住宅ローンのボーナス払いとは?基本的な仕組み
住宅ローンのボーナス払い(ボーナス併用払い)とは、年2回のボーナス時に通常の月々返済額に一定額を上乗せして返済する方法です。月々の返済額を抑えながら、ボーナス時にまとまった額を返済することで、家計の負担を分散させることができます。
この記事では、住宅ローンのボーナス払いの利用実態、平均額、メリット・デメリット、適切な設定方法、リスクと対策について解説します。三菱UFJ銀行やリクルートの調査のデータを参照しながら、ボーナス払いを利用すべきか判断するポイントをお伝えします。
この記事のポイント
- ボーナス払いの平均割合は年間返済額の20〜40%程度が一般的
- 66%の住宅ローン利用者がボーナス払いなしを選択(リスク回避傾向)
- 月々の返済額を抑えられる一方、総返済額が増えるデメリットがある
- ボーナスの減額・不支給リスクがあり、企業業績に左右される可能性
- 繰上返済の方が柔軟性が高く、総返済額も抑えられる場合がある
ボーナス払いの利用実態と平均額
(1) ボーナス払い利用者の割合
リクルートの調査によると、2025年現在、66%(450人中296人)の住宅ローン利用者がボーナス払いなしを選択しています。
ボーナス払いの利用状況:
- ボーナス払いなし: 66%
- ボーナス払いあり: 34%
ボーナス払いを利用しない理由として、「ボーナスの変動リスクを避けたい」「ボーナスは貯蓄や他の支出に使いたい」といった声が多く、リスク回避を優先する傾向が強まっています。
(2) 平均的な設定額と割合
ボーナス払いを利用している方の平均的な設定額と割合は以下の通りです。
ボーナス払いの平均割合:
- **年間返済額の20〜40%**が一般的
- **ボーナスの約30%**を返済に充てている人が多い
具体例:
- 年間返済額120万円(月10万円×12ヶ月)の場合、ボーナス払い部分は24万円〜48万円(年2回で各12万円〜24万円)
- ボーナス支給額40万円の場合、1回あたり10万円〜12万円程度を返済に充てる計算
多くの金融機関では、借入総額に対するボーナス払い部分の割合を40%以下に制限しています。
ボーナス払いのメリット・デメリット
(1) 月々の返済額を抑えられるメリット
ボーナス払いを利用すると、月々の返済額を抑えることができます。
シミュレーション例(借入額3,000万円、金利1.0%、返済期間35年):
| ボーナス払い | 月々の返済額 | ボーナス時の返済額(年2回) |
|---|---|---|
| なし(月払いのみ) | 約8.5万円 | 0円 |
| 借入額の20%をボーナス払い | 約6.8万円 | 約10万円 |
| 借入額の40%をボーナス払い | 約5.1万円 | 約20万円 |
ボーナス払いを利用することで、月々の返済額を2〜3万円程度抑えられるため、日常の家計負担を軽減できます。
(2) 総返済額が増えるデメリット
ボーナス払いを利用すると、元金の減少が遅くなり、総返済額が増えるデメリットがあります。
総返済額の比較(借入額3,000万円、金利1.0%、返済期間35年):
| ボーナス払い | 総返済額 |
|---|---|
| なし(月払いのみ) | 約3,560万円 |
| 借入額の20%をボーナス払い | 約3,580万円(+20万円) |
| 借入額の40%をボーナス払い | 約3,600万円(+40万円) |
ボーナス払いを利用すると、月払いのみと比較して総返済額が数十万円増加します。これは、ボーナス払い部分の元金返済が遅れるため、その間に発生する利息が増えるためです。
(3) ボーナス変動リスク
ボーナス払いの最大のリスクは、ボーナスの減額・不支給リスクです。
ボーナス変動の要因:
- 企業業績の悪化(赤字、売上減少等)
- 個人評価の低下(成績不振、勤務態度等)
