不動産売買とは?基本の流れを理解しよう
不動産売買を検討する際、「どんな手続きが必要なのか」「費用はいくらかかるのか」「期間はどれくらいか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産売買の全体の流れ(物件探しから引渡しまで)、買主側・売主側の両方の視点、各段階で必要な手続き・費用・書類・期間を、国土交通省・法務省の公式情報を元に解説します。
初めて不動産売買を行う方でも、必要な準備を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産売買は買主側・売主側でそれぞれ異なる手続きがあり、全体で2-3ヶ月程度かかる
- 買主側の流れ:物件探し→内見→購入申込→住宅ローン事前審査→売買契約→本審査→決済・引渡し
- 売主側の流れ:査定→媒介契約→売却活動→売買契約→決済・引渡し
- 主要な費用:仲介手数料(売買価格×3%+6万円+消費税)、登記費用(固定資産税評価額×2%等)、印紙税、各種税金
- 契約不適合責任(2020年民法改正)の内容を理解し、売買契約書で確認することが重要
不動産売買の流れ(買主側)
買主として不動産を購入する場合、一般的に以下の流れで進みます。
物件探しから内見まで
物件探しは通常1-2ヶ月程度かかります。不動産ポータルサイトで条件に合う物件を検索し、不動産会社に問い合わせて内見を申し込みます。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、全国547万件以上の取引価格データを確認でき、相場を把握するのに役立ちます。
内見では、物件の立地、日当たり、設備の状態、周辺環境等を確認します。複数の物件を比較検討することが推奨されます。
購入申込と住宅ローン事前審査
購入したい物件が決まったら、不動産会社に「購入申込書」を提出します。購入申込書には希望購入価格、引渡し希望時期等を記載します。
同時に、住宅ローンの事前審査を申し込みます。事前審査には通常1週間程度かかり、以下の書類が必要です。
- 身分証明書
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 確定申告書(自営業者の場合)
- 物件資料
事前審査に通ったら、売主と売買契約を締結します。
売買契約の締結
売買契約では、宅地建物取引士による重要事項説明を受けた後、売買契約書に署名・押印します。重要事項説明では、物件の権利関係、設備、周辺環境、契約条件等を書面で確認します(宅地建物取引業法35条)。
売買契約時には、手付金(売買代金の5-10%程度)を支払います。例えば、売買価格3,000万円の物件なら、手付金は150-300万円程度です。
売買契約書には「住宅ローン特約」を盛り込むことが一般的です。住宅ローン特約とは、買主が住宅ローンの本審査に通らなかった場合、売買契約を無条件で解除でき、手付金も返還される特約です。
住宅ローン本審査から決済・引渡しまで
売買契約後、住宅ローンの本審査を申し込みます。本審査には2-3週間程度かかり、事前審査よりも詳細な書類(住民票、印鑑証明書、課税証明書等)が必要です。
本審査に通ったら、金融機関と「金銭消費貸借契約」(ローン契約)を締結します。
決済・引渡しは、売買契約から1.5-2ヶ月後が一般的です。法務省の公式サイトによると、決済時には以下の手続きを行います。
- 売買代金の残金(手付金を除く全額)を売主に支払う
- 物件の鍵や関連書類を受け取る
- 所有権移転登記を申請する(通常は司法書士に依頼)
所有権移転登記には、登録免許税(固定資産税評価額×2%、軽減税率適用で1.5%等)がかかります。
不動産売買の流れ(売主側)
売主として不動産を売却する場合、一般的に以下の流れで進みます。
査定と媒介契約
売却を検討する場合、まず不動産会社に査定を依頼します。複数社(3社程度)に査定を依頼し、比較検討することが推奨されます。査定には1-4週間程度かかります。
査定結果を踏まえて売却を決めたら、不動産会社と「媒介契約」を締結します。媒介契約には以下の3種類があります。
| 媒介契約の種類 | 特徴 | レインズ登録義務 | 複数社依頼 | 
|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 複数社に依頼可能 | なし | 可 | 
| 専任媒介 | 1社のみ | あり(7日以内) | 不可 | 
| 専属専任媒介 | 1社のみ、自己発見取引不可 | あり(5日以内) | 不可 | 
HOME4Uの解説によると、専任媒介・専属専任媒介は不動産会社が積極的に売却活動を行う傾向があるため、早期売却を希望する場合に適しています。
売却活動
媒介契約締結後、不動産会社が売却活動を開始します。売却活動には通常1-5ヶ月程度かかります。
売却活動中は、購入希望者の内覧対応が必要です。内覧前には物件を清掃し、整理整頓しておくことで、購入希望者に良い印象を与えられます。
購入希望者から購入申込書が提出されたら、価格交渉を行い、条件が合意できれば売買契約に進みます。
