不動産流通システムとは|REINS(レインズ)の役割と仕組み
不動産を売却・購入する際、「物件情報はどのように流通しているのか」「業者間でどのように共有されているのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産流通システムの中心となるREINS(レインズ)の仕組み、メリット・デメリット、囲い込み問題とその対策を、近畿レインズや国土交通省の公式情報を元に解説します。
売主・買主双方にとって、透明性の高い取引を実現するための知識を提供します。
この記事のポイント
- REINS(レインズ)は全国4つの指定流通機構が運営する不動産流通標準情報システム
- 専属専任媒介契約は5日以内、専任媒介契約は7日以内にレインズへの登録が義務付けられている
- 一般人でも「REINS Market Information」を使えば、過去の成約価格やエリア相場を検索できる
- 売却依頼主は登録証明書を使って「囲い込み」をチェックできる
(1) REINS(レインズ)とは|Real Estate Information Network Systemの略称
REINS(レインズ)は、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称です。近畿レインズによると、全国4つの指定流通機構が運営する、不動産会社間で物件情報を共有するネットワークシステムです。
宅地建物取引業法に基づき、国土交通大臣の指定を受けた公益法人が運営しており、不動産流通の透明性と円滑化を目的としています。
(2) レインズの役割|不動産会社間での物件情報の共有
レインズの主な役割は、不動産会社間での物件情報の共有です。売主が不動産会社に売却を依頼すると、その物件情報がレインズに登録され、全国の不動産会社が閲覧できるようになります。
これにより、多くの不動産会社に物件が見つけられやすくなり、買主とのマッチングが促進されます。
(3) 不動産流通の仕組み|売主→仲介会社→レインズ→買主の流れ
不動産流通の基本的な流れは以下の通りです。
- 売主が不動産会社に売却を依頼(媒介契約を締結)
- 不動産会社がレインズに物件情報を登録(専属専任・専任媒介の場合は義務)
- 全国の不動産会社がレインズで物件を検索
- 買主が物件を見つけて購入申込
- 売買契約→決済・引渡し
指定流通機構と4つのエリア|全国ネットワークの構築
(1) 指定流通機構とは|宅地建物取引業法に基づく公益法人
指定流通機構は、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣の指定を受けた公益法人です。国土交通省の公式サイトによれば、専属専任媒介契約・専任媒介契約の適正化と不動産流通の円滑化が主な目的です。
(2) 全国4つの指定流通機構|東日本・中部・近畿・西日本
全国には以下の4つの指定流通機構があり、それぞれのエリアでレインズを運営しています。
| 流通機構名 | 担当エリア |
|---|---|
| 東日本不動産流通機構 | 北海道、東北、関東 |
| 中部圏不動産流通機構 | 新潟、北陸、中部 |
| 近畿圏不動産流通機構 | 近畿 |
| 西日本不動産流通機構 | 中国、四国、九州、沖縄 |
(出典: 近畿レインズ)
(3) 国土交通大臣の指定|法的根拠と制度設計
各指定流通機構は、国土交通大臣の指定を受けており、法的根拠に基づいて運営されています。これにより、不動産流通の透明性と信頼性が担保されています。
媒介契約とレインズ登録義務|専属専任・専任・一般の違い
(1) 専属専任媒介契約|5日以内のレインズ登録義務、他社取引・自己発見取引不可
専属専任媒介契約は、1社のみに売却を依頼する契約です。以下の特徴があります。
- 5日以内のレインズ登録義務
- 他社での取引・自己発見取引は不可
- 1週間に1回以上の販売状況報告義務
(2) 専任媒介契約|7日以内のレインズ登録義務、自己発見取引可
専任媒介契約も1社のみに売却を依頼する契約ですが、専属専任媒介契約よりも自由度が高い契約です。
- 7日以内のレインズ登録義務
- 自己発見取引(自分で買主を見つける)は可能
- 2週間に1回以上の販売状況報告義務
(3) 一般媒介契約|レインズ登録義務なし、複数社に依頼可能
