不動産収入の確定申告を完全解説|必要書類と申告方法を詳しく紹介

公開日: 2025/10/27

不動産収入の確定申告とは

賃貸不動産から家賃収入を得ている場合、「確定申告は必要なのか」「どのように申告すればいいのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産収入の確定申告が必要なケース、不動産所得の計算方法、必要経費の範囲、青色申告と白色申告の違い、申告方法を解説します。

賃貸不動産から家賃収入がある会社員・個人事業主の方が、確定申告の要否を判断でき、適切に申告できるようになります。

この記事のポイント

  • 給与所得者は年間20万円超、個人事業主は全額が確定申告対象
  • 不動産所得 = 総収入金額(家賃・礼金・更新料等)- 必要経費(管理費・修繕費・減価償却費等)
  • 青色申告を選択すれば最大65万円の特別控除を受けられる(複式簿記・e-Tax申告等の要件あり)
  • 必要経費には管理費・修繕費・固定資産税・減価償却費・借入金利子等が含まれる
  • 不動産所得(家賃収入)と譲渡所得(売却益)は別物で、計算方法が異なる

不動産所得と譲渡所得の違い

まず、不動産収入には「不動産所得」と「譲渡所得」の2種類があることを理解しましょう。

項目 不動産所得 譲渡所得
対象 家賃収入(賃貸) 不動産の売却益
計算式 総収入金額 - 必要経費 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
確定申告の区分 不動産所得 譲渡所得

この記事では 不動産所得(家賃収入) を中心に解説します。不動産の売却益(譲渡所得)は別の計算方法・税率が適用されます。

確定申告が必要なケース

不動産収入の確定申告が必要かどうかは、以下の基準で判断します。

職業 確定申告が必要なケース
給与所得者(会社員等) 不動産所得が年間20万円超
個人事業主 金額に関わらず全額申告対象

重要: 給与所得者でも、医療費控除等で確定申告する場合は、不動産所得が20万円以下でも申告が必要です。

不動産所得の計算方法

不動産所得は、以下の計算式で算出します。

不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費

総収入金額に含まれるもの

総収入金額には、以下のものが含まれます。

  • 家賃: 毎月の賃料
  • 礼金: 契約時に受け取る礼金(全額収入)
  • 更新料: 契約更新時に受け取る更新料(全額収入)
  • 敷金: 返還不要分のみ収入(返還する分は収入に含めない)
  • 駐車場使用料: 駐車場を賃貸している場合

必要経費に含まれるもの

必要経費には、以下のものが含まれます。

  • 管理費: 管理会社への委託料、清掃費、入居者募集費用等
  • 修繕費: 原状回復のための修繕(壁紙張替え、設備修理等)
  • 固定資産税・都市計画税: 不動産の保有に係る税金
  • 損害保険料: 火災保険、地震保険等
  • 減価償却費: 建物・設備の減価償却
  • 借入金利子: 不動産購入のためのローンの利息(建物分のみ、土地分は制限あり)
  • その他: 水道光熱費(共用部分)、通信費、交通費等

重要: 修繕費と資本的支出(価値向上)の区別が重要です。原状回復は修繕費、価値向上(リフォーム等)は資本的支出として減価償却が必要です。

減価償却費の計算

建物は年月の経過により価値が減少するため、減価償却費を計上します。

計算式(国税庁の減価償却資産の耐用年数等に関する省令に基づく):

減価償却費 = 建物の取得費 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率: 建物の構造により異なります。

  • 木造: 0.046(耐用年数22年)
  • 鉄骨造: 0.038(耐用年数27年)
  • 鉄筋コンクリート造: 0.022(耐用年数47年)

重要: 土地は減価償却しません。建物のみが対象です。

青色申告と白色申告の違い

不動産所得の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。

項目 青色申告 白色申告
特別控除 最大65万円 なし
記帳方法 複式簿記 簡易な記帳
赤字の繰越 3年間繰越可能 繰越不可
専従者給与 必要経費に算入可能 専従者控除(定額)
申請 青色申告承認申請書が必要 申請不要

青色申告のメリット

青色申告を選択すると、以下のメリットがあります。

  1. 青色申告特別控除: 最大65万円の控除(条件を満たす場合)
  2. 赤字の繰越: 不動産所得が赤字の場合、3年間繰り越せる
  3. 専従者給与(家族従業員への給与): 配偶者等への給与を必要経費に算入可能

