ネット銀行の住宅ローンを検討する方へ
住宅ローンを検討する際、「ネット銀行は金利が安いと聞いたけれど、本当なのか」「店舗型銀行とどう違うのか」「審査は厳しいのか」と疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、ネット銀行の住宅ローンの特徴、金利比較、メリット・デメリット、審査基準、選び方のポイントを、公式データと市場動向を元に解説します。
この記事を読むことで、ネット銀行の住宅ローンが自分に適しているかを判断し、無理のない資金計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- ネット銀行の変動金利は0.5~0.6%台で、メガバンクより0.2~0.3%低く、総返済額で数十万円~100万円の差が出るケースもある
- 店舗コストを削減しオンラインで手続きを完結することで低金利を実現
- 審査は店舗型銀行より厳格で、自己資金比率、勤務先規模、勤続年数、雇用形態などを厳しく審査
- 保証料無料だが事務手数料が借入額の2.2%(税込)と高額(3,000万円借入で66万円)
- 金利だけでなく、団信の保障内容、事務手数料、繰上返済手数料を総合的に比較し、複数の金融機関に仮審査を申し込むことを推奨
ネット銀行の住宅ローンの特徴と店舗型銀行との違い
(1) ネット銀行とは(店舗を持たない銀行)
ネット銀行とは、実店舗を持たず、インターネットを通じて銀行サービスを提供する金融機関です。
主要なネット銀行:
- auじぶん銀行
- 住信SBIネット銀行
- PayPay銀行
- ソニー銀行
- 楽天銀行
- SBI新生銀行
これらのネット銀行は、住宅ローンの申込から契約まで全てオンラインで完結できます。
(2) 金利差の理由(店舗コスト削減・オンライン完結)
ネット銀行の金利が低い理由は、以下の通りです。
- 店舗コストの削減: 実店舗を持たないため、家賃・人件費を大幅に削減
- オンライン完結: 書類のペーパーレス化、申込手続きの自動化により業務コストを削減
- 顧客獲得戦略: 低金利を武器に顧客を獲得し、預金・投資信託等の他サービスで収益を確保
これにより、変動金利は0.5~0.6%台と、メガバンクより0.2~0.3%低い水準を実現しています。
(3) 手数料体系の違い(事務手数料型 vs 保証料型)
ネット銀行と店舗型銀行では、手数料体系が異なります。
| 項目 | ネット銀行 | 店舗型銀行(メガバンク) |
|---|---|---|
| 保証料 | 無料 | 借入額の約2%(一括前払い)または金利上乗せ(約0.2%) |
| 事務手数料 | 借入額の2.2%(税込) | 3〜5万円程度(定額) |
| 初期費用(3,000万円借入) | 66万円 | 60〜70万円 |
ネット銀行は保証料無料ですが、事務手数料が高額です。総コストを比較することが重要です。
(4) 審査スピード・手続きの利便性
ネット銀行は審査スピードが早く、手続きが便利です。
| 項目 | ネット銀行 | 店舗型銀行 |
|---|---|---|
| 事前審査 | 即日〜1営業日 | 3〜5営業日 |
| 本審査 | 1〜2週間 | 2〜4週間 |
| 申込方法 | オンライン完結 | 店舗来店必要(一部オンライン対応) |
| 対面相談 | 不可 | 可能 |
(出典: 住信SBIネット銀行「住宅ローンの審査はどう進む?」)
金利比較と主要ネット銀行の特徴
(1) 2025年11月時点の金利比較(変動金利0.5~0.6%台)
2025年11月時点の主要ネット銀行の変動金利は以下の通りです。
| 銀行名 | 変動金利 | 特徴 |
|---|---|---|
| SBI新生銀行 | 0.590% | 変動金利がトップクラスの低金利 |
| auじぶん銀行 | 0.5%台 | がん保障が金利上乗せなし |
| 住信SBIネット銀行 | 0.5%台 | 全疾病保障が金利上乗せなし |
| PayPay銀行 | 0.5%台 | 団信保障が充実 |
| ソニー銀行 | 0.6%台 | 顧客満足度3年連続1位 |
(出典: 価格.com「住宅ローン人気ランキング【2025年11月】」)
金利は毎月見直されるため、最新の金利を公式サイトで確認することが重要です。
(2) 主要ネット銀行(auじぶん銀行、住信SBIネット銀行、PayPay銀行、ソニー銀行等)
主要ネット銀行の特徴は以下の通りです。
auじぶん銀行:
