不動産取引における囲い込みとは?問題点と対策方法

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/22

不動産取引における囲い込みとは何か

不動産売却を検討する際、「囲い込み」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

この記事では、囲い込みの定義、売主への影響、見分け方、2025年1月施行の規制強化、具体的な防止対策を解説します。

囲い込みは、売却活動の長期化や値下げ圧力を招き、数百万円の損失につながる可能性があります。売主として自衛方法を知っておくことが重要です。

この記事のポイント

  • 囲い込みとは、売却仲介を依頼された物件を故意に他社に紹介せず、自社のみで成約させようとする行為
  • 囲い込みされると、売却活動が長期化し、値下げ圧力が強まる(数百万円の損失の可能性)
  • レインズ登録証明書のURL・IDで、売主自身が物件のステータスを確認できる
  • 2025年1月から、レインズステータスの虚偽登録は指示処分・業務停止処分の対象に
  • 一般媒介契約で複数社に依頼、レインズ登録証明書の確認、定期報告の要求で囲い込みを防止できる

(1) 囲い込みの定義:物件情報を故意に他社に紹介しない行為

囲い込みとは、売却仲介を依頼された物件を故意に他社に紹介しない行為です。

具体的には、以下のような手口があります。

  • レインズ(REINS)に登録しない(専任媒介・専属専任媒介の場合は宅建業法違反)
  • レインズに登録はするが、他社から問い合わせがあっても「商談中」「図面作成中」と断る
  • レインズのステータスを「公開中」から「書面による購入申込あり」に虚偽変更し、他社を遠ざける

囲い込みを行う不動産会社の目的は、両手取引(売主と買主の両方から仲介手数料を受け取る)を実現し、手数料収入を倍増させることです。

(2) 両手取引と囲い込みの違い

両手取引とは、不動産会社が売主と買主の両方から仲介手数料を受け取る取引形態です。

両手取引自体は合法ですが、故意に他社に物件を紹介しないのが囲い込みです。

両手取引の手数料(例:物件価格3,000万円の場合):

  • 片手取引:売主から約105万円(3,000万円×3%+6万円+消費税)
  • 両手取引:売主から約105万円 + 買主から約105万円 = 約210万円

両手取引は手数料収入が倍増するため、不動産会社には囲い込みのインセンティブが働きやすくなります。

(3) 大手不動産会社の両手取引比率データ(40-50%超の企業が多数)

大手・中堅33社の両手取引比率データ(2025年版)によると、40%超の企業が15社あり、囲い込みのリスクは大手でも存在します。

主な企業の両手取引比率(2025年データ):

企業名 両手取引比率
フロンティアHD 72.79%
住友不動産ステップ 50.90%
三井不動産リアルティ 約40%

(出典: ダイヤモンド不動産研究所「大手不動産仲介は『囲い込み』が蔓延?!」2025年版)

一方で、SREリアルティなど、両手取引を行わない企業も存在します。

囲い込みの問題点と売主への影響

(1) 売却活動の長期化

囲い込みされると、売却活動が長期化します。

理由:

  • 他社の買主候補が紹介されないため、買い手の母数が減る
  • 自社の買主が見つかるまで売却できない

売却活動が長期化すると、以下のような悪影響があります。

  • 固定資産税・管理費の負担が続く
  • 市場価値の低下(売れ残り物件と見なされ、値下げ圧力が強まる)

(2) 値下げ圧力の増加(数百万円の損失の可能性)

囲い込みにより売却が長期化すると、不動産会社から値下げの提案を受けることが多くなります。

値下げの例(物件価格3,000万円の場合):

  • 1ヵ月後:「問い合わせがないので、2,900万円に値下げしませんか」(-100万円)
  • 2ヵ月後:「2,800万円にすれば売れると思います」(-200万円)
  • 3ヵ月後:「2,700万円でどうでしょうか」(-300万円)

囲い込みされると、数百万円の損失が発生する可能性があります。

(3) 適正価格での売却機会の喪失

囲い込みにより、他社の買主候補が紹介されないため、適正価格で購入を希望する買主との出会いを逃す可能性があります。

例えば、A社が3,000万円で購入したい買主を抱えていても、囲い込みされていると、その買主に物件が紹介されません。結果的に、値下げして2,700万円で売却することになり、300万円の機会損失が発生します。

