土地が売れない悩みと記事の目的
土地を売却しようと試みているものの、なかなか買い手が見つからず、「なぜ売れないのか」「どうすれば売却できるのか」と悩んでいる方は少なくありません。
この記事では、土地が売れない主な原因(価格設定、土地の形状・接道条件、境界の未確定、立地等)を分析し、原因別の具体的な対処法を解説します。価格の見直し方法、売却方法の選択肢(隣地所有者への打診、買取業者の活用、相続土地国庫帰属制度等)、専門家の活用ポイントまで網羅し、土地売却を成功させるための戦略を提示します。
本記事は、不動産業界の統計データや公式情報を元に作成しており、土地売却に悩む方が次のアクションを明確にできる内容となっています。
この記事のポイント
- 土地が売れない主な理由は、価格が高すぎる、土地の形状・接道条件が悪い、境界が未確定、立地・需要の問題等
- 土地は平均89.4日(約3ヶ月)で売却され、3ヶ月経過しても売れない場合は価格見直しが必要
- 成約価格は売り出し価格の91.6%が目安で、約1割の値下げが必要になることが多い
- 売却以外の選択肢として、隣地所有者への打診、買取業者の活用、相続土地国庫帰属制度、土地の活用法等がある
- 売れない土地を放置すると固定資産税や維持管理費用が継続的にかかり、2024年4月からの相続登記義務化にも注意が必要
土地が売れない主な理由(価格・形状・境界・立地)
土地が売れない原因は多岐にわたりますが、主に以下の5つに分類されます。
(1) 価格が高すぎる(成約価格は売り出し価格の91.6%が目安)
最も多い原因は、売り出し価格が市場相場よりも高すぎることです。三井のリハウスの調査によると、土地の成約価格は売り出し価格の91.6%が目安とされており、約1割の値下げが必要になるケースが一般的です。
売主としては「少しでも高く売りたい」と考えるのは当然ですが、相場を大きく上回る価格設定では買い手が見つからず、売却期間が長期化します。長期間売れない物件は「売れ残り」と認識され、さらに売却が難しくなる悪循環に陥る可能性があります。
(2) 土地の形状・接道条件が悪い(旗竿地・無道路地・不整形地)
土地の形状や接道条件も売却に大きく影響します。以下のような土地は、建築や利用に制約があるため、買い手が見つかりにくい傾向があります。
| 土地の種類 | 特徴 | 売却困難な理由 |
|---|---|---|
| 旗竿地(はたざおち) | 道路に接する部分が細長く、奥に広い敷地がある | 通路部分が狭く使い勝手が悪い、車の出し入れが困難 |
| 無道路地 | 建築基準法上の道路に2メートル以上接していない | 建物が建てられない(再建築不可物件) |
| 不整形地 | 三角形、細長い等、形状が整っていない | 建物配置に制約があり、有効活用が難しい |
これらの土地は、そのままでは売却困難ですが、後述する隣地所有者への打診等の対処法により売却できる可能性があります。
(3) 境界が未確定(確定測量の必要性)
境界が未確定の土地は、買主にとって大きなリスクとなります。境界が明確でない場合、隣地との境界トラブルが発生する可能性があり、購入希望者が激減します。
境界確定とは、隣地との境界を明確にすることで、確定測量により境界標を設置し、隣地所有者と合意する必要があります。費用は30-100万円程度かかりますが、境界を明確にすることで売却しやすくなります。
境界未確定のまま売却を試みるよりも、事前に確定測量を行う方が結果的に早期売却につながる場合が多いです。
(4) 農地や開発制限区域(建物が建てられない)
田んぼ・畑などの農地や開発制限区域の土地は、建物が建てられないため、売却が困難です。
農地を宅地として売却するには、農地法に基づく転用許可が必要です。また、開発制限区域の土地は、都市計画法により建築が制限されているため、用途変更や制限解除の手続きが必要になります。
