不動産売却で税金がかからないケース|3000万円控除を解説

公開日: 2025/10/27

不動産売却で税金がかからないケースとは

不動産を売却する際、「税金はどれくらいかかるのか」「税金がかからない方法はあるのか」と気になる方は少なくありません。

この記事では、不動産売却で税金がかからない主なケース、譲渡所得の計算方法、3000万円特別控除等の軽減措置を、国税庁の公式情報を元に解説します。

不動産売却を検討している方が、税金の仕組みを正しく理解し、軽減措置を活用して税負担を最小限にできるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産売却益(譲渡所得)は「売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)」で計算
  • 居住用財産(マイホーム)の売却では3000万円特別控除が適用され、譲渡所得が3000万円以下なら税金ゼロ
  • 取得費が不明な場合は売却価格の5%を概算取得費として使用可能
  • 所有期間10年超の軽減税率、相続空き家の3000万円控除等の軽減措置も活用できる
  • 控除適用でも確定申告は必須(申告しないと控除が適用されない)

譲渡所得の計算方法と税金の仕組み

譲渡所得の計算式

不動産売却時に税金がかかるかどうかは、譲渡所得の有無で決まります。譲渡所得は以下の式で計算します。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

譲渡所得がゼロまたはマイナスの場合、税金はかかりません。また、譲渡所得がプラスでも、後述する3000万円特別控除等を適用すればゼロになる場合があります。

取得費と譲渡費用の内訳

取得費には以下が含まれます。

  • 購入代金・建築費
  • 購入時の諸費用(仲介手数料、登録免許税、不動産取得税等)
  • 改良費(リフォーム費用等)
  • 建物の減価償却費(購入価格から差し引く)

譲渡費用には以下が含まれます。

  • 仲介手数料
  • 測量費
  • 解体費
  • 印紙税

例えば、3000万円で購入した不動産を3500万円で売却し、譲渡費用が200万円だった場合、譲渡所得は以下の通りです。

譲渡所得 = 3500万円 - (3000万円 + 200万円) = 300万円

この譲渡所得に対して税金がかかりますが、3000万円特別控除を適用すれば税金はゼロになります。

取得費が不明な場合の対処法

相続不動産等で取得費が分からない場合、売却価格の5%を概算取得費として使用できます。

例えば、売却価格が3500万円の場合、概算取得費は175万円(3500万円 × 5%)となります。

ただし、実際の取得費を証明できる書類(売買契約書、通帳記録、領収書等)があれば、実額を使用した方が有利です。概算取得費(5%)は最低限の控除額であり、実額の方が大きいケースが多いためです。

居住用財産の3000万円特別控除

3000万円特別控除とは

居住用財産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例があります。この控除により、譲渡所得が3000万円以下なら税金はゼロになります。

例えば、譲渡所得が2500万円の場合、3000万円控除を適用すると税金はゼロです。

譲渡所得2500万円 - 3000万円控除 = 課税対象なし

適用要件

3000万円特別控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 自分が住んでいた家であること
    自己居住用であることが必須です。投資用不動産や別荘等は対象外です。

  • 住まなくなってから3年以内の売却であること
    引っ越し後、3年を経過する年の12月31日までに売却する必要があります。

  • 親子・夫婦間の売買ではないこと
    売却先が親子、夫婦、生計を一にする親族等の特別な関係でないことが条件です。

  • 前年・前々年にこの特例を受けていないこと
    この控除は3年に1回しか利用できません。

適用できないケース

以下のケースでは3000万円特別控除は適用できません。

  • この特例を受けることだけを目的として入居した家
  • 一時的な目的で入居した家(仮住まい等)
  • 別荘や投資用不動産
  • 親子・夫婦間の売買

その他の税金軽減措置

所有期間10年超の軽減税率

所有期間10年超の居住用財産を売却した場合、3000万円控除後の残額に軽減税率を適用できます。

税率国税庁による):

課税譲渡所得 税率
6000万円以下の部分 14.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%)
6000万円超の部分 20.315%(通常の長期譲渡所得税率)

3000万円控除と併用可能なため、大きな節税効果が期待できます。

例えば、譲渡所得が4000万円の場合、以下のように計算します。

  1. 3000万円控除適用: 4000万円 - 3000万円 = 1000万円
  2. 軽減税率適用: 1000万円 × 14.21% = 約142万円

通常の長期譲渡所得税率(20.315%)を適用した場合は約203万円となるため、約61万円の節税になります。

相続空き家の3000万円控除

相続した空き家を売却する場合、国税庁によると、一定の要件を満たせば3000万円控除を受けられます。

主な要件:

