不動産売買仲介を利用する前に知っておくべきこと
不動産の売却や購入を検討する際、「仲介」という選択肢がありますが、仲介と買取の違いや仲介手数料の仕組みを正しく理解していないと、損をする可能性があります。
この記事では、不動産売買仲介の基本的な仕組み、仲介手数料の計算方法、売買の流れと期間、仲介と買取の違い、トラブル回避のポイントを、宅地建物取引業法や業界の実態に基づいて解説します。
不動産売買仲介の正しい知識を身につけることで、安心して不動産取引を進められるようになります。
この記事のポイント
- 不動産売買仲介は売主と買主の間を取り持ち、契約成立までサポートする業務
- 仲介手数料は成功報酬で、売買価格400万円超の物件は「(売買価格の3%+6万円)+消費税」が上限
- 査定から契約まで約3カ月、契約から引き渡しまで1〜2カ月が一般的(計4〜5カ月)
- 仲介は市場価格で売却できるが、買取は市場価格の60〜70%程度に下がる
- 囲い込み(物件情報を他社に公開しない)をする悪徳業者に要注意
不動産売買仲介の仕組みと役割
(1) 売買仲介と賃貸仲介の違い
不動産仲介には、大きく分けて「売買仲介」と「賃貸仲介」の2種類があります。
| 種類 | 内容 | 法律行為の複雑さ |
|---|---|---|
| 売買仲介 | 不動産の売買取引をサポート | 所有権移転・不動産登記が必要で複雑 |
| 賃貸仲介 | 賃貸契約をサポート | 売買仲介より業務内容がシンプル |
売買仲介は、所有権移転という法律行為を伴うため、不動産登記や法律知識が必要です。一方、賃貸仲介は売買仲介より業務内容がシンプルです。
(2) 宅地建物取引士の役割と必要性
不動産仲介業を営むには、宅地建物取引業の免許が必要です。さらに、契約前には宅地建物取引士が重要事項説明を行うことが法律で義務付けられています。
宅地建物取引士とは、不動産取引の専門家資格で、以下の業務を担います。
- 重要事項説明: 契約前に物件の重要な事項(登記内容、法令上の制限、設備の状況等)を説明
- 契約書面への記名・押印: 契約書や重要事項説明書に記名・押印
重要事項説明が不十分だと、後から物件の欠陥や周辺環境の問題が発覚してトラブルになる可能性があります。必ず内容を十分理解してから契約しましょう。
(3) 媒介契約の種類(一般・専任・専属専任)
不動産仲介を依頼する際は、媒介契約を結びます。媒介契約には以下の3種類があります。
| 種類 | 複数社への依頼 | 自己発見取引 | レインズ登録 | 報告義務 |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 可能 | 可能 | 任意 | なし |
| 専任媒介 | 不可(1社のみ) | 可能 | 義務(7日以内) | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介 | 不可(1社のみ) | 不可 | 義務(5日以内) | 1週間に1回以上 |
選び方のポイント:
- 複数社に依頼したい場合は「一般媒介」
- 1社に絞って手厚いサポートを受けたい場合は「専任媒介」または「専属専任媒介」
契約前に、契約条件や解除条件を十分確認することが重要です。
(4) レインズ(不動産流通機構)の仕組み
**レインズ(REINS)**とは、不動産流通機構が運営する不動産業者専用のコンピューターネットワークシステムです。
レインズを活用すれば、どの仲介会社でも全国の業者に物件情報を共有できるため、大手・地域密着型を問わず、幅広い買い手候補にアプローチできます。
不動産売買の流れと期間
(1) 査定(机上査定・訪問査定)
不動産売買の第一歩は査定です。査定には以下の2種類があります。
| 種類 | 内容 | 精度 |
|---|---|---|
| 机上査定 | 物件情報(立地・築年数・広さ等)から簡易的に価格を算出 | 低い |
| 訪問査定 | 不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、詳細に価格を算出 | 高い |
複数社に査定を依頼し、机上査定と訪問査定の両方を活用して適正価格を把握することをおすすめします。
(2) 媒介契約の締結