- 2024年11月に累計融資実行額5兆円突破(ネット銀行最速)
- がん保障が金利上乗せなし
- 最長40年の借入期間
住信SBIネット銀行:
- 全疾病保障が金利上乗せなし
- オンライン手続きが充実
- 一部繰上返済手数料無料
ソニー銀行:
- 2025年オリコン顧客満足度調査でネット銀行部門3年連続1位
- 固定金利も競争力がある
- 団信保障が充実
(出典: auじぶん銀行「ネット銀行最速で住宅ローン融資実行額が累計5兆円を突破」、ソニー銀行「オリコン顧客満足度調査 住宅ローン 「ネット銀行」にて3年連続第1位獲得」)
(3) 各行の団信・付帯サービスの違い
各ネット銀行の団信(団体信用生命保険)・付帯サービスは異なります。
| 銀行名 | 基本団信 | がん保障 | 全疾病保障 | 金利上乗せ |
|---|---|---|---|---|
| auじぶん銀行 | 付帯 | 金利上乗せなし | 有料オプション | 基本無料 |
| 住信SBIネット銀行 | 付帯 | 有料オプション | 金利上乗せなし | 基本無料 |
| ソニー銀行 | 付帯 | 有料オプション | 有料オプション | 基本無料 |
団信の保障内容は、各自のライフプランに応じて選ぶことが重要です。
(4) 2025年の市場動向(日銀政策変更の影響)
2025年6月に日本銀行の貸出支援制度が終了し、ネット銀行の低金利体制に変化の兆しがあります。
2025年の変化:
- 日銀の貸出支援制度終了により、ネット銀行の資金調達コストが上昇
- 変動金利の上昇圧力
- 金利だけでなく総合的な条件(団信、手数料、繰上返済条件等)を見極める重要性が増している
(出典: リクルート「住宅ローン金利に異変あり!ネット銀行"最強"時代の終わりと、これからの選び方とは」)
メリット・デメリットの詳細
(1) メリット(低金利、手続きの利便性、事前審査が早い、団信充実)
ネット銀行の住宅ローンのメリットは以下の通りです。
- 低金利: 変動金利0.5~0.6%台で、メガバンクより0.2~0.3%低い。総返済額で数十万円~100万円の差が出るケースもある。
- 手続きの利便性: 申込から契約まで全てオンラインで完結。空いた時間に手続き可能。
- 事前審査が早い: 即日~1営業日で結果が出る。
- 団信充実: がん保障や全疾病保障が金利上乗せなしで付帯できるネット銀行が多い。
- 繰上返済手数料無料: 一部繰上返済がインターネットで手数料無料。
(出典: SUUMO「ネット銀行の住宅ローン 失敗しないために考えるべきメリット、デメリットは?」)
(2) デメリット(対面相談不可、審査が厳格、事務手数料高額)
ネット銀行の住宅ローンのデメリットは以下の通りです。
- 対面相談不可: 申込から契約まで全てオンライン。住宅ローンが初めての人は不安を感じる可能性。
- 審査が厳格: 自己資金比率、勤務先規模、勤続年数、雇用形態などを厳しく審査。店舗型銀行より審査基準が厳しい。
- 事務手数料高額: 借入額の2.2%(税込)。3,000万円借入で66万円の初期費用が必要。
- つなぎ融資非対応: 注文住宅建築時の着工金・中間金の支払いに対応していないネット銀行が多い。
- システムトラブル時の対応: オンライン完結のため、システムトラブル時に対面でのサポートを受けられない。
(出典: SUUMO「ネット銀行の住宅ローン 失敗しないために考えるべきメリット、デメリットは?」)
(3) つなぎ融資非対応の注意点
つなぎ融資とは、注文住宅建築時に、着工金・中間金の支払いのために一時的に借りる融資です。
つなぎ融資が必要な場合:
- 注文住宅を建築する際、建物が完成する前に着工金・中間金の支払いが必要
- 住宅ローンは建物完成後に融資実行されるため、完成前の支払いに対応できない
ネット銀行の対応:
- ほとんどのネット銀行はつなぎ融資に非対応
- 注文住宅を建築する場合は、店舗型銀行や一部のネット銀行(フラット35取り扱いあり)を検討
(4) システムトラブル時の対応リスク
ネット銀行はオンライン完結のため、システムトラブル時に以下のリスクがあります。
- 申込手続きの遅延: システムメンテナンス中は申込不可
- 問い合わせの遅延: 電話・メールでの問い合わせのみで、対面サポートなし
- 緊急時の対応: 災害時等にシステムがダウンした場合の対応が不安
これらのリスクを理解した上で、ネット銀行を選ぶことが重要です。
審査・申し込み・選び方のポイント
(1) 審査の流れ(事前審査→本審査→契約)
