固定資産税の相場:みんないくら払っている?
不動産を所有していると、毎年固定資産税の納税通知書が届きます。「自分の固定資産税額は適正なのか」「他の人はいくら払っているのか」と疑問に思う方は少なくありません。
この記事では、固定資産税の相場と計算方法、物件種別(マンション・戸建て・土地)ごとの平均額、軽減措置の適用条件を、総務省や国土交通省の公式情報を元に解説します。
初めて不動産を購入する方でも、固定資産税の仕組みと適正な負担額を理解できるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税の平均額は、一戸建てが年間10万円〜15万円、マンションが年間8万円〜12万円
- 固定資産税の計算式は「固定資産税評価額 × 1.4%」が基本(市街化区域内では都市計画税0.3%も加算)
- 住宅用地の特例により、200㎡以下の土地は評価額が1/6に軽減される
- 新築住宅は3年間(マンション5年間)固定資産税が1/2に減額(2026年3月31日まで延長)
- 固定資産税評価額の誤りや軽減措置の適用漏れがないか、納税通知書で確認することが重要
(1) 一戸建て:年間10万円〜15万円が平均
一戸建ての固定資産税は、年間10万円〜15万円が平均的な相場です。
ただし、土地の所在地、建物の広さ、築年数により大きく変動するため、あくまで目安として考えてください。
一戸建ての固定資産税に影響する要因:
- 土地の所在地:都心部や人気エリアは評価額が高く、税額も高い
- 土地面積:土地が広いほど税額が高い(ただし住宅用地の特例で軽減)
- 建物の広さ:延床面積が広いほど評価額が高い
- 築年数:築年数が経過すると建物の評価額が下がり、税額も減少
(出典: オカネコマガジン「固定資産税はいくら?」)
(2) マンション:年間8万円〜12万円が平均
マンションの固定資産税は、年間8万円〜12万円が平均的な相場です。
一戸建てと比較すると、マンションの方が固定資産税が安い傾向があります。
(3) マンションが安い理由:土地面積の按分
マンションの固定資産税が一戸建てより安い理由は、土地面積が戸数で按分されるためです。
例(100戸のマンション、土地面積3,000㎡の場合):
- 1戸あたりの土地面積:3,000㎡ ÷ 100戸 = 30㎡
- 一戸建て(土地面積100㎡)と比較すると、マンションの方が土地の固定資産税評価額が低い
マンションは土地の固定資産税が安い分、建物の固定資産税は構造(鉄筋コンクリート等)により高くなる場合もありますが、総額では一戸建てより安い傾向があります。
(出典: オカネコマガジン「固定資産税はいくら?」)
固定資産税の計算方法と仕組み
固定資産税の計算方法を理解すると、自分の税額が適正かどうかを判断できるようになります。
(1) 基本計算式:固定資産税評価額 × 1.4%
固定資産税の基本計算式は以下の通りです。
固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4%
**1.4%**は標準税率で、総務省により定められています。市町村は条例で異なる税率を設定することもできますが、ほとんどの自治体が1.4%を採用しています。
(出典: 総務省「地方税制度|固定資産税」)
(2) 固定資産税評価額とは:3年に1度の評価替え
固定資産税評価額とは、固定資産税の課税標準となる価格です。
固定資産税評価額は、3年に1度見直されます(評価替え)。令和6年度(2024年度)が基準年度、令和7年度(2025年度)は据置年度にあたり、特別な事情がない限り2024年度の評価額を据え置きます。
固定資産税評価額の決まり方:
- 土地:公示価格の約70%を目安に算定
- 建物:再建築価格(同じ建物を新築する場合の費用)に経年減点補正率を乗じて算定
築年数が経過すると建物の評価額が下がり、税額も減少します。
(3) 課税標準額と軽減措置の適用
実際の固定資産税は、固定資産税評価額ではなく、課税標準額を基準に計算されます。
課税標準額は、軽減措置により評価額より低くなる場合があります。
主な軽減措置:
- 住宅用地の特例:200㎡以下の土地は評価額が1/6に、200㎡超は1/3に軽減
- 新築住宅の減税:一般住宅で3年間、マンション5年間、固定資産税が1/2に減額
詳細は後述します。
(4) 都市計画税の加算(市街化区域内のみ)
市街化区域内の土地・建物には、固定資産税に加えて都市計画税が課税されます。
都市計画税 = 固定資産税評価額 × 0.3%(上限)
都市計画税とは、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるための地方税です。市町村により税率が異なりますが、0.3%が上限です。
(出典: 東京都主税局「固定資産税・都市計画税」)
固定資産税と都市計画税を合計すると、実際の税負担は評価額の約1.7%になります。
物件別の平均額と相場データ
