マンション売却で手元に残る金額の基本的な考え方
マンション売却を検討する際、「売却価格=手取り額」ではありません。実際には、売却価格から税金・諸費用・住宅ローン残債を差し引いた金額が手元に残ります。
本記事の要点
- 手取り額=売却価格 - 税金 - 住宅ローン残債 - 諸費用
- 諸費用は売却価格の3.5〜7%(仲介手数料が最大の費用)
- 3,000万円特別控除を適用すれば、利益が3,000万円以下なら税金ゼロ
- オーバーローン(売却価格 < ローン残債)でも売却可能、ただし自己資金または住み替えローンが必要
売却価格と手取り額の違い(諸費用・税金・ローン残債を差し引く)
例えば、売却価格6,000万円のマンションでも、以下のような費用が発生します:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 6,000万円 |
| - 住宅ローン残債 | △5,000万円 |
| - 仲介手数料等の諸費用 | △200万円 |
| - 譲渡所得税(3,000万円控除適用なら0円) | 0円 |
| 手取り額 | 800万円 |
このように、売却価格6,000万円でも実際の手取りは800万円と、大きく異なります。
手取り額を決める3つの要素(売却価格・諸費用・税金・ローン残債)
手取り額に最も影響を与えるのは、売却価格と住宅ローン残債です。売却価格が高くてもローン残債が多ければ、手取りは少なくなります。
次に影響するのが諸費用(売却価格の3.5〜7%)で、最後に税金(3,000万円特別控除で非課税になる場合が多い)です。
本記事で分かること:計算方法・諸費用・税金・シミュレーション
本記事では、手取り額の計算式、諸費用の内訳、譲渡所得税の計算方法、住宅ローン残債の影響を詳しく解説します。具体的なシミュレーション例も示しますので、ご自身のケースに当てはめて計算してみてください。
手取り額の計算式|売却価格・税金・諸費用・ローン残債の関係
基本の計算式:売却価格 - 税金 - 住宅ローン残債 - 諸費用
マンション売却の手取り額は、以下の計算式で求めます:
手取り額 = 売却価格 - 税金 - 住宅ローン残債 - 諸費用
それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。
売却価格とローン残債が最大の決定要因
手取り額を最も大きく左右するのは、売却価格と住宅ローン残債です。
- アンダーローン(売却価格 > ローン残債):売却代金でローンを完済でき、差額が手取りとなる
- オーバーローン(売却価格 < ローン残債):売却代金だけではローンを完済できず、自己資金または住み替えローンが必要
例えば、売却価格4,000万円、ローン残債3,500万円の場合、差額500万円(諸費用・税金を差し引いた後)が手取りとなります。
一方、売却価格4,000万円、ローン残債4,500万円の場合、500万円の不足が生じるため、自己資金で補填するか、住み替えローンを利用する必要があります。
諸費用の目安:売却価格の3.5〜7%程度
諸費用は、売却価格の3.5〜7%程度です。譲渡所得税が発生する場合は7%程度、発生しない場合は3.5〜4%程度が目安です。
売却価格別の諸費用目安
| 売却価格 | 諸費用(3.5〜7%) |
|---|---|
| 3,000万円 | 105〜210万円 |
| 4,000万円 | 140〜280万円 |
| 5,000万円 | 175〜350万円 |
| 6,000万円 | 210〜420万円 |
具体的な計算例:売却価格6,000万円の場合の手取りシミュレーション
ケース1:アンダーローン、譲渡所得税なし
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 6,000万円 |
| - 住宅ローン残債 | △5,000万円 |
| - 仲介手数料(売却価格×3%+6万円+消費税) | △205.2万円 |
| - 抵当権抹消費用 | △1.9万円 |
| - 印紙税(1万円) | △1万円 |
| - 引越し費用・その他 | △20万円 |
| - 譲渡所得税(3,000万円控除適用) | 0円 |
| 手取り額 | 約771万円 |
ケース2:オーバーローン、自己資金で補填
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 4,000万円 |
| - 住宅ローン残債 | △4,500万円 |
| - 仲介手数料(売却価格×3%+6万円+消費税) | △138.6万円 |