一般媒介契約は、複数社に売却を依頼できる契約です。
- レインズ登録義務なし(登録は任意)
- 複数社に依頼可能
- 販売状況報告義務なし
一般媒介契約は自由度が高い反面、レインズ登録義務がないため、物件の露出度が低くなる可能性があります。
レインズのメリット・デメリット|透明性と囲い込み問題
(1) メリット3点|多くの不動産会社に物件が見つけられやすい、適正価格の算出に役立つ、過去の取引事例を確認できる
レインズのメリットは以下の通りです。
- 多くの不動産会社に物件が見つけられやすい: 全国の不動産会社がレインズで物件を検索できるため、買主とのマッチングが促進されます。
- 適正価格の算出に役立つ: 過去の取引事例データから査定根拠を構築でき、適正価格の算出に役立ちます。
- 過去の取引事例を確認できる: 「REINS Market Information」を使えば、一般人でも過去の成約価格を確認できます。
(2) デメリット2点|囲い込み(他社への情報非公開)の可能性、一般人は直接アクセスできない
レインズのデメリットは以下の通りです。
- 囲い込みの可能性: レインズに登録されても、不動産会社が「囲い込み」(他社への情報非公開)を行う可能性があります。
- 一般人は直接アクセスできない: レインズは不動産会社専用システムで、一般人は直接アクセスできません(REINS Market Informationは例外)。
(3) 囲い込み問題|両手仲介を狙う不正行為と対策
囲い込みとは、不動産会社が売却物件を他社に紹介せず、自社で買主を見つけて両手仲介(売主・買主の両方から仲介手数料を受け取る)を狙う行為です。違法ではありませんが、倫理的に問題があります。
囲い込みの対策として、以下の方法があります。
- 登録証明書で確認: 売却依頼主は登録証明書を使って自分の物件情報を確認できます。
- 定期的な販売状況報告を求める: 専属専任・専任媒介契約では、定期的な販売状況報告が義務付けられています。
(4) 登録証明書での確認|売却依頼主が物件情報を確認する方法
売却依頼主は、不動産会社から発行される登録証明書を使って、自分の物件情報がレインズに正しく登録されているかを確認できます。この証明書には、登録番号や登録日が記載されており、不正な囲い込みをチェックする手段として有効です。
一般人が利用できるREINS Market Information|過去の成約価格検索
(1) REINS Market Informationとは|一般人向けの成約価格検索サイト
REINS Market Informationは、一般人でも利用できるレインズの成約価格検索サイトです。不動産会社専用のレインズとは異なり、過去の成約価格やエリア相場を検索できます。
(2) 利用方法|エリア・物件種別・築年数等で検索
REINS Market Informationでは、以下の条件で検索できます。
- エリア(都道府県・市区町村)
- 物件種別(マンション・戸建て・土地)
- 築年数
- 成約時期
(3) 活用方法|物件査定の参考資料として利用
REINS Market Informationは、物件査定の参考資料として活用できます。ただし、過去の取引事例は参考になりますが、市場環境や物件状態により実際の価格は変動するため、あくまで目安として利用することをおすすめします。
まとめ|不動産流通システムの活用法、適正価格の確認方法
(1) レインズの活用法|専属専任・専任媒介契約で露出度を高める
レインズを最大限に活用するには、専属専任媒介契約または専任媒介契約を選択することが重要です。これにより、レインズへの登録が義務付けられ、多くの不動産会社に物件が見つけられやすくなります。
(2) 適正価格の確認方法|REINS Market Information、複数社査定、専門家相談
適正価格を確認するには、以下の方法があります。
- REINS Market Informationで過去の成約価格を確認
- 複数社に査定を依頼して比較
- 宅建士・税理士・ファイナンシャルプランナーに相談
(3) 専門家への相談|宅建士・税理士・ファイナンシャルプランナーに相談を推奨
不動産売買の流れは複雑で、契約内容は個別に異なるため、専門家への相談を推奨します。信頼できる不動産会社や金融機関に相談しながら、無理のない取引計画を立てましょう。