物件種別・築年数ごとの固定資産税の計算例を紹介します。
(1) 新築一戸建ての固定資産税:計算例
条件:
- 土地面積:100㎡
- 建物延床面積:100㎡
- 土地の固定資産税評価額:2,000万円
- 建物の固定資産税評価額:1,000万円
- 市街化区域内(都市計画税あり)
計算:
住宅用地の特例適用後の土地の課税標準額:
- 200㎡以下のため、評価額 × 1/6
- 2,000万円 × 1/6 = 約333万円
新築住宅の減税適用後の建物の課税標準額:
- 3年間は評価額 × 1/2
- 1,000万円 × 1/2 = 500万円
固定資産税:
- 土地:333万円 × 1.4% = 約4.7万円
- 建物:500万円 × 1.4% = 約7万円
- 合計:約11.7万円
都市計画税:
- 土地:333万円 × 0.3% = 約1万円
- 建物:1,000万円 × 0.3% = 約3万円
- 合計:約4万円
年間合計:約15.7万円(1年目〜3年目)
4年目以降は新築住宅の減税が終了し、建物の固定資産税が約7万円増加します。
(出典: SUUMO「家を買うと固定資産税はいくらかかる?」)
(2) 中古一戸建ての固定資産税:築年数による変動
築年数が経過すると、建物の固定資産税評価額が下がります。
築年数による建物評価額の目安:
| 築年数 | 評価額(新築時を100%とした場合) |
|---|---|
| 新築 | 100% |
| 5年 | 約80% |
| 10年 | 約60% |
| 15年 | 約40% |
| 20年以上 | 約20%(下限) |
築20年の一戸建ては、建物の評価額が新築時の約20%まで下がるため、固定資産税も大幅に減少します。
(3) 新築マンションの固定資産税:計算例
条件:
- 土地面積(1戸あたり):30㎡
- 専有面積:70㎡
- 土地の固定資産税評価額:600万円
- 建物の固定資産税評価額:800万円
- 市街化区域内(都市計画税あり)
計算:
住宅用地の特例適用後の土地の課税標準額:
- 200㎡以下のため、評価額 × 1/6
- 600万円 × 1/6 = 100万円
新築住宅の減税適用後の建物の課税標準額:
- マンションは5年間、評価額 × 1/2
- 800万円 × 1/2 = 400万円
固定資産税:
- 土地:100万円 × 1.4% = 約1.4万円
- 建物:400万円 × 1.4% = 約5.6万円
- 合計:約7万円
都市計画税:
- 土地:100万円 × 0.3% = 約0.3万円
- 建物:800万円 × 0.3% = 約2.4万円
- 合計:約2.7万円
年間合計:約9.7万円(1年目〜5年目)
6年目以降は新築住宅の減税が終了し、建物の固定資産税が約5.6万円増加します。
(出典: SUUMO「家を買うと固定資産税はいくらかかる?」)
(4) 中古マンションの固定資産税:評価額の減少
中古マンションも、築年数が経過すると建物の評価額が下がります。
築20年以上のマンションは、建物の評価額が新築時の約20%まで下がるため、固定資産税が大幅に減少します。
(5) 土地のみの場合の固定資産税
土地のみを所有している場合(更地)、住宅用地の特例が適用されないため、固定資産税が高額になります。
例(土地面積100㎡、評価額2,000万円、市街化区域内):
- 固定資産税:2,000万円 × 1.4% = 28万円
- 都市計画税:2,000万円 × 0.3% = 6万円
- 年間合計:34万円
住宅を建てている場合と比較すると、約6倍の税額になります。
固定資産税の軽減措置と適用条件(2024-2025年)
固定資産税の負担を軽減する制度があります。
(1) 住宅用地の特例:200㎡以下で評価額1/6に
住宅用地の特例とは、住宅が建っている土地の固定資産税評価額を軽減する制度です。
軽減率:
| 土地区分 | 固定資産税の評価額 | 都市計画税の評価額 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下) | 1/6に軽減 | 1/3に軽減 |
| 一般住宅用地(200㎡超) | 1/3に軽減 | 2/3に軽減 |
200㎡以下の土地は、固定資産税評価額が1/6に軽減されます。これにより、税負担が大幅に減少します。
(出典: 東京都主税局「固定資産税・都市計画税」)
(2) 新築住宅の減税:3年間(マンション5年間)1/2に(2026年3月31日まで延長)
新築住宅は、一定期間、固定資産税が1/2に減額されます。
適用条件:
- 2026年3月31日までに新築された住宅
- 床面積が50㎡以上280㎡以下
減税期間:
| 住宅の種類 | 減税期間 |
|---|---|
| 一般住宅(戸建て) | 新築後3年間 |
| 一般住宅(マンション) | 新築後5年間 |
| 認定長期優良住宅(戸建て) | 新築後5年間 |
| 認定長期優良住宅(マンション) | 新築後7年間 |
