土地建物の登記簿謄本とは?取得方法・見方を解説

公開日: 2025/10/31

土地建物の登記簿謄本とは?基本的な役割と正式名称

不動産の売買や相続の際に「登記簿謄本を取得してください」と言われて、戸惑った経験はありませんか。

この記事では、登記簿謄本(正式名称:登記事項証明書)の基本的な役割、取得方法、記載内容の見方を、法務省国土交通省の公式情報を元に解説します(2025年時点)。

初めて不動産取引をする方でも、登記簿謄本を正しく理解し、安心して手続きを進められるようになります。

この記事のポイント

  • 登記簿謄本の正式名称は「登記事項証明書」で、不動産の権利関係を公示する公的書類
  • 取得方法は法務局窓口(600円)・郵送(500円)・オンライン(480円)の3種類
  • 登記簿は表題部・甲区・乙区の3つの部分に分かれており、それぞれ物理的情報・所有権・その他権利を記載
  • 不動産購入前・相続発生時・融資申込時に確認が必須
  • 地番と住所は異なるため、法務局で地番を事前確認する必要がある

登記簿謄本とは何か

登記簿謄本は、不動産(土地・建物)の権利関係を公的に記録した書類です。正式名称は「登記事項証明書」と呼ばれます(2025年時点)。

不動産登記法に基づき、法務局が管理しており、誰でも取得できる公開情報です。売買・相続・融資の際に、所有者が誰か、担保権が設定されているかを確認するために使用されます。

「登記簿謄本」という呼び方は旧制度時代の名称で、法改正により電子化された後は「登記事項証明書」が正式名称となりました。ただし、現在も「登記簿謄本」という言葉が広く使われています。

登記簿の構成と記載内容:表題部・甲区・乙区の違い

登記簿は大きく3つの部分に分かれています。それぞれの役割を理解することで、不動産の状況を正確に把握できます。

表題部:土地・建物の物理的現況

表題部には、不動産の物理的な情報が記載されています。

土地の場合

  • 所在(例:大阪府高槻市〇〇町)
  • 地番(例:123番4)
  • 地目(例:宅地、田、畑、山林等)
  • 地積(例:150.50㎡)

建物の場合

  • 所在(例:大阪府高槻市〇〇町123番地4)
  • 家屋番号(例:123番4)
  • 種類(例:居宅、店舗、事務所等)
  • 構造(例:木造2階建)
  • 床面積(例:1階65.50㎡、2階55.30㎡)

表題部の内容は、所有者が登記申請をしない限り更新されません。そのため、地目変更(例:畑→宅地)や増築をしても、登記していなければ実態と異なる場合があります。

甲区:所有権に関する事項

甲区には、所有権に関する情報が記載されています。

  • 所有者の住所・氏名
  • 取得原因(例:売買、相続、贈与)
  • 取得日(例:令和5年3月15日売買)
  • 登記の目的(例:所有権移転)

甲区を見ることで、「現在の所有者が誰か」「どのような経緯で所有権を取得したか」を確認できます。不動産購入前には、売主が真の所有者であることを必ず確認しましょう。

乙区:抵当権・賃借権等の権利

乙区には、所有権以外の権利が記載されています。

主な記載内容

  • 抵当権(住宅ローンの担保)
  • 根抵当権(事業融資等で繰り返し借入・返済を行う際に設定される担保権)
  • 地上権(土地を使用する権利)
  • 賃借権(建物を借りる権利)

抵当権が設定されている場合、住宅ローンが残っていることを意味します。不動産購入時には、残債が完済され抵当権が抹消されることを確認する必要があります。

乙区に何も記載がない場合は、担保権が設定されていない「無担保物件」を意味します。

登記簿謄本の取得方法:窓口・郵送・オンラインの比較

登記事項証明書は、3つの方法で取得できます。それぞれの手数料・所要時間・メリットを比較して、自分に合った方法を選びましょう。

取得方法 手数料 所要時間 メリット
法務局窓口 600円 即日 地番不明でも相談可能
郵送請求 500円(窓口受取480円) 1週間程度 法務局に行かずに取得可能
オンライン請求 480円 最短翌日 最安・平日8:30-21:00対応

(出典: 法務省

方法1:法務局窓口で取得(手数料600円)

最寄りの法務局に行き、窓口で登記事項証明書交付請求書を記入して提出します。手数料は600円です(法務省の手数料令による)。

メリット

  • 即日取得可能
  • 地番が分からない場合、職員に相談できる
  • 複数の不動産をまとめて請求できる

デメリット

  • 法務局の営業時間(平日8:30-17:15)に行く必要がある
  • 手数料が最も高い

方法2:郵送請求(手数料500円、窓口受取480円)

登記事項証明書交付請求書を郵送し、後日郵送または法務局窓口で受け取る方法です。

手数料

  • 郵送受取:500円
  • 窓口受取:480円

メリット

  • 法務局に行かずに取得可能
  • 窓口より手数料が安い

デメリット

  • 所要時間が1週間程度かかる
  • 返信用封筒・切手を同封する必要がある

方法3:オンライン請求(手数料480円、最安)

登記・供託オンライン申請システムを利用して、インターネットから請求する方法です。

手数料:480円(最安)

利用時間:平日8:30-21:00

メリット

  • 手数料が最も安い
  • 夜間も対応(21時まで)
  • 最短で翌日に受け取れる

デメリット

  • 初回利用時に利用者登録が必要
  • 地番を正確に入力する必要がある

登記情報提供サービスとの違い(証明書にならない点に注意)

