年収1200万円で住宅ローンを検討する方へ
年収1200万円の世帯で住宅購入を検討する際、「実際にいくらまで借りられるのか」「無理なく返済できる金額はどのくらいか」という疑問を持つ方は少なくありません。金融機関の借入可能額の上限と、現実的に返済できる適正額には大きな差があるため、慎重に判断する必要があります。
この記事では、年収1200万円の方が住宅ローンを組む際の借入可能額、適正な返済額、金利タイプの選び方、共働き世帯特有のリスクについて、みずほ銀行や住宅金融支援機構(フラット35)の公式情報を元に解説します。
無理のない資金計画を立て、将来のライフプランと両立できる住宅購入を実現しましょう。
この記事のポイント
- 年収1200万円の借入可能額は9,600万~1億800万円だが、無理なく返済できる適正額は6,500万~8,200万円程度
- 返済負担率は金融機関の審査基準では35-40%だが、現実的には25%以下、理想は20%程度を維持すると安全
- 変動金利0.5%の場合、月返済額20万~25万円で7,705万~9,631万円、固定金利1.86%(フラット35)では6,171万~7,714万円が目安
- 共働きで年収1200万円の場合、一方が退職・減収すると返済負担率が大幅に上昇するリスクを考慮する必要がある
年収1200万円の借入可能額と適正額
(1) 借入可能額の上限
年収1200万円の世帯が住宅ローンを組む場合、金融機関の審査基準では**返済負担率35-40%**で計算されます。この基準で算出される借入可能額は以下の通りです。
| 金利タイプ | 適用金利 | 返済負担率35% | 返済負担率40% |
|---|---|---|---|
| 変動金利 | 0.5% | 9,600万円 | 1億800万円 |
| 固定金利(フラット35) | 1.86% | 7,500万円 | 8,600万円 |
(出典: フラット35公式シミュレーター、2024年12月金利データ)
金融機関の審査基準では、年収1200万円の場合、最大1億円以上の借入が可能です。しかし、この金額は「審査上借りられる上限額」であり、「無理なく返済できる金額」ではありません。
(2) 無理なく返済できる適正額
みずほ銀行によると、年収1200万円の世帯が無理なく返済できる適正額は、**返済負担率20-25%**で計算されます。
年収1200万円の手取りは約900万円(月75万円)です。この手取り額を基準に、現実的な月返済額を算出すると以下のようになります。
| 返済負担率 | 年間返済額 | 月返済額 | 借入可能額(変動0.5%) | 借入可能額(固定1.86%) |
|---|---|---|---|---|
| 20% | 240万円 | 20万円 | 7,705万円 | 6,171万円 |
| 25% | 300万円 | 25万円 | 9,631万円 | 7,714万円 |
(出典: 住まいサーフィン)
適正額は6,500万~8,200万円程度と考えられます。金融機関の借入可能額(最大1億円以上)と比べると、2,000万~3,000万円程度低い金額です。
(3) 年収の何倍が目安か
住宅ローンの適正額は、一般的に年収の6-7倍が目安とされています。年収1200万円の場合、7,200万~8,400万円が適正範囲です。
ただし、この目安はあくまで「平均的な家計」を前提としています。以下の要素によって、適正額は変動します。
- 世帯構成: 子どもの人数・年齢(教育費の負担)
- ライフプラン: 将来の転職・起業・介護等の予定
- 住宅以外の支出: 車のローン、保険料、習い事等
- 貯蓄状況: 緊急時の予備費、老後資金の準備状況
年収1200万円の世帯は高所得層ですが、**住宅ローン以外にも固定資産税・修繕積立金(マンション)・メンテナンス費用(戸建て)**がかかります。これらを含めた総コストで判断することが重要です。
返済負担率と月返済額の考え方
(1) 金融機関の審査基準(35-40%)
金融機関の住宅ローン審査では、**返済負担率(返済比率)35-40%**を基準に借入可能額を算出します。返済負担率とは、年間のローン返済額が年収に占める割合のことです。
返済負担率の計算式:
返済負担率 = 年間返済額 ÷ 年収 × 100
年収1200万円、返済負担率40%の場合:
年間返済額 = 1,200万円 × 40% = 480万円(月40万円)
この金額は審査上の上限であり、実際にこの金額を返済し続けることは現実的ではありません。
(2) 現実的な返済負担率(20-25%)
CLEVERLY HOMEによると、現実的な返済負担率は25%以下、理想は20%程度とされています。
年収1200万円の場合、手取り約900万円(月75万円)を基準に考えると、以下のようになります。
| 返済負担率 | 年間返済額 | 月返済額 | 手取り月収に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 20% | 240万円 | 20万円 | 約27% |
| 25% | 300万円 | 25万円 | 約33% |
| 30% | 360万円 | 30万円 | 約40% |
手取り月収75万円のうち、**月返済額20万~25万円(手取りの27-33%)**が無理のない範囲です。月返済額30万円以上(手取りの40%以上)になると、教育費・生活費・貯蓄とのバランスが厳しくなります。
(3) 月返済額のシミュレーション