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋
  • 相続開始直前まで被相続人が一人で居住していた
  • 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却
  • 売却価格が1億円以下
  • 耐震リフォームまたは取り壊し後の土地売却

詳細は国税庁のサイトで確認するか、税理士にご相談ください。

特定居住用財産の買換え特例

居住用財産を売却して新たな居住用財産を購入する場合、一定の要件を満たせば譲渡益への課税を繰り延べ(将来の売却時まで課税を先送り)できる特例があります。

ただし、3000万円控除との併用はできないため、どちらが有利か慎重に判断する必要があります。一般的には、3000万円控除を優先した方が有利なケースが多いです。

確定申告の必要性と手続き

控除適用には確定申告が必須

3000万円特別控除等で税金がゼロになる場合でも、確定申告は必須です。確定申告をしないと控除が適用されず、本来不要な税金を支払うことになります。

確定申告の時期と必要書類

不動産を譲渡した年の翌年2月16日~3月15日に確定申告が必要です。

必要書類:

  • 譲渡所得の内訳書
  • 譲渡契約書(売買契約書)
  • 取得費の証明書類(購入時の契約書、領収書等)
  • 仲介手数料の領収書
  • 登記事項証明書
  • 住民票(居住用財産の特例を受ける場合)

確定申告は税務署窓口またはe-Taxで行えます。不明点がある場合は、税理士への相談を推奨します。

申告しない場合のリスク

確定申告を怠ると、以下のリスクがあります。

  • 3000万円控除が適用されない
    本来不要な税金を支払うことになります。

  • 無申告加算税が課される
    期限後申告の場合、本来の税額の15-20%の無申告加算税が課される場合があります。

  • 延滞税が課される
    期限を過ぎると延滞税が加算されます。

必ず期限内に申告してください。

まとめ

不動産売却で税金がかからない主なケースは、居住用財産の3000万円特別控除の適用です。譲渡所得が3000万円以下なら税金はゼロになります。

その他の軽減措置として、所有期間10年超の軽減税率(3000万円控除と併用可)、相続空き家の3000万円控除、買換え特例等も活用できます。

取得費が不明な場合は概算取得費(売却価格の5%)を使用できますが、実額が分かれば実額を使う方が有利です。

控除適用でも確定申告は必須です。期限内に申告し、不明点は税理士に相談しながら、税負担を最小限にしましょう。

よくある質問

Q13000万円特別控除と軽減税率は併用できますか?

A1所有期間10年超の軽減税率との併用は可能です。3000万円控除を適用した後の残額に軽減税率(6000万円以下の部分は14.21%)を適用できます。例えば、譲渡所得が4000万円の場合、3000万円控除適用後の1000万円に軽減税率14.21%を適用し、約142万円の税額となります。ただし、買換え特例との併用はできません。

Q2取得費が分からない場合はどうすればいい?

A2概算取得費(売却価格の5%)を使用可能です。例えば、売却価格が3500万円の場合、概算取得費は175万円となります。ただし、実際の取得費が分かれば実額を使う方が有利です。概算取得費(5%)は最低限の控除額であり、実額の方が大きいケースが多いためです。通帳記録、契約書控え、領収書等で確認することを推奨します。

Q3確定申告しないとどうなりますか?

A33000万円特別控除が適用されず、本来不要な税金を支払うことになります。また、期限後申告の場合、無申告加算税(本来の税額の15-20%)や延滞税が課される場合があります。3000万円控除等で税金がゼロになる場合でも、確定申告をしないと特例が適用されません。必ず期限内(譲渡の翌年2月16日~3月15日)に申告してください。

Q4相続した不動産の売却でも3000万円控除は使えますか?

A4相続後に自分が住んだ場合は通常の3000万円控除(居住用財産の特例)が使えます。住まなくなってから3年以内の売却が条件です。空き家のまま売却する場合は、別途「相続空き家の3000万円控除」を検討できます。ただし、こちらは昭和56年5月31日以前に建築された家屋、耐震リフォームまたは取り壊し後の土地売却等の要件があります。詳細は税理士にご相談ください。