戸建ての固定資産税はいつ・どのタイミングで下がるのか
戸建てを購入した後、「固定資産税はいつ頃から下がるのか」と気になる方は多いでしょう。特に、新築時の優遇措置が終わる4年目に税額が上がることに驚く方もいます。
この記事では、戸建ての固定資産税が下がるタイミングと理由を、総務省・国土交通省の公式情報を元に時系列で解説します。
新築1-3年目の減額措置、4年目の優遇終了、3年ごとの評価替え、築25年以降の評価額下限について理解できるようになります。
この記事のポイント
- 新築1-3年目は減額措置で建物分が1/2、4年目に優遇終了で「元に戻る」(実質増税)
 - その後は3年ごとの評価替えで経年減点補正率により徐々に下がる
 - 木造戸建ては築27年で評価額が下限(再建築価格の2割)に達する
 - 土地部分は経年劣化しないため基本的に横ばい(地価変動の影響を受ける)
 
新築1-3年目の減額措置|建物分が1/2になる仕組み
新築住宅を購入すると、最初の3年間(耐火建築物は5年間)は固定資産税の建物部分が1/2に減額されます。これは国土交通省が定める新築住宅の減額措置です。
減額措置の適用期間と要件
減額措置の適用要件は以下の通りです(令和8年3月31日まで適用)。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 適用期間 | 新築後3年間(耐火建築物は5年間) | 
| 減額率 | 建物部分の固定資産税を1/2に | 
| 床面積要件 | 50㎡以上280㎡以下 | 
| 対象 | 建物のみ(土地は対象外) | 
例えば、建物の固定資産税評価額が1000万円の場合、以下のように計算されます。
- 評価額1000万円 × 税率1.4% = 14万円(本来の税額)
 - 減額措置適用: 14万円 × 1/2 = 7万円(1-3年目の税額)
 
この減額措置により、新築時の税負担は大幅に軽減されます。
4年目に税額が「上がる」理由
4年目になると減額措置が終了し、税額は「元に戻ります」。これは「上がる」のではなく、「優遇が終わって本来の税額に戻る」だけです。
- 1-3年目: 7万円(減額措置適用)
 - 4年目: 14万円(減額措置終了)
 
税額が2倍になるため、「実質的に増税された」と感じる方が多いのです。建物の評価額自体は下がっているのですが、減額措置の終了による影響の方が大きいため、税額が上がるように見えます。
築年数別の税額推移|経年減点補正率で徐々に下がる
4年目以降は、建物の経年劣化により評価額が徐々に下がっていきます。これは「経年減点補正率」という仕組みで決まります。
経年減点補正率とは
固定資産税の評価額は、以下の式で計算されます。
評価額 = 再建築価格 × 経年減点補正率
- 再建築価格: その建物を評価時点で新築する場合の建築費
 - 経年減点補正率: 築年数の経過による劣化を反映する率
 
経年減点補正率は、総務省の固定資産評価基準で定められており、築年数が増すほど低下します。
木造戸建ての減価率(築5年0.64→築27年0.20)
木造戸建ての経年減点補正率は以下のように推移します。
| 築年数 | 経年減点補正率 | 評価額(再建築価格1000万円の場合) | 
|---|---|---|
| 新築 | 1.00 | 1000万円 | 
| 築5年 | 0.64 | 640万円 | 
| 築10年 | 0.49 | 490万円 | 
| 築20年 | 0.20 | 200万円 | 
| 築27年以降 | 0.20(下限) | 200万円 | 
(出典: 神戸地方法務局)
木造戸建ては築27年で経年減点補正率が下限の0.20(再建築価格の2割)に達し、それ以降は横ばいとなります。
非木造(鉄骨・RC)の場合
鉄骨造・RC造(鉄筋コンクリート造)の建物は、木造よりも耐用年数が長いため、経年減点補正率の下限到達まで45年以上かかります。
| 構造 | 下限到達年数 | 下限値 | 
|---|---|---|
| 木造 | 27年 | 0.20 | 
| 鉄骨造 | 35年以上 | 0.20 | 
| RC造 | 45年以上 | 0.20 | 
マンション(RC造)の場合、木造戸建てよりも評価額の下がり方が緩やかです。
注意: 再建築価格はインフレにより上昇することがあります。経年減点補正率が下がっても、再建築価格が上昇すると評価額が横ばい・増加する場合があります。
3年ごとの評価替え|地価・再建築費の変動を反映
固定資産税の評価額は、3年ごとに見直されます。これを「評価替え」といいます。
評価替えで下がる仕組み
総務省の評価替え制度によると、次回の評価替えは令和6年度(2024年)です。
評価替えでは、以下の2つの要素が反映されます。
- 建物: 経年減点補正率の更新により、築年数に応じて評価額が下がる
 - 土地: 地価の変動により、評価額が増減する
 
建物は経年劣化で下がる傾向ですが、土地は地価に連動するため、横ばい・上昇もあり得ます。
次回評価替えは令和6年度(2024年)
評価替えは3年ごとに実施されます。最近の評価替え年度は以下の通りです。
- 令和3年度(2021年)
 - 令和6年度(2024年)
 - 令和9年度(2027年)
 
評価替えの結果、建物が下がっても土地が上がると、「固定資産税全体」では下がり幅が小さい場合があります。
注意: 自治体により税率が異なります。標準税率は1.4%ですが、条例で1.6%等に設定している自治体もあります。実際の税額は市区町村により変わります。
長期的な税額の推移|築25年以降は評価額下限に達する
木造戸建ての場合、築20-25年程度で評価額が約2割(下限)まで下がります。それ以降は、評価額が横ばいとなります。
木造は築25年で評価額が約2割まで
経年減点補正率の仕組みによると、木造戸建ては築27年で経年減点補正率が下限の0.20に達します。再建築価格が1000万円の場合、評価額は200万円で固定されます。
このため、長期的には固定資産税の建物部分は下がりますが、下限到達後は横ばいとなります。
土地部分は下がらない
固定資産税は「建物」と「土地」の合計です。建物は経年劣化で下がりますが、土地は経年劣化しないため、基本的に下がりません。
土地の固定資産税は地価に連動します。地価が上昇すれば土地の評価額も上がり、地価が下落すれば評価額も下がります。
また、住宅用地には「住宅用地の特例」が適用され、以下のように評価額が軽減されます。
| 区分 | 軽減率 | 
|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額の1/6 | 
| 一般住宅用地(200㎡超) | 評価額の1/3 | 
この特例により、土地の固定資産税は大幅に軽減されています。
「固定資産税全体」では、建物部分の下落幅が限定的なため、劇的には下がりません。土地部分が下がらないことも、全体の下がり幅を抑える要因となっています。
まとめ|固定資産税の推移を正しく理解する
戸建ての固定資産税は、新築1-3年目は減額措置で低く、4年目に優遇終了で「元に戻る」ため一時的に増額します。その後は3年ごとの評価替えで徐々に下がり、木造は築25年程度で評価額が下限(再建築価格の2割)に達します。
ただし、土地部分は下がらないため、「固定資産税全体」では下がり幅が限定的です。また、再建築価格の上昇(インフレ)や地価上昇により、評価額が横ばい・増加する場合もあります。「必ず下がる」とは限りません。
毎年送られてくる課税明細書で評価額を確認し、長期的な資金計画を立てることが重要です。不明点がある場合は、市区町村の固定資産税課に相談しましょう。
