住宅ローンの組み方の基本と全体の流れ
住宅を購入する際、「どれくらい借りられるのか」「金利はどうやって選ぶのか」と不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、住宅ローンの組み方を、借入額の決め方、金利タイプの選び方、返済計画の立て方まで、公式データを元に解説します。初めてローンを組む方でも、自分に合った判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローン審査は事前審査と本審査の2段階で、申し込みから融資実行まで約1〜2ヶ月が目安
- 返済負担率(年収に対する返済額の割合)は30〜35%以内が審査通過の基準
- 金利タイプは「変動金利」「固定金利」「固定期間選択型」の3種類で、家計状況で選ぶべきタイプが異なる
- 共働き夫婦は単独ローン・ペアローン・収入合算の3つの選択肢があり、ライフプランで判断が必要
- 住宅ローン控除は年末残高の0.7%を最大13年間控除可能(新築の場合)
(1) 事前審査と本審査の2段階審査
住宅ローンの審査は、みずほ銀行の解説によると「事前審査」と「本審査」の2段階で行われます。
事前審査:
- 目的:借入可能額の目安を把握
- 期間:数日〜1週間程度
- 審査内容:年収、勤続年数、信用情報の簡易確認
本審査:
- 目的:融資の最終判断
- 期間:1〜2週間程度
- 審査内容:詳細な返済能力、物件の担保価値、健康状態(団信加入)
事前審査に通っても本審査で落ちる可能性があるため、必要書類を正確に揃えることが重要です。
(2) 申し込みから融資実行までの期間(1〜2ヶ月)
住宅ローンの申し込みから融資実行までは、一般的に約1〜2ヶ月が目安です。
全体の流れ:
- 物件の選定・購入申込
- 事前審査(数日〜1週間)
- 売買契約の締結(手付金の支払い)
- 本審査(1〜2週間)
- 金銭消費貸借契約(ローン契約)
- 融資実行・物件引き渡し
引き渡し希望日から逆算して、余裕を持って審査を進めることをおすすめします。
(3) 必要な書類と準備
住宅ローン審査には、以下の書類が必要です。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカード等 |
| 収入証明 | 源泉徴収票、確定申告書、給与明細等 |
| 物件資料 | 売買契約書、重要事項説明書、登記簿謄本等 |
| 勤務先情報 | 在籍証明書、健康保険証等 |
事前に書類を揃えておくと、審査がスムーズに進みます。
借入額の決め方と返済負担率の目安
(1) 返済負担率30〜35%以内が審査通過の基準
SUUMOの解説によると、住宅ローン審査では「返済負担率」が重視されます。
返済負担率の計算式:
返済負担率 = 年間返済額 ÷ 年収 × 100
審査基準は金融機関により異なりますが、一般的に30〜35%以内が審査通過の目安です。
例(年収500万円の場合):
- 返済負担率30%:年間返済額150万円(月々12.5万円)まで
- 返済負担率35%:年間返済額175万円(月々14.6万円)まで
(2) 頭金の準備(物件価格の10〜20%が目安)
頭金は物件価格の10〜20%が目安です。頭金が多いほど借入額が減り、毎月の返済負担が軽減されます。
頭金のメリット:
- 借入額が減り、総返済額が減少
- 返済負担率が下がり、審査に通りやすくなる
- 金利優遇を受けられる場合がある
頭金のデメリット:
- 貯蓄が減り、緊急時の資金が不足する可能性
- 住宅ローン控除の効果が減る(控除額は年末残高の0.7%)
頭金と諸費用のバランスを考えて、無理のない範囲で準備してください。
(3) 諸費用の考慮(物件価格の5〜10%)
住宅購入時には、物件価格以外に諸費用がかかります。一般的には物件価格の**5〜10%**が目安です。
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 物件価格×3%+6万円+消費税 | 100〜150万円 |
| 登記費用 | 所有権移転登記等 | 30〜50万円 |
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額×3% | 30〜50万円 |
| ローン関連費用 | 事務手数料、保証料、団信保険料等 | 50〜100万円 |
| 火災保険 | 10年一括払い | 20〜30万円 |
諸費用は基本的に住宅ローンに含められないため、自己資金で用意が必要です。
金利タイプの選び方(変動金利・固定金利・固定期間選択型)
(1) 変動金利のメリット・デメリット
全国銀行協会の解説によると、変動金利は市場金利に連動して金利が変動するタイプです。
メリット:
- 固定金利より金利が低く、初期の返済額が少ない
- 金利が下がれば返済額も減少
デメリット:
- 金利上昇リスクがある(2024年マイナス金利解除以降、上昇傾向)
- 将来の返済額が確定しない
- 長期借入では総返済額が増加する可能性
5年ルール・125%ルール:
- 5年ルール:金利が上昇しても5年間は毎月返済額が変わらない
- 125%ルール:返済額見直し時、従来の125%を超えない
(2) 固定金利のメリット・デメリット
固定金利は、借入時の金利が返済終了まで変わらないタイプです。代表例はフラット35です。
