年収から住宅ローンの借入可能額を計算する方法と無理のない返済計画の立て方

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/18

年収から住宅ローンをいくら借りられるのか知りたい

住宅購入を検討する際、「自分の年収でどれくらいの住宅ローンが組めるのか」「無理なく返済できる額はいくらか」と悩む方は多いでしょう。借入可能額は金融機関の審査基準で決まりますが、実際に無理なく返済できる額とは異なる場合があります。

この記事では、年収から住宅ローンの借入可能額を計算する方法、返済負担率の考え方、無理のない返済計画の立て方を解説します。住宅金融支援機構のフラット35三菱UFJ銀行などの公式情報を参考にしています。

年収別の具体的なシミュレーションを理解することで、現実的な借入計画を立てられるようになります。

この記事のポイント

  • 住宅ローンの借入可能額は年収の5~7倍が一般的な目安、無理なく返済するには5~6倍程度が理想
  • 返済負担率は年間返済額÷年収×100で計算し、金融機関の審査基準は30~35%、理想は25%以下
  • フラット35利用者の平均年収倍率は新築で6~7倍、年収400万円未満が19.8%
  • 住宅ローン以外の借入(自動車ローン、カードローン、奨学金等)も返済負担率に含まれる
  • 2024年以降、金利上昇リスクが高まっており、変動金利選択時は金利上昇に備えた返済計画が必要

年収から住宅ローンを計算する意義と基本の考え方

年収倍率と返済負担率の違い(年収倍率5~7倍、返済負担率25~35%)

住宅ローンの借入額を考える際、「年収倍率」と「返済負担率」の2つの指標があります。

指標 定義 目安
年収倍率 年収に対する住宅購入価格の比率 5~7倍が一般的、5~6倍が理想
返済負担率(返済比率) 年収に占める年間返済額の割合 審査基準30~35%、理想は25%以下

三菱UFJ銀行によると、住宅ローン借入額の目安は年収の5~7倍ですが、無理なく返済するには5~6倍程度が理想的です。

年収倍率よりも返済負担率で考えるほうが現実的であり、金融機関も返済負担率を重視して審査を行います。

フラット35利用者の平均データ(年収倍率6~7倍、年収400万円未満が19.8%)

SUUMOによると、フラット35利用者の平均年収倍率は以下の通りです。

  • 新築住宅:6~7倍
  • 中古住宅:6倍弱

また、三井住友銀行によると、フラット35契約者の19.8%が年収400万円未満であり、最低年収の目安は300万円程度です。

これらのデータから、年収300万円台でも住宅ローンを組むことは可能ですが、借入可能額は1,500万~2,100万円程度が目安となります。

金利動向と住宅ローン(2024年の変動金利引き上げ、約70%が変動金利選択)

Home4Uによると、2024年に主要銀行が変動金利型住宅ローンの金利を約17年ぶりに引き上げました。これは日銀のマイナス金利政策解除の影響です。

一方、変動金利を選択する人は約70%に達しており、固定金利よりも人気があります。ただし、変動金利選択時は今後の金利上昇リスクに備えた返済計画が必要です。

詳細は金融機関やファイナンシャルプランナーにご相談ください。

年収別の借入可能額の目安(年収300万~800万円のシミュレーション)

年収300万円の借入可能額(1,500万~2,100万円程度)

年収300万円の場合、借入可能額は以下の通りです。

返済負担率 年間返済額 月々の返済額 借入可能額(金利1%、35年)
25%(理想) 75万円 約6.3万円 約1,800万円
30%(審査基準) 90万円 約7.5万円 約2,100万円
35%(審査上限) 105万円 約8.8万円 約2,500万円

無理なく返済するには、返済負担率25%以下、借入可能額1,500万~2,100万円程度が目安です。

年収400万円の借入可能額(2,000万~2,800万円程度)

年収400万円の場合、借入可能額は以下の通りです。

返済負担率 年間返済額 月々の返済額 借入可能額(金利1%、35年)
25%(理想) 100万円 約8.3万円 約2,400万円
30%(審査基準) 120万円 約10万円 約2,800万円
35%(審査上限) 140万円 約11.7万円 約3,300万円

年収400万円の場合、借入可能額2,000万~2,800万円程度が現実的です。

年収500万円の借入可能額(2,500万~3,500万円程度)

年収500万円の場合、借入可能額は以下の通りです。

返済負担率 年間返済額 月々の返済額 借入可能額(金利1%、35年)
25%(理想) 125万円 約10.4万円 約3,000万円
30%(審査基準) 150万円 約12.5万円 約3,500万円
35%(審査上限) 175万円 約14.6万円 約4,100万円

年収500万円の場合、借入可能額2,500万~3,500万円程度が目安です。

年収600万~800万円の借入可能額

年収600万円以上の場合、借入可能額は以下のように増加します。

年収 返済負担率25%の借入可能額 返済負担率30%の借入可能額
600万円 約3,600万円 約4,200万円
700万円 約4,200万円 約4,900万円
800万円 約4,800万円 約5,600万円