これらの手続きには時間と費用がかかるため、売却を検討する際は事前に自治体や専門家(宅地建物取引士、行政書士等)に相談することを推奨します。
(5) 立地・需要の問題(田舎・過疎地域)
田舎や過疎地域の土地は、需要が低いため売却が難しい傾向があります。人口減少やインフラ整備の遅れにより、居住目的や事業目的での需要が少ないためです。
このような立地の土地は、価格を相場以下に設定しても買い手が見つからない場合があります。後述する買取業者の活用や土地の活用法(太陽光発電、駐車場等)を検討する必要があります。
価格見直しの方法と適正価格の設定
価格が売れない主な原因である場合、適切なタイミングで価格を見直すことが重要です。
(1) 売却期間の目安(平均89.4日・約3ヶ月)
HOME'Sの調査によると、土地は平均89.4日(約3ヶ月)で売却されます。この期間を一つの目安として、売却活動を行いましょう。
(2) 価格見直しのタイミング(3ヶ月経過しても売れない場合)
3ヶ月経過しても売れない場合は、価格が高すぎる可能性があります。このタイミングで価格見直しを検討しましょう。
不動産会社に相談し、問い合わせ件数や内覧件数を確認することで、価格が問題かどうかを判断できます。問い合わせが少ない場合は価格が高すぎる、問い合わせはあるが成約に至らない場合は他の要因(土地の条件等)が問題と考えられます。
(3) 適正価格の設定方法(周辺相場、不動産会社の査定)
適正価格を設定するには、以下の方法があります。
- 周辺相場の確認: 同じエリアの類似物件の売却価格を調査
- 不動産会社の査定: 複数の不動産会社に査定を依頼し、平均値を参考にする
- 公示地価・路線価の確認: 国土交通省が公表する公示地価や国税庁の路線価を参考にする
特に、複数の不動産会社に査定を依頼することで、適正価格の範囲を把握できます。
(4) 値下げ幅の目安(約1割の値下げ)
前述の通り、土地の成約価格は売り出し価格の91.6%が目安です。約1割の値下げを想定し、売り出し価格を設定することで、現実的な売却計画を立てられます。
ただし、一度に大幅な値下げをすると「何か問題があるのでは」と不安を与える可能性があるため、段階的に価格を調整する方法も有効です。
売却方法の選択肢(隣地打診・買取・国庫帰属等)
土地が売れない場合、通常の仲介売却以外にも複数の選択肢があります。
(1) 隣地所有者への打診(形状の悪い土地を併合)
形状や接道条件の悪い土地は、隣地所有者に打診することで、併合により悪条件が解消され、売却できる可能性があります。
例えば、旗竿地の「通路部分」を隣地所有者が購入することで、隣地の利用価値が高まり、売主・買主双方にメリットがあるケースがあります。隣地所有者は、土地を拡張できるため、市場価格に近い金額で購入してくれる可能性があります。
(2) 買取業者の活用(市場価格の6-7割、早期売却)
買取業者は、不動産を直接買い取る業者です。仲介より早く売却できるメリットがありますが、買取価格は市場価格の6-7割程度が一般的です。
| 項目 | 仲介売却 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却期間 | 3-6ヶ月 | 数日-1ヶ月 |
| 売却価格 | 市場価格 | 市場価格の6-7割 |
| 仲介手数料 | あり(物件価格の3%+6万円+消費税) | なし |
| 向いているケース | 時間をかけて高値で売りたい | 早期に確実に売却したい |
2024年から不動産会社の仲介手数料制限が緩和されたため、過去に断られた買取業者でも改めて相談すると対応してもらえる可能性があります。複数の買取業者で査定を比較し、最も良い条件を選びましょう。
(3) 相続土地国庫帰属制度(相続した土地を国に返還)
相続土地国庫帰属制度は、2023年4月27日に開始された制度で、相続した土地を国に返還できます。
主な要件:
- 建物がない
- 担保権がない