| - その他諸費用 | △30万円 |
| 不足額(自己資金で補填) | △668.6万円 |
この場合、約669万円の自己資金が必要です。
諸費用の内訳|仲介手数料・登記費用・印紙税等の詳細
仲介手数料:最大の費用項目、法定上限の速算式(売却価格×3%+6万円+消費税)
仲介手数料は、諸費用の中で最も大きな費用です。法定上限額は以下の速算式で計算できます(売却価格400万円超の場合):
仲介手数料(税込)= 売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税
売却価格別の仲介手数料(法定上限)
| 売却価格 | 仲介手数料(税込) |
|---|---|
| 3,000万円 | 105.6万円 |
| 4,000万円 | 138.6万円 |
| 5,000万円 | 171.6万円 |
| 6,000万円 | 205.2万円 |
大手不動産会社の多くは法定上限額を請求しますが、値引き交渉の余地はあります。ただし、値引きによってサービス品質が低下する可能性もあるため、慎重に判断しましょう。
抵当権抹消費用:登録免許税2,000円+司法書士報酬1.7万円程度
住宅ローン完済時には、金融機関が設定した抵当権を抹消する手続きが必要です。
抵当権抹消費用の内訳
- 登録免許税:不動産1件あたり1,000円(土地・建物で2,000円)
- 司法書士報酬:1.5〜2万円程度
- 合計:約1.7〜2.2万円
印紙税:売買契約書に貼付、電子契約なら不要
売買契約書には印紙税が必要ですが、電子契約なら不要です。2024年以降、電子契約が普及しており、印紙税を節約できるケースが増えています。
売買契約書の印紙税(紙の契約書の場合)
| 売却価格 | 印紙税(軽減税率) |
|---|---|
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 6万円 |
その他の費用:引越し費用、ハウスクリーニング、測量費等
その他の費用として、以下が発生する場合があります:
- 引越し費用:10〜30万円(家族構成・距離により異なる)
- ハウスクリーニング:5〜15万円(任意、高値売却のために実施するケースあり)
- 測量費:30〜80万円(土地の境界が不明確な場合、主に一戸建て)
- 廃棄物処分費:5〜20万円(不要な家具・家電の処分)
2024年7月の宅建業法改正:800万円以下の仲介手数料上限が30万円に
2024年7月より、売却価格800万円以下の不動産取引の仲介手数料上限が30万円(税込33万円)まで引き上げられました。従来は18万円(税込19.8万円)が上限でしたが、不動産会社の負担を軽減するための改正です。
譲渡所得税の計算方法|税率・3,000万円特別控除・所有期間の影響
譲渡所得の計算式:譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除
譲渡所得税は、マンション売却で利益(譲渡所得)が出た場合に課税されます。譲渡所得の計算式は以下の通りです(国税庁):
譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除
- 譲渡価額:売却価格
- 取得費:購入価格 + 購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用等)- 減価償却費
- 譲渡費用:売却時の諸費用(仲介手数料、印紙税等)
- 特別控除:3,000万円特別控除(居住用財産の場合)
所有期間による税率の違い(長期20.315% vs 短期39.63%)
譲渡所得税の税率は、所有期間によって異なります。
長期譲渡所得(所有期間5年超)
- 税率:20.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)
短期譲渡所得(所有期間5年以下)
- 税率:39.63%(所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9%)
所有期間が5年以下の場合、税率が約2倍になるため、可能であれば5年超まで待つことを検討しましょう。
3,000万円特別控除:居住用財産売却時の非課税制度
居住用財産(マイホーム)を売却する場合、3,000万円特別控除を適用できます。この制度により、譲渡所得が3,000万円以下なら税金がゼロになります。
具体例
- 売却価格:6,000万円
- 取得費:4,000万円(購入価格3,800万円 + 購入時諸費用200万円)
