済額が利息だけで埋まり、元金返済が行われない状態で発生する利息です。

5年ルールが適用されている場合、金利が上昇しても5年間は返済額が変わらないため、返済額に占める利息の割合が増えます。金利上昇が大きい場合、返済額全額が利息に充当され、元金返済が全く行われない状態になります。

この状態が続くと、未払利息が累積し、最終的に一括返済を求められる可能性があります。

(2) 金利1%・2%上昇時の返済額シミュレーション

金利上昇時の返済額への影響を把握するため、返済シミュレーションを事前に確認しておくことが重要です。

例えば、借入額3,000万円、返済期間35年、金利0.5%の場合、毎月の返済額は約7.7万円です。金利が1%上昇して1.5%になると、毎月の返済額は約9.2万円に増加します。金利が2%上昇して2.5%になると、毎月の返済額は約10.7万円に増加します。

金利上昇に備えて、家計に余裕を持たせるか、返済期間を短く設定することが重要です。

(3) 5年ルール・125%ルール非採用の金融機関の即時返済額増加リスク

5年ルール・125%ルールを採用していない金融機関では、金利上昇時に即座に返済額が増加します。

例えば、SBI新生銀行は5年ルール・125%ルールを採用していないため、金利見直しのたびに返済額が変更される可能性があります。

契約内容を確認し、金利上昇時の返済額増加に備えた資金計画を立てることが重要です。

変動金利と固定金利の比較:切り替えタイミングと選び方

変動金利と固定金利にはそれぞれメリット・デメリットがあります。金利上昇局面では、変動金利から固定金利への切り替えも検討すべきタイミングです。

(1) 変動金利と固定金利のメリット・デメリット

変動金利のメリット:

  • 借入時の金利が固定金利より低い
  • 金利が低いまま推移すれば総返済額を抑えられる

変動金利のデメリット:

  • 金利上昇により返済額が増加するリスクがある
  • 未払利息が発生する可能性がある

固定金利のメリット:

  • 返済期間中の金利が固定されるため返済計画が立てやすい
  • 金利上昇リスクを回避できる

固定金利のデメリット:

  • 借入時の金利が変動金利より高い
  • 金利が低いまま推移した場合、変動金利より総返済額が多くなる

(2) 変動金利から固定金利への切り替えタイミング(固定金利が低いうちに検討)

変動金利から固定金利への切り替えは、変動金利が上がってからでは遅く、固定金利が低いうちに検討することが重要です。

固定金利は変動金利より先に上昇する傾向があります。これは、固定金利が長期国債の利回りに連動するためです。日本銀行が2024年7月に長期国債買い入れを毎月4,000億円ずつ減額する計画を発表したことで、長期金利が上昇し、固定金利も上昇しています。

今後の金利上昇が懸念される場合は、早めに固定金利への切り替えを検討することが推奨されます。

(3) リスク許容度に応じた金利タイプの選び方

金利タイプの選択は、個々の経済状況・リスク許容度により異なります。

住宅金融支援機構は、以下のような選び方を推奨しています。

  • 変動金利に適した人: 金利上昇に備えた家計の余裕がある、返済期間が短い、金利上昇時に繰り上げ返済できる
  • 固定金利に適した人: 返済額を固定して計画的に返済したい、金利上昇リスクを避けたい、返済期間が長い

ファイナンシャルプランナーや金融機関に相談し、自分に合った金利タイプを選ぶことが重要です。

まとめ:変動金利型住宅ローンで金利上昇に備えるための次のステップ

変動金利型住宅ローンの金利見直しは年2回(4月と10月)が一般的ですが、5年ルールが適用される場合は5年間返済額が変わりません。ただし、金利上昇により未払利息が発生するリスクがあるため、事前に返済シミュレーションを確認しておくことが重要です。

2024年以降、日銀のマイナス金利解除や利上げにより、変動金利は上昇傾向にあります。変動金利から固定金利への切り替えは、固定金利が低いうちに検討することが推奨されます。

金融機関やファイナンシャルプランナーに相談しながら、金利上昇に備えた返済計画を立てましょう。

よくある質問

Q1変動金利の金利見直しは年に何回ありますか?

A1年2回(4月と10月)が一般的です。ただし、金融機関により異なる場合があります。金利が見直されても、5年ルール適用の場合は5年間返済額が変わりません。契約内容を必ず確認してください。5年ルール・125%ルールを採用していない金融機関では、金利上昇時に即座に返済額が増加する可能性があります。

Q25年ルールと125%ルールとは何ですか?

A25年ルールは金利上昇でも5年間は返済額が変わらない仕組み、125%ルールは返済額増加が従前の125%までに制限される措置です。元利均等返済のみ適用され、元金均等返済では適用されません。金融機関により採用状況が異なるため、契約内容の確認が重要です。5年間返済額が固定されても、金利上昇により返済額に占める利息の割合が増え、元金返済が減ることになります。

Q3未払利息とは何ですか?どんなリスクがありますか?

A3金利上昇により毎月の返済額が利息だけで埋まり、元金返済が行われない状態で発生する利息です。未払利息が発生すると元金返済が全く行われず、ローン残高が減らない状態になります。最終的に一括返済を求められる可能性があるため、金利上昇時は家計に余裕を持たせることが重要です。返済シミュレーションで金利が1%、2%上昇した場合の返済額を事前に確認しておくことを推奨します。

Q4変動金利から固定金利に切り替えるタイミングはいつですか?

A4変動金利が上がってからでは遅く、固定金利が低いうちに検討することが重要です。固定金利は変動金利より先に上昇する傾向があるため、今後の金利上昇が懸念される場合は早めの検討が推奨されます。2024年以降、日銀の利上げにより変動金利・固定金利ともに上昇傾向にあります。ファイナンシャルプランナーへの相談も有効です。

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Room Match編集部

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