囲い込みの見分け方と確認方法

(1) レインズ登録証明書のURL・IDで売主自身がステータス確認

専任媒介契約・専属専任媒介契約を結ぶと、不動産会社はレインズ(REINS)に物件を登録する義務があります(専任媒介:契約後7日以内、専属専任媒介:契約後5日以内)。

レインズ登録後、不動産会社はレインズ登録証明書を売主に交付します。この登録証明書には、URL・ID・パスワードが記載されており、売主自身が物件のステータスを確認できます。

確認方法

  1. レインズ登録証明書に記載されたURLにアクセス
  2. ID・パスワードを入力
  3. 物件のステータスを確認(「公開中」「書面による購入申込あり」「売主都合で一時紹介停止中」等)

ステータスが「公開中」以外になっている場合、囲い込みの可能性があります。

(2) 1ヵ月経っても問い合わせがない場合は要注意

専任媒介契約締結後1ヵ月経っても、他社からの問い合わせが全くない場合、囲い込みのサインです。

通常、人気エリアや適正価格の物件であれば、1-2週間で複数の問い合わせがあるはずです。1ヵ月経っても問い合わせがない場合、不動産会社に以下を確認しましょう。

  • 「レインズのステータスは『公開中』になっていますか?」
  • 「他社から問い合わせはありましたか?何件ありましたか?」

(3) 他の不動産会社を通じてレインズ登録状況を確認

囲い込みを確認する方法として、他の不動産会社を通じてレインズ登録状況を調べてもらう方法があります。

手順

  1. 知人や友人に頼んで、別の不動産会社に「この物件を見たい」と問い合わせてもらう
  2. その不動産会社がレインズで物件を検索し、ステータスを確認
  3. 「商談中」「図面作成中」と断られた場合、囲い込みの可能性が高い

この方法は、囲い込みの実態を直接確認できるため、有効な手段です。

(4) 「商談中」「図面作成中」という理由での断り文句に注意

他社から問い合わせがあっても、「商談中です」「図面作成中で紹介できません」と断るのは、囲い込みの典型的な手口です。

レインズのステータスが「公開中」であるにもかかわらず、このような理由で断られた場合、囲い込みの可能性が非常に高いです。

2025年1月施行の囲い込み規制強化

(1) レインズステータスを最新に保つことが義務化

2024年6月に宅建業法施行規則が改正され、2025年1月からレインズのステータスを最新に保つことが義務化されました。

主な改正内容

  • 物件のステータスが変わったら、速やかにレインズを更新する義務
  • 「書面による購入申込あり」に変更する場合、買付証明書等の根拠が必要
  • 虚偽のステータス登録は宅建業法違反

(2) 虚偽登録は指示処分・業務停止処分の対象

2025年1月から、レインズへの虚偽登録は指示処分・業務停止処分の対象になります。

罰則

  • 指示処分:是正指示が出され、従わない場合は業務停止
  • 業務停止処分:一定期間、不動産業を営めなくなる

ただし、専門家からは「罰則のみで実効性が限定的」との指摘もあり、今後の運用状況を注視する必要があります。

(3) 国土交通省の売主向けリーフレット(2024年12月24日公表)

国土交通省は、2024年12月24日に売主向けのリーフレットを作成し、レインズステータスの確認方法を周知しています。

リーフレットには、以下の内容が記載されています。

  • レインズ登録証明書の見方
  • ステータスの確認方法
  • 売主の権利と自衛方法

リーフレットは、国土交通省の公式サイトからダウンロードできます。

囲い込みを防ぐための具体的な対策

(1) 一般媒介契約で複数社に仲介を依頼する

一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる契約です。

一般媒介契約のメリット

  • 囲い込みされにくい(複数社が競争するため、囲い込みのインセンティブが働きにくい)
  • 複数社の販売力を活用できる
  • 売主の自由度が高い(いつでも契約解除可能)

一般媒介契約のデメリット

  • レインズ登録義務がない(不動産会社が任意で登録する場合もある)
  • 不動産会社の販売意欲が低くなる可能性(他社で成約されると手数料が得られないため)

