更地に木を植えれば固定資産税は安くなる?誤解と実際の節税方法

公開日: 2025/11/11

更地に木を植えると固定資産税は安くなる?という誤解を解く

「更地に木を植えれば固定資産税が安くなる」という噂を耳にしたことがある方は少なくありません。特に、住宅を解体して更地にした後、固定資産税が大幅に上がったことに驚き、何か対策はないかと探している方も多いでしょう。

この記事では、更地に木を植えることで固定資産税が軽減されるかどうかを、総務省・国土交通省等の公式情報を元に詳しく解説します。

結論から言うと、単に木を植えるだけでは固定資産税は安くなりません。住宅用地特例が適用されるには、住宅が建っていることが必須条件です。

この記事のポイント

  • 更地に木を植えるだけでは固定資産税は安くならず、住宅用地特例は適用されない
  • 住宅用地特例が適用されるには、住宅が建っていることが必須条件(課税標準額が1/6または1/3に軽減)
  • 農地に転用すれば固定資産税は大幅に安くなる可能性があるが、農業委員会の許可が必要で厳格な要件がある
  • 更地の固定資産税を抑える現実的な方法は、住宅を建てる、売却する、賃貸駐車場として活用する等

住宅用地特例の仕組み:住宅が建っていることが必須

固定資産税の負担が軽くなる「住宅用地特例」は、住宅が建っている土地に限定されます。

住宅用地特例とは

住宅用地(住宅が建っている土地)には、課税標準額を大幅に軽減する特例があります。

区分 軽減内容
200㎡以下の部分 課税標準額を評価額の1/6に軽減
200㎡超の部分 課税標準額を評価額の1/3に軽減
適用条件 住宅が建っていること

(出典: 総務省

例えば、評価額1,000万円の土地(200㎡以下)の場合:

  • 住宅あり: 課税標準額167万円、固定資産税約2.3万円
  • 更地: 課税標準額1,000万円、固定資産税約14万円

住宅を解体すると、固定資産税が約6倍になります。

「住宅」の定義:木は住宅ではない

住宅用地特例が適用される「住宅」とは、人が居住するための建物です。

住宅として認められるもの:

  • 戸建て住宅
  • マンション・アパート
  • 併用住宅(店舗兼住宅等)の居住部分

住宅として認められないもの:

  • 木・植栽
  • 物置・倉庫(人が居住できない)
  • 駐車場
  • 太陽光発電設備

単に木を植えるだけでは、住宅用地特例は適用されません。

更地に木を植えても固定資産税は安くならない理由

「更地に木を植えれば固定資産税が安くなる」という噂がありますが、これは誤解です。

植栽は住宅ではない

植栽(木や草花)は、住宅用地特例の適用条件である「住宅」には該当しません。

固定資産税の軽減措置は、住宅政策の一環として設けられています。住宅の供給を促進するため、住宅が建っている土地の税負担を軽くしているのです。

木を植えることは住宅の供給にはつながらないため、軽減措置の対象外となります。

農地転用なら固定資産税は安くなる可能性あり

更地を農地に転用すれば、固定資産税は大幅に安くなる可能性があります。

区分 固定資産税評価額の目安
宅地(更地) 時価の約70%
農地 宅地の数十分の一~数百分の一

総務省の固定資産評価基準によると、農地は宅地と比べて評価額が非常に低いため、固定資産税も大幅に安くなります。

ただし、農地に転用するには農業委員会の許可が必要で、以下の厳格な要件があります。

農地転用の要件:

  • 実際に農業を営むこと(形だけでは認められない)
  • 農地として継続的に利用すること
  • 農業従事者であること(新規就農の場合は研修等が必要)

単に木を植えただけでは農地として認められず、固定資産税の軽減は受けられません。

更地の固定資産税を抑える現実的な方法

更地に木を植えるだけでは固定資産税は安くなりませんが、以下の方法で負担を抑えることができます。

方法1: 住宅を建てる

最も確実な方法は、住宅を建てることです。

項目 内容
効果 課税標準額が1/6(200㎡以下)または1/3(200㎡超)に軽減
新築の場合 建物の固定資産税も3-7年間1/2に軽減
デメリット 建築費用がかかる

住宅を建てれば、住宅用地特例が適用され、土地の固定資産税が大幅に安くなります。

方法2: 売却する

更地を保有し続けるよりも、売却してしまう方が税負担を避けられます。

項目 内容
効果 固定資産税の負担がなくなる
メリット まとまった現金が手に入る
デメリット 土地を手放すことになる

活用予定がない更地は、保有し続けるよりも売却を検討した方が良い場合もあります。

方法3: 賃貸駐車場として活用

駐車場として賃貸すれば、収入を得ながら固定資産税を賄うことができます。

項目 内容
効果 賃料収入で固定資産税をカバー
メリット 初期投資が少ない(舗装・区画線のみ)
デメリット 住宅用地特例は適用されない

駐車場として活用しても住宅用地特例は適用されませんが、不動産活用の専門家によると、賃料収入で固定資産税を賄うことができます。

方法4: 農地に転用する(農業委員会の許可が必要)