登記情報提供サービスは、一般財団法人民事法務協会が運営するオンラインサービスで、登記情報を確認できます。

手数料:331円(全部事項)

注意点

  • 認証文・登記官印がないため、証明書として使えない
  • 金融機関への提出、裁判所への提出等には不可

あくまで「登記情報を確認するためのサービス」であり、公的な証明書が必要な場合は法務局で登記事項証明書を取得する必要があります。

登記簿を確認すべきタイミングと活用方法

登記簿は、以下のタイミングで確認することが推奨されます。

不動産購入前:所有者・抵当権の確認

不動産購入前には、必ず登記簿を確認しましょう。

確認ポイント

  • 売主が真の所有者であるか(甲区)
  • 抵当権が残っていないか(乙区)
  • 差押え・仮差押えの登記がないか(乙区)

抵当権が残っている場合でも、残債が完済され抵当権抹消登記が行われれば問題ありません。ただし、決済時に確実に抹消されることを契約書で確認する必要があります。

相続発生時:相続登記の準備

相続が発生した場合、被相続人名義の不動産を特定し、相続登記を行う必要があります。

不動産登記法の改正により、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続開始から3年以内に登記しない場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

融資申込時:担保価値の確認

住宅ローンを申し込む際、金融機関は不動産に抵当権を設定します。その際、登記簿を確認して担保価値を評価します。

既に他の抵当権が設定されている場合、融資条件が厳しくなる可能性があります。

売却検討時:登記情報の整理

不動産を売却する際、登記情報が最新であることを確認しましょう。

確認ポイント

  • 所有者の住所が現住所と一致しているか
  • 抵当権が完済されているか(完済済みでも抹消登記が必要)

住所変更登記が必要な場合は、売却前に手続きを済ませておくとスムーズです。

登記簿謄本に関する注意点とよくあるトラブル

登記簿を取得する際、いくつかの注意点があります。

地番と住所の違い(郵便物の住所とは異なる)

登記簿で使用される「地番」は、法務局が土地を特定するために付した番号です。これは郵便物の住所(住居表示)とは異なります。

  • 住所:大阪府高槻市〇〇町1丁目2番3号
  • 地番:大阪府高槻市〇〇町123番4

地番が分からない場合は、法務局で住所から地番を検索してもらえます。ブルーマップ(住居表示と地番が併記された地図)を備えている法務局もあります。

表題部の内容が実態と異なる可能性

表題部の記載内容(地目・地積等)は、所有者が登記申請をしない限り更新されません。

注意が必要なケース

  • 地目変更(例:畑→宅地)をしたが登記していない
  • 分筆(1つの土地を複数に分ける)をしたが登記していない
  • 増築・附属建物を追加したが登記していない

実態と登記内容が異なる場合、売買や融資の際にトラブルになる可能性があります。

他人の登記情報を取得する際の注意(個人情報保護法)

不動産登記法により、誰でも他人の登記情報を取得できます。ただし、不正な目的で取得することは個人情報保護法違反となる可能性があります。

正当な目的の例

  • 不動産購入前の確認
  • 相続手続き
  • 隣地所有者の確認

不正な目的の例

  • ストーカー目的
  • 嫌がらせ目的

正当な理由がある場合のみ取得しましょう。

まとめ:登記簿謄本の取得と活用のポイント

登記簿謄本(登記事項証明書)は、不動産の権利関係を証明する公的書類です。売買・相続・融資の際に必須となります。

取得方法は、オンライン請求が最安(480円)で便利です。表題部・甲区・乙区の記載内容を理解し、不動産購入前や相続時に活用しましょう。

地番と住所は異なるため、事前に法務局で地番を確認することをおすすめします。登記手続きが複雑な場合は、司法書士への相談も検討しましょう。

よくある質問

Q1誰でも他人の土地の登記簿謄本を取得できますか?

A1可能です。不動産登記法の公示制度により、誰でも取得できます。ただし、不正な目的で取得することは個人情報保護法違反の可能性があります。正当な目的(不動産購入前の確認、相続手続き等)での取得が前提です。

Q2自分の土地の登記簿はどこで確認できますか?

A2法務局の窓口、郵送請求、オンライン請求(登記・供託オンライン申請システム)で取得可能です。地番が分からない場合は、法務局で住所から検索してもらえます。登記情報提供サービス(331円)でも確認できますが、証明書としては使えません。

Q3登記簿謄本と登記事項証明書の違いは何ですか?

A3同じものです。「登記簿謄本」は旧称で、現在の正式名称は「登記事項証明書」です。法改正により電子化され、名称が変更されました。内容は同一で、不動産の権利関係を証明する公的書類です。

Q4登記情報提供サービスで取得した情報は証明書として使えますか?

A4使えません。登記情報提供サービスは登記情報を確認するためのサービスで、認証文・登記官印がないため証明書になりません。金融機関への提出、裁判所への提出等には、法務局が発行する登記事項証明書(480-600円)が必要です。

Q5登記簿と固定資産税評価証明書の違いは何ですか?

A5登記簿(登記事項証明書)は不動産の権利関係(所有者、抵当権等)を記載した書類です。固定資産税評価証明書は固定資産税の課税額・評価額を記載した書類です。用途が異なり、登記簿は権利確認、固定資産税評価証明書は税額確認や融資の際の担保評価に使用されます。