不動産登記情報の調べ方と活用方法を徹底解説

公開日: 2025/10/31

不動産登記情報とは:権利関係を公示する公的記録

不動産の購入・売却・相続を検討する際、「この物件の所有者は誰か」「抵当権は設定されているか」といった情報を確認する必要があります。

この記事では、不動産登記情報の構成(表題部・権利部甲区・乙区)、調べ方(オンライン・窓口の違い)、活用方法、2024-2025年の最新法改正を、法務省国土交通省の公式情報を元に解説します。

不動産取引や相続で登記情報を正しく読み、安全な手続きを進められるようになります。

この記事のポイント

  • 登記情報は不動産の「身分証明書」で、表題部(物理情報)・権利部甲区(所有権)・権利部乙区(抵当権等)の3部構成
  • オンライン取得(登記情報提供サービス)は334円/件で即時取得可能だが、証明文・公印なしのため法的証明力なし
  • 法的証明力が必要な場合は、法務局窓口またはオンライン請求で登記事項証明書(謄本)を取得(600円/通)
  • 2024年4月施行の相続登記義務化により、相続後3年以内の登記申請が必須(違反時は10万円以下の過料)
  • 登記情報は個人情報保護法の対象で、目的外使用・悪用は違法行為

不動産登記情報の構成:表題部・権利部(甲区・乙区)の読み方

表題部:不動産の物理的情報

表題部には、不動産の物理的な情報が記載されます。

記載項目 内容
所在 土地・建物の場所
地番 登記上の土地番号(住居表示とは異なる)
地目 土地の用途(宅地、田、畑等)
地積 土地の面積
建物の種類 居宅、店舗、事務所等

地番と住居表示の違いに注意してください。地番は登記上の番号(例:1番地1)、住居表示は郵便配達用の住所(例:1丁目1番1号)で、両者は異なることが多いです。登記情報を検索する際は地番を使用します。

権利部(甲区):所有権に関する情報

権利部甲区には、所有権に関する情報が記載されます。

  • 所有者の氏名・住所
  • 所有権移転の原因(売買、相続、贈与等)
  • 所有権移転の日付
  • 仮登記、差押え等の制限事項

甲区を確認することで、現在の所有者が誰か、過去にどのような所有権移転があったかを把握できます。

権利部(乙区):抵当権など所有権以外の権利

権利部乙区には、所有権以外の権利が記載されます。

  • 抵当権(住宅ローンの担保)
  • 根抵当権(継続的な借入の担保)
  • 地上権、賃借権等

不動産購入時には、乙区に抵当権が設定されているか、決済時に抹消されるかを確認することが重要です。

登記情報の調べ方:オンラインと窓口取得の違い

オンライン取得の手順(登記情報提供サービス)

登記情報提供サービスは、法務省が運営する公式サイトで、オンラインで登記情報をPDF形式で取得できるサービスです。

利用方法:

  1. 登記情報提供サービスにアクセス
  2. 一時利用(クレジットカード決済)または登録利用を選択
  3. 地番で物件を検索
  4. PDFをダウンロード(334円/件)

メリット:

  • 即時取得可能
  • 24時間利用可能
  • 費用が安い(334円/件)

デメリット:

  • 証明文・公印がないため法的証明力なし
  • 公的手続き(売買契約、相続手続き等)には使えない

法務局窓口での取得方法

法務局窓口で登記事項証明書(謄本)を取得する場合、証明文・公印付きで法的証明力を持つ書類が交付されます。

手順:

  1. 最寄りの法務局へ行く
  2. 申請書に必要事項を記入
  3. 手数料600円/通を支払う
  4. 登記事項証明書を受領

オンライン請求後に郵送受取を選択すると、証明文・公印付きの登記事項証明書を500円/通で取得できます。

費用・所要時間の比較表

取得方法 費用 所要時間 法的証明力
登記情報提供サービス 334円/件 即時 なし
法務局窓口 600円/通 即日-数日 あり
オンライン請求(郵送) 500円/通 数日 あり

登記情報の活用方法:不動産取引・相続時の使い方

不動産購入・売却時の活用

不動産購入時には、登記情報で以下を確認します。

  • 現在の所有者が売主本人か
  • 抵当権が設定されているか(決済時に抹消されるか)
  • 仮登記や差押えがないか

宅地建物取引業法では、重要事項説明時に登記情報の開示義務があります。不動産会社から提示される登記情報を必ず確認してください。

相続時の活用

相続時には、登記情報で以下を確認します。

  • 被相続人(故人)が所有者として登記されているか
  • 過去の所有権移転履歴
  • 抵当権等の負担があるか

2024年4月施行の相続登記義務化により、相続後3年以内に登記申請が必要です。早めに登記情報を確認し、司法書士へ相談することをおすすめします。

不動産情報ライブラリとの組み合わせ

国土交通省の不動産情報ライブラリでは、登記情報と合わせて以下の情報を閲覧できます。

  • 不動産取引価格
  • 災害リスク情報
  • 都市計画情報

これらを組み合わせることで、投資判断やリスク評価に活用できます。

登記情報に関する最新の法改正(2024-2025年)

