不動産売却で税金がかからないケースとは
不動産を売却する際、「税金はどれくらいかかるのか」「税金がかからない方法はあるのか」と気になる方は少なくありません。
この記事では、不動産売却で税金がかからない主なケース、譲渡所得の計算方法、3000万円特別控除等の軽減措置を、国税庁の公式情報を元に解説します。
不動産売却を検討している方が、税金の仕組みを正しく理解し、軽減措置を活用して税負担を最小限にできるようになります。
この記事のポイント
- 不動産売却益(譲渡所得)は「売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)」で計算
- 居住用財産(マイホーム)の売却では3000万円特別控除が適用され、譲渡所得が3000万円以下なら税金ゼロ
- 取得費が不明な場合は売却価格の5%を概算取得費として使用可能
- 所有期間10年超の軽減税率、相続空き家の3000万円控除等の軽減措置も活用できる
- 控除適用でも確定申告は必須(申告しないと控除が適用されない)
譲渡所得の計算方法と税金の仕組み
譲渡所得の計算式
不動産売却時に税金がかかるかどうかは、譲渡所得の有無で決まります。譲渡所得は以下の式で計算します。
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
譲渡所得がゼロまたはマイナスの場合、税金はかかりません。また、譲渡所得がプラスでも、後述する3000万円特別控除等を適用すればゼロになる場合があります。
取得費と譲渡費用の内訳
取得費には以下が含まれます。
- 購入代金・建築費
- 購入時の諸費用(仲介手数料、登録免許税、不動産取得税等)
- 改良費(リフォーム費用等)
- 建物の減価償却費(購入価格から差し引く)
譲渡費用には以下が含まれます。
- 仲介手数料
- 測量費
- 解体費
- 印紙税
例えば、3000万円で購入した不動産を3500万円で売却し、譲渡費用が200万円だった場合、譲渡所得は以下の通りです。
譲渡所得 = 3500万円 - (3000万円 + 200万円) = 300万円
この譲渡所得に対して税金がかかりますが、3000万円特別控除を適用すれば税金はゼロになります。
取得費が不明な場合の対処法
相続不動産等で取得費が分からない場合、売却価格の5%を概算取得費として使用できます。
例えば、売却価格が3500万円の場合、概算取得費は175万円(3500万円 × 5%)となります。
ただし、実際の取得費を証明できる書類(売買契約書、通帳記録、領収書等)があれば、実額を使用した方が有利です。概算取得費(5%)は最低限の控除額であり、実額の方が大きいケースが多いためです。
居住用財産の3000万円特別控除
3000万円特別控除とは
居住用財産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例があります。この控除により、譲渡所得が3000万円以下なら税金はゼロになります。
例えば、譲渡所得が2500万円の場合、3000万円控除を適用すると税金はゼロです。
譲渡所得2500万円 - 3000万円控除 = 課税対象なし
適用要件
3000万円特別控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 自分が住んでいた家であること 
 自己居住用であることが必須です。投資用不動産や別荘等は対象外です。
- 住まなくなってから3年以内の売却であること 
 引っ越し後、3年を経過する年の12月31日までに売却する必要があります。
- 親子・夫婦間の売買ではないこと 
 売却先が親子、夫婦、生計を一にする親族等の特別な関係でないことが条件です。
- 前年・前々年にこの特例を受けていないこと 
 この控除は3年に1回しか利用できません。
適用できないケース
以下のケースでは3000万円特別控除は適用できません。
- この特例を受けることだけを目的として入居した家
- 一時的な目的で入居した家(仮住まい等)
- 別荘や投資用不動産
- 親子・夫婦間の売買
その他の税金軽減措置
所有期間10年超の軽減税率
所有期間10年超の居住用財産を売却した場合、3000万円控除後の残額に軽減税率を適用できます。
税率(国税庁による):
| 課税譲渡所得 | 税率 | 
|---|---|
| 6000万円以下の部分 | 14.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%) | 
| 6000万円超の部分 | 20.315%(通常の長期譲渡所得税率) | 
3000万円控除と併用可能なため、大きな節税効果が期待できます。
例えば、譲渡所得が4000万円の場合、以下のように計算します。
- 3000万円控除適用: 4000万円 - 3000万円 = 1000万円
- 軽減税率適用: 1000万円 × 14.21% = 約142万円
通常の長期譲渡所得税率(20.315%)を適用した場合は約203万円となるため、約61万円の節税になります。
相続空き家の3000万円控除
相続した空き家を売却する場合、国税庁によると、一定の要件を満たせば3000万円控除を受けられます。
主な要件:
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋
- 相続開始直前まで被相続人が一人で居住していた
- 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却
- 売却価格が1億円以下
- 耐震リフォームまたは取り壊し後の土地売却
詳細は国税庁のサイトで確認するか、税理士にご相談ください。
特定居住用財産の買換え特例
居住用財産を売却して新たな居住用財産を購入する場合、一定の要件を満たせば譲渡益への課税を繰り延べ(将来の売却時まで課税を先送り)できる特例があります。
ただし、3000万円控除との併用はできないため、どちらが有利か慎重に判断する必要があります。一般的には、3000万円控除を優先した方が有利なケースが多いです。
確定申告の必要性と手続き
控除適用には確定申告が必須
3000万円特別控除等で税金がゼロになる場合でも、確定申告は必須です。確定申告をしないと控除が適用されず、本来不要な税金を支払うことになります。
確定申告の時期と必要書類
不動産を譲渡した年の翌年2月16日~3月15日に確定申告が必要です。
必要書類:
- 譲渡所得の内訳書
- 譲渡契約書(売買契約書)
- 取得費の証明書類(購入時の契約書、領収書等)
- 仲介手数料の領収書
- 登記事項証明書
- 住民票(居住用財産の特例を受ける場合)
確定申告は税務署窓口またはe-Taxで行えます。不明点がある場合は、税理士への相談を推奨します。
申告しない場合のリスク
確定申告を怠ると、以下のリスクがあります。
- 3000万円控除が適用されない 
 本来不要な税金を支払うことになります。
- 無申告加算税が課される 
 期限後申告の場合、本来の税額の15-20%の無申告加算税が課される場合があります。
- 延滞税が課される 
 期限を過ぎると延滞税が加算されます。
必ず期限内に申告してください。
まとめ
不動産売却で税金がかからない主なケースは、居住用財産の3000万円特別控除の適用です。譲渡所得が3000万円以下なら税金はゼロになります。
その他の軽減措置として、所有期間10年超の軽減税率(3000万円控除と併用可)、相続空き家の3000万円控除、買換え特例等も活用できます。
取得費が不明な場合は概算取得費(売却価格の5%)を使用できますが、実額が分かれば実額を使う方が有利です。
控除適用でも確定申告は必須です。期限内に申告し、不明点は税理士に相談しながら、税負担を最小限にしましょう。