実際に農業を営む場合、農地に転用すれば固定資産税は大幅に安くなります。

項目 内容
効果 固定資産税評価額が数十分の一~数百分の一に
要件 農業委員会の許可、実際に農業を営むこと
デメリット 農業知識・労力が必要、転用制限がかかる

農地転用は固定資産税を大幅に抑える効果がありますが、実際に農業を営む必要があり、転用制限がかかるため、将来的に宅地として売却する際に制約が生じます。

よくある誤解と注意点

更地の固定資産税に関する誤解と注意点をまとめます。

誤解1: 木を植えれば「緑地」として軽減される

事実: 緑地保全地域等に指定されれば軽減される場合がありますが、単に木を植えただけでは軽減されません。緑地保全地域の指定には自治体の判断が必要で、個人が任意に指定を受けることはできません。

誤解2: 物置を建てれば住宅用地特例が適用される

事実: 物置は「住宅」ではないため、住宅用地特例は適用されません。人が居住できる建物である必要があります。

誤解3: 一部だけ木を植えれば一部は軽減される

事実: 住宅用地特例は「住宅が建っている土地」に適用されます。一部に木を植えても、住宅が建っていない部分には適用されません。

注意点: 空き家対策特別措置法

空き家を放置している場合、「特定空家等」に指定されると、国土交通省の空き家対策特別措置法により、住宅用地特例が適用されなくなる可能性があります。

項目 内容
特定空家等 倒壊の危険、衛生上有害、景観を損なう等の空き家
勧告を受けた場合 住宅用地特例が適用されなくなる
効果 固定資産税が最大6倍になる

空き家を放置せず、適切に管理するか、解体して更地にするか、売却するかを早めに判断することが重要です。

まとめ:更地に木を植えても固定資産税は安くならない

更地に木を植えるだけでは、固定資産税は安くなりません。住宅用地特例が適用されるには、住宅が建っていることが必須条件です。

更地の固定資産税を抑える現実的な方法は、以下の通りです。

  1. 住宅を建てる: 最も確実。課税標準額が1/6または1/3に軽減される
  2. 売却する: 固定資産税の負担がなくなる
  3. 賃貸駐車場として活用: 賃料収入で固定資産税をカバー
  4. 農地に転用する: 農業委員会の許可が必要だが、評価額が大幅に下がる

「木を植えれば安くなる」という噂に惑わされず、自分の状況に合った現実的な対策を選びましょう。詳細は自治体の税務課にご相談ください。

よくある質問

Q1更地に木を植えて「緑地」にすれば固定資産税は安くなりますか?

A1単に木を植えただけでは固定資産税は安くなりません。緑地保全地域等に指定されれば軽減される場合がありますが、指定には自治体の判断が必要で、個人が任意に指定を受けることはできません。住宅用地特例は住宅が建っている土地に限定されており、植栽だけでは適用されません。自治体の都市計画課に緑地保全制度について確認することをおすすめします。

Q2更地に物置やガレージを建てれば住宅用地特例は適用されますか?

A2いいえ、適用されません。住宅用地特例が適用される「住宅」とは、人が居住するための建物です。物置やガレージは人が居住できないため、住宅として認められず、住宅用地特例は適用されません。住宅用地特例を受けるには、戸建て住宅、マンション、アパート等の居住用建物を建てる必要があります。

Q3更地を農地に転用すれば固定資産税は安くなりますか?

A3はい、農地に転用すれば固定資産税は大幅に安くなる可能性があります。農地の評価額は宅地の数十分の一~数百分の一程度です。ただし、農業委員会の許可が必要で、実際に農業を営むこと、農地として継続的に利用すること等の厳格な要件があります。単に木を植えただけでは農地として認められません。詳細は自治体の農業委員会にご相談ください。

Q4住宅を解体して更地にすると固定資産税はどのくらい上がりますか?

A4住宅を解体すると、住宅用地特例(課税標準額が1/6または1/3に軽減)が適用されなくなるため、固定資産税は約6倍になります。例えば、評価額1,000万円の土地(200㎡以下)の場合、住宅ありで年間約2.3万円だった税額が、更地になると年間約14万円になります。解体前に、建て替え・売却・賃貸活用等の計画を立てておくことをおすすめします。