マイナス金利政策と住宅ローンの関係とは?
住宅購入や借り換えを検討する際、「マイナス金利が解除されたら住宅ローン金利はどうなるのか」「変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか」と迷う方は少なくありません。
この記事では、マイナス金利政策と住宅ローンの関係、解除後の金利動向、金利タイプの選び方を、日本銀行や住宅金融支援機構などの公的機関のデータをもとに解説します。
住宅ローンの選択や借り換えの判断材料を、正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除したが、住宅ローン金利は急上昇していない
- 変動金利は今後0.1〜0.2%程度上昇する可能性があり、2025年11月時点でフラット35は1.900%
- 新規借入者の約8割が変動金利を選択しているが、家計に余裕がない場合は固定金利型の検討が必要
- 住宅ローンとマイカーローンの併用は可能だが、総返済負担率は30〜35%が上限
(1) マイナス金利政策の仕組みと目的
マイナス金利政策とは、中央銀行が政策金利をマイナスに設定する金融政策です。日本では、日本銀行が2016年1月から2024年3月まで実施しました。
仕組み:
- 金融機関が日本銀行に預ける当座預金の一部にマイナス金利を適用
- 金融機関は日銀に預けるとコストがかかるため、企業や個人への貸し出しを増やすインセンティブが働く
目的:
- 景気刺激(企業の設備投資・個人の住宅購入を促進)
- デフレ脱却(物価上昇率2%の目標達成)
(2) なぜ住宅ローン金利が低下したのか
マイナス金利政策により、金融機関は日銀に資金を預けるよりも貸し出しを増やそうとしました。その結果、住宅ローンの金利競争が激化し、金利が低下しました。
特に変動金利は、短期プライムレート(銀行が優良企業に短期で貸し出す際の最優遇金利)を基準とするため、政策金利の影響を受けやすく、大幅に低下しました。
マイナス金利政策が住宅ローン金利に与えた影響
(1) 2016年〜2024年の金利推移
2016年のマイナス金利政策導入から2024年の解除までの約8年間、住宅ローン金利は歴史的な低水準で推移しました。
主な推移:
- 変動金利: 0.3〜0.5%程度で推移(ネット銀行ではさらに低い水準)
- フラット35(全期間固定金利): 1.0〜1.5%程度で推移
(参考: 住宅金融支援機構)
(2) 変動金利・固定金利それぞれへの影響
変動金利:
- 短期プライムレートを基準とするため、マイナス金利政策の影響を直接受けた
- 2016年以降、0.3〜0.5%の低水準で推移
固定金利(フラット35等):
- 長期国債利回りを基準とするため、変動金利ほど大きな影響はなかった
- ただし1.0〜1.5%程度と、歴史的に見れば低水準
(3) 借入者の金利タイプ選択傾向(約8割が変動金利)
全国銀行協会のデータによると、新規借入者の約8割が変動金利型を選択しています。
理由:
- 変動金利の方が固定金利より低い金利で借り入れできる
- マイナス金利政策下では金利上昇リスクが低いと判断
ただし、マイナス金利解除後は金利上昇リスクを考慮する必要があります。
マイナス金利解除後の住宅ローン金利動向(2024-2025年)
(1) 2024年3月のマイナス金利解除と7月の利上げ
日本銀行は、2024年3月19日にマイナス金利政策を解除しました(2016年1月以来約8年ぶり)。さらに2024年7月には利上げに踏み切り、短期金利が0.25%まで引き上げられました。
影響:
- マイナス金利解除後も住宅ローン金利は急上昇していない
- ただし、2024年10月より実店舗型銀行でも変動型金利の見直しが開始
(2) 2025年11月時点の最新金利動向(フラット35:1.900%)
住まいサーフィンによると、2025年11月時点の住宅ローン金利は以下の通りです。
| 金利タイプ | 金利水準 | 推移 |
|---|---|---|
| 変動金利 | ほぼ横ばい | 今後0.1〜0.2%上昇の可能性 |
| 10年固定 | 引き上げ | 上昇傾向 |
| 35年固定(フラット35買取型) | 1.900% | 前月から引き上げ |
(2025年執筆時点)
(3) 今後の金利見通し(変動金利0.1〜0.2%上昇の可能性)
SBI新生銀行の分析によると、2025年にかけて住宅ローン金利は上昇傾向が続くと予想されています。
見通し:
- 変動金利: 0.1〜0.2%程度の上昇の可能性
- 固定金利: 全体的に上昇傾向
金利動向は経済情勢により変動するため、最新情報の確認が必要です。金融機関やファイナンシャルプランナーへの相談を推奨します。