- 譲渡費用:200万円(売却時諸費用)
- 譲渡所得:6,000万円 -(4,000万円 + 200万円)= 1,800万円
- 3,000万円特別控除後:1,800万円 - 3,000万円 = △1,200万円(0円)
- 譲渡所得税:0円
3,000万円特別控除と住宅ローン控除の併用不可の注意点
3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できません。買い替えで購入物件の住宅ローン控除を利用する場合は、売却物件で3,000万円特別控除を使えない場合があります。
どちらが有利かは、譲渡所得の額と住宅ローンの借入額により異なるため、税理士に相談することを推奨します。
取得費不明時の「概算取得費」(売却価格の5%)
購入時の契約書を紛失し、取得費が不明な場合、概算取得費(売却価格の5%)を使用できます。ただし、実際の取得費より低くなる可能性が高いため、契約書は大切に保管しましょう。
住宅ローン残債の影響|アンダーローンとオーバーローンの違い
アンダーローン:売却価格 > ローン残債、差額が手取りとなる
アンダーローンとは、売却価格が住宅ローン残債を上回る状態です。売却代金でローンを完済でき、差額が手取りとなります。
具体例
- 売却価格:5,000万円
- ローン残債:3,500万円
- 諸費用:180万円
- 税金:0円(3,000万円控除適用)
- 手取り額:5,000万円 - 3,500万円 - 180万円 = 1,320万円
オーバーローン:売却価格 < ローン残債、自己資金または住み替えローンが必要
オーバーローンとは、売却価格が住宅ローン残債を下回る状態です。売却代金だけではローンを完済できず、不足分を補填する必要があります。
具体例
- 売却価格:4,000万円
- ローン残債:4,500万円
- 諸費用:140万円
- 不足額:4,000万円 - 4,500万円 - 140万円 = △640万円
この場合、640万円の自己資金が必要です。
オーバーローン時の対処法3つ(自己資金で補填・住み替えローン・任意売却)
オーバーローンでも、以下の3つの方法で売却できます:
1. 自己資金で補填
不足額を自己資金で補填し、ローンを完済する方法。貯蓄がある場合はこの方法が最も確実です。
2. 住み替えローン
既存ローン残債と新居購入のローンを一本化する住宅ローン。審査は厳しい傾向にあります。
3. 任意売却
金融機関の同意を得て一般市場で売却する方法。ただし、信用情報に影響があり、将来の借入に制限がかかる可能性があります。
住み替えローンの仕組みと審査の厳しさ
住み替えローンは、既存ローン残債(オーバーローン分)と新居購入のローンを一本化する住宅ローンです。
メリット
- 自己資金なしで買い替え可能
- 一般市場で売却できる
デメリット
- 審査が厳しい(担保価値を超える借入のため)
- 金利が高めに設定される場合がある
- 返済負担が重くなる
任意売却のリスク(信用情報への影響、将来の借入制限)
任意売却は、住宅ローン返済が困難な場合に金融機関の同意を得て売却する方法です。
メリット
- 競売より高値で売却できる可能性が高い
- 金融機関との交渉で残債を減額できる場合がある
デメリット
- 信用情報に「延滞」「任意売却」の記録が残る
- 5〜10年間、新規借入が困難になる
- ブラックリストに載る可能性がある
まとめ:マンション売却で手取り額を最大化するポイント
マンション売却の手取り額は、売却価格 - 税金 - 住宅ローン残債 - 諸費用で決まります。手取り額を最大化するポイントは以下の通りです:
手取り額を最大化する5つのポイント
- 高値売却を目指す:複数の不動産会社に査定を依頼し、適正価格を把握する
- 諸費用を抑える:仲介手数料の値引き交渉、電子契約で印紙税節約
- 3,000万円特別控除を活用:居住用財産売却時は必ず適用を確認
- 所有期間5年超で売却:税率が20.315%(長期)vs 39.63%(短期)と大きく異なる
- オーバーローンは早めに対処:自己資金で補填、住み替えローン、任意売却を検討
次のアクション
- 住宅ローン残債を確認する(金融機関に問い合わせ)
- 複数の不動産会社に査定を依頼する(3〜5社)
- 手取り額をシミュレーションする(オウチーノ、HOME4U等の無料ツールを活用)
- 税理士に相談し、3,000万円特別控除の適用可否を確認する
- 売却計画を立て、スケジュールを決める
マンション売却は大きな金額が動く取引です。手取り額を正確に把握し、計画的に進めましょう。


