住宅ローンとは|基本的な仕組みを理解する
マイホーム購入を検討している方にとって、「住宅ローンの仕組みはどうなっているのか」「審査では何を見られるのか」「金利タイプはどう選べばいいのか」といった疑問は避けて通れません。
この記事では、住宅ローンの基本的な仕組み、審査の流れ、金利タイプの違い、返済方法の比較、住宅ローン控除を、住宅金融支援機構・国土交通省の公式情報を元に解説します。
住宅ローンの全体像を体系的に理解し、自分に合ったローン選びができるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローンは購入した物件を担保として金融機関から融資を受け、元金と利息を分割で返済する仕組み
- 審査は事前審査(3-4日)と本審査(1-4週間)の2段階で行われ、年齢・健康状態・年収・勤続年数・担保価値を確認
- 金利タイプは変動金利(当初金利が低い、上昇リスクあり)と固定金利(安定、当初金利が高い)があり、個人の状況に応じて選択
- 返済方法は元利均等返済(毎月の返済額が一定)と元金均等返済(総利息額が少ない)の2種類
- 2024年以降、住宅ローン控除は省エネ基準適合が原則必須化され、年末残高の0.7%を最大13年間控除
住宅ローンとは|基本的な仕組みを理解する
住宅ローンは、自宅(戸建て・マンション)を購入する際に利用できるローンです。
(1) 住宅ローンの基本構造
日本経済新聞によると、住宅ローンの基本的な仕組みは以下の通りです。
- 融資:金融機関から借入
- 担保:購入した物件を担保として提供
- 返済:元金と利息を分割で返済(最長35年)
- 抵当権設定:金融機関が物件に抵当権を設定(返済不能時に売却して回収)
イメージ図:
購入者 → 物件購入(担保提供)
↑ ↓
融資 抵当権設定
↑ ↓
金融機関 ← 返済(元金+利息)
(2) 借入額と返済の関係
日本経済新聞によると、2023年の購入者のローン借入総額は平均5,235万円で、2005年以降で最も高額です。
返済額の計算例:
| 借入額 | 金利 | 返済期間 | 総返済額 | 総利息額 |
|---|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 2.0% | 35年 | 約4,174万円 | 約1,174万円 |
| 3,000万円 | 1.0% | 35年 | 約3,557万円 | 約557万円 |
(出典: 日本経済新聞)
金利1%の差で総利息額が約600万円も変わるため、金利タイプの選択は非常に重要です。
住宅ローン審査の流れと期間
三井住友銀行によると、住宅ローン審査は事前審査と本審査の2段階で行われます。
(1) 事前審査(仮審査)の内容と期間
審査内容:
- 年齢(借入時・完済時)
- 年収・勤続年数
- 健康状態
- 物件の担保価値(簡易査定)
審査期間:
- 3-4日程度
必要書類:
- 本人確認書類(免許証・マイナンバーカード等)
- 収入証明書(源泉徴収票、確定申告書等)
- 物件情報(販売図面、見積書等)
(2) 本審査の内容と審査基準
審査内容:
- 事前審査の内容を詳細に確認
- 物件の担保価値(正式な不動産鑑定)
- 団体信用生命保険(団信)の加入審査
審査期間:
- 1-4週間程度
審査基準:
- 返済負担率:年収に対する年間返済額の割合(一般的に25-35%以内)
- 完済時年齢:80歳未満が一般的
- 勤続年数:1年以上が目安(金融機関により異なる)
(出典: 三井住友銀行 - 住宅ローン審査の流れ)
注意点:
- 審査には1-4週間かかるため、物件購入のスケジュールに余裕を持って申し込むことを推奨
- 申込内容に虚偽があると審査に通らない、または契約解除の可能性
金利タイプの種類と選び方
住宅ローンの金利タイプは、大きく分けて変動金利型・固定金利型・固定金利期間選択型の3種類です。
(1) 変動金利型のメリット・デメリット
三井住友銀行によると、変動金利型は半年ごとに金利が見直されるタイプです。
メリット:
- 当初金利が固定金利より低い(0.3-0.5%程度の差)
- 金利が下がれば返済額も減少
デメリット:
- 金利上昇局面では返済額が増加するリスク
- 2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策を解除し、金利は上昇傾向
適している人:
- 金利上昇リスクを許容できる
- 短期間で返済予定(繰上返済を積極的に行う)
- 収入が安定している、または今後増加が見込まれる
(2) 固定金利型(全期間・期間選択)のメリット・デメリット
全期間固定金利型(フラット35等):
メリット:
- 借入時点で金利が確定し、完済まで変動しない
- 返済計画が立てやすく、金利上昇リスクがない
デメリット:
- 当初金利が変動金利より高い(1.5-2.0%程度)
- 金利が下がっても返済額は変わらない
固定金利期間選択型(3年、5年、10年等):
メリット:
- 一定期間は金利が固定され、返済額が安定
- 期間終了後に変動金利または固定金利を選択できる
デメリット:
- 固定期間終了後の金利が不透明
- 全期間固定より当初金利が高い場合もある
(出典: 三井住友銀行 - 金利の種類・選び方、りそなグループ)
