土地謄本(登記事項証明書)とは何か
土地購入や相続の際、「土地謄本が必要」と言われて戸惑う方は少なくありません。
この記事では、土地謄本(登記事項証明書)の取得方法と見方について、法務省や法務局の公式情報を元に解説します。
土地謄本は通称で、正式には「登記事項証明書」と呼ばれます。土地の所有者や抵当権の有無など、権利関係を公的に証明する重要な書類で、不動産売買・相続・住宅ローン申請時に必要となります。誰でも手数料を払えば取得できるため、購入前の権利確認にも活用できます。
この記事のポイント
- 土地謄本の正式名称は「登記事項証明書」(コンピュータ化前は「登記簿謄本」)
- 取得方法は法務局窓口・郵送・オンラインの3種類があり、オンラインが最安(520円)
- 取得には地番が必要で、住居表示とは異なるため事前確認が必要
- 表題部・権利部甲区・乙区の3部構成で、所有者・抵当権の有無を確認できる
- 権利関係が複雑な場合は司法書士への相談を推奨
土地謄本(登記事項証明書)とは何か
「土地謄本」は通称で、正式には「登記事項証明書」と呼ばれます。
土地謄本の正式名称と呼び方の変遷
コンピュータ化前は「登記簿謄本」と呼ばれていましたが、現在は「登記事項証明書」が正式名称です。法務省の資料によると、法的効力は同じで、どちらの呼び方でも通じます。
登記事項証明書が必要になる場面
登記事項証明書は、以下のような場面で必要となります。
- 不動産売買: 売主の所有権確認、抵当権の有無確認
- 相続: 被相続人の所有権確認、相続登記の準備
- 住宅ローン申請: 金融機関が担保設定のために確認
- 境界確定: 隣地所有者の確認
誰でも手数料を払えば取得可能で、土地の所有者である必要はありません。
土地謄本(登記事項証明書)の取得方法
取得方法は3種類あり、それぞれ手数料が異なります。
法務局窓口での取得(手数料600円)
全国どの法務局でも取得可能です。本人確認書類は不要で、地番さえ分かれば誰でも取得できます。
手順:
- 法務局の窓口で登記事項証明書交付申請書を記入
- 収入印紙600円分を購入して添付
- 窓口に提出し、証明書を受け取る
郵送での取得(手数料600円)
法務局に足を運べない場合は、郵送でも取得できます。
手順:
- 法務局のWebサイトから申請書をダウンロード
- 必要事項を記入し、収入印紙600円分を貼付
- 返信用封筒(切手貼付)を同封して法務局に郵送
- 数日後に登記事項証明書が郵送される
オンライン請求での取得(手数料520円)
登記・供託オンライン申請システムを利用すれば、最安の520円で取得できます。
手順:
- 登記・供託オンライン申請システムに利用者登録
- オンラインで登記事項証明書を請求
- 郵送受取を選択(520円)または窓口受取(480円)
- インターネットバンキングまたはATMで手数料を納付
- 数日後に登記事項証明書が郵送される
登記情報提供サービスでの閲覧(335円・証明力なし)
一般財団法人民事法務協会が運営する登記情報提供サービスでは、1件335円で即時閲覧できます。ただし、公的証明力がないため、住宅ローン申請や売買契約などの正式手続きには使えません。事前調査には便利です。
土地謄本を取得する前の準備:地番の調べ方
登記事項証明書を取得するには「地番」が必要です。
地番と住居表示の違い
地番(○○町123番4)と住居表示(○○町1-2-3)は異なります。住所だけでは登記事項証明書を取得できないため、事前に地番を調べる必要があります。
地番を調べる方法
地番は以下の方法で調べられます。
- 法務局の地番照会サービス: 窓口または電話で照会可能
- ブルーマップ: 住宅地図と公図を重ね合わせた地図。図書館や法務局で閲覧可能
- 固定資産税納税通知書: 土地の所有者であれば、納税通知書に地番が記載されている
事前に地番を調べておくと、窓口・オンライン請求がスムーズに進みます。