- 雇用形態の変更(正社員から契約社員、転職等)
- 産休・育休の取得(支給額が減少する場合がある)
ボーナスが減額・不支給になった場合、返済が困難になり、延滞や滞納のリスクが発生します。このため、ボーナス払いは企業業績やボーナスが安定している職種(公務員、インフラ企業等)の方に適しています。
ボーナス払いの適切な設定方法
(1) ボーナス払い割合の目安
ボーナス払いを設定する際は、以下の目安を参考にしましょう。
推奨される設定方法:
- 借入金額の20%を目安に設定する(月々の負担を軽減しつつリスクを抑える)
- ボーナスが半分になっても支払える金額に設定する(例:ボーナス40万円なら10万円程度)
- ボーナスの全額を返済に充てない(教育費、医療費等の突発的な支出に備える)
設定例:
- ボーナス支給額40万円の場合、1回あたり10万円程度(ボーナスの25%)を返済に充てる
- 残りの30万円は貯蓄や他の支出に使う
こうすることで、ボーナスが減額された場合でも返済を継続できる余裕を持つことができます。
(2) 支払い月の設定ポイント
ボーナス払いの支払い月は、ボーナス支給月の翌月に設定することをおすすめします。
支払い月の設定例:
- 夏のボーナス支給月が6月 → 支払い月を7月に設定
- 冬のボーナス支給月が12月 → 支払い月を1月に設定
ボーナスを確実に受け取ってから返済できるため、資金繰りが安定します。支給月と支払い月が同じ場合、ボーナス支給前に返済が必要になるリスクがあります。
ボーナス払いのリスクと対策
(1) ボーナス減額・不支給時の対応
ボーナスが減額・不支給になった場合の対応方法を事前に考えておくことが重要です。
対応方法:
- 緊急予備資金を準備: ボーナス払い相当額の6ヶ月分(年3回分)を貯蓄として確保
- 金融機関に相談: 返済条件の変更(月払いのみへの変更、返済期間の延長等)を申請
- 繰上返済の活用: ボーナス払いの代わりに一部繰上返済を活用し、柔軟性を保つ
ただし、多くの金融機関ではボーナス払いの途中変更は原則として難しく、条件変更には手数料がかかる場合があります。契約前に金融機関の条件を確認しておくことをおすすめします。
(2) 繰上返済との使い分け
ボーナス払いと繰上返済は、どちらもボーナスを使って返済する点は同じですが、柔軟性に大きな違いがあります。
ボーナス払いと繰上返済の比較:
| 項目 | ボーナス払い | 繰上返済 |
|---|---|---|
| 返済義務 | 必ず返済が必要 | 任意(資金に余裕がある時のみ) |
| 総返済額 | やや増える | 減る(利息削減効果) |
| 柔軟性 | 低い(途中変更が難しい) | 高い(毎回判断できる) |
| 手数料 | なし | 金融機関により異なる(無料〜数万円) |
繰上返済の方が柔軟性が高く、ボーナスの支給額や家計状況に応じて毎回判断できるため、リスクを抑えながら総返済額を減らすことができます。
まとめ:ボーナス払いを利用すべきか判断するポイント
住宅ローンのボーナス払いは、月々の返済額を抑えられる一方、総返済額が増えるデメリットやボーナス変動リスクがあります。2025年現在、66%の住宅ローン利用者がボーナス払いなしを選択しており、リスク回避を優先する傾向が強まっています。
ボーナス払いを利用する場合は、借入金額の20%を目安に設定し、ボーナスが半分になっても支払える金額にすることが重要です。また、支払い月はボーナス支給月の翌月に設定し、確実に受け取ってから返済できるようにしましょう。
ボーナスの減額・不支給リスクを考慮すると、繰上返済の方が柔軟性が高く、総返済額も抑えられる場合があります。ボーナス払いと繰上返済の使い分けについては、ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談しながら、最適な返済計画を立てましょう。


