個人事業主が住宅ローンに通らない理由と対策|審査のポイント解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/20

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個人事業主の住宅ローン審査の現状

個人事業主やフリーランスの方が住宅購入を検討する際、「住宅ローンに通らないのではないか」「審査が厳しいと聞いた」と不安を感じる方は多いのではないでしょうか。

結論から言うと、個人事業主でも住宅ローンは組めます。国土交通省の調査では、977の金融機関のうち「自営業者対象外」はわずか10機関のみです。ただし、会社員と比べて審査基準が厳しく、通らない原因を理解し、対策を講じる必要があります。この記事では、個人事業主が住宅ローン審査に通らない理由、審査基準、通過するための具体的な対策を、フラット35や大手銀行の公式情報をもとに解説します。

個人事業主の方が、審査のポイント・通らない原因・有利な金融機関選びを具体的に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 個人事業主でも住宅ローンは組めるが、会社員より審査が厳しい
  • 審査は「年収」ではなく「所得(収入-経費)」で判定され、節税しすぎると借入額が減る
  • 3期連続黒字、税金・保険料の滞納なし、事業年数3年以上が一般的な条件
  • フラット35は個人事業主に有利(決算書不要、確定申告書2期分でOK、事業年数指定なし)
  • 自己資金(頭金)を多く用意し、複数社(5社以上推奨)に申請することが重要

個人事業主が審査で不利になる理由

(1) 収入の不安定性(景気変動・季節変動)

個人事業主の収入は、景気変動や季節変動の影響を受けやすく、会社員のように毎月安定した給与が保証されていません。金融機関は、長期にわたる返済能力を重視するため、収入の不安定性がマイナス評価につながります。

(2) 審査は「年収」ではなく「所得」で判定される

個人事業主の審査では、「年収」ではなく「所得(収入-経費)」が基準となります。経費控除後の実質的な返済能力を見るためです。

節税のために経費を多く計上し、所得を低く申告していると、借入可能額が大幅に減少する点に注意が必要です。

(3) 必要書類が多く複雑(確定申告書3期分、納税証明書等)

会社員は源泉徴収票1枚で所得証明できますが、個人事業主は以下の書類が必要です。

  • 確定申告書: 通常2〜3期分
  • 納税証明書: 税務署発行、税金の納付状況を証明
  • 事業計画書: 一部金融機関で必要

書類の準備に手間がかかり、不備があると審査が進まない場合があります。

(4) 事業の継続性が重視される

金融機関は、事業が将来にわたって継続できるかを重視します。一般的に事業年数3年以上が求められ、開業から間もない場合は審査に通りにくくなります。

審査に落ちる主な原因

(1) 3期のうち1期でも赤字決算がある

多くの金融機関では、直近3期連続で黒字決算を求めます。3期のうち1期でも赤字があると、審査に落ちる可能性が高くなります。

赤字決算は「事業が不安定」「返済能力に不安」と判断されるためです。

(2) 税金・社会保険料の滞納

税金(所得税、住民税、事業税)や社会保険料の滞納は、審査落ちの大きな原因です。少額でも未払いがあると審査で不利になります。

完済してから申込を行う必要があります。

(3) 節税しすぎて所得が低い

節税のために経費を多く計上し、所得を低く抑えていると、住宅ローンの借入可能額が想定より大幅に少なくなります。

例えば、年収600万円でも経費300万円を計上すると、所得は300万円となり、借入可能額は所得ベースで計算されます。

(4) 事業年数が短い(3年未満)

一般的に、事業年数3年以上が求められます。開業から3年未満の場合、事業の継続性が不透明と判断され、審査に通りにくくなります。

(5) 自己資金(頭金)が不足している

自己資金(頭金)が少ないと、借入額が増え、返済負担率が高くなります。返済負担率が30%を超えると審査に通りにくくなります。

理想的には、返済負担率20〜25%以下に抑えることが推奨されます。

審査落ちの原因 影響度 対策
3期のうち1期でも赤字 黒字決算を3期連続で維持
税金・保険料の滞納 完済してから申込
所得が低い(節税しすぎ) 中〜高 所得と借入額のバランスを考える
事業年数3年未満 フラット35を検討(年数指定なし)
自己資金不足 頭金を多く用意(返済負担率20〜25%以下)

審査に通るための具体的な対策

(1) 所得を安定させる(3期連続黒字が理想)

直近3期連続で黒字決算を維持することが重要です。赤字決算がある場合は、黒字化してから住宅ローンを申し込むことをおすすめします。

所得が年ごとに大きく変動する場合は、金融機関に事業計画書を提出し、安定性をアピールすることも有効です。

(2) 節税と借入額のバランスを考える

節税と住宅ローンの借入額はトレードオフの関係です。住宅購入を検討している場合、数年間は経費計上を抑え、所得を高く保つことを検討してください。

例えば、住宅購入の3年前から所得を意図的に高めに申告し、審査に備える方法があります。

(3) 自己資金(頭金)を多く用意する(返済負担率20〜25%以下)

自己資金(頭金)を多く用意することで、借入額を抑え、返済負担率を下げることができます。返済負担率20〜25%以下が理想的です。

返済負担率 = 年間返済額 ÷ 所得 × 100

頭金を2〜3割用意することで、審査通過率が大幅に向上します。

(4) 税金・保険料の滞納を解消する

税金(所得税、住民税、事業税)や社会保険料の滞納がある場合、完済してから申込を行う必要があります。

納税証明書を提出する際に、滞納がないことを証明できるようにしてください。

(5) フラット35を検討する(決算書不要、事業年数指定なし)

フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する長期固定金利住宅ローンで、個人事業主に有利な条件が揃っています。