2024年度税制改正により、新築住宅の軽減措置が2026年3月31日まで2年間延長されました。
(出典: 長谷工の住まい「【2024年最新】固定資産税の軽減措置を知っておこう!」)
(3) 認定長期優良住宅の減税:5年間(マンション7年間)1/2に
認定長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅として認定されたものです。
認定長期優良住宅は、一般住宅より長期間(戸建て5年間、マンション7年間)固定資産税が1/2に減額されます。
(4) バリアフリー改修・耐震改修の減税
一定のバリアフリー改修工事や耐震改修工事を行った住宅は、翌年度の固定資産税が減額されます。
バリアフリー改修の減税:
- 適用条件:65歳以上の方、要介護・要支援認定者、障害者が居住する住宅で、一定のバリアフリー改修工事(50万円超)を実施
- 減額率:翌年度の固定資産税(100㎡相当分まで)を1/3減額
耐震改修の減税:
- 適用条件:昭和57年1月1日以前に建てられた住宅を耐震改修
- 減額率:翌年度の固定資産税(120㎡相当分まで)を1/2減額
(出典: ネイチャーグループ「固定資産税を節税したい!5つの方法」)
注意:
- バリアフリー改修・耐震改修の減税には、申告が必要です
- 申告期限は工事完了後3ヶ月以内(または翌年1月31日)です
(5) 管理計画認定マンションの特例(2025年度延長)
2025年度税制改正により、管理計画認定マンションで長寿命化のための大規模修繕工事を実施した場合、固定資産税が減額される特例措置が2年間延長されました。
適用条件:
- 管理計画認定を受けたマンション
- 長寿命化のための大規模修繕工事(100万円超)を実施
減額率:翌年度の固定資産税を1/3減額(築後10年以上の長寿命化工事に限る)
(出典: 国土交通省「令和7年度税制改正概要」)
固定資産税が高額になるケースと対策
固定資産税が予想より高額になる場合、以下の原因が考えられます。
(1) 評価額の誤りを確認する:納税通知書の見方
固定資産税評価額が間違っている可能性があります。
確認方法:
- 毎年4〜6月頃に届く納税通知書を確認
- 固定資産税評価額が記載されている
- 土地の面積・建物の延床面積が実際と合っているか確認
- 疑問があれば、市区町村の固定資産税課に問い合わせる
固定資産税評価額の誤りが判明した場合、過去5年分の税金が還付される場合があります。
(出典: HOME'S「〈高すぎる?〉固定資産税の決定方法と安く抑えるために知っておきたいこと」)
(2) 軽減措置の適用漏れを確認:申告期限(翌年1月31日)
住宅用地の特例や新築住宅の減税が適用されていない可能性があります。
確認ポイント:
- 住宅を新築した場合、翌年1月31日までに申告が必要
- バリアフリー改修・耐震改修を実施した場合、工事完了後3ヶ月以内(または翌年1月31日)に申告が必要
- 申告期限を過ぎると軽減措置が適用されない
申告が必要な軽減措置については、市区町村の固定資産税課に確認してください。
(3) 更地にすると税額が最大6倍に:住宅用地の特例の喪失
建物を取り壊して更地にすると、住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍に増加します。
例(土地面積100㎡、評価額2,000万円):
| 状態 | 固定資産税 |
|---|---|
| 住宅あり | 約4.7万円(評価額 × 1/6 × 1.4%) |
| 更地 | 約28万円(評価額 × 1.4%) |
不要な建物でも、すぐに解体せず、建て替えや売却のタイミングを検討することが重要です。
(出典: HOME'S「〈高すぎる?〉固定資産税の決定方法と安く抑えるために知っておきたいこと」)
(4) 特定空家指定による税額増加リスク
空き家を放置すると、特定空家に指定され、住宅用地の特例が適用されなくなる場合があります。
特定空家とは、倒壊の危険性や衛生上有害となる恐れがある空き家を指します。
特定空家に指定されると、住宅用地の特例が適用されず、固定資産税が最大6倍になります。
空き家を所有している場合は、定期的な管理や売却・賃貸の検討が必要です。
まとめ:固定資産税を正しく理解し適正な負担を
固定資産税の平均額は、一戸建てが年間10万円〜15万円、マンションが年間8万円〜12万円です。ただし、土地の所在地、建物の広さ、築年数により大きく変動するため、あくまで目安として考えてください。
固定資産税の計算式は「固定資産税評価額 × 1.4%」が基本ですが、住宅用地の特例(200㎡以下で評価額1/6)や新築住宅の減税(3年間または5年間、1/2に減額)により、実際の税負担は軽減されます。
固定資産税評価額の誤りや軽減措置の適用漏れがないか、納税通知書で確認することが重要です。疑問があれば、市区町村の固定資産税課に問い合わせましょう。
税制は複雑で自治体により異なるため、詳細は税理士または地元自治体に確認してください。