ネット銀行の住宅ローン審査の流れは以下の通りです。
- 事前審査申込: オンラインで必要情報を入力
- 事前審査結果: 即日〜1営業日で結果通知
- 本審査申込: 必要書類を提出
- 本審査結果: 1〜2週間で結果通知
- 契約手続き: 契約書を締結(オンライン完結)
- 融資実行: 物件引き渡し時に融資実行
(出典: 住信SBIネット銀行「住宅ローンの審査はどう進む?」)
(2) 審査期間(事前審査: 即日~1営業日、本審査含め2週間程度)
ネット銀行の審査期間は店舗型銀行より短い傾向があります。
- 事前審査: 即日〜1営業日
- 本審査: 1〜2週間
- 契約から融資実行: 1〜2週間
合計で約2〜4週間で融資実行が可能です。
(3) 審査基準(年収、勤続年数、自己資金比率、雇用形態等)
ネット銀行の審査基準は店舗型銀行より厳格です。
主な審査項目:
- 年収: 最低年収基準(一般的に300万円以上)
- 勤続年数: 1年以上が目安(2〜3年以上が望ましい)
- 自己資金比率: 物件価格の10〜20%以上が望ましい
- 雇用形態: 正社員が有利(契約社員・派遣社員は審査が厳しい)
- 勤務先規模: 上場企業・公務員が有利
- 信用情報: クレジットカードの延滞履歴等がないこと
審査に不安がある場合は、複数の金融機関に仮審査を申し込むことを推奨します。
(4) 金利だけでなく総コストを比較(事務手数料、繰上返済手数料等)
住宅ローンを選ぶ際は、金利だけでなく総コストを比較することが重要です。
比較すべき項目:
- 金利: 変動金利、固定金利(期間別)
- 事務手数料: 借入額の2.2%(税込)が一般的
- 保証料: ネット銀行は無料が多い
- 団信: 基本団信、がん保障、全疾病保障の内容
- 繰上返済手数料: 一部繰上返済、全額繰上返済の手数料
- つなぎ融資の可否: 注文住宅建築時に必要
これらを総合的に比較し、最も条件の良い金融機関を選ぶことを推奨します。
(5) 団信の保障内容を確認(がん保障、全疾病保障等)
団信(団体信用生命保険)の保障内容は、各ネット銀行で異なります。
基本団信:
- 借入者が死亡または高度障害状態になった場合、住宅ローン残高が保険金で返済される
がん保障:
- がんと診断された場合、住宅ローン残高の50%〜100%が保障される
全疾病保障:
- がんを含む全ての病気・ケガで就業不能状態が続いた場合にローン残高が保障される
自身のライフプランに応じて、必要な保障内容を選ぶことが重要です。
(6) 複数の金融機関に仮審査を申し込む
住宅ローンは、複数の金融機関に仮審査を申し込むことを推奨します。
理由:
- 審査結果により金利や借入条件が異なる
- 複数の金融機関を比較することで、最も条件の良い選択肢を選べる
- 審査に不安がある場合、リスクヘッジになる
申し込み方法:
- 各ネット銀行の公式サイトから仮審査を申し込む
- 仮審査は無料で、信用情報への影響は最小限
まとめ:ネット銀行の住宅ローンを選ぶべき人
(1) ネット銀行が向いている人(低金利重視、手続きの利便性重視)
ネット銀行の住宅ローンが向いているのは、以下のような方です。
- 低金利を重視する方: 総返済額を抑えたい
- 手続きの利便性を重視する方: 店舗に行かずにオンラインで完結したい
- 審査に自信がある方: 年収・勤続年数・自己資金比率などの条件を満たしている
- 団信の保障を充実させたい方: がん保障・全疾病保障を金利上乗せなしで付帯したい
- 繰上返済を頻繁に行いたい方: 一部繰上返済手数料が無料
(2) 店舗型銀行が向いている人(対面相談重視、審査に不安がある)
逆に、店舗型銀行が向いているのは、以下のような方です。
- 対面相談を重視する方: 住宅ローンが初めてで、担当者に直接相談したい
- 審査に不安がある方: 年収・勤続年数・雇用形態等に不安がある
- 注文住宅を建築する方: つなぎ融資が必要
- システムトラブル時の対応を重視する方: 緊急時に店舗でサポートを受けたい
(3) 専門家への相談タイミング
住宅ローンは高額な借入であり、金融知識が必要です。以下のような場合は、専門家への相談を推奨します。
- ファイナンシャルプランナー(FP): 資金計画、返済シミュレーション、住宅ローン控除の活用方法
- 銀行担当者: 審査基準、金利プラン、申込手続きの詳細
- 税理士: 住宅ローン控除の適用条件、確定申告の方法
信頼できる専門家と相談しながら、無理のない資金計画を立てましょう。
