不動産投資のLTVとは|借入比率を示す重要な指標
不動産投資を検討する際、「LTV」という言葉を耳にすることがあります。
この記事では、不動産投資におけるLTVの基本概念、計算方法、適正水準を、みずほ総合研究所の実証分析や業界データを元に解説します。
住宅ローンや投資ローンを利用する際、LTVを正しく理解し、リスク管理に活用できるようになります。
この記事のポイント
- LTVは「Loan to Value」の略で、物件価格に対する借入額の割合を示す指標
- 計算式は「借入額÷物件価格×100」で、80%以下が理想的、70%以下がより安全
- 高LTVはレバレッジ効果が高いが、空室率上昇や金利上昇リスクへの柔軟性が低下
- 簿価LTVと時価LTVの2つの評価方法があり、時価LTVの方が実態を反映する
(1) LTVの定義|Loan to Value(ローン・トゥー・バリュー)の略
LTVは、「Loan to Value」の略で、不動産価値に対する借入額の割合を示す指標です。
日本語では「総資産有利子負債比率」とも呼ばれ、不動産投資における借入安全性を測る重要な指標です。
(2) LTVの役割|不動産投資における借入安全性の指標
LTVは、以下の目的で使用されます。
- 借入安全性の評価: 借入比率が高いほどリスクが高い
- 投資判断の基準: 適正なLTVを維持することで安全性を確保
- 金融機関の審査指標: 融資審査でLTVが評価される
(3) 総資産有利子負債比率としてのLTV|金融機関の融資審査でも使用される
野村證券によると、LTVは金融機関が融資審査の際に使用する正式な指標です。
LTVが低いほど担保余力が大きく、融資審査で有利になります。
LTVの基本概念|Loan to Valueと総資産有利子負債比率
LTVの基本的な考え方を整理しましょう。
(1) LTVの意味|物件価格に対する借入額の割合
LTVは、物件価格に対する借入額の割合を示します。
例えば、物件価格5000万円に対して借入額4000万円の場合、LTVは80%です。
(2) LTVが低い場合|自己資金比率が高く、安全性が高い
LTVが低い場合、以下の特徴があります。
- 自己資金(頭金)が多い: 借入比率が低い
- 安全性が高い: 市場変動や金利上昇への柔軟性がある
- 金利が低くなる: 融資審査で有利
(3) LTVが高い場合|レバレッジ効果が大きいが、リスクも高い
LTVが高い場合、以下の特徴があります。
- 自己資金が少なくて済む: 借入比率が高い
- レバレッジ効果が高い: 自己資金以上の投資が可能
- リスクが高い: 空室率上昇や金利上昇への柔軟性が低下
(4) 金融機関の視点|LTVが低いほど融資審査で有利
金融機関は、LTVを融資審査の重要な指標として使用します。
みずほ総合研究所の実証分析によると、LTV80%以下で融資審査が通りやすく、LTV90%を超えると追加担保や金利上乗せの可能性があります。
LTVの計算方法と具体例|簿価LTVと時価LTVの違い
LTVの計算方法を具体例で確認しましょう。
(1) 基本的な計算式|LTV = 借入額 ÷ 物件価格 × 100
計算式:
LTV = 借入額 ÷ 物件価格 × 100
例: 物件価格5000万円、借入額4000万円の場合
LTV = 4000万円 ÷ 5000万円 × 100 = 80%
(2) 簿価LTV|有利子負債額 ÷ 不動産簿価 × 100(帳簿上の価格を基準)
簿価LTVは、不動産の簿価(帳簿上の価格)を基準に計算します。
計算式:
簿価LTV = 有利子負債額 ÷ 不動産簿価 × 100
(3) 時価LTV|有利子負債額 ÷ 不動産時価 × 100(市場価格を基準、実態を反映)
時価LTVは、不動産の時価(市場価格)を基準に計算します。
HOME'Sによると、時価LTVの方が実態を正確に反映するため、投資判断では時価LTVを重視することが推奨されます。
計算式:
時価LTV = 有利子負債額 ÷ 不動産時価 × 100
(4) 具体的な計算例|物件価格5000万円、借入額4000万円の場合はLTV80%
例1: LTV80%の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 5000万円 |
| 借入額 | 4000万円 |
| 頭金(自己資金) | 1000万円 |
| LTV | 80% |