相続登記義務化(2024年4月施行)

法務局の公式発表によると、2024年4月から相続登記が義務化されました。

内容:

  • 相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請が必要
  • 違反時は10万円以下の過料
  • 2024年4月1日以前の相続も対象(施行日から3年以内、2027年3月31日までに登記申請)

背景: 所有者不明土地の増加を防止するため。相続が発生したら早めに司法書士へ相談してください。

検索用情報の申出義務化(2025年4月施行)

2025年4月から、所有権保存・移転登記の際に、以下の情報を法務局に提出する義務が追加されます。

  • 氏名の読み仮名
  • 生年月日
  • メールアドレス(任意)

登記情報の検索性向上と、同姓同名の所有者を区別することが目的です。

登記情報利用時の注意点とよくある誤解

登記情報提供サービスで取得したPDFは法的証明力なし

登記情報提供サービスで取得したPDFは、証明文・公印がないため法的証明力を持ちません。閲覧用としては問題ありませんが、公的手続き(売買契約、相続手続き等)には使えません。

法的証明力が必要な場合は、法務局窓口またはオンライン請求で登記事項証明書(謄本)を取得してください。

登記情報は個人情報保護法の対象

登記情報には所有者の氏名・住所が記載されており、個人情報保護法の対象です。取得した情報の目的外使用・悪用(詐欺等)は違法行為となります。

登記情報は正当な目的(不動産取引、相続手続き等)でのみ利用してください。

登記識別情報を紛失した場合

登記識別情報(12桁の英数字コード)は、2005年以降に発行される本人確認手段で、従来の「登記済権利証」に代わるものです。

紛失しても再発行はできませんが、売却等の登記手続きは可能です。司法書士による本人確認情報の作成(費用5-10万円)または公証人による認証で代替できます。紛失時は早めに専門家へ相談してください。

「登記すれば絶対安全」は誤解

登記は対抗要件にすぎず、契約自体の有効性は別問題です。登記があっても、契約に瑕疵があれば無効になる場合があります。

不動産取引では、登記情報の確認と合わせて、契約内容を専門家(司法書士、弁護士)に確認してもらうことをおすすめします。

まとめ:登記情報の正しい読み方と活用のポイント

不動産登記情報は、不動産取引・相続時に不可欠な「権利関係の公示情報」です。表題部・権利部(甲区・乙区)の読み方を理解し、オンライン取得で手軽に確認できます。

ただし、登記情報提供サービスで取得したPDFは法的証明力がないため、公的手続きには登記事項証明書(謄本)が必要です。

2024-2025年の法改正(相続登記義務化・検索用情報申出義務化)を把握し、義務違反を回避してください。登記情報の悪用は違法行為であり、不明点は司法書士に相談しましょう。

登記情報を正しく理解し、安全な不動産取引を実現してください。

よくある質問

Q1登記情報提供サービスで取得したPDFは公的手続きに使えますか?

A1使えません。証明文・公印がないため法的証明力を持たない閲覧用データです。公的手続き(売買契約、相続手続き等)には、法務局窓口またはオンライン請求で取得する登記事項証明書(謄本、証明文・公印あり)が必要です。費用は窓口600円/通、オンライン請求500円/通です。

Q2地番と住居表示の違いは何ですか?

A2地番は登記上の土地の番号(例:1番地1)、住居表示は郵便配達用の住所(例:1丁目1番1号)です。両者は異なることが多く、登記情報を検索する際は地番を使用する必要があります。地番は固定資産税納税通知書や権利証で確認できます。分からない場合は法務局で照会可能です。

Q3相続登記義務化で過去の相続も対象ですか?

A3対象です。2024年4月1日以前の相続も義務化の対象で、施行日から3年以内(2027年3月31日まで)に登記申請が必要です。違反時は10万円以下の過料が科されます。相続が発生したら早めに司法書士へ相談し、登記手続きを進めることをおすすめします。

Q4登記識別情報を紛失した場合はどうすればいいですか?

A4再発行はできませんが、売却等の登記手続きは可能です。司法書士による本人確認情報の作成(費用5-10万円)または公証人による認証で代替できます。紛失時は早めに専門家へ相談してください。なお、登記識別情報は第三者に知られると不正登記のリスクがあるため、厳重に管理してください。