不動産登記を自分でやる方法は?手順と必要書類を解説

公開日: 2025/10/26

不動産登記を自分でやるメリットとできるケース

不動産を相続・贈与・売買した際、所有権を正式に移転するには「登記」が必要です。多くの方は司法書士に依頼しますが、「自分で登記できるなら費用を節約できるのでは?」と考える方もいるでしょう。

この記事では、不動産登記を自分で行う方法、必要書類、費用、注意点を法務局の公式情報を元に解説します。自分でやるべきケースと専門家に依頼すべきケースを正しく理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 自分で登記できる主なケースは相続・贈与・住所変更・抵当権抹消等
  • 司法書士報酬5-15万円程度を節約できるが、時間・労力・ミスのリスクがある
  • 住宅ローンがある場合、抵当権設定登記は司法書士依頼が事実上必須
  • 法務局の無料相談窓口(予約制・20分間)を活用すれば申請ミスを減らせる
  • 2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内に登記しないと10万円以下の過料

自分で登記できるケース

不動産登記は法律上、本人が自分で申請することが認められています(司法書士法により、司法書士の独占業務ではありません)。自分で登記できる主なケースは以下の通りです。

  • 相続登記: 親や親族から不動産を相続した場合
  • 贈与登記: 親族から不動産を贈与された場合
  • 住所変更登記: 引っ越しで住所が変わった場合
  • 抵当権抹消登記: 住宅ローン完済後、抵当権を消す場合

これらのケースは比較的シンプルな登記で、法務局の公式サイトにも申請書のひな形が掲載されています。法務局の無料相談窓口(予約制・20分間)を活用すれば、申請前に記載方法を確認できるため、ミスを減らせます。

専門家に依頼すべきケース

一方、以下のケースは専門知識が必要で、自分で登記するのは困難です。

  • 抵当権設定登記: 住宅ローンを借りる際、不動産を担保に入れる登記。銀行が関与するため、司法書士への依頼が事実上必須
  • 複雑な売買: 複数の権利関係が絡む不動産の売買
  • 区分建物(マンション)の表示登記: 新築マンションの登記は土地家屋調査士・司法書士の専門領域

特に住宅ローンを借りる場合、多くの銀行は司法書士依頼を前提に話が進むため、自分で登記することは事実上不可能です。

自分で登記するメリット:司法書士報酬の節約

自分で登記する最大のメリットは、司法書士報酬5-15万円程度を節約できることです。司法書士報酬の相場は地域・物件により異なりますが、平均10万円前後と言われています。

ただし、節約できるのは司法書士報酬のみで、登録免許税(国税)は自分でやっても司法書士に依頼しても同額です。例えば、固定資産評価額2000万円の土地の相続登記では、登録免許税は8万円(2000万円×0.4%)かかります。

自分で登記する手順①必要書類の準備

自分で登記する最初のステップは、必要書類を揃えることです。登記の種類によって必要書類が異なるため、法務局の公式サイトで確認しましょう。

相続登記の必要書類(例)

相続登記を自分で行う場合、以下の書類が必要です。

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・押印)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書(市区町村役場で取得)
  • 不動産の登記事項証明書(法務局で取得、窓口600円・オンライン500円)

登記事項証明書の取得方法

登記事項証明書は、不動産の現在の所有者や権利関係を確認するために必要です。全国の法務局で取得できます(窓口600円、オンライン500円)。オンライン請求の場合、登記・供託オンライン申請システムから申し込むと、郵送または窓口で受け取れます。

取得には地番・家屋番号が必要です。住所(住居表示)とは異なる場合が多いため、以下の方法で調べましょう。

  • 固定資産税納税通知書で確認
  • 法務局でブルーマップ(住所と地番の対応図)を閲覧
  • 法務局の窓口で住所から地番を照会(電話照会も可)

自分で登記する手順②登記申請書の作成

必要書類が揃ったら、登記申請書を作成します。法務局の公式サイトには、相続・贈与・住所変更等のひな形が掲載されているので、これを参考に作成しましょう。

登記申請書の記載事項

登記申請書には以下の項目を記載する必要があります。

  • 登記の目的(例:所有権移転)
  • 登記の原因(例:令和7年1月1日相続)
  • 当事者(所有権を取得する人の住所・氏名)
  • 物件(土地・建物の所在、地番、地積・床面積等)
  • 課税標準額(固定資産評価証明書から転記)
  • 登録免許税額(課税標準額×税率で計算)

法務局での無料相談窓口を活用

登記申請書を作成したら、法務局の無料相談窓口(予約制・20分間)で事前確認を受けることを強くおすすめします。記載ミスや必要書類の不備を事前に指摘してもらえるため、申請がスムーズに進みます。

相談窓口は予約制のため、法務局のサイトから事前に予約しましょう。

自分で登記する手順③登録免許税の計算と納付

登記申請時には、登録免許税(国税)を納付する必要があります。税額は課税標準額(固定資産評価額)×適用税率で計算します。

登録免許税の計算方法

法務局の公式情報によると、登録免許税は以下の税率で計算します。

登記の種類 税率 計算例(評価額2000万円)
相続 0.4% 2000万円×0.4% = 8万円
贈与 2.0% 2000万円×2.0% = 40万円
売買(土地) 1.5%(2026年3月末まで軽減) 2000万円×1.5% = 30万円
住所変更 1,000円/1不動産 1,000円
抵当権抹消 1,000円/1不動産 1,000円