- 境界が明確
- 崖地でない
- 土壌汚染がない
費用:
- 負担金: 原則20万円(面積により異なる)
- 審査手数料: 約1.4万円
この制度は、相続した土地を手放したいが買い手が見つからない場合の最終手段として有効です。ただし、要件を満たす必要があり、負担金がかかるため、詳細は法務局に確認を推奨します。
(4) 土地の活用法(太陽光発電、駐車場等)
売却が困難な土地は、活用することで収益を得る方法もあります。
- 太陽光発電: 日当たりの良い土地は太陽光発電の設置に適している
- 駐車場: 都市部や駅周辺の土地は駐車場として貸し出せる
- 資材置き場: 建設業者等に貸し出す
これらの活用法により、固定資産税や維持管理費用をカバーしつつ、将来的な売却機会を待つことができます。
(5) 自治体への寄付(公共性が高い土地)
自治体への寄付は、多くの場合断られますが、公共性が高い土地(道路、公園等に隣接する土地)は受け入れられる可能性があります。
自治体によって受け入れ基準が異なるため、まずは自治体の財産管理部署に相談しましょう。
売れない土地を放置するリスクと早期対処の重要性
売れない土地を放置すると、以下のようなリスクがあります。
(1) 固定資産税・都市計画税の継続負担
土地を所有している限り、毎年1月1日時点で固定資産税・都市計画税が課税されます。
税額の目安:
- 固定資産税: 固定資産税評価額の1.4%
- 都市計画税: 固定資産税評価額の0.3%(都市計画区域内のみ)
売却できない土地でも税金は継続的にかかるため、早期に対処することが重要です。
(2) 維持管理費用(草刈り、不法投棄防止)
土地を適切に管理しないと、雑草が生い茂り、不法投棄の対象になる可能性があります。近隣住民からの苦情や行政指導を受ける場合もあるため、定期的な草刈りや清掃が必要です。
これらの維持管理費用も、土地を所有し続ける限り発生します。
(3) 2024年4月からの相続登記義務化(3年以内、過料10万円以下)
2024年4月から相続登記が義務化されました。相続から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続した土地がある場合は、早急に登記手続きを行い、売却や活用の方針を決める必要があります。登記手続きは司法書士に依頼することができます。
(4) 2024年の法改正(手数料制限緩和)の活用
2024年から不動産会社の仲介手数料制限が緩和され、安価な土地でも不動産会社が扱いやすくなりました。
従来、売却価格が低い土地は仲介手数料が少ないため、不動産会社が積極的に扱わないケースがありましたが、手数料制限緩和により、過去に断られた土地でも改めて相談する価値があります。
まとめ:状況別のアドバイスと次のアクション
土地が売れない原因は、価格設定、土地の形状・接道条件、境界の未確定、立地・需要の問題等、多岐にわたります。まずは、自分の土地がどの原因に該当するかを分析し、適切な対処法を選ぶことが重要です。
状況別のアドバイス:
- 価格が問題の場合: 3ヶ月経過しても売れない場合は価格見直し。複数の不動産会社に査定を依頼し、周辺相場を確認しましょう。
- 形状・接道条件が問題の場合: 隣地所有者への打診を検討。併合により悪条件が解消される可能性があります。
- 境界が未確定の場合: 確定測量を行い、境界を明確にしましょう。費用は30-100万円程度ですが、売却しやすくなります。
- 立地・需要が問題の場合: 買取業者の活用、相続土地国庫帰属制度、土地の活用法(太陽光発電、駐車場等)を検討しましょう。
売れない土地を放置すると、固定資産税や維持管理費用が継続的にかかります。2024年4月から相続登記が義務化されたため、相続した土地がある場合は早急に対応しましょう。
信頼できる不動産会社や専門家(宅地建物取引士、司法書士、税理士等)に相談しながら、最適な売却戦略を立てることを推奨します。