売買契約から決済・引渡しまで
売買契約では、買主と同様に売買契約書に署名・押印します。売主は買主から手付金(売買代金の5-10%程度)を受け取ります。
売買契約から決済・引渡しまでは1-3ヶ月程度かかります。決済時には、買主から売買代金の残金を受け取り、物件の鍵や関連書類を引き渡します。
売主は、売却後に譲渡所得税が発生する場合があります。譲渡所得税の計算方法や確定申告の要否については、税理士に相談することをおすすめします。
不動産売買にかかる費用
不動産売買には、物件価格以外にも様々な費用がかかります。総額の目安は物件価格の5-10%程度です。
仲介手数料の計算方法
仲介手数料は、不動産会社に支払う報酬です。三井のリハウスの解説によると、法律上の上限は以下の通りです(売買価格が400万円超の場合)。
仲介手数料の上限 = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
例えば、売買価格3,000万円の物件の場合:
- 仲介手数料の上限 = 3,000万円 × 3% + 6万円 + 消費税
- = 90万円 + 6万円 + 消費税
- = 96万円 × 1.1(消費税)
- = 約105.6万円
仲介手数料は、売買契約時と引渡し時に分割払いすることが多い(例:契約時50%、引渡し時50%)。
注意点として、2024年7月に一部改正され、800万円以下の低額空き家では最大33万円請求可能となりました。
登記費用・印紙税
所有権移転登記には、登録免許税と司法書士報酬がかかります。
| 項目 | 内容 | 目安額 | 
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額 × 2%(軽減税率適用で1.5%等) | 30-50万円 | 
| 司法書士報酬 | 登記申請の手続き代行費用 | 5-10万円 | 
印紙税は、売買契約書に貼付する収入印紙の費用です。売買価格により異なりますが、3,000万円の物件の場合、1万円程度です。
その他の諸費用
その他、以下の費用がかかります。
- 不動産取得税:固定資産税評価額 × 3%(軽減措置適用で大幅減額の場合あり)
- 火災保険:10年一括払いで20-30万円程度
- 住宅ローン諸費用(買主のみ):事務手数料、保証料等で数十万円
- 引越し費用:10-30万円程度
不動産売買にかかる期間
グローベルスの解説によると、不動産売買の全体期間は以下の通りです。
買主側の期間目安
- 物件探し:1-2ヶ月
- 購入申込から売買契約:1-2週間
- 売買契約から決済・引渡し:1.5-2ヶ月
- 合計:約2-3ヶ月
売主側の期間目安
- 査定:1-4週間
- 売却活動:1-5ヶ月
- 売買契約から決済・引渡し:1-3ヶ月
- 合計:約3-6ヶ月
期間は物件の立地、価格、市況により大きく変動します。人気エリアの物件は早期売却される傾向がありますが、築古物件や立地の悪い物件は売却に時間がかかる場合があります。
不動産売買の注意点
不動産売買では、以下の点に注意が必要です。
重要事項説明の確認ポイント
重要事項説明では、以下の内容を必ず確認してください。
- 物件の権利関係:所有者、抵当権の有無等
- 設備の状態:給水・排水設備、電気・ガス設備等
- 周辺環境:騒音、異臭、嫌悪施設の有無等
- 契約条件:引渡し時期、契約不適合責任の期間等
不明点があれば、宅地建物取引士に質問し、納得してから契約書に署名・押印してください。
契約不適合責任とは
一般財団法人 住宅金融普及協会の解説によると、契約不適合責任とは、売買の目的物が契約内容と異なる場合(数量・品質の不適合)、売主が負う責任です。
2020年4月の民法改正により、旧「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変更されました。買主は以下の請求が可能です。
- 追完請求:修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し
- 代金減額請求:追完請求に応じない場合
- 契約解除:契約目的が達成できない場合
- 損害賠償請求:売主に帰責事由がある場合
売買契約書で契約不適合責任の期間(引渡しから3ヶ月、1年等)を定めるのが一般的です。契約書の内容を必ず確認してください。
まとめ:不動産売買は専門家と一緒に進めよう
不動産売買は、買主側・売主側でそれぞれ異なる手続きがあり、全体で2-3ヶ月(売主側は3-6ヶ月)程度かかります。手続き、費用、期間を事前に理解することで、スムーズに取引を進められます。
主要な費用は仲介手数料(売買価格×3%+6万円+消費税)、登記費用(固定資産税評価額×2%等)、印紙税等で、総額は物件価格の5-10%程度です。
不明点があれば、不動産会社、司法書士、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。まずは複数社の査定依頼(売主の場合)、または物件探しの開始(買主の場合)から始めましょう。