例2: LTV70%の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 5000万円 |
| 借入額 | 3500万円 |
| 頭金(自己資金) | 1500万円 |
| LTV | 70% |
適正LTVの目安|80%以下が理想、70%以下がより安全
適正なLTVの目安を確認しましょう。
(1) 一般的な目安|LTV80%以下(頭金20%以上)が理想的
OwnersBookによると、LTV80%以下(頭金20%以上)が理想的な水準です。
これにより、低金利のローンを組みやすくなります。
(2) より安全なLTV|70%以下に保つことで安全性が高まる
HOME'Sによると、購入当初より70%以下に保つことを目標にすると安全性が高まります。
(3) 金融機関の融資基準|LTV80%以下で審査が通りやすい、90%超で追加担保や金利上乗せの可能性
みずほ総合研究所の実証分析によると、以下の基準が一般的です。
| LTV | 融資審査 |
|---|---|
| 80%以下 | 審査が通りやすい、低金利 |
| 80-90% | 審査は可能だが条件が厳しくなる |
| 90%超 | 追加担保や金利上乗せの可能性 |
| 100%超 | 資産バブル期に発生、価格下落時に債務超過のリスク |
(4) LTVの定期確認|不動産価格の変動や借入返済により変化する指標を把握する
LTVは、不動産価格の変動や借入返済により変化します。
定期的にLTVを確認し、市場変動に対する投資の安全性を把握することが重要です。
リスク管理とLTV|高LTVと低LTVのメリット・デメリット
高LTVと低LTVのメリット・デメリットを比較しましょう。
(1) 低LTVのメリット|ローリスクローリターン、金利が低くなる、柔軟性が高い
低LTVのメリット:
- ローリスクローリターン: 安全性が高い
- 金利が低くなる: 融資審査で有利
- 柔軟性が高い: 空室率上昇や金利上昇への対応力がある
- 担保余力が大きい: 追加融資が受けやすい
(2) 低LTVのデメリット|自己資金が多く必要、レバレッジ効果が低い
低LTVのデメリット:
- 自己資金が多く必要: 頭金が多額になる
- レバレッジ効果が低い: 自己資金に対する収益率が低い
(3) 高LTVのメリット|ハイリスクハイリターン、レバレッジ効果が高い、自己資金が少なくて済む
高LTVのメリット:
- ハイリスクハイリターン: 収益率が高い可能性
- レバレッジ効果が高い: 自己資金以上の投資が可能
- 自己資金が少なくて済む: 初期投資を抑えられる
(4) 高LTVのデメリット|空室率上昇・金利上昇・物件価格下落への柔軟性が低下
高LTVのデメリット:
イー・トラストによると、以下のリスクがあります。
- 空室率上昇への柔軟性が低下: 賃料収入が減少すると資金繰りが悪化
- 金利上昇リスク: 変動金利の場合、返済額が増加
- 物件価格下落リスク: 担保価値が減少し、債務超過の可能性
- 追加融資が困難: 担保余力が少ない
(5) LTVテスト|不動産価格が下落した場合のシミュレーションで安全性を確認
LTVテストは、不動産価格が下落した場合を想定したシミュレーションです。
OwnersBookによると、例えば物件価格が20%下落した場合のLTVを計算し、安全性を確認します。
例: 物件価格5000万円、借入額4000万円、LTV80%の場合
- 価格下落前: LTV = 4000万円 ÷ 5000万円 × 100 = 80%
- 20%下落後: 物件価格 = 4000万円
- 価格下落後: LTV = 4000万円 ÷ 4000万円 × 100 = 100%
価格下落により、LTVが100%に上昇し、担保余力がゼロになります。
まとめ|LTVを活用した不動産投資のポイント
LTVは、不動産価値に対する借入額の割合を示す指標で、計算式は「借入額÷物件価格×100」です。一般的に80%以下が理想的で、70%以下に保つとより安全です。
高LTVはレバレッジ効果が高いためハイリスクハイリターンの投資になりますが、空室率上昇や金利上昇への柔軟性が低下します。
LTVを定期的に確認し、簿価LTVと時価LTVの両方を把握することで、市場変動に対する投資の安全性を管理できます。
不動産投資を検討する際は、ファイナンシャルプランナーや不動産投資アドバイザーに相談しながら、自分のリスク許容度に合ったLTVを選びましょう。