査定後、信頼できる不動産会社を選び、媒介契約を締結します。媒介契約の種類(一般・専任・専属専任)により制約が異なるため、契約前に十分確認しましょう。
(3) 販売活動とレインズ登録
媒介契約締結後、不動産会社は販売活動を開始します。
- レインズ登録: 専任・専属専任媒介の場合、7日以内(専属専任は5日以内)にレインズへの登録が義務付けられています
- 広告活動: 不動産ポータルサイト、チラシ、店頭掲示等で物件を宣伝
- 内覧対応: 購入希望者に物件を案内
(4) 売買契約から引き渡しまで(期間の目安)
売買契約が成立したら、以下の流れで引き渡しまで進みます。
- 売買契約締結: 契約書に署名・押印、手付金の授受
- 住宅ローン審査: 買主が住宅ローンを申し込み(通常1〜2週間)
- 決済・引き渡し: 残代金の支払い、所有権移転登記、鍵の引き渡し
期間の目安:
- 査定から契約まで: 約3カ月
- 契約から引き渡しまで: 1〜2カ月
- 合計: 4〜5カ月
仲介手数料の計算方法と支払いタイミング
(1) 売買仲介手数料の上限(400万円超の計算式)
売買仲介手数料は成功報酬であり、売買が成立しない場合は支払う必要がありません。
売買価格400万円超の物件の仲介手数料上限は、以下の計算式で算出されます。
仲介手数料 = (売買価格の3%+6万円)+消費税
計算例(売買価格3,000万円の場合):
仲介手数料 = (3,000万円 × 3% + 6万円)+ 消費税
= (90万円 + 6万円)× 1.1
= 105.6万円
これは法定上限額であり、これを超える請求は宅地建物取引業法違反です。
(2) 支払いタイミング(契約時・引き渡し時)
通常、仲介手数料は以下の2回に分けて支払います。
- 売買契約締結時: 仲介手数料の半額
- 物件引き渡し時: 仲介手数料の残り半額
(3) 値引き交渉の可能性
法定上限額を相場とする会社が多いですが、交渉次第で割引可能な場合もあります。ただし、値引きばかりを優先すると、サービスの質が低下するリスクもあるため、総合的に判断しましょう。
仲介と買取の違いとメリット・デメリット
(1) 価格差(買取は市場価格の60〜70%)
不動産を売却する方法には、「仲介」と「買取」の2種類があります。
| 方法 | 価格 | 売却期間 |
|---|---|---|
| 仲介 | 市場価格(適正価格) | 4〜5カ月 |
| 買取 | 市場価格の60〜70% | 数日〜1カ月 |
買取は早期売却できますが、価格が市場価格の60〜70%程度に下がります。市場価格で売りたいなら「仲介」、早期売却重視なら「買取」を選びましょう。
(2) 仲介のメリット・デメリット
メリット:
- 市場価格(適正価格)で売却できる
- 専門知識でトラブル回避
- レインズで全国の業者に物件情報を共有できる
デメリット:
- 仲介手数料が必要
- 売却まで4〜5カ月かかる
- 悪徳業者に出会う可能性(囲い込み等)
(3) 買取のメリット・デメリット
メリット:
- 早期売却できる(数日〜1カ月)
- 仲介手数料が不要
- 内覧対応が不要
デメリット:
- 価格が市場価格の60〜70%程度に下がる
(4) 囲い込み問題と対処法
囲い込みとは、仲介業者が物件情報を他社に公開せず、自社だけで売買を成立させようとする行為です。
囲い込みのリスク:
- 売却チャンスを逃す
- 売却期間が長くなる
- 価格を下げざるを得なくなる
対処法:
- 媒介契約後、レインズに登録されているか確認する
- 定期的な報告を受け、販売活動の進捗を確認する
- 不審な点があれば、他の不動産会社にセカンドオピニオンを求める
まとめ:自分に合った売買方法を選ぶために
不動産売買仲介は、売主と買主の間を取り持ち、契約成立までサポートする業務です。仲介手数料は法定上限があり、売買価格400万円超の物件は「(売買価格の3%+6万円)+消費税」が上限です。
仲介は市場価格で売却できますが、買取は市場価格の60〜70%程度に下がります。市場価格で売りたいなら仲介、早期売却重視なら買取を選びましょう。
囲い込みなどの悪徳業者に出会わないため、複数社に査定を依頼し、レインズ登録を確認し、定期的な報告を受けることが重要です。信頼できる不動産会社を選び、納得してから契約を進めてください。
