住宅ローンのボーナス払いは危険?平均額と後悔しないための選び方

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/18

住宅ローンのボーナス払いとは(基本的な仕組み)

住宅ローンの返済方法を検討する際、「ボーナス払いを併用すべきか」と悩む方は少なくありません。毎月の返済額を抑えられる一方で、ボーナスが減った場合のリスクも気になるところです。

この記事では、ボーナス払いの平均額・割合、メリット・デメリット、リスク回避策を、金融機関の公式情報と国土交通省の調査データを元に解説します。自分に合った住宅ローン返済計画を立てられるようになります。

この記事のポイント

  • ボーナス払いの平均割合は年間返済額の20-40%で、推奨は20%を目安
  • メリットは月々の返済額抑制、デメリットは返済総額の増加
  • ボーナスは法律上の定めがなく、企業の裁量で支給されるため不確実性がある
  • 契約途中でのボーナス払い停止は原則不可のため、ボーナスなしでも無理なく返済できる計画が重要
  • 繰り上げ返済という柔軟な代替手段を検討することで、固定的なリスクを回避できる

(1) ボーナス払いの定義(毎月払いに加えて半年ごとに増額返済)

**ボーナス払い(ボーナス併用払い)**とは、毎月の返済に加えて、半年ごとに増額返済月を設定する返済方法です。

例えば、3,000万円を35年返済・金利1%で借り入れた場合:

  • ボーナス払いなし: 毎月約8.5万円
  • ボーナス払いあり(年間返済額の20%): 毎月約6.8万円、ボーナス月は約18万円(年2回)

このように、ボーナス払いを併用することで、毎月の返済額を抑えることができます。

(2) ボーナス払いの上限設定(借入額の40-50%が一般的)

多くの金融機関では、ボーナス払いの上限を**借入額の40-50%**に設定しています。

三井住友銀行によると、「借入額の40%くらいまでを上限とする金融機関が多い」とされています。

これは、ボーナス払いの割合が高すぎると、ボーナス減額時のリスクが大きくなるためです。

(3) 引き落とし時期(8月・12月のボーナス支給後の9月・1月)

ボーナス払いの引き落としは、一般的に8月・12月のボーナス支給後の9月・1月に行われます。

ボーナス支給のタイミングは企業により異なるため、自社のボーナス支給月と引き落とし時期が合っているかを確認してください。

(出典: auじぶん銀行

ボーナス払いの平均額と割合(国土交通省調査データ)

(1) 年間返済額の平均(分譲戸建123.5万円、分譲マンション139.1万円)

国土交通省の「住宅市場動向調査(令和2年度)」によると、住宅ローンの年間返済額は以下の通りです。

住宅種別 年間返済額(平均)
分譲戸建 123.5万円
分譲マンション 139.1万円

この平均額を基準に、ボーナス払いの割合を考えることができます。

(2) ボーナス払いの一般的な割合(年間返済額の20-40%)

不動産業界の専門家によると、年間返済額の20-40%程度をボーナス払いに割り当てるのが一般的とされています。

例えば、年間返済額が123.5万円(分譲戸建の平均)の場合:

  • 20%をボーナス払い: 約25万円/年(約12.5万円/回)
  • 40%をボーナス払い: 約50万円/年(約25万円/回)

(出典: META HOUSE

(3) 推奨される割合(20%を目安)

多くの金融機関や専門家は、ボーナス払いの割合は20%を目安にすることを推奨しています。

これは、ボーナスの不確実性を考慮し、無理のない返済計画を立てるためです。

ボーナス払いのメリット・デメリット(返済総額の比較)

(1) メリット:月々の返済額を抑えられ、急な出費に対応できる

ボーナス払いの最大のメリットは、毎月の返済額を抑えられることです。

メリット:

  • 家計の月次キャッシュフローが改善: 月々の返済額が減るため、生活費や急な出費に対応しやすい
  • 住宅購入のハードルが下がる: 毎月の返済額が少ないため、審査に通りやすくなる可能性がある

(出典: 三菱UFJ銀行

(2) デメリット:元金返済が遅くなり、返済総額が増加する

ボーナス払いのデメリットは、元金返済のスピードが遅くなり、返済総額が増加することです。

デメリット:

  • 元金がなかなか減らない: ボーナス時の返済は半年に1回しかないため、元金返済が遅れる
  • 利息支払いが増加: 元金が減らない期間が長いほど、利息が膨らむ
  • 返済総額が増加: ボーナス払いなしと比べて、総返済額が数十万円増える可能性がある

(出典: 北國銀行

(3) 具体的な比較(ボーナス払いあり・なしのシミュレーション)

借入額3,000万円、金利1%、35年返済の場合:

項目 ボーナス払いなし ボーナス払いあり(20%)
毎月返済額 約8.5万円 約6.8万円
ボーナス返済額(年2回) なし 約12.5万円/回
総返済額 約3,557万円 約3,570万円
利息総額 約557万円 約570万円

※金利・借入額・返済期間により異なります。詳細は金融機関でシミュレーションをご確認ください。

このように、ボーナス払いを利用すると、返済総額が約13万円増加します。

ボーナス払いのリスクと注意点(ボーナス減額・廃止時の対応)

(1) ボーナスの不確実性(法律上の定めがなく、企業の裁量で支給)