(出典: 法務局

注意: 1000円未満は切り上げです。例えば、評価額100万円の土地の相続登記では、100万円×0.4% = 4,000円となります。

登録免許税の納付方法

登録免許税の納付方法は以下の3つです。

  • 収入印紙: 税額分の収入印紙を購入し、申請書に貼付(最も一般的)
  • 現金納付: 金融機関で納付し、領収証書を申請書に貼付
  • オンライン納付: 登記・供託オンライン申請システムからインターネットバンキング等で納付

自分で登記する手順④申請から完了まで

登記申請書と必要書類が揃ったら、法務局に申請します。

法務局での申請

申請方法は以下の2つです。

  • 窓口申請: 不動産の所在地を管轄する法務局に直接持参
  • 郵送申請: 書留郵便で法務局に送付

オンライン申請も可能ですが、電子署名が必要なため、初めての方には窓口申請がおすすめです。

登記完了後の登記識別情報の受取り

申請後、法務局で審査が行われます(審査期間は1-2週間程度)。登記が完了すると、登記識別情報(12桁の英数字)が発行されます。

登記識別情報は、従来の「権利証」に代わるもので、不動産の所有者であることを証明する重要情報です。目隠しシール付きで通知されるため、他人に見せないよう注意しましょう。紛失しても再発行はできないため、銀行の貸金庫等で厳重に保管してください。

自分で登記するデメリットと司法書士に依頼すべきケース

自分で登記することには、費用節約のメリットがある一方、以下のデメリットもあります。

自分で登記する場合のリスク

  • 時間・労力がかかる: 書類の収集、申請書の作成、法務局での相談・申請等で数日かかる
  • 申請ミスのリスク: 記載ミスや必要書類の不備で却下されると、訂正・再申請に時間がかかる
  • 法律知識が必要: 登記の仕組みを理解していないと、誤った登記をしてしまう可能性がある

法務局の公式FAQでは、「登記申請を自分ですることは可能だが、複雑なケースでは司法書士への相談を推奨する」と明記されています。

銀行融資がある場合は司法書士依頼が必須

住宅ローンを借りる場合、抵当権設定登記が必要です。抵当権設定登記は銀行が関与するため、多くの銀行は司法書士依頼を前提に話が進みます。自分で登記することを断られるケースがほとんどです。

抵当権設定登記では、銀行が指定する司法書士に依頼することが一般的で、司法書士報酬5-10万円程度が発生します。

相続登記を放置するリスク

2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。相続登記を放置している方は、早めに対応しましょう。

自分で登記するのが難しい場合は、司法書士に依頼することをおすすめします。相続登記の司法書士報酬は5-10万円程度が相場です。

まとめ:自分で登記できるか判断するポイント

不動産登記を自分で行うことは可能ですが、すべてのケースで適しているわけではありません。

自分で登記できるケース:

  • 相続・贈与・住所変更・抵当権抹消等の単純な登記
  • 時間と労力をかけられる
  • 司法書士報酬5-15万円程度を節約したい

司法書士に依頼すべきケース:

  • 住宅ローンを借りる(抵当権設定登記が必要)
  • 複雑な売買・権利関係が絡む不動産
  • 時間がない、ミスのリスクを避けたい

2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。自分で登記するか司法書士に依頼するかを早めに判断し、期限内に対応しましょう。

法務局の無料相談窓口や法務局の公式サイトを活用し、自分で登記する場合は慎重に進めてください。

よくある質問

Q1登記ミスをした場合、どうなりますか?

A1申請書の記載ミスや必要書類の不備があると、法務局から補正指示または却下通知が来ます。補正の場合は訂正して再提出、却下の場合は再申請が必要です。追加の登録免許税はかかりませんが、訂正・再申請に時間がかかるため、法務局の無料相談窓口(予約制・20分間)で事前確認を受けることをおすすめします。

Q2住宅ローンを借りる場合、自分で登記できますか?

A2住宅ローンを借りる場合、抵当権設定登記が必要で、銀行が関与するため司法書士への依頼が事実上必須です。多くの銀行は司法書士依頼を前提に話が進むため、自分で登記することを断られるケースがほとんどです。抵当権設定登記の司法書士報酬は5-10万円程度が相場です。

Q3相続登記を放置するとどうなりますか?

A32024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。また、相続登記を放置すると、相続人が増えて遺産分割協議が困難になる、不動産を売却できない等のリスクがあります。早めに対応することをおすすめします。

Q4登記申請書の書き方がわからない場合、どうすればいいですか?

A4法務局で無料相談窓口(予約制・20分間)を利用できます。法務局の公式サイトから予約し、作成した登記申請書と必要書類を持参すれば、申請書の記載方法や必要書類について事前に確認を受けることができます。これにより、申請ミスを減らせるため、自分で登記する場合は積極的に活用しましょう。