空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?特定空き家の回避方法

公開日: 2025/11/4

空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?特定空家の指定を解説

空き家を所有している方は、「固定資産税が6倍になる」という話を聞いたことがあるかもしれません。「いつから適用されるのか」「自分の空き家は対象なのか」と不安に感じる方も多いでしょう。

結論: 空き家の固定資産税が6倍になるのは、特定空家に指定され、勧告を受けた翌年度から です。2015年5月の空家等対策特別措置法施行により、既に制度は開始しています。

この記事では、特定空家の指定要件、固定資産税が6倍になる仕組み、指定を回避する方法を、国土交通省の公式情報を元に解説します。

この記事のポイント

  • 固定資産税が6倍になるのは特定空家に指定され、勧告を受けた翌年度から
  • 制度は2015年5月から既に施行されており、全国で指定事例が増加中
  • 2024年12月からは管理不全空家への勧告でも6倍の対象に(段階的強化)
  • 特定空家の判定基準は「倒壊の危険」「衛生上有害」「景観を著しく損なう」「周辺環境を保全するために不適切」の4つ
  • 指定前に助言・指導があるため、早めの対応で回避可能

空き家の固定資産税が6倍になる仕組み

住宅用地の特例とは

通常、住宅が建っている土地には 住宅用地の特例 が適用され、固定資産税が大幅に軽減されています。

軽減内容:

  • 200㎡以下の部分(小規模住宅用地): 固定資産税評価額の 1/6 に軽減
  • 200㎡超の部分(一般住宅用地): 固定資産税評価額の 1/3 に軽減

特例が適用除外になると6倍に

特定空家に指定され、市区町村から 勧告 を受けると、住宅用地の特例が適用除外となります。これにより、固定資産税が本来の税額(1/6の特例が適用されていた場合、6倍)に戻ります。

計算例:

  • 固定資産税評価額: 1200万円
  • 通常の固定資産税(1/6特例): 1200万円 × 1/6 × 1.4% = 2.8万円
  • 特例適用除外後: 1200万円 × 1.4% = 16.8万円
  • 差額: 14万円(約6倍)

いつから適用される?制度の施行時期

2015年5月:空家等対策特別措置法施行

国土交通省によると、空家等対策特別措置法は 2015年5月26日 に全面施行されました。これにより、特定空家の指定制度が開始しています。

2024年12月:管理不全空家への拡大

2023年12月の法改正により、2024年12月から管理不全空家 への勧告でも住宅用地の特例が適用除外となります。管理不全空家は特定空家の前段階で、「放置すれば特定空家になるおそれがある空家」を指します。

いつから税額が変わるか

市区町村から勧告を受けた場合、翌年度の固定資産税 から特例が適用除外となります。

:

  • 2025年10月に勧告を受けた場合 → 2026年度(2026年4月以降)の固定資産税から6倍

特定空家の指定要件と判定基準

特定空家の4つの判定基準

国土交通省ガイドラインによると、以下のいずれかに該当する空家が特定空家に指定される可能性があります。

  1. 倒壊等の危険: 建物が著しく傾斜、屋根・外壁の脱落の危険
  2. 衛生上有害: ゴミの放置、悪臭、害虫の発生
  3. 景観を著しく損なう: 著しい落書き、多数の窓ガラスの破損
  4. 周辺環境を保全するために不適切: 立木の枝が道路にはみ出す、不審者の侵入

具体的な判定事例

倒壊の危険:

  • 柱・梁の破損、基礎の沈下
  • 屋根・外壁の一部脱落
  • 建物の著しい傾斜(3度以上の傾き等)

衛生上有害:

  • 浄化槽の破損による汚水の流出
  • ゴミの放置による悪臭・害虫の発生

景観を著しく損なう:

  • 外壁の全面的な汚れ・色あせ
  • 多数の窓ガラスの破損

指定までのプロセスと対応期限

4段階のプロセス

特定空家に指定されるまでには、市区町村から段階的に通知があります。

ステップ1: 助言・指導

  • 市区町村が改善を促す(法的強制力なし)
  • 改善すれば指定を回避可能

ステップ2: 勧告

  • 助言・指導に従わない場合、勧告を受ける
  • この時点で住宅用地の特例が適用除外(翌年度から固定資産税6倍)

ステップ3: 命令

  • 勧告に従わない場合、命令を受ける
  • 命令違反は50万円以下の過料

ステップ4: 行政代執行

  • 命令にも従わない場合、強制的に解体
  • 費用は所有者に請求される

対応期限の目安

助言・指導から勧告までの期間は市区町村により異なりますが、通常 3ヶ月〜1年 程度の猶予があります。助言・指導を受けた時点で早めに対応することが重要です。

指定を回避する方法と対策

定期的な管理・メンテナンス

以下の管理を定期的に行うことで、特定空家の指定を回避できます。

  • 月1回程度の訪問: 換気、通水、郵便物の確認
  • 草木の手入れ: 年2-3回の剪定、除草
  • 建物の点検: 雨漏り、外壁の損傷、窓ガラスの破損を確認
  • ゴミの撤去: 不法投棄されたゴミは速やかに撤去