ただし、借入可能額いっぱいまで借りると、収入減少や支出増加時に返済が困難になるリスクがあるため、余裕を持った借入額設定を推奨します。

フラット35公式シミュレーターの活用

住宅金融支援機構のフラット35公式シミュレーターを活用すれば、年収・金利・返済期間から具体的な借入可能額を簡単に計算できます。

シミュレーターでは、以下の条件を入力します。

  • 年収(額面)
  • 金利(変動金利・固定金利)
  • 返済期間(最長35年)
  • 他の借入の有無

これにより、自分の年収に応じた借入可能額を正確に把握できます。

返済負担率の計算方法と審査基準

返済負担率の計算式(年間返済額÷年収×100)

返済負担率(返済比率)は、年収に占める年間返済額の割合を示す指標です。

計算式:

返済負担率(%)= 年間返済額 ÷ 年収 × 100

:

  • 年収500万円
  • 月々の返済額10万円(年間120万円)
  • 返済負担率 = 120万円 ÷ 500万円 × 100 = 24%

この場合、返済負担率は24%となり、理想的な範囲(25%以下)に収まっています。

金融機関の審査基準(一般的に30~35%以内)

三井住友銀行によると、金融機関の住宅ローン審査では、返済負担率が一般的に30~35%以内であることが求められます。

返済負担率 審査の可否 家計への影響
25%以下 ◎ 審査に通りやすい 無理なく返済可能
25~30% ○ 審査に通る可能性が高い 家計への負担がやや大きい
30~35% △ 審査基準ギリギリ 家計への負担が大きい
35%以上 × 審査に通りにくい 返済困難のリスクが高い

返済負担率が高すぎると、収入減少や支出増加時に返済が困難になるリスクが高まります。

他の借入の影響(自動車ローン、カードローン、奨学金等)

返済負担率の計算には、住宅ローン以外の全ての借入が含まれます。

含まれる借入:

  • 自動車ローン
  • カードローン
  • クレジットカードのリボ払い
  • 奨学金返済

:

  • 年収500万円
  • 住宅ローン月々10万円(年間120万円)
  • 自動車ローン月々3万円(年間36万円)
  • 合計返済額156万円
  • 返済負担率 = 156万円 ÷ 500万円 × 100 = 31.2%

この場合、返済負担率が31.2%となり、審査基準ギリギリです。住宅ローンを組む前に、他の借入を整理することを推奨します。

額面年収と手取り年収の違い

金融機関の審査では、額面年収(税込年収)を基準に計算します。一方、実際の返済計画を立てる際は、手取り年収で考えることが重要です。

:

  • 額面年収500万円
  • 手取り年収約400万円(社会保険料・税金を差し引いた後)

審査では額面年収500万円を基準にしますが、実際に使える金額は手取り年収400万円です。返済計画を立てる際は、手取り年収を基準にして余裕を持った計画を立ててください。

無理なく返済できる借入額の考え方(理想的な返済負担率25%以下)

家計への負担を軽減する返済負担率(25%以下が理想)

無理なく返済するには、返済負担率を25%以下に抑えることが理想的です。

理由:

  • 家計への負担が少なく、生活費・教育費・娯楽費に余裕が生まれる
  • 収入減少や支出増加時にも対応しやすい
  • 金利上昇時のリスクに備えられる

返済負担率25%以下を目指すことで、長期的に安定した返済が可能になります。

収入減少・支出増加リスクへの備え(子どもの教育費、親の介護費等)

住宅ローンは最長35年の長期返済となるため、以下のリスクを考慮する必要があります。

  • 収入減少リスク:転職、病気、リストラ等
  • 支出増加リスク:子どもの教育費、親の介護費、医療費等

借入可能額いっぱいまで借りると、これらのリスクに対応できなくなる可能性があります。余裕を持った借入額設定を推奨します。

金利上昇リスクへの対応(変動金利選択時)

変動金利型住宅ローンを選択する場合、金利上昇リスクに備える必要があります。

シミュレーション例(借入額3,000万円、返済期間35年):

金利 月々の返済額 年間返済額
0.5% 約7.8万円 約93.6万円
1.0% 約8.5万円 約102万円
1.5% 約9.2万円 約110.4万円
2.0% 約10万円 約120万円

金利が0.5%から2.0%に上昇すると、月々の返済額が約2.2万円増加します。変動金利を選択する際は、金利上昇時の返済額をシミュレーションし、対応できる範囲で借入額を設定してください。

ライフプラン別の借入額設定(子育て世帯、共働き世帯等)

ライフプランに応じて、適切な借入額を設定してください。

ライフプラン 借入額の考え方
子育て世帯 教育費を考慮し、返済負担率20~25%以下に抑える
共働き世帯 片方の収入だけで返済できる額に設定(配偶者の退職リスク対策)
単身世帯 返済負担率25%以下、将来の結婚・子育てを考慮

ライフプランに合わせた現実的な借入計画を立てることが重要です。

住宅ローン審査で重視されるポイントと準備

最低年収の目安(300万円程度)