メリット:
- 返済額が確定し、家計管理がしやすい
- 金利上昇リスクがない
- 長期的な資金計画が立てやすい
デメリット:
- 変動金利より金利が高い
- 金利が下がっても返済額は変わらない
(3) 固定期間選択型の特徴
固定期間選択型は、当初5年・10年・15年など一定期間は固定金利で、期間終了後に変動金利または再度固定金利を選べるタイプです。
メリット:
- 固定期間中は返済額が確定
- 変動金利と固定金利の中間的な選択肢
デメリット:
- 固定期間終了後に金利が上昇するリスク
- 期間終了時の判断が必要
(4) 家計状況別のおすすめ金利タイプ
りそな銀行の解説によると、家計状況で選ぶべきタイプが異なります。
| 家計状況 | おすすめタイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 家計に余裕があり金利上昇リスクを許容できる | 変動金利 | 初期の返済額が少なく、繰上返済で対応可能 |
| 金利上昇が不安で返済額を固定したい | 固定金利 | 返済額が確定し、家計管理がしやすい |
| 当初10年は返済額を固定したい | 固定期間選択型 | 固定期間中は安心、期間終了後に再検討 |
返済期間と返済方法の決め方
(1) 返済期間の選び方(20年・25年・35年の比較)
返済期間は、20年・25年・35年が一般的です。返済期間が長いほど毎月の返済額は少なくなりますが、総返済額は増加します。
例(借入額3,000万円、金利1.0%の場合):
| 返済期間 | 毎月返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 20年 | 約13.8万円 | 約3,312万円 |
| 25年 | 約11.3万円 | 約3,390万円 |
| 35年 | 約8.5万円 | 約3,557万円 |
返済期間を短くすると総返済額が減りますが、毎月の返済負担が大きくなります。家計の余裕と将来の収入見込みを考慮して選んでください。
(2) 元利均等返済と元金均等返済の違い
住宅ローンの返済方法には、元利均等返済と元金均等返済の2種類があります。
元利均等返済:
- 毎月の返済額(元金+利息)が一定
- 家計管理がしやすい
- 総返済額は元金均等返済より多い
元金均等返済:
- 毎月の元金返済額が一定
- 初期の返済額が大きく、徐々に減少
- 総返済額は元利均等返済より少ない
一般的には元利均等返済が多く選ばれています。
(3) 繰上返済の活用方法
繰上返済は、予定より早く元金を返済する方法です。繰上返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。
期間短縮型:
- 返済期間を短縮
- 総返済額が大幅に減少
返済額軽減型:
- 毎月の返済額を減少
- 家計の負担を軽減
繰上返済は早めに行うほど効果が大きいため、家計に余裕があれば積極的に活用してください。
共働き夫婦のローンの組み方(単独・ペア・収入合算)
(1) 単独ローンのメリット・デメリット
単独ローンは、夫または妻のいずれか1人が債務者となってローンを組む方法です。
メリット:
- 手続きがシンプル
- 配偶者が育児・休職しても影響が少ない
デメリット:
- 借入可能額が1人の年収で決まる
- 住宅ローン控除を1人しか受けられない
(2) ペアローンのメリット・デメリット
みずほ銀行の解説によると、ペアローンは夫婦がそれぞれ債務者となり2本のローンを組む方法です。
メリット:
- 借入可能額が増える
- 住宅ローン控除を2人で受けられる
- それぞれが団信に加入できる
デメリット:
- 両者が債務者となるため、出産・育児・休職時に返済が困難になるリスク
- 手続きが複雑で諸費用も2倍かかる
(3) 収入合算のメリット・デメリット
収入合算は、配偶者の収入を合わせて借入可能額を増やす方法です。配偶者は連帯保証人となります。
メリット:
- 借入可能額が増える
- 手続きがペアローンより簡単
デメリット:
- 住宅ローン控除を1人しか受けられない
- 配偶者が連帯保証人となるため、返済義務が発生
(4) ライフプラン別のおすすめの組み方
| ライフプラン | おすすめの組み方 | 理由 |
|---|---|---|
| 出産・育児を予定している | 単独ローン | 配偶者の休職時も安心 |
| 両者とも長期就業予定 | ペアローン | 借入額を増やし、控除を2人で受けられる |
| 一方の収入が少ない | 収入合算 | 借入額を増やしつつ手続きは簡単 |
まとめ:失敗しない住宅ローンの組み方
住宅ローンの組み方では、返済負担率30〜35%以内を目安に借入額を決め、家計状況に応じた金利タイプを選ぶことが重要です。共働き夫婦は、将来のライフプランに応じて単独ローン・ペアローン・収入合算を選択してください。
住宅ローン審査は事前審査と本審査の2段階で、申し込みから融資実行まで約1〜2ヶ月かかります。必要書類を事前に揃え、余裕を持って審査を進めましょう。
住宅ローン控除(年末残高の0.7%を最大13年間控除)も活用しながら、無理のない返済計画を立てることが大切です。詳細は国土交通省の住宅ローン減税ページや、ファイナンシャルプランナー(FP)にご相談ください。
