不動産の登記簿謄本とは?権利関係を公的に証明する書類
不動産の売買や相続、住宅ローンの借入等を行う際、「登記簿謄本」の提出を求められることがあります。しかし、「何が記載されているのか」「どうやって取得するのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産の登記簿謄本(正式名称:登記事項証明書)の取得方法と記載内容の読み方を、法務局の公式情報を元に解説します。
登記簿謄本は誰でも取得でき、不動産の所有者・権利関係・担保設定を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 登記簿謄本(登記事項証明書)は不動産の所有者・権利関係・担保設定等を公的に証明する書類
- 不動産登記法により誰でも請求できる公開情報で、所有者以外でも取得可能
- 取得方法は①法務局窓口(手数料600円)、②郵送申請(手数料600円)、③オンライン申請(手数料520円または490円)の3つ
- 登記簿は3部構成(表題部・権利部甲区・権利部乙区)で、各部の記載内容を理解することが重要
- 取得には「地番」または「家屋番号」が必要(住所とは異なる場合がある)
不動産の登記簿謄本とは?誰でも取得可能な公開情報
不動産の登記簿謄本(正式名称:登記事項証明書)は、不動産の所有者・権利関係・担保設定等を公的に証明する書類です。法務局で管理され、不動産登記法により誰でも請求できる公開情報です。
所有者本人でなくても取得可能で、身分証明書・印鑑・委任状は不要です。不動産の「地番」または「家屋番号」さえ分かれば、全国どの法務局でも取得できます。
(出典: 法務局)
取得方法|窓口・郵送・オンライン申請の3つ
登記簿謄本の取得方法は、①法務局窓口、②郵送申請、③オンライン申請の3つです。それぞれの手数料と所要期間を比較します。
法務局窓口での取得
手数料: 600円
所要期間: 10-15分程度
メリット: 即日取得可能、全国どの法務局でも取得可能
デメリット: 平日8:30-17:15のみ受付  
法務局窓口で、「登記事項証明書交付申請書」に不動産の所在・地番・家屋番号を記入し、手数料600円(収入印紙)を支払います。全国どの法務局でも取得可能で、即日発行されます。
郵送申請での取得
手数料: 600円
所要期間: 1週間程度
メリット: 法務局に行かなくても取得可能
デメリット: 郵送期間がかかる  
郵送申請では、「登記事項証明書交付申請書」に不動産の所在・地番・家屋番号を記入し、手数料600円分の郵便小為替と返信用封筒(切手貼付)を同封して法務局に送付します。1週間程度で返送されます。
オンライン申請での取得
手数料: 520円(郵送受取)または490円(窓口受取)
所要期間: 郵送受取なら3-5日程度、窓口受取なら即日
メリット: 平日8:30-21:00に申請可能、手数料が安い
デメリット: 初回は利用者登録が必要  
登記・供託オンライン申請システムを利用します。利用時間は平日8:30-21:00です。郵送受取なら手数料520円、窓口受取なら手数料490円で、窓口申請より110円安くなります。
(出典: 法務局)
2025年4月1日に手数料が改定されました。旧料金(窓口600円、オンライン郵送500円等)から変更されているため、最新の手数料を確認してください。
| 取得方法 | 手数料 | 所要期間 | メリット | デメリット | 
|---|---|---|---|---|
| 法務局窓口 | 600円 | 10-15分 | 即日取得 | 平日のみ | 
| 郵送申請 | 600円 | 1週間 | 法務局に行かなくてOK | 時間がかかる | 
| オンライン申請(郵送) | 520円 | 3-5日 | 手数料が安い | 初回登録必要 | 
| オンライン申請(窓口) | 490円 | 即日 | 手数料が最安 | 窓口に取りに行く必要 | 
(出典: 法務局)
記載内容の読み方|表題部・権利部甲区・権利部乙区
登記簿は、表題部・権利部甲区・権利部乙区の3部構成です。各部の記載内容を理解しましょう。
表題部:不動産の物理的情報
記載内容:
- 土地:所在・地番・地目・地積
- 建物:所在・家屋番号・種類・構造・床面積
表題部は、不動産の物理的な情報を記載します。地目は「宅地」「田」「畑」「山林」等の土地の種類を示します。地積は土地の面積(㎡)です。建物の場合、種類(居宅・店舗・事務所等)、構造(木造・鉄骨造等)、床面積が記載されます。
権利部甲区:所有権に関する情報
記載内容:
- 所有権に関する事項
- 所有者の氏名・住所
- 所有権移転の経緯(売買・相続・贈与等)
権利部甲区は、所有権に関する情報を記載します。現在の所有者だけでなく、過去の所有者も記載されます。所有権移転の原因(売買・相続・贈与等)も記載されるため、不動産の権利の変遷を確認できます。
権利部乙区:所有権以外の権利
記載内容:
- 所有権以外の権利(抵当権・地役権・賃借権等)
- 抵当権者(金融機関等)
- 債権額・利息・損害金
権利部乙区は、所有権以外の権利を記載します。抵当権がある場合、金融機関名・債権額・設定日等が記載されます。抵当権がない場合は、乙区が存在しません。
(出典: 法務省)
取得時の注意点
地番と住所は異なる場合がある
登記簿謄本の取得には「地番」または「家屋番号」が必要です。地番は住所(住居表示)とは異なる場合が多く、注意が必要です。
例:
- 住所:東京都千代田区丸の内1-1-1
- 地番:東京都千代田区丸の内一丁目1番
地番が分からない場合は、法務局で「地番照会」を行うことができます。または、固定資産税課税明細書に地番が記載されている場合もあります。
(出典: HOME4U)
全部事項証明書と現在事項証明書の違い
登記事項証明書には、「全部事項証明書」と「現在事項証明書」の2種類があります。
- 全部事項証明書: 登記簿の全内容を記載(閉鎖された登記も含む)。一般的に「登記簿謄本」と呼ばれるのはこの書類
- 現在事項証明書: 現在有効な登記事項のみを記載(抹消された抵当権等は記載されない)
不動産取引や相続では、全部事項証明書を取得することが一般的です。過去の権利関係を確認できるため、トラブルを未然に防ぐことができます。
登記情報は過去の情報である
登記簿は過去の情報であり、現況と異なる場合があります。例えば:
- 増改築しても登記していない場合、建物面積と実際が異なる
- 現所有者が登記を変更していない場合、登記簿上の所有者と実際の所有者が異なる
- 未登記建物は登記簿に記載されない
登記情報はあくまで参考であり、現地確認や重要事項説明で現況を確認することが重要です。
有効期限の誤解
登記事項証明書に法的な有効期限はありません。ただし契約等で「3ヶ月以内」の登記簿謄本を求められる場合が多いため、取得日に注意してください。
まとめ:登記簿謄本で不動産の権利関係を正確に把握
不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)は、不動産の所有者・権利関係・担保設定等を公的に証明する書類です。誰でも請求できる公開情報で、法務局窓口・郵送・オンライン申請で取得できます。
登記簿は表題部・権利部甲区・権利部乙区の3部構成で、各部の記載内容を理解することで、不動産の権利関係を正確に把握できます。
取得時には「地番」または「家屋番号」が必要で、住所とは異なる場合がある点に注意してください。不動産取引や相続の際は、登記簿謄本を確認し、現況と照らし合わせることを推奨します。