土地謄本の見方:記載内容の読み取り方
登記事項証明書は3部構成になっています。
表題部:土地の物理的状況
表題部には、土地の物理的状況が記載されています。
記載内容:
- 所在: 土地の所在地
- 地番: 登記上の番号
- 地目: 土地の用途(宅地・畑・雑種地等)
- 地積: 土地の面積(平方メートル)
地目が「宅地」以外の場合、建物を建てる前に地目変更登記が必要になる場合があります。
権利部甲区:所有権に関する事項
権利部甲区には、所有権に関する情報が記載されています。
記載内容:
- 所有者の氏名・住所
- 取得原因: 売買・相続・贈与等
- 取得日
過去の所有者の履歴も確認できるため、所有権の移転経緯を把握できます。
権利部乙区:抵当権などの権利
権利部乙区には、所有権以外の権利(抵当権・地上権・賃借権等)が記載されています。
記載内容:
- 抵当権: 住宅ローンがある場合、金融機関の抵当権が設定されている
- 根抵当権: 事業用融資の担保として設定される
- 地上権・賃借権: 土地を借りる権利
住宅ローンを完済した場合、抵当権の抹消登記が別途必要です。権利部乙区に記載がない場合は、抵当権等が設定されていない土地です。
権利部がない土地の注意点
表題部のみで権利部(甲区・乙区)がない土地は、所有権保存登記がされていない未登記物件です。売買や住宅ローンの担保設定ができないため、所有権保存登記の手続きが別途必要になります。
土地謄本を確認する際の注意点とリスク
登記事項証明書を確認する際には、いくつかの注意点があります。
現在事項証明書と全部事項証明書の違い
登記事項証明書には2種類あります。
- 現在事項証明書: 現在の権利関係のみ表示
- 全部事項証明書: 過去の履歴も含めて全て表示
過去の抵当権や差押えの履歴は「閉鎖事項」として扱われ、現在事項証明書には表示されません。不動産購入時は全部事項証明書の取得を推奨します。
登記と実態が異なる可能性
登記は任意のため、相続や売買があっても登記されていない土地が存在します。登記上の所有者が実際の権利者と異なる可能性に注意が必要です。
相続登記未了の土地
相続登記が未了の土地は、相続人全員の同意が必要で売買に支障が出ます。2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内の登記を怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。
権利関係が複雑な場合(共有名義、抵当権設定、相続登記未了等)は、司法書士に相談することをおすすめします。
土地謄本の活用場面
登記事項証明書は、様々な場面で活用できます。
売却・購入時の権利確認
不動産売買の際、登記事項証明書で所有者・抵当権の有無を確認します。地番・地積を基に、国土交通省の不動産取引価格情報で周辺相場を調査することもできます。
相続時の権利関係の把握
相続登記の際、現在の権利者を確認するために登記事項証明書が必要です。共有名義の場合は、相続人全員の同意が必要になります。
住宅ローン申請時の担保確認
金融機関が担保として抵当権を設定するため、登記事項証明書の原本提出が必須です。登記情報提供サービスで取得した情報は公的証明力がなく、正式手続きには使えません。
まとめ:土地謄本(登記事項証明書)の取得と活用
土地謄本(登記事項証明書)は、土地の権利関係を公的に証明する重要な書類です。
取得方法はオンライン・窓口・郵送の3種類があり、オンライン請求が最安(520円)です。取得には地番が必要で、住居表示とは異なるため、事前に法務局やブルーマップで確認しましょう。
表題部(物理的状況)、権利部甲区(所有権)、乙区(抵当権等)の3部構成を理解すれば、所有者・抵当権の有無を把握できます。権利関係が複雑な場合は司法書士へ相談し、安全な不動産取引を進めることをおすすめします。