ボーナスは法律上の定めがなく、企業の裁量で支給されるため、不確実性があります。

  • 景気や企業業績により変動: 業績悪化時にはボーナスが減額・カットされる可能性がある
  • 転職時のリスク: 転職先でボーナスが支給されない場合もある

(出典: リクルート

(2) ボーナス減額・廃止時のリスク(返済計画の見直し、最悪の場合は住宅差し押さえ)

ボーナスが減額・廃止された場合、返済計画を大きく見直す必要があります。

最悪の場合のリスク:

  • 返済不能: ボーナス払い分を返済できなくなる
  • 延滞: 返済遅延により信用情報に傷がつく
  • 住宅差し押さえ: 返済不能が続くと、金融機関が抵当権を実行し、住宅を差し押さえる可能性がある

このようなリスクを回避するため、ボーナスなしでも無理なく返済できる計画を立てることが重要です。

(3) 契約途中での変更の制約(ほとんどの金融機関でボーナス払い停止は原則不可)

ほとんどの金融機関では、契約途中でボーナス払いを停止することは原則不可です。

ボーナス払いから毎月払いへの変更には、以下のような手続きが必要になる場合があります。

  • 条件変更手数料: 数万円程度
  • 審査: 変更には再審査が必要
  • 変更不可: 金融機関によっては変更自体を認めていない

(出典: みずほ銀行

そのため、契約時にボーナス払いを設定する際は、将来のリスクを十分に考慮してください。

ボーナス払いか繰り上げ返済か(柔軟性の違い)

(1) 繰り上げ返済のメリット(柔軟に実行でき、返済総額を削減)

繰り上げ返済とは、ボーナスなどの余裕資金で通常の返済額以上を返済する方法です。

繰り上げ返済のメリット:

  • 柔軟に実行できる: ボーナスが支給された時に、好きなタイミングで実行できる
  • 返済総額を削減: 元金を直接減らすため、利息が削減される
  • 義務ではない: ボーナスが減額された場合でも、繰り上げ返済を見送ることができる

(出典: SBI新生銀行

(2) ボーナス払いとの比較(固定的なリスク vs. 柔軟な選択肢)

項目 ボーナス払い 繰り上げ返済
柔軟性 契約で固定、変更困難 好きなタイミングで実行可能
返済総額 増加する 削減できる
リスク ボーナス減額時に返済困難 ボーナス減額時は見送り可能
手数料 なし 金融機関により異なる(ネット銀行は無料が多い)

繰り上げ返済は、ボーナス払いの固定的なリスクを回避できる柔軟な選択肢です。

(3) ボーナスなしでも無理なく返済できる計画の重要性

2024年時点でも、多くの金融機関が繰り上げ返済を推奨しています。

住宅ローンは35年などの長期にわたるため、以下のライフプランの変化を考慮する必要があります。

  • 教育費: 子どもの進学に伴う教育費の増加
  • 介護費: 親の介護に伴う費用
  • 転職・起業: 収入の変動

ボーナスなしでも無理なく返済できる計画を立て、余裕がある時に繰り上げ返済を活用することが、リスクを抑えながら返済総額を削減する方法です。

まとめ:自分に合った住宅ローン返済計画の立て方

住宅ローンのボーナス払いは、毎月の返済額を抑えられるメリットがある一方、元金返済が遅くなり返済総額が増加するデメリットがあります。また、ボーナスは法律上の定めがなく、企業の裁量で支給されるため、不確実性があります。

契約途中でボーナス払いを停止することは原則不可のため、ボーナスなしでも無理なく返済できる計画を立てることが重要です。

繰り上げ返済という柔軟な代替手段を検討することで、ボーナス払いの固定的なリスクを回避しながら、返済総額を削減できます。

住宅ローン契約は長期にわたるため、ライフプランの変化(転職・教育費・介護等)を考慮し、ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーへの相談を推奨します。

よくある質問

Q1住宅ローンのボーナス払いは本当にお得なのですか?

A1月々の返済額を抑えられるメリットがある一方、元金返済が遅くなり返済総額が増加するデメリットがあります。例えば、3,000万円を35年返済・金利1%で借り入れた場合、ボーナス払い(20%)を利用すると、総返済額が約13万円増加します。また、ボーナスは企業の裁量で支給されるため、減額・廃止のリスクも考慮すべきです。

Q2平均的なボーナス払いの割合はどれくらいですか?

A2年間返済額の20-40%程度が一般的で、多くの金融機関が借入額の40-50%を上限に設定しています。国土交通省の調査によると、分譲戸建の年間返済額は平均123.5万円のため、20%をボーナス払いにすると約25万円/年(約12.5万円/回)となります。推奨は20%を目安にすることです。

Q3ボーナスが減額・カットされた場合、返済はどうなりますか?

A3契約途中でボーナス払いを停止することは原則不可です。条件変更には手数料や再審査が必要で、金融機関によっては変更自体を認めていません。ボーナスが減額・廃止された場合、返済不能により延滞・信用情報への傷・最悪の場合は住宅差し押さえの可能性があります。そのため、ボーナスなしでも無理なく返済できる計画を立てることが重要です。

Q4ボーナス払いと繰り上げ返済、どちらがおすすめですか?

A4繰り上げ返済は、ボーナスが支給された時に好きなタイミングで実行でき、ボーナス払いの固定的なリスクを回避できます。元金を直接減らすため、返済総額を削減できるメリットもあります。ボーナスが減額された場合でも、繰り上げ返済を見送ることができるため、柔軟性が高い選択肢です。2024年時点でも多くの金融機関が繰り上げ返済を推奨しています。

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Room Match編集部

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