不動産登記とは何か
不動産を購入したり相続したりする際、「登記ってどうすればいいのか」と不安に感じる方は少なくありません。手続きが複雑そうで、費用もどれくらいかかるのか分からないことが多いでしょう。
この記事では、不動産登記の基本、種類、手続き、費用、必要書類を、法務省・法務局の公式情報を元に解説します。
2024年4月施行の相続登記義務化についても詳しく説明し、自分で申請するか司法書士に依頼すべきか判断できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産登記は物権変動を第三者に対抗するための要件(登記しないと第三者に権利を主張できない)
- 主な登記の種類:所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記、抵当権抹消登記
- 2024年4月から相続登記が義務化、相続から3年以内の登記が必要、違反時は10万円以下の過料
- 費用は登録免許税(実費)と司法書士報酬の2つ、登録免許税の軽減措置は2027年3月31日まで
- 複雑な登記(売買登記、相続人多数の相続登記等)は司法書士に依頼を推奨
不動産登記とは何か
不動産登記の目的と意義
不動産登記とは、土地・建物の所在、面積、所有者、担保権等の情報を法務局が管理する登記簿に記録する制度です。
民法第177条により、不動産の物権変動は「登記」をしなければ第三者に対抗できません。つまり、登記していない場合、二重譲渡等のトラブルが発生した際、自分が所有者であることを証明できなくなります。
重要な点:
- 登記は物権変動の「対抗要件」であって「効力要件」ではない
- 登記しなくても所有権は移転するが、第三者に対抗できない
- 登記することで、所有権を公的に証明できる
登記簿の構造(表題部・権利部)
登記簿は以下の3つの部分から構成されています。
| 区分 | 内容 | 
|---|---|
| 表題部 | 不動産の所在、地番、地目(土地)、家屋番号、種類、構造、床面積(建物)等の物理的状況 | 
| 権利部甲区 | 所有権に関する事項(所有者の氏名・住所、取得原因、所有権移転日等) | 
| 権利部乙区 | 所有権以外の権利(抵当権、地上権、賃借権等) | 
登記簿は法務局の窓口、郵送、オンライン(登記・供託オンライン申請システム)で取得可能です。
不動産登記の主な種類
表題登記(未登記の建物を記録)
表題登記は、未登記の建物を新たに登記簿に記録する手続きです。
新築建物の場合、完成から1ヶ月以内に土地家屋調査士が申請する義務があります。
所有権保存登記(新築建物)
所有権保存登記は、所有権の登記がない不動産(新築建物等)に初めて所有者として登記することです。
権利部甲区に記録され、登録免許税は評価額の0.4%です(軽減措置適用時0.15%)。
所有権移転登記(売買・相続・贈与)
所有権移転登記は、売買・相続・贈与等で不動産の所有権が移転した際に行う登記です。
登録免許税の税率:
- 売買: 評価額の2%(軽減措置適用時0.3%)
- 相続: 評価額の0.4%
- 贈与: 評価額の2%
抵当権設定登記(住宅ローン)
抵当権設定登記は、住宅ローン等を借りる際、金融機関が不動産に担保権を設定する登記です。
権利部乙区に記録され、登録免許税は債権額の0.4%(軽減措置適用時0.1%)です。
抵当権抹消登記(ローン完済)
抵当権抹消登記は、住宅ローン完済後、抵当権を消す登記です。
放置すると将来の売却時に支障が出るため、完済後は速やかに抹消登記を行うべきです。登録免許税は不動産1個につき1,000円です。
相続登記の義務化(2024年4月施行)
義務化の内容と期限
2024年4月1日から、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請する義務が課されました(法務局公式情報)。
重要なポイント:
- 期限: 相続を知った日から3年以内
- 罰則: 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料
過去の相続への適用
2024年4月1日より前の相続でも対象です。2027年3月31日までに登記する必要があります。