一般媒介契約は、囲い込みを防ぐ有効な手段の一つです。

(2) レインズ登録証明書の確認を必ず行う

専任媒介契約・専属専任媒介契約を結んだ場合、レインズ登録証明書を必ず受け取り、URL・IDでステータスを確認しましょう。

確認のタイミング

  • 契約締結直後:登録証明書を受け取る
  • 1週間後:ステータスが「公開中」になっているか確認
  • 毎週:ステータスが不当に変更されていないか確認

定期的な確認により、囲い込みを早期に発見できます。

(3) 定期的な売却活動状況の報告を要求する

専任媒介契約・専属専任媒介契約では、不動産会社に定期的な売却活動状況の報告義務があります(専任媒介:2週間に1回以上、専属専任媒介:1週間に1回以上)。

報告内容の確認ポイント

  • 他社からの問い合わせ件数
  • 内覧件数
  • 広告掲載状況
  • レインズのステータス

報告が曖昧な場合、詳細を求めることで、囲い込みを抑止できます。

(4) 査定価格だけでなく売却実績・口コミも確認する

不動産会社を選ぶ際は、査定価格だけでなく、売却実績・サービス内容・口コミ評価などを総合的に比較しましょう。

チェックポイント

  • 過去の売却実績(成約件数、成約価格)
  • 両手取引比率(低いほど囲い込みのリスクが少ない)
  • 口コミ・評判(Googleマップ、不動産ポータルサイト等)
  • レインズへの登録状況報告の有無

査定価格が高くても、囲い込みで売却が長期化し、結果的に値下げされることがあります。信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。

(5) 両手取引比率が低い不動産会社の検討

両手取引比率が低い不動産会社は、囲い込みのリスクが少ない傾向があります。

両手取引を行わない企業の例

  • SREリアルティ(旧ソニー不動産)

両手取引を行わない企業は、売主の利益を最優先にした営業スタイルを取っているため、安心して依頼できます。

まとめ:売主が知っておくべき自衛方法

囲い込みは、売却活動の長期化や値下げ圧力を招き、数百万円の損失につながる可能性があります。2025年1月からレインズステータスの虚偽登録は指示処分・業務停止処分の対象になりましたが、専門家からは実効性が限定的との指摘もあります。

売主として、レインズ登録証明書のURL・IDでステータスを確認し、定期的な報告を要求することが重要です。

一般媒介契約で複数社に依頼する、査定価格だけでなく売却実績・口コミも確認する、両手取引比率が低い不動産会社を検討するなど、自衛方法を活用しながら、信頼できる不動産会社を選んでください。

よくある質問

Q1囲い込みは違法なのか?

A1囲い込み自体は違法ではありませんが、レインズへの虚偽登録や専任媒介でのREINS未登録は宅建業法違反です。2025年1月から虚偽登録は指示処分・業務停止処分の対象になります。ただし専門家からは「罰則のみで実効性が限定的」との指摘もあり、売主自身の自衛が重要です。

Q2囲い込みされているかどうかをどうやって確認できるか?

A2レインズ登録証明書に記載されたURL・IDで、売主自身が物件のステータスを確認できます。ステータスが「公開中」以外になっている場合、囲い込みの可能性があります。また、他の不動産会社を通じてレインズ登録状況を調べてもらう方法も有効です。1ヵ月経っても問い合わせがない場合は要注意です。

Q3大手不動産会社でも囲い込みは発生するのか?

A3大手でも両手取引比率が40-50%超の企業があり、囲い込みのリスクは存在します。例えば、住友不動産ステップ50.90%、フロンティアHD72.79%などのデータがあります(2025年データ)。大手だから安心とは限らないため、レインズ登録証明書の確認や定期報告の要求が重要です。

Q4囲い込みを防ぐには一般媒介と専任媒介どちらが良いか?

A4一般媒介契約は複数社に依頼できるため囲い込みされにくいメリットがあります。専任媒介でも2025年規制で保護が強化されましたが、レインズ登録証明書の確認と定期報告の要求が必須です。どちらを選ぶかは、物件のタイプや売却戦略により異なるため、複数社に相談して判断してください。

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Room Match編集部

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