適している人:
- 返済計画を確定させたい
- 金利上昇リスクを避けたい
- 収入の変動が少ない、または安定を重視
重要: 金利タイプの選択は個人の収入・ライフプラン・リスク許容度により異なります。ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談することを推奨します。
返済方法の比較|元利均等と元金均等
フラット35によると、返済方法は元利均等返済と元金均等返済の2種類です。
(1) 元利均等返済の特徴
仕組み:
- 毎月の返済額(元金+利息)が一定
- 当初は利息の割合が多く、元金の減少が遅い
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 毎月の返済額 | 一定 |
| 総利息額 | 元金均等より多い |
| メリット | 家計管理がしやすい、当初の返済額が低い |
| デメリット | 総利息額が多い、元金の減少が遅い |
適している人:
- 家計管理をシンプルにしたい
- 当初の返済負担を抑えたい
(2) 元金均等返済の特徴
仕組み:
- 毎月の元金返済額が一定
- 利息は残高に応じて減少するため、返済額は徐々に減少
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 毎月の返済額 | 徐々に減少 |
| 総利息額 | 元利均等より少ない |
| メリット | 総利息額が少ない、元金の減少が早い |
| デメリット | 当初の返済額が高い |
適している人:
- 当初の返済負担に余裕がある
- 総利息額を抑えたい
(3) 繰上返済の効果
繰上返済とは: ローンの元金を予定より早く返済すること。総利息額を大幅に削減できます。
2種類の繰上返済:
- 期間短縮型:返済期間を短縮(総利息削減効果が大きい)
- 返済額軽減型:毎月の返済額を減少(家計負担を軽減)
(出典: フラット35 - 元利均等返済と元金均等返済とは?、全国銀行協会)
住宅ローン控除と諸費用
(1) 住宅ローン控除の仕組みと2024年改正
国土交通省によると、住宅ローン控除は年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除する制度です。
2024年の主な変更点:
- 省エネ基準適合が原則必須化(新築住宅)
- 子育て世帯・若者夫婦世帯への優遇措置拡充
- 借入限度額の引き下げ(一般住宅は3,000万円→0円)
借入限度額(2024年入居):
| 住宅の種類 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 認定住宅(長期優良住宅等) | 5,000万円 | 0.7% | 13年間 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 0.7% | 13年間 |
| 省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 0.7% | 13年間 |
| 一般住宅(新築) | 0円 | - | - |
| 中古住宅 | 3,000万円 | 0.7% | 10年間 |
(出典: 国土交通省 - 住宅ローン減税)
適用条件:
- 合計所得金額が2,000万円以下
- 床面積50㎡以上(一部条件で40㎡以上)
- 借入期間10年以上
- 省エネ基準を満たす住宅(2024年以降の新築住宅)
(2) ローン諸費用の内訳
住宅ローン借入時には、以下の諸費用が発生します。
| 項目 | 金額目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 融資事務手数料 | 借入額の2%程度 | 金融機関への手数料 |
| 保証料 | 借入額の2%程度 | 保証会社への手数料(不要な金融機関も) |
| 印紙税 | 2-6万円 | 契約書に貼付 |
| 登記費用 | 10-30万円 | 所有権移転登記、抵当権設定登記 |
| 団体信用生命保険料 | 金利に含まれる場合が多い | 死亡・高度障害時にローン残高が0に |
(出典: 三井住友銀行)
注意点:
- 諸費用は借入額の5-10%程度が目安
- 諸費用ローンを利用すると金利が高くなる場合がある
まとめ:住宅ローンを組む前に知っておくべきこと
住宅ローンは購入した物件を担保として金融機関から融資を受け、元金と利息を分割で返済する仕組みです。審査は事前審査(3-4日)と本審査(1-4週間)の2段階で行われ、年齢・健康状態・年収・勤続年数・担保価値を確認します。
金利タイプは変動金利(当初金利が低い、上昇リスクあり)と固定金利(安定、当初金利が高い)があり、個人の収入・ライフプラン・リスク許容度に応じて選択してください。返済方法は元利均等返済(毎月の返済額が一定)と元金均等返済(総利息額が少ない)の2種類です。
2024年以降、住宅ローン控除は省エネ基準適合が原則必須化され、年末残高の0.7%を最大13年間控除できます。住宅ローンは人生最大級の借入のため、複数の金融機関で条件を比較し、ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談することを推奨します。