売却・賃貸の検討

空き家を活用する予定がない場合、売却または賃貸を検討することを推奨します。

売却のメリット:

  • 固定資産税の負担から解放される
  • 管理の手間がなくなる

賃貸のメリット:

  • 家賃収入を得られる
  • 建物が劣化しにくい(人が住むことで換気・通水が保たれる)

解体の選択肢

建物を解体して更地にする選択肢もあります。ただし、以下の点に注意が必要です。

注意点:

  • 解体費用がかかる(木造30坪で100-150万円程度)
  • 更地にすると住宅用地の特例が適用されなくなる(固定資産税が最大6倍)
  • 解体後の固定資産税負担を事前に試算すること

空き家バンクへの登録

市区町村が運営する空き家バンクに登録することで、移住希望者とのマッチングが期待できます。自治体によっては改修費用の補助金が利用できる場合もあります。

2024年12月からの管理不全空家制度

管理不全空家とは

2023年12月の法改正により、特定空家の前段階 として「管理不全空家」の概念が導入されました。

定義: 放置すれば特定空家になるおそれがある空家

管理不全空家への勧告でも特例適用除外

2024年12月から、管理不全空家への勧告でも住宅用地の特例が適用除外となります。これにより、特定空家に至る前の段階でも固定資産税が6倍になる可能性があります。

影響: 早期の段階で行政指導が強化され、空き家所有者への対応圧力が増加

よくある質問と誤解

すべての空き家が6倍になるわけではない

空き家であるだけで固定資産税が6倍になるわけではありません。特定空家に指定され、勧告を受けた場合 に限ります。適切に管理していれば指定を回避できます。

助言・指導の段階では税額は変わらない

助言・指導を受けた段階では、住宅用地の特例は継続して適用されます。勧告を受けて初めて特例が適用除外となるため、助言・指導の時点で早めに対応することが重要です。

相続した空き家も対象

相続で取得した空き家も特定空家の対象となります。相続後は早めに売却・賃貸・解体のいずれかを検討することを推奨します。

まとめ:早めの対応で固定資産税6倍を回避しよう

空き家の固定資産税が6倍になるのは、特定空家に指定され、勧告を受けた翌年度からです。制度は2015年5月から既に施行されており、全国で指定事例が増加しています。2024年12月からは管理不全空家への勧告でも6倍の対象となり、段階的に強化されています。

重要なポイント:

  • 特定空家の判定基準は「倒壊の危険」「衛生上有害」「景観を著しく損なう」「周辺環境を保全するために不適切」の4つ
  • 助言・指導の段階で早めに対応すれば指定を回避可能
  • 定期的な管理・メンテナンス、売却・賃貸の検討、解体の選択肢を検討
  • 相続した空き家も対象となるため、相続後は早めに対応が必要

空き家を所有している方は、定期的な管理を行い、助言・指導を受けた場合は速やかに対応することをおすすめします。売却・賃貸・解体のいずれかを検討し、固定資産税6倍のリスクを回避しましょう。

よくある質問

Q1すべての空き家が固定資産税6倍になりますか?

A1いいえ、なりません。特定空家に指定され、市区町村から勧告を受けた場合に限り、住宅用地の特例が適用除外となり、固定資産税が本来の税額(約6倍)に戻ります。空き家であるだけでは6倍にはなりません。定期的な管理・メンテナンスを行い、倒壊の危険や衛生上の問題がなければ、特定空家の指定を回避できます。

Q2助言・指導を受けた時点で固定資産税は上がりますか?

A2いいえ、上がりません。助言・指導の段階では住宅用地の特例は継続して適用されます。勧告を受けて初めて特例が適用除外となり、翌年度の固定資産税から6倍になります。助言・指導を受けた時点で早めに改善対応すれば、勧告を回避でき、固定資産税の上昇を防げます。通常3ヶ月〜1年程度の猶予があるため、速やかに対応してください。

Q3相続した空き家も固定資産税6倍の対象ですか?

A3はい、対象です。相続で取得した空き家も特定空家の指定対象となります。相続後は早めに売却・賃貸・解体のいずれかを検討することを推奨します。相続した空き家を放置すると、倒壊の危険や衛生上の問題が発生しやすく、特定空家に指定されるリスクが高まります。相続登記も2024年4月より義務化されているため、早めの対応が必要です。

Q42024年12月からの管理不全空家制度とは何ですか?

A42023年12月の法改正により、特定空家の前段階として「管理不全空家」の概念が導入されました。放置すれば特定空家になるおそれがある空家を指し、2024年12月から管理不全空家への勧告でも住宅用地の特例が適用除外となります。これにより、特定空家に至る前の段階でも固定資産税が6倍になる可能性があります。早期の段階で行政指導が強化されるため、より早めの対応が重要です。