不動産取引における収入印紙とは?基礎知識と必要性
不動産を購入または売却する際、「収入印紙が必要」と聞いても、具体的にどの書類に貼るのか、金額はいくらなのか、誰が負担するのか分からない方は少なくありません。収入印紙は印紙税を納付するために必要で、貼り忘れると過怠税が課される可能性があります。
この記事では、不動産取引における収入印紙の基礎知識から、必要な書類、金額の決め方、購入方法、貼り忘れた場合のペナルティまで、国税庁の公式情報を元に解説します。
この記事のポイント
- 収入印紙は印紙税を納付するための証票で、不動産売買契約書と金銭消費貸借契約書(住宅ローン契約書)に貼付が必要
- 印紙税の金額は契約金額により異なり、5,000万円の不動産なら売買契約書に1万円(軽減税率適用時)
- 売買契約書は売主・買主がそれぞれ負担するのが一般的(契約書原本を2通作成)
- 電子契約の場合は印紙税が不要で、コスト削減のメリットがある
- 貼り忘れた場合は過怠税(本来の印紙税額の3倍)が課される可能性がある
収入印紙が必要な不動産関連書類
不動産取引では、以下の2つの書類に収入印紙の貼付が必要です。
不動産売買契約書
不動産売買契約書は、不動産の売買を証明する課税文書です。契約金額に応じた印紙税が課されます。
売買契約書は通常、売主用と買主用の2通を作成し、それぞれに収入印紙を貼付します。売主・買主がそれぞれ自己負担するのが一般的です。
金銭消費貸借契約書(住宅ローン契約書)
金銭消費貸借契約書は、住宅ローンを借り入れる際に金融機関と締結する契約書です。借入金額に応じた印紙税が課されます。
この契約書の収入印紙は、借主(買主)が負担します。
その他の不動産関連書類
以下の書類にも収入印紙が必要な場合があります。
- 不動産賃貸借契約書: 賃料総額や契約期間により印紙税が課される場合がある
- 建築工事請負契約書: 注文住宅を建てる場合の工事契約書
- 土地賃貸借契約書: 借地権設定契約等
収入印紙の金額一覧:契約金額別の印紙税額
印紙税の金額は契約金額により異なります。以下の表で確認してください。
不動産売買契約書の印紙税額(軽減税率適用時)
2024年3月31日まで、不動産売買契約書には軽減税率が適用されます。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(2024年3月31日まで) |
|---|---|---|
| 100万円超~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超~1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
| 1億円超~5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
※軽減措置は2027年3月31日まで適用
(出典: 国税庁)
例えば、5,000万円の不動産を購入する場合、売買契約書に貼る収入印紙は10,000円(軽減税率適用時)となります。
金銭消費貸借契約書の印紙税額
金銭消費貸借契約書の印紙税額は、借入金額により決まります。
| 借入金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 100万円超~500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円超~1,000万円以下 | 10,000円 |
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 20,000円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 60,000円 |
(出典: 国税庁)
例えば、3,000万円の住宅ローンを組む場合、金銭消費貸借契約書に貼る収入印紙は20,000円となります。
収入印紙の購入方法と貼り方
収入印紙は、以下の場所で購入できます。
購入場所
- 郵便局: 全国の郵便局で購入可能(最も一般的)
- 法務局: 登記手続きの際に合わせて購入できる
- コンビニエンスストア: 一般的に200円の収入印紙のみ取り扱い(高額な収入印紙は郵便局で購入)
- 金券ショップ: 額面より安く購入できる場合がある
不動産取引では数万円の収入印紙が必要なため、郵便局で購入するのが確実です。
貼り方と消印
収入印紙は、契約書の「印紙税額」欄または余白に貼付します。貼付後、契約当事者が押印(消印)する必要があります。消印は、収入印紙と契約書にまたがるように押印します。
消印を忘れると、収入印紙の再利用を防ぐ目的が達成されないため、必ず消印してください。
電子契約の場合は印紙税不要
国税庁によると、電子契約(電子署名を用いた契約)の場合、課税文書に該当しないため印紙税が不要です。近年、不動産取引でも電子契約が普及しており、印紙税のコスト削減メリットがあります。
収入印紙に関する注意点とよくあるトラブル
収入印紙の取り扱いには、以下の注意点があります。
貼り忘れた場合のペナルティ(過怠税)
収入印紙を貼り忘れた場合、または消印しなかった場合、過怠税が課される可能性があります。国税庁の規定により、過怠税は本来の印紙税額の3倍(自主的に申し出た場合は1.1倍)です。
例えば、本来10,000円の収入印紙を貼るべきところ、貼り忘れた場合、30,000円の過怠税が課される可能性があります。
金額を間違えた場合の対処法
収入印紙の金額を間違えた場合、以下の対処法があります。
- 過大に貼付した場合: 税務署に申請することで還付を受けられる
- 過小に貼付した場合: 不足分を追加で貼付する(過怠税が課される可能性もある)
契約金額に応じた正しい印紙税額を事前に確認してください。
軽減税率の適用期限
不動産売買契約書の軽減税率は2024年3月31日までの時限措置です。この期限を過ぎると本則税率が適用されるため、契約時期によって印紙税額が大きく変わる可能性があります。最新の税制改正情報を確認してください。
契約書のコピーは課税対象外
契約書のコピー(写し)は課税文書に該当しないため、収入印紙は不要です。原本を1通のみ作成し、他方はコピーで保管する方法もありますが、法的な証明力の観点から原本を2通作成するのが一般的です。
まとめ:不動産取引における収入印紙の正しい理解
不動産取引では、売買契約書と金銭消費貸借契約書(住宅ローン契約書)に収入印紙の貼付が必要です。印紙税の金額は契約金額により異なり、5,000万円の不動産なら売買契約書に10,000円(軽減税率適用時)、3,000万円の住宅ローンなら金銭消費貸借契約書に20,000円が必要です。
収入印紙は郵便局で購入し、契約書に貼付後、消印を忘れないようにしてください。貼り忘れた場合は過怠税(本来の印紙税額の3倍)が課される可能性があります。電子契約の場合は印紙税が不要で、コスト削減のメリットがあります。
不動産取引は高額な契約が多いため、印紙税も高額になります。契約前に正しい金額を確認し、信頼できる不動産会社や金融機関に相談しながら手続きを進めてください。
