更地に木を植えると固定資産税は安くなる?という誤解を解く
「更地に木を植えれば固定資産税が安くなる」という噂を耳にしたことがある方は少なくありません。特に、住宅を解体して更地にした後、固定資産税が大幅に上がったことに驚き、何か対策はないかと探している方も多いでしょう。
この記事では、更地に木を植えることで固定資産税が軽減されるかどうかを、総務省・国土交通省等の公式情報を元に詳しく解説します。
結論から言うと、単に木を植えるだけでは固定資産税は安くなりません。住宅用地特例が適用されるには、住宅が建っていることが必須条件です。
この記事のポイント
- 更地に木を植えるだけでは固定資産税は安くならず、住宅用地特例は適用されない
- 住宅用地特例が適用されるには、住宅が建っていることが必須条件(課税標準額が1/6または1/3に軽減)
- 農地に転用すれば固定資産税は大幅に安くなる可能性があるが、農業委員会の許可が必要で厳格な要件がある
- 更地の固定資産税を抑える現実的な方法は、住宅を建てる、売却する、賃貸駐車場として活用する等
住宅用地特例の仕組み:住宅が建っていることが必須
固定資産税の負担が軽くなる「住宅用地特例」は、住宅が建っている土地に限定されます。
住宅用地特例とは
住宅用地(住宅が建っている土地)には、課税標準額を大幅に軽減する特例があります。
| 区分 | 軽減内容 |
|---|---|
| 200㎡以下の部分 | 課税標準額を評価額の1/6に軽減 |
| 200㎡超の部分 | 課税標準額を評価額の1/3に軽減 |
| 適用条件 | 住宅が建っていること |
(出典: 総務省)
例えば、評価額1,000万円の土地(200㎡以下)の場合:
- 住宅あり: 課税標準額167万円、固定資産税約2.3万円
- 更地: 課税標準額1,000万円、固定資産税約14万円
住宅を解体すると、固定資産税が約6倍になります。
「住宅」の定義:木は住宅ではない
住宅用地特例が適用される「住宅」とは、人が居住するための建物です。
住宅として認められるもの:
- 戸建て住宅
- マンション・アパート
- 併用住宅(店舗兼住宅等)の居住部分
住宅として認められないもの:
- 木・植栽
- 物置・倉庫(人が居住できない)
- 駐車場
- 太陽光発電設備
単に木を植えるだけでは、住宅用地特例は適用されません。
更地に木を植えても固定資産税は安くならない理由
「更地に木を植えれば固定資産税が安くなる」という噂がありますが、これは誤解です。
植栽は住宅ではない
植栽(木や草花)は、住宅用地特例の適用条件である「住宅」には該当しません。
固定資産税の軽減措置は、住宅政策の一環として設けられています。住宅の供給を促進するため、住宅が建っている土地の税負担を軽くしているのです。
木を植えることは住宅の供給にはつながらないため、軽減措置の対象外となります。
農地転用なら固定資産税は安くなる可能性あり
更地を農地に転用すれば、固定資産税は大幅に安くなる可能性があります。
| 区分 | 固定資産税評価額の目安 |
|---|---|
| 宅地(更地) | 時価の約70% |
| 農地 | 宅地の数十分の一~数百分の一 |
総務省の固定資産評価基準によると、農地は宅地と比べて評価額が非常に低いため、固定資産税も大幅に安くなります。
ただし、農地に転用するには農業委員会の許可が必要で、以下の厳格な要件があります。
農地転用の要件:
- 実際に農業を営むこと(形だけでは認められない)
- 農地として継続的に利用すること
- 農業従事者であること(新規就農の場合は研修等が必要)
単に木を植えただけでは農地として認められず、固定資産税の軽減は受けられません。
更地の固定資産税を抑える現実的な方法
更地に木を植えるだけでは固定資産税は安くなりませんが、以下の方法で負担を抑えることができます。
方法1: 住宅を建てる
最も確実な方法は、住宅を建てることです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効果 | 課税標準額が1/6(200㎡以下)または1/3(200㎡超)に軽減 |
| 新築の場合 | 建物の固定資産税も3-7年間1/2に軽減 |
| デメリット | 建築費用がかかる |
住宅を建てれば、住宅用地特例が適用され、土地の固定資産税が大幅に安くなります。
方法2: 売却する
更地を保有し続けるよりも、売却してしまう方が税負担を避けられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効果 | 固定資産税の負担がなくなる |
| メリット | まとまった現金が手に入る |
| デメリット | 土地を手放すことになる |
活用予定がない更地は、保有し続けるよりも売却を検討した方が良い場合もあります。
方法3: 賃貸駐車場として活用
駐車場として賃貸すれば、収入を得ながら固定資産税を賄うことができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効果 | 賃料収入で固定資産税をカバー |
| メリット | 初期投資が少ない(舗装・区画線のみ) |
| デメリット | 住宅用地特例は適用されない |
駐車場として活用しても住宅用地特例は適用されませんが、不動産活用の専門家によると、賃料収入で固定資産税を賄うことができます。
方法4: 農地に転用する(農業委員会の許可が必要)
実際に農業を営む場合、農地に転用すれば固定資産税は大幅に安くなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効果 | 固定資産税評価額が数十分の一~数百分の一に |
| 要件 | 農業委員会の許可、実際に農業を営むこと |
| デメリット | 農業知識・労力が必要、転用制限がかかる |
農地転用は固定資産税を大幅に抑える効果がありますが、実際に農業を営む必要があり、転用制限がかかるため、将来的に宅地として売却する際に制約が生じます。
よくある誤解と注意点
更地の固定資産税に関する誤解と注意点をまとめます。
誤解1: 木を植えれば「緑地」として軽減される
事実: 緑地保全地域等に指定されれば軽減される場合がありますが、単に木を植えただけでは軽減されません。緑地保全地域の指定には自治体の判断が必要で、個人が任意に指定を受けることはできません。
誤解2: 物置を建てれば住宅用地特例が適用される
事実: 物置は「住宅」ではないため、住宅用地特例は適用されません。人が居住できる建物である必要があります。
誤解3: 一部だけ木を植えれば一部は軽減される
事実: 住宅用地特例は「住宅が建っている土地」に適用されます。一部に木を植えても、住宅が建っていない部分には適用されません。
注意点: 空き家対策特別措置法
空き家を放置している場合、「特定空家等」に指定されると、国土交通省の空き家対策特別措置法により、住宅用地特例が適用されなくなる可能性があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特定空家等 | 倒壊の危険、衛生上有害、景観を損なう等の空き家 |
| 勧告を受けた場合 | 住宅用地特例が適用されなくなる |
| 効果 | 固定資産税が最大6倍になる |
空き家を放置せず、適切に管理するか、解体して更地にするか、売却するかを早めに判断することが重要です。
まとめ:更地に木を植えても固定資産税は安くならない
更地に木を植えるだけでは、固定資産税は安くなりません。住宅用地特例が適用されるには、住宅が建っていることが必須条件です。
更地の固定資産税を抑える現実的な方法は、以下の通りです。
- 住宅を建てる: 最も確実。課税標準額が1/6または1/3に軽減される
- 売却する: 固定資産税の負担がなくなる
- 賃貸駐車場として活用: 賃料収入で固定資産税をカバー
- 農地に転用する: 農業委員会の許可が必要だが、評価額が大幅に下がる
「木を植えれば安くなる」という噂に惑わされず、自分の状況に合った現実的な対策を選びましょう。詳細は自治体の税務課にご相談ください。