青色申告特別控除の適用要件

国税庁によると、青色申告特別控除を最大65万円受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 複式簿記: 複式簿記による記帳
  • e-Tax申告: 電子申告(e-Tax)で申告
  • 貸借対照表・損益計算書: 申告書に添付

要件を満たさない場合、青色申告特別控除は10万円となります。

青色申告承認申請書の提出期限

青色申告を選択する場合、青色申告承認申請書を提出する必要があります。

  • 期限: 青色申告したい年の3月15日まで
  • 新規開業: 開業日から2ヶ月以内

期限を過ぎると、その年は白色申告となり、翌年から青色申告になります。

白色申告との違い

白色申告は、簡易な記帳でOKですが、青色申告特別控除や赤字の繰越ができません。青色申告の方が大幅な節税が可能です。

確定申告の必要書類と申告方法

必要書類

確定申告に必要な書類は以下の通りです。

  • 確定申告書: 確定申告書B(個人事業主・不動産所得者用)
  • 青色申告決算書: 青色申告の場合(または収支内訳書:白色申告の場合)
  • 不動産所得の内訳: 収入・経費の明細
  • 源泉徴収票: 給与所得者の場合
  • 領収書・契約書等: 経費の証明書類

申告方法(e-Tax・書面)

確定申告の方法は、以下の2つがあります。

  1. e-Tax(オンライン): 国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成し、電子申告
  2. 書面(税務署窓口・郵送): 確定申告書を印刷し、税務署窓口または郵送で提出

青色申告特別控除65万円を受けるには、e-Tax申告が必要です。

申告期限

確定申告の期限は、翌年2月16日~3月15日です。期限内に申告しないと、無申告加算税・延滞税が課される場合があります。

不動産収入の確定申告でよくある疑問

礼金・敷金・更新料の扱い

  • 礼金: 全額収入に計上
  • 敷金: 返還不要分のみ収入に計上(返還する分は収入に含めない)
  • 更新料: 全額収入に計上

修繕費と資本的支出の違い

  • 修繕費: 原状回復のための修繕(壁紙張替え、設備修理等)→ 全額経費計上
  • 資本的支出: 価値向上のための支出(リフォーム、設備追加等)→ 減価償却が必要

借入金利子の全額が経費になるか

  • 建物分: 全額経費に算入可能
  • 土地分: 不動産所得が赤字の場合、損益通算不可(土地の借入金利子は損益通算から除外)

計算例で理解する不動産所得

具体例: 年間家賃収入240万円、必要経費(管理費・修繕費・固定資産税・減価償却費等)合計100万円のケース

項目 金額
総収入金額(家賃) 240万円
必要経費 100万円
不動産所得 140万円
青色申告特別控除 -65万円
課税所得 75万円

課税所得75万円に対して、所得税・住民税が課税されます。

  • 所得税: 75万円 × 5% = 3.75万円
  • 住民税: 75万円 × 10% = 7.5万円
  • 合計: 11.25万円

青色申告特別控除を活用することで、大幅な節税が可能です。

まとめ

不動産収入(家賃)がある場合、給与所得者でも年間20万円超は確定申告が必要です。不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費で計算します。

青色申告を選択すれば最大65万円の特別控除を受けられます(複式簿記・e-Tax申告等の要件あり)。減価償却費の計算、必要経費の範囲を正しく理解し、適切に申告することが重要です。

不明点は税務署または税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1不動産収入が年間20万円以下でも確定申告は必要ですか?

A1給与所得者は年間20万円以下なら申告不要です。ただし、医療費控除等で確定申告する場合は、不動産所得も含めて申告が必要です。個人事業主は金額に関わらず全額申告対象となります。

Q2青色申告承認申請書の提出期限はいつですか?

A2青色申告したい年の3月15日までです。新規開業の場合は開業日から2ヶ月以内です。期限を過ぎると、その年は白色申告となり、翌年から青色申告になります。早めに提出することをおすすめします。

Q3不動産所得が赤字になった場合はどうなりますか?

A3給与所得等の他の所得と損益通算できます。ただし、土地の借入金利子は損益通算不可です。青色申告の場合、赤字を3年間繰り越せます。白色申告では繰越不可です。

Q4管理会社に支払う管理費は経費になりますか?

A4不動産の賃貸管理に関する費用は全額必要経費になります。管理委託料、入居者募集費用、清掃費等も経費として計上可能です。領収書・契約書を保管しておくことが重要です。