三井住友銀行によると、住宅ローン審査の最低年収の目安は300万円程度です。

ただし、金融機関によって基準は異なるため、事前に確認してください。

勤続年数・雇用形態の影響

住宅ローン審査では、勤続年数と雇用形態も重視されます。

項目 審査への影響
勤続年数3年以上 ◎ 審査に通りやすい
勤続年数1~3年 ○ 審査に通る可能性あり
勤続年数1年未満 △ 審査に通りにくい
正社員 ◎ 審査に通りやすい
契約社員・派遣社員 △ 審査が厳しくなる
自営業・フリーランス △ 収入証明が複雑(確定申告書3年分が必要な場合あり)

勤続年数が短い場合や、非正規雇用の場合は、審査が厳しくなる傾向があります。

信用情報のチェック(クレジットカードの支払い遅延等)

住宅ローン審査では、信用情報がチェックされます。

審査でマイナスになる要因:

  • クレジットカードの支払い遅延・延滞
  • 携帯電話料金の未払い
  • 自己破産・債務整理の履歴

審査前に、信用情報機関(CIC、JICC等)で自分の信用情報を確認し、問題があれば解決してください。

頭金の有無と借入可能額への影響

頭金なしでも住宅ローンは借りられますが、以下の影響があります。

項目 頭金あり 頭金なし
借入額 少なくなる 多くなる
返済負担 軽くなる 重くなる
審査 通りやすい 厳しくなる
金利優遇 受けられる場合がある 受けられない場合がある

頭金があると、借入額が減るため返済負担が軽くなり、金利優遇を受けられる場合もあります。

住宅ローン控除の活用(2025年入居分の条件:省エネ基準適合住宅は3,000万円、長期優良住宅は4,500万円)

AERA HOMEによると、2025年入居分の住宅ローン控除の借入限度額は以下の通りです。

住宅の種類 借入限度額 控除額(年間最大)
長期優良住宅・低炭素住宅 4,500万円 31.5万円(4,500万円×0.7%)
省エネ基準適合住宅 3,000万円 21万円(3,000万円×0.7%)
その他の住宅 対象外 -

2024年1月以降、新築住宅が住宅ローン控除を受けるには省エネ性能が必須要件となっています。住宅ローン控除を最大限活用するには、省エネ基準適合住宅以上を選ぶことが重要です。

詳細は税理士やファイナンシャルプランナーにご相談ください。

まとめ:ライフプランに合わせた現実的な借入計画の立て方

年収から住宅ローンの借入可能額を計算する際は、年収倍率5~7倍、返済負担率25~35%を目安にしてください。無理なく返済するには、返済負担率25%以下、年収倍率5~6倍程度が理想的です。

フラット35公式シミュレーターや各銀行のシミュレーターを活用し、年収・金利・返済期間から具体的な借入可能額を計算しましょう。返済負担率の計算には、住宅ローン以外の全ての借入(自動車ローン、カードローン、奨学金等)が含まれるため、事前に整理が必要です。

2024年以降、金利上昇リスクが高まっており、変動金利選択時は金利上昇に備えた返済計画が必要です。収入減少や支出増加リスクも考慮し、余裕を持った借入額設定を推奨します。

住宅ローン審査では、年収、勤続年数、雇用形態、信用情報、頭金の有無がチェックされます。審査前に信用情報を確認し、問題があれば解決してください。

信頼できるファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーに相談しながら、ライフプランに合わせた現実的な借入計画を立てましょう。

よくある質問

Q1住宅ローンは年収の何倍まで借りられますか?

A1一般的には年収の5~7倍が目安です。フラット35利用者の平均年収倍率は新築で6~7倍、中古で6倍弱となっています。ただし、無理なく返済するには5~6倍程度が理想的です。借入可能額いっぱいまで借りると、収入減少や支出増加時に返済が困難になるリスクがあるため、余裕を持った借入額設定を推奨します。

Q2手取り年収と額面年収のどちらで計算しますか?

A2金融機関の審査では額面年収(税込年収)を基準に計算します。ただし、実際の返済計画を立てる際は手取り年収で考えることが重要です。額面年収500万円の場合、手取り年収は約400万円(社会保険料・税金を差し引いた後)となります。審査では額面年収を基準にしますが、実際に使える金額は手取り年収です。

Q3返済負担率の目安はどれくらいですか?

A3金融機関の審査基準は30~35%ですが、無理なく返済するには25%以下が理想的です。返済負担率が高すぎると家計への負担が大きくなり、収入減少や支出増加時に返済が困難になるリスクがあります。返済負担率は「年間返済額÷年収×100」で計算し、住宅ローン以外の借入(自動車ローン、カードローン、奨学金等)も含まれます。

Q4頭金なしでも住宅ローンは借りられますか?

A4可能ですが、借入額が増えるため返済負担も大きくなります。また、審査が厳しくなる傾向があります。頭金があると借入額が減るため返済負担が軽くなり、金利優遇を受けられる場合もあります。可能であれば物件価格の10~20%程度の頭金を用意することを推奨します。

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Room Match編集部

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