不動産の名義変更とは
不動産を相続・売買・贈与で取得した際、「名義変更はどうすればいいのか」「手続きが複雑そう」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産の名義変更(所有権移転登記)の手続き方法、ケース別の必要書類・費用、自分でできるか専門家に依頼すべきかの判断基準を、法務局の公式情報を元に解説します。
初めて不動産の名義変更を行う方でも、自身のケースに応じて適切に手続きを完了できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産の名義変更が必要な主な3ケースは、相続・売買・贈与
- 登録免許税率は相続0.4%、売買2.0%、贈与2.0%と大きく異なる
- 相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内の登記が必要(違反時は過料10万円以下)
- 贈与による名義変更は年間110万円超で贈与税の対象(累進税率10-55%)
- 複雑なケースは司法書士への依頼を推奨(報酬相場5-15万円)
不動産の名義変更とは|3つの主要ケース
不動産の名義変更(所有権移転登記)は、不動産の所有者が変わったことを法務局に登記する手続きです。
主な3ケースは以下の通りです。
| ケース | 登録免許税率 | 主な状況 | 
|---|---|---|
| 相続 | 0.4% | 親族が亡くなり不動産を相続 | 
| 売買 | 2.0% | 不動産を売買で取得 | 
| 贈与 | 2.0% | 親族から無償で不動産をもらう | 
(出典: 国税庁)
登録免許税率が異なるため、費用が大きく変わります。
相続登記義務化(2024年施行)
法務局の公式情報によると、2024年4月から相続登記は義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記が必要で、違反時は10万円以下の過料の対象です。過去の相続も遡及適用されるため、未登記の不動産がある場合は早急に対応してください。
ケース別の手続きと必要書類
3ケースそれぞれで必要書類・手続きの流れが異なります。
相続による名義変更
必要書類:
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印・印鑑証明書付き)
- 固定資産税評価証明書
- 登記申請書
手続きの流れ:
- 相続人を確定(戸籍謄本収集)
- 遺産分割協議(遺言がない場合)
- 必要書類準備
- 登記申請書作成
- 法務局へ申請
法務局の相続登記ガイドで詳細な手続き方法を確認できます。
売買による名義変更
必要書類:
- 売買契約書
- 売主の権利証(登記済証または登記識別情報)
- 売主の印鑑証明書
- 買主の住民票
- 固定資産税評価証明書
- 登記申請書
手続きの流れ:
- 売買契約締結
- 必要書類準備
- 登記申請書作成
- 法務局へ申請(通常、司法書士が同席)
売買による名義変更は、金融機関が司法書士の関与を融資条件とする場合が多いため、実務上は司法書士への依頼が一般的です。
贈与による名義変更
必要書類:
- 贈与契約書
- 贈与者の権利証
- 贈与者の印鑑証明書
- 受贈者の住民票
- 固定資産税評価証明書
- 登記申請書
手続きの流れ:
- 贈与契約締結
- 必要書類準備
- 登記申請書作成
- 法務局へ申請
注意: 贈与による名義変更は贈与税の対象です(詳細は次のセクションで説明)。
費用(登録免許税と司法書士報酬)
不動産の名義変更には、登録免許税と司法書士報酬(依頼する場合)がかかります。
登録免許税の計算方法
登録免許税は、固定資産税評価額に対して以下の税率で計算されます。
| ケース | 税率 | 3,000万円の例 | 
|---|---|---|
| 相続 | 0.4% | 12万円 | 
| 売買 | 2.0% | 60万円 | 
| 贈与 | 2.0% | 60万円 | 
(出典: 国税庁)
相続の税率が最も低く、売買・贈与は5倍の税率です。
司法書士報酬の相場
司法書士報酬は5-15万円が相場です。相続で相続人が多数いる場合、戸籍謄本の収集が困難な場合等、複雑なケースほど高額になります。
贈与による名義変更のリスク
贈与による名義変更は、贈与税のリスクがあるため慎重に判断してください。
国税庁の公式情報によると、年間110万円を超える贈与は贈与税の対象です。贈与税は累進税率(10-55%)が適用されるため、高額な不動産を贈与すると数百万円の税負担が発生します。
みなし贈与のリスク
親族間で不動産を売買する場合、時価より著しく低い価格で売買すると「みなし贈与」として贈与税が課税されるリスクがあります。不動産鑑定士の評価を取り、適正価格で売買することを推奨します。
自分でやる vs 専門家に依頼
不動産の名義変更は自分で行うことも可能ですが、ケースにより難易度が異なります。
自分で手続きする場合
法務局のウェブサイトから登記申請書の様式をダウンロードでき、窓口でも入手できます。法務局の無料相談窓口で記入方法を教えてもらえるため、自己申請も可能です。
自分でできる場合:
- 法定相続・相続人が少ない
- 遺産分割協議が整っている
- 戸籍謄本の収集が容易
司法書士報酬(5-15万円)を節約できるメリットがあります。
司法書士に依頼する場合
依頼すべき場合:
- 相続で相続人が多数いる
- 遺産分割協議が難航している
- 売買で金融機関が司法書士関与を融資条件としている
- 戸籍謄本の収集が困難
司法書士は登記申請の代理業務を行える国家資格者で、確実に手続きを完了できます。複雑なケースは専門家への依頼を推奨します。
まとめ|ケースに応じた適切な対応を
不動産の名義変更は、相続・売買・贈与で手続き・費用・税率が大きく異なります。登録免許税率は相続0.4%、売買・贈与2.0%で、3,000万円の不動産なら12万円 vs 60万円と5倍の差があります。
相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内の登記が必要です。贈与は贈与税リスク(年間110万円超で課税)があるため、慎重に判断してください。
複雑なケースは司法書士への相談を推奨します。法務局の無料相談窓口も活用しながら、適切に手続きを完了させましょう。
