不動産の名義変更手続き完全ガイド:ケース別の流れ

公開日: 2025/10/27

不動産の名義変更とは

不動産を相続・売買・贈与で取得した際、「名義変更はどうすればいいのか」「手続きが複雑そう」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産の名義変更(所有権移転登記)の手続き方法、ケース別の必要書類・費用、自分でできるか専門家に依頼すべきかの判断基準を、法務局の公式情報を元に解説します。

初めて不動産の名義変更を行う方でも、自身のケースに応じて適切に手続きを完了できるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産の名義変更が必要な主な3ケースは、相続・売買・贈与
  • 登録免許税率は相続0.4%、売買2.0%、贈与2.0%と大きく異なる
  • 相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内の登記が必要(違反時は過料10万円以下)
  • 贈与による名義変更は年間110万円超で贈与税の対象(累進税率10-55%)
  • 複雑なケースは司法書士への依頼を推奨(報酬相場5-15万円)

不動産の名義変更とは|3つの主要ケース

不動産の名義変更(所有権移転登記)は、不動産の所有者が変わったことを法務局に登記する手続きです。

主な3ケースは以下の通りです。

ケース 登録免許税率 主な状況
相続 0.4% 親族が亡くなり不動産を相続
売買 2.0% 不動産を売買で取得
贈与 2.0% 親族から無償で不動産をもらう

(出典: 国税庁

登録免許税率が異なるため、費用が大きく変わります。

相続登記義務化(2024年施行)

法務局の公式情報によると、2024年4月から相続登記は義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記が必要で、違反時は10万円以下の過料の対象です。過去の相続も遡及適用されるため、未登記の不動産がある場合は早急に対応してください。

ケース別の手続きと必要書類

3ケースそれぞれで必要書類・手続きの流れが異なります。

相続による名義変更

必要書類:

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本・住民票
  • 遺産分割協議書(相続人全員の実印・印鑑証明書付き)
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記申請書

手続きの流れ:

  1. 相続人を確定(戸籍謄本収集)
  2. 遺産分割協議(遺言がない場合)
  3. 必要書類準備
  4. 登記申請書作成
  5. 法務局へ申請

法務局の相続登記ガイドで詳細な手続き方法を確認できます。

売買による名義変更

必要書類:

  • 売買契約書
  • 売主の権利証(登記済証または登記識別情報)
  • 売主の印鑑証明書
  • 買主の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記申請書

手続きの流れ:

  1. 売買契約締結
  2. 必要書類準備
  3. 登記申請書作成
  4. 法務局へ申請(通常、司法書士が同席)

売買による名義変更は、金融機関が司法書士の関与を融資条件とする場合が多いため、実務上は司法書士への依頼が一般的です。

贈与による名義変更

必要書類:

  • 贈与契約書
  • 贈与者の権利証
  • 贈与者の印鑑証明書
  • 受贈者の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記申請書

手続きの流れ:

  1. 贈与契約締結
  2. 必要書類準備
  3. 登記申請書作成
  4. 法務局へ申請

注意: 贈与による名義変更は贈与税の対象です(詳細は次のセクションで説明)。

費用(登録免許税と司法書士報酬)

不動産の名義変更には、登録免許税と司法書士報酬(依頼する場合)がかかります。

登録免許税の計算方法

登録免許税は、固定資産税評価額に対して以下の税率で計算されます。

ケース 税率 3,000万円の例
相続 0.4% 12万円
売買 2.0% 60万円
贈与 2.0% 60万円

(出典: 国税庁

相続の税率が最も低く、売買・贈与は5倍の税率です。

司法書士報酬の相場

司法書士報酬は5-15万円が相場です。相続で相続人が多数いる場合、戸籍謄本の収集が困難な場合等、複雑なケースほど高額になります。

贈与による名義変更のリスク

贈与による名義変更は、贈与税のリスクがあるため慎重に判断してください。

国税庁の公式情報によると、年間110万円を超える贈与は贈与税の対象です。贈与税は累進税率(10-55%)が適用されるため、高額な不動産を贈与すると数百万円の税負担が発生します。

みなし贈与のリスク

親族間で不動産を売買する場合、時価より著しく低い価格で売買すると「みなし贈与」として贈与税が課税されるリスクがあります。不動産鑑定士の評価を取り、適正価格で売買することを推奨します。

自分でやる vs 専門家に依頼

不動産の名義変更は自分で行うことも可能ですが、ケースにより難易度が異なります。

自分で手続きする場合

法務局のウェブサイトから登記申請書の様式をダウンロードでき、窓口でも入手できます。法務局の無料相談窓口で記入方法を教えてもらえるため、自己申請も可能です。

自分でできる場合:

  • 法定相続・相続人が少ない
  • 遺産分割協議が整っている
  • 戸籍謄本の収集が容易

司法書士報酬(5-15万円)を節約できるメリットがあります。

司法書士に依頼する場合

依頼すべき場合:

  • 相続で相続人が多数いる
  • 遺産分割協議が難航している
  • 売買で金融機関が司法書士関与を融資条件としている
  • 戸籍謄本の収集が困難

司法書士は登記申請の代理業務を行える国家資格者で、確実に手続きを完了できます。複雑なケースは専門家への依頼を推奨します。

まとめ|ケースに応じた適切な対応を

不動産の名義変更は、相続・売買・贈与で手続き・費用・税率が大きく異なります。登録免許税率は相続0.4%、売買・贈与2.0%で、3,000万円の不動産なら12万円 vs 60万円と5倍の差があります。

相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内の登記が必要です。贈与は贈与税リスク(年間110万円超で課税)があるため、慎重に判断してください。

複雑なケースは司法書士への相談を推奨します。法務局の無料相談窓口も活用しながら、適切に手続きを完了させましょう。

よくある質問

Q1相続登記をしないとどうなりますか?

A12024年4月から相続登記は義務化され、相続開始を知ってから3年以内に登記が必要です。違反時は10万円以下の過料が科される可能性があります。また、相続登記を放置すると、不動産の売却や担保設定ができなくなり、相続人が増えて権利関係が複雑化します。早急に対応することをおすすめします。

Q2親族間で不動産を売買する場合の注意点は?

A2時価より著しく低い価格で売買するとみなし贈与として贈与税が課税されるリスクがあります。不動産鑑定士の評価を取り、適正価格で売買することを推奨します。また、親族間売買では金融機関が融資を渋る場合があるため、事前に金融機関に相談してください。適正価格での売買であれば、贈与税は課税されません。

Q3名義変更の費用は誰が負担しますか?

A3相続は相続人、売買は通常買主、贈与は当事者の合意によります。登録免許税と司法書士報酬(依頼する場合)が主な費用です。売買の場合、買主が全額負担するのが一般的ですが、契約で売主と分担することも可能です。贈与の場合、受贈者が負担するのが一般的ですが、贈与者が負担することもできます。

Q4登記申請書はどこで入手できますか?

A4法務局のウェブサイトから申請書様式をダウンロード可能です。窓口でも入手できます。記入方法が不明な場合は法務局の無料相談窓口を活用してください。予約制の場合が多いため、事前に電話で確認することをおすすめします。法務局のホームページには記入例も掲載されているため、参考にしてください。