住宅ローン完済年齢が気になる理由と老後資金の課題
住宅ローンを借りる際、「何歳までに完済できるか」は重要な検討ポイントです。退職後も返済が続くと、年金収入だけで生活費と返済を賄う必要があり、老後資金に影響を与えます。
この記事では、住宅ローン完済年齢の平均データ、理想の完済年齢、繰り上げ返済のポイントについて、住宅金融支援機構の統計データを元に解説します。
この記事のポイント
- 住宅ローンの計算上の完済年齢は73〜75歳だが、実際は平均16年で完済する人が多い
- 理想の完済年齢は65歳(定年退職時)で、退職前に完済することで老後の家計負担を軽減できる
- 繰り上げ返済は利息軽減効果が高いが、住宅ローン控除や手元資金とのバランスを考慮する必要がある
- 80歳完済のリスクとして、団信の上限問題や退職後の収入減少がある
住宅ローン完済年齢の平均データと現状
住宅ローンの完済年齢について、最新の統計データを確認しましょう。
平均借入年齢と借入期間(2024年版フラット35データ)
住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査(2024年版)」によると、住宅ローンの平均借入年齢と借入期間は以下の通りです。
| 項目 | 2024年 | 2023年 |
|---|---|---|
| 平均借入年齢 | 44.5歳 | 44.3歳 |
| 平均借入期間 | 32.9年 | 32.8年 |
平均借入年齢44.5歳に借入期間32.9年を足すと、計算上の完済年齢は約77歳になります。
実際の完済年齢と計画のギャップ
計算上は73〜75歳が平均完済年齢となりますが、実際の完済期間は平均16年という調査結果もあります。これは、繰り上げ返済や借り換えにより、計画より11年ほど早く完済する人が多いことを示しています。
| 項目 | 計画上 | 実際 |
|---|---|---|
| 借入期間 | 約27年 | 約16年 |
| 完済年齢 | 73〜75歳 | 60歳前後 |
晩婚化・住宅購入年齢の上昇傾向
住宅ローンの平均借入年齢は上昇傾向にあります。2014年の40.4歳から2024年の44.5歳へと、約4歳上昇しました。
この背景には、晩婚化や共働き世帯の増加により、住宅購入のタイミングが遅くなっていることがあります。借入年齢が上がると、完済年齢も自動的に上がるため、返済計画の見直しが重要になります。
理想の完済年齢と返済計画の立て方
老後資金を確保するためには、計画的な返済が重要です。
理想の完済年齢は65歳|定年退職時が目安
理想の完済年齢は65歳(定年退職時)とされています。理由は以下の通りです。
- 収入が安定している現役時代に完済できる
- 退職後は年金収入のみになるケースが多い
- 老後の生活費や医療費に余裕を持てる
65歳までに完済するためには、借入時に返済期間を調整するか、繰り上げ返済を計画的に行う必要があります。
返済シミュレーションの作成方法
返済計画を立てる際は、以下の項目でシミュレーションを行いましょう。
- 現在の年齢と完済希望年齢
- 借入額と金利(固定金利 or 変動金利)
- 毎月の返済額と総返済額
- 繰り上げ返済の可能性
多くの金融機関がウェブサイトで返済シミュレーションツールを提供しています。複数の条件でシミュレーションし、無理のない返済計画を立てることを推奨します。
借入年齢別の返済計画
借入年齢によって、返済計画の考え方は異なります。
| 借入年齢 | ポイント |
|---|---|
| 30代 | 長期間の借入が可能。毎月の返済額を抑えつつ、繰り上げ返済で期間短縮を検討 |
| 40代 | 退職までの期間を意識。借入期間は20〜25年程度が目安 |
| 50代 | 完済年齢が70歳を超える場合は慎重に。頭金を多めに用意し、借入額を抑える |
繰り上げ返済のメリット・デメリット
繰り上げ返済は、完済年齢を早める有効な手段です。ただし、注意点もあります。
期間短縮型と返済額軽減型の違い
繰り上げ返済には2つのタイプがあります。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 期間短縮型 | 毎月の返済額は変えず、返済期間を短縮。利息軽減効果が大きい |
| 返済額軽減型 | 返済期間は変えず、毎月の返済額を減らす。家計の負担を軽減 |
利息軽減効果を重視するなら期間短縮型、毎月の負担を減らしたいなら返済額軽減型が適しています。
利息軽減効果と早期実施のメリット
繰り上げ返済は、早期に実施するほど利息軽減効果が大きくなります。元金が多い時期に繰り上げ返済することで、その後の利息負担を大幅に減らせます。
例えば、3,000万円を35年ローンで借りた場合、10年目に100万円を期間短縮型で繰り上げ返済すると、約50万円の利息軽減効果が期待できます(金利1.5%の場合)。
住宅ローン控除との関係と判断タイミング
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けている期間中に繰り上げ返済すると、借入残高が減少し、控除額も減少する可能性があります。
- 控除期間中は繰り上げ返済を控える方が有利な場合がある
- 控除期間終了後に一括で繰り上げ返済する選択肢も
- 具体的な判断は、銀行担当者やファイナンシャルプランナーに相談を
80歳完済のリスクと対策
完済年齢が80歳を超える場合、いくつかのリスクに注意が必要です。
退職後の収入減少と医療費増加リスク
65歳で定年退職した場合、収入は年金が中心になります。年金だけで住宅ローンの返済と生活費を賄うのは、家計を圧迫するリスクがあります。
- 退職後は収入が現役時代の50〜70%程度に減少することが多い
- 医療費や介護費用は年齢とともに増加する傾向
- 予期せぬ出費(住宅の修繕、家電の買い替え等)への対応が難しくなる
団体信用生命保険(団信)の上限問題
団体信用生命保険(団信)は、多くの場合80歳が保障の上限です。85歳完済のローンを組んだ場合、80歳以降は保障がなくなります。
万が一、80歳以降に契約者が死亡した場合、遺族がローン残高を返済する必要が生じる可能性があります。
リスク軽減のための借り換え・繰り上げ返済
80歳完済のリスクを軽減するためには、以下の対策が考えられます。
- 繰り上げ返済: 計画的に繰り上げ返済し、完済年齢を65歳程度に引き下げる
- 借り換え: より低金利のローンに借り換え、返済総額を減らす
- 返済計画の見直し: ファイナンシャルプランナーに相談し、老後資金とのバランスを検討
まとめ:完済年齢を見据えた資金計画
住宅ローンの計算上の完済年齢は73〜75歳ですが、理想は65歳(定年退職時)です。繰り上げ返済や借り換えを活用することで、計画より早く完済することが可能です。
繰り上げ返済は利息軽減効果が高い一方、住宅ローン控除や手元資金とのバランスを考慮する必要があります。80歳を超える完済年齢の場合は、団信の上限や退職後の収入減少リスクに注意してください。
個別の状況に応じた最適な返済計画については、銀行担当者やファイナンシャルプランナーへの相談を推奨します。