これまで相続登記は任意でしたが、義務化により必ず手続きを行う必要があります。
義務化の背景
相続登記の義務化は「所有者不明土地問題」を解消するための施策です。
相続登記が長期間行われないことで、所有者が不明確となり、公共事業や不動産取引に支障が出るケースが増えていました。
不動産登記にかかる費用
登録免許税(実費)
登録免許税は、不動産登記を申請する際に納める国税です。税率は登記の種類により異なります(国税庁)。
| 登記の種類 | 税率 | 軽減措置適用時 | 
|---|---|---|
| 所有権移転登記(売買) | 評価額の2% | 0.3% | 
| 所有権保存登記 | 評価額の0.4% | 0.15% | 
| 相続登記 | 評価額の0.4% | なし | 
| 抵当権設定登記 | 債権額の0.4% | 0.1% | 
| 抵当権抹消登記 | 1,000円/個 | なし | 
(出典: 国税庁)
軽減措置の期限: 2027年3月31日まで(国税庁パンフレット)
司法書士報酬
司法書士に登記申請を依頼する場合の報酬相場は以下の通りです(名義変更ドットコム)。
| 登記の種類 | 報酬相場 | 
|---|---|
| 相続登記 | 7~10万円 | 
| 売買登記 | 5~15万円 | 
| 抵当権抹消登記 | 1~2万円 | 
注意点:
- 登記費用は登録免許税(実費)と司法書士報酬の2つに分かれる
- 見積もりの際は両者を区別して確認すること
- 自分で申請する場合は登録免許税のみで済む
登記申請の流れと必要書類
所有権移転登記(売買)の必要書類
土地・建物を購入した場合の所有権移転登記に必要な書類は以下の通りです。
必要書類:
- 登記申請書
- 登記原因証明情報(売買契約書)
- 登記識別情報(権利証、売主が用意)
- 印鑑証明書(売主・買主双方)
- 固定資産評価証明書
- 住民票(買主)
注意点:
- 住宅ローンを利用する場合、金融機関が指定する司法書士に依頼することが一般的
相続登記の必要書類
相続で土地・建物を取得した場合の相続登記に必要な書類は以下の通りです。
必要書類:
- 登記申請書
- 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍)
- 住民票(相続人)
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 印鑑証明書(相続人全員、遺産分割協議を行う場合)
- 固定資産評価証明書
注意点:
- 戸籍謄本は本籍地の市区町村で取得
- 書類取得にも費用・時間がかかる(戸籍謄本450円/通、印鑑証明書300円/通等)
自分で登記するか、司法書士に依頼するか
自分でできるケース
以下のようなシンプルなケースは、自分で登記申請することが可能です。
- 抵当権抹消登記: 住宅ローン完済後の抹消登記(登録免許税1,000円/個のみ)
- 単純な相続登記: 相続人が1名、遺産分割協議不要
法務局のウェブサイトでは、申請書の様式と記載例が公開されているため、参考にしながら作成できます。
司法書士に依頼すべきケース
以下のような複雑なケースは、司法書士に依頼することを推奨します。
- 売買登記: 高額・複雑な取引(住宅ローン利用時は金融機関が司法書士を指定)
- 相続人多数の相続登記: 遺産分割協議が必要、相続人の所在が不明
- 抵当権設定登記: 金融機関が司法書士を指定することが一般的
専門知識が必要なケースでは、司法書士に依頼することで、手続きのミスや遅延を防げます。
まとめ:不動産登記を正しく理解しよう
不動産登記は、物権変動を第三者に対抗するための要件です。登記しないと、二重譲渡等のトラブルが発生した際、自分が所有者であることを証明できなくなります。
2024年4月から相続登記が義務化され、相続から3年以内の登記が必要です。違反時は10万円以下の過料が科される可能性があるため、期限内に手続きを完了させましょう。
費用は登録免許税(実費)と司法書士報酬の2つに分かれます。シンプルな登記(抵当権抹消登記、単純な相続登記)は自分で申請できますが、複雑な登記は司法書士に依頼することを推奨します。
法務局や司法書士に相談しながら、正確に手続きを進めましょう。