変動金利と固定金利の選び方:メリット・デメリット比較
(1) 変動金利型のメリット・デメリット
メリット:
- 固定金利より低い金利で借り入れできる
- 金利が据え置かれる場合、総返済額が抑えられる
デメリット:
- 金利上昇リスクがある(半年ごとに金利が見直される)
- 返済額が増加する可能性がある
向いている人:
- 家計に余裕があり、金利上昇時にも対応できる方
- 早期返済を予定している方
(2) 全期間固定金利型(フラット35等)のメリット・デメリット
メリット:
- 借入時の金利が返済完了まで変わらない
- 返済計画が立てやすく、金利上昇リスクがない
デメリット:
- 変動金利より高い金利で借り入れることになる
- 金利が下がっても恩恵を受けられない
向いている人:
- 家計に余裕がなく、返済額の安定を重視する方
- 長期的な資金計画を立てたい方
(3) 固定期間選択型のメリット・デメリット
メリット:
- 一定期間は固定金利で安定、期間終了後は変動金利または再度固定金利を選択できる
- 柔軟性が高い
デメリット:
- 固定期間終了後の金利が不透明
- 期間終了時に金利が上昇している可能性がある
向いている人:
- 数年間は返済額を固定し、将来の金利動向を見極めたい方
(4) 家計状況別のおすすめ金利タイプ
| 家計状況 | おすすめ金利タイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 家計に余裕がある | 変動金利型 | 低金利のメリットを享受、金利上昇時にも対応可能 |
| 家計に余裕がない | 全期間固定金利型 | 返済額の安定を重視、金利上昇リスクを回避 |
| 将来の金利動向を見極めたい | 固定期間選択型 | 一定期間は安定、期間終了後に柔軟に対応 |
金融機関やファイナンシャルプランナーに相談し、自分の家計状況に合った金利タイプを選びましょう。
住宅ローンの借り換えと返済計画の注意点
(1) 住宅ローンとマイカーローンの併用(返済比率30〜35%)
北陸銀行によると、住宅ローンとマイカーローンは併用できますが、総返済負担率は30〜35%程度が上限とされています。
総返済負担率の計算:
総返済負担率 = (年間返済額の合計 ÷ 年収) × 100
注意点:
- 先に住宅ローンの借り入れから申し込むのが一般的
- マイカーローンなどの借り入れがある状態で住宅ローンを申し込むと、審査で不利になる
- 1つの金融機関に集約すると、返済管理が楽になり、金利優遇の可能性もある
(2) 借り換えのタイミングと判断基準
借り換えを検討する際は、以下の基準で判断しましょう。
判断基準:
- 金利差: 現在の金利と借り換え後の金利に1%以上の差がある
- 残存期間: 返済期間が10年以上残っている
- 借入残高: 1,000万円以上残っている
注意点:
- 借り換え費用(事務手数料、登記費用等)がかかる
- 借り換え費用と金利削減効果を比較して判断
(3) 団体信用生命保険・諸費用の確認
借り換え時には、金利だけでなく以下の項目も確認が必要です。
団体信用生命保険(団信):
- 契約者が死亡・高度障害状態になった場合、残債が保険金で返済される保険
- 保障内容は金融機関により異なる(がん特約、三大疾病特約等)
諸費用:
- 事務手数料、保証料、登記費用、印紙代等
- 金融機関により異なるため、複数社で比較
(4) 金利上昇リスクへの備え
変動金利を選択する場合、金利上昇リスクに備えることが重要です。
対策:
- 金利が1%上昇した場合の返済シミュレーションを実施
- 繰り上げ返済用の資金を確保
- 家計に余裕を持った返済計画を立てる
金融機関やファイナンシャルプランナーに相談しながら、リスクに備えた計画を立てましょう。
まとめ:マイナス金利解除後の住宅ローン選びのポイント
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除しましたが、住宅ローン金利は急上昇していません。ただし、変動金利は今後0.1〜0.2%程度上昇する可能性があり、2025年11月時点でフラット35は1.900%となっています(2025年執筆時点)。
新規借入者の約8割が変動金利を選択していますが、家計に余裕がない場合や金利上昇リスクを避けたい場合は固定金利型の検討が必要です。
住宅ローンとマイカーローンの併用は可能ですが、総返済負担率は30〜35%が上限です。借り換えを検討する際は、金利だけでなく団体信用生命保険の保障内容や諸費用も確認しましょう。
金融機関やファイナンシャルプランナーに相談しながら、自分の家計状況に合った住宅ローンを選んでください。