以下は、借入額別の月返済額シミュレーションです(35年返済、元利均等返済)。
| 借入額 | 変動金利0.5% | 固定金利1.86% |
|---|---|---|
| 6,000万円 | 15.6万円 | 19.4万円 |
| 7,000万円 | 18.2万円 | 22.6万円 |
| 8,000万円 | 20.8万円 | 25.9万円 |
| 9,000万円 | 23.4万円 | 29.1万円 |
| 1億円 | 26.0万円 | 32.3万円 |
(出典: フラット35公式シミュレーター)
年収1200万円(手取り月75万円)の場合、月返済額20万~25万円が現実的な範囲です。変動金利0.5%で8,000万円、固定金利1.86%で6,500万円程度が目安となります。
住宅ローンの金利タイプと選び方
(1) 変動金利のメリット・デメリット
メリット:
- 金利が低い(2024年12月時点で0.3-0.5%程度)
- 月返済額が抑えられる
- 金利が下がれば返済額も減少
デメリット:
- 金利上昇リスクがある
- 借入額が大きいほど金利上昇時の返済額増加幅が大きい
- 返済計画が立てにくい
変動金利が向いているケース:
- 借入額が6,000万円以下
- 繰上返済を積極的に行う予定
- 金利上昇時に対応できる貯蓄がある
(2) 固定金利(フラット35)のメリット・デメリット
メリット:
- 借入時の金利が返済終了まで変わらない(2024年12月時点で1.86%)
- 返済計画が立てやすい
- 金利上昇リスクがない
デメリット:
- 変動金利より金利が高い
- 金利が下がっても返済額は減らない
固定金利が向いているケース:
- 借入額が7,000万円以上
- 将来の金利上昇が不安
- 返済計画を確定させたい
(出典: フラット35公式サイト)
(3) 金利別の借入可能額
年収1200万円、返済負担率20-25%の場合の借入可能額は以下の通りです。
| 金利タイプ | 適用金利 | 返済負担率20% | 返済負担率25% |
|---|---|---|---|
| 変動金利 | 0.5% | 7,705万円 | 9,631万円 |
| 固定金利(フラット35) | 1.86% | 6,171万円 | 7,714万円 |
変動金利と固定金利では、借入可能額に1,500万~1,900万円の差があります。変動金利を選ぶと借入額を増やせますが、金利上昇リスクを考慮する必要があります。
共働き世帯の注意点とリスク
(1) ペアローンと収入合算の違い
共働きで年収1200万円の場合、以下の3つの選択肢があります。
| 方法 | 主債務者 | 住宅ローン控除 | 団信 |
|---|---|---|---|
| ペアローン | 夫婦それぞれ | 2人とも受けられる | 2人とも加入必要 |
| 収入合算(連帯債務) | 1人 | 2人とも受けられる | 2人とも加入可能 |
| 収入合算(連帯保証) | 1人 | 主債務者のみ | 主債務者のみ |
| 単独ローン | 1人 | 主債務者のみ | 主債務者のみ |
(出典: LIFULL HOME'S)
ペアローンのメリット:
- 2人とも住宅ローン控除を受けられる(最大控除額が2倍)
- 借入可能額を増やせる
ペアローンのデメリット:
- 2人とも団信加入が必要(費用負担が増える)
- 離婚時に住宅ローンの処理が複雑
(2) 収入継続リスクの考慮
共働きで年収1200万円の場合、一方が退職・減収すると返済が困難になるリスクがあります。
リスク要因:
- 育児休業・時短勤務による収入減
- 転職・独立による収入減
- 病気・介護による退職
横浜・東京の独立系FPによると、世帯年収1200万円で8,000万円の住宅ローンを組む場合、「一方の収入が減少した場合のシミュレーション」を必ず行うべきとされています。
対策:
- 単独ローンで組む(主債務者の年収のみで返済できる金額に抑える)
- ペアローンでも、どちらか一方の収入で返済できる金額に抑える
- 収入減少時の対応策(繰上返済、借換え等)を事前に検討
(3) 教育費・生活費とのバランス
MONEY PLUSによると、世帯年収1200万円、子ども2人の世帯で6,000万円の住宅ローンを組む場合、教育費とのバランスが重要です。
子ども1人あたりの教育費(幼稚園~大学):
- すべて公立: 約800万円
- すべて私立: 約2,200万円
- 私立大学理系: 約700万円
子ども2人を私立大学に進学させる場合、教育費だけで1,400万円以上必要です。住宅ローンの返済と教育費を両立するには、月返済額20万円以下に抑えることが推奨されます。
まとめ:状況別の資金計画のポイント
年収1200万円の世帯が住宅ローンを組む際、借入可能額の上限(最大1億円以上)と適正額(6,500万~8,200万円)には大きな差があります。返済負担率20-25%、月返済額20万~25万円が無理のない範囲です。
変動金利0.5%の場合7,705万~9,631万円、固定金利1.86%(フラット35)の場合6,171万~7,714万円が目安となります。共働き世帯の場合、一方が退職・減収した場合のリスクを考慮し、ペアローン・収入合算・単独ローンの選択肢を慎重に検討する必要があります。
住宅ローンは30年以上の長期返済となるため、将来のライフプラン(子どもの教育費、転職、介護等)を見据えた資金計画を立てることが重要です。詳細はファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーへの相談を推奨します。