  • 決算書不要: 確定申告書2期分でOK
  • 事業年数指定なし: 開業から1〜2年でも申込可能
  • 所得証明が柔軟: 2期分の所得を平均して判定

フラット35の2025年5月時点の金利は年1.82%(融資率9割以下、21年以上、最頻金利)です。

個人事業主が審査に通りやすい金融機関の選び方

(1) フラット35(最も通りやすい)

フラット35は、個人事業主にとって最も通りやすい住宅ローンです。決算書不要、事業年数指定なし、確定申告書2期分でOKという点が大きなメリットです。

全期間固定金利のため、金利上昇リスクもありません。

(2) SBI新生銀行(業歴2年・所得300万円以上から)

SBI新生銀行は、業歴2年・所得300万円以上から申込可能で、多くの銀行が3年以上を要求する中、個人事業主に優しい条件を提示しています。

(3) auじぶん銀行、りそな銀行

auじぶん銀行、りそな銀行も、個人事業主向けの柔軟な審査を行っています。ネット銀行は対面相談がないため、書類の準備が重要です。

(4) メインバンクに相談するメリット

日頃から取引のあるメインバンクに相談することで、事業の実態を理解してもらいやすく、審査に通りやすくなる場合があります。

事業用口座の入出金履歴を把握しているため、所得の安定性を評価してもらいやすい点もメリットです。

(5) 複数社(5社以上推奨)に申請する

審査基準は金融機関により異なるため、複数社(5社以上推奨)に申請することが重要です。A社で落ちてもB社で通る可能性があります。

一度に複数社に申し込んでも、信用情報に大きな影響はありません(短期間の複数申込は住宅ローン申込と判断される)。

金融機関 事業年数 所得条件 必要書類 特徴
フラット35 指定なし - 確定申告書2期分 最も通りやすい、全期間固定金利
SBI新生銀行 2年以上 300万円以上 確定申告書2期分 業歴2年からOK
auじぶん銀行 3年以上 - 確定申告書3期分 ネット銀行、審査が柔軟
りそな銀行 3年以上 - 確定申告書3期分 地域密着、対面相談可
メインバンク 要相談 要相談 要相談 事業の実態を理解、審査に有利

(出典: 各金融機関公式サイト、2025年1月時点)

まとめ:個人事業主が住宅ローン審査を通過するために

個人事業主でも住宅ローンは組めますが、会社員と比べて審査が厳しく、3期連続黒字、税金・保険料の滞納なし、事業年数3年以上が一般的な条件です。審査は「年収」ではなく「所得(収入-経費)」で判定されるため、節税しすぎると借入可能額が大幅に減少します。

審査に通るための対策として、以下を実践してください。

  • 所得を安定させる: 3期連続黒字を維持
  • 節税と借入額のバランス: 住宅購入前は所得を高めに申告
  • 自己資金を多く用意: 頭金2〜3割、返済負担率20〜25%以下
  • 税金・保険料の滞納を解消: 完済してから申込
  • フラット35を検討: 決算書不要、事業年数指定なし、個人事業主に有利
  • 複数社に申請: 5社以上に申し込み、審査通過率を高める

フラット35は、個人事業主にとって最も通りやすい住宅ローンです。決算書不要、事業年数指定なし、確定申告書2期分でOKという点が大きなメリットです。

信頼できるファイナンシャルプランナーや金融機関に相談しながら、無理のない資金計画を立て、理想の住宅購入を実現してください。

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よくある質問

Q1個人事業主は何年分の所得が審査されますか?

A1一般的に3期連続黒字が求められます。直近3期分の確定申告書を提出し、所得の安定性を審査されます。フラット35は1〜2期分でOKで、事業年数の指定もないため個人事業主に有利です。2期分の所得を平均して判定するため、1期だけ所得が低くても審査に通る可能性があります。開業から間もない方はフラット35を検討することをおすすめします。

Q2審査に通りやすい銀行はどこですか?

A2フラット35が最も通りやすく、決算書不要、確定申告書2期分でOK、事業年数指定なしという条件が揃っています。次いでSBI新生銀行(業歴2年・所得300万円以上から)、auじぶん銀行、りそな銀行などがあります。メインバンクに相談するのも有効で、事業の実態を理解してもらいやすく、審査に通りやすくなる場合があります。複数社(5社以上推奨)に申請することが重要です。

Q3税金や保険料の滞納があると審査に通りませんか?

A3通りません。税金(所得税、住民税、事業税)や社会保険料の滞納は、審査落ちの大きな原因です。少額でも未払いがあると審査で不利になります。完済してから申込が必要です。納税証明書を提出する際に、滞納がないことを証明できるようにしてください。滞納がある場合は、分割納付でも良いので完済計画を立てることをおすすめします。

Q4年収ではなく所得で審査されるのはなぜですか?

A4経費控除後の実質的な返済能力を見るためです。個人事業主の「年収(売上)」は経費を差し引く前の金額で、実際に手元に残る金額とは異なります。節税のために経費を多く計上し、所得を低く申告していると、借入可能額が大幅に減少します。例えば、年収600万円でも経費300万円を計上すると、所得は300万円となり、借入可能額は所得ベースで計算されます。

Q5自宅兼事務所でも住宅ローンは利用できますか?

A5住宅部分が50%以上であれば利用可能です。ただし、住宅ローン控除は住宅部分のみ適用され、事業用部分は対象外となります。事業用部分の面積が50%以上だと住宅ローンが利用できないため、注意が必要です。自宅兼事務所の場合、金融機関に事前に相談し、住宅部分と事業用部分の面積比率を明確にすることをおすすめします。

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Room Match編集部

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