不動産の価格はどう決まる?
不動産の売買を検討する際、「この価格は適正なのか」「相場がわからない」と不安を感じる方は少なくありません。不動産の価格は立地・物件特性・市場環境など複数の要因で決まるため、仕組みを理解しないと適正価格を見極めることができません。
この記事では、不動産価格を決める主要要因、公的価格と実勢価格の関係、マンション・戸建て・土地それぞれの価格調査方法を、国土交通省・国税庁の公式情報を元に解説します。
不動産の売買を検討している方が、相場を自分で調べ、提示価格が適正かどうか判断できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産価格は立地・物件特性・市場環境・個別事情の4つの要因で決まる
- 公的価格(公示地価・路線価)と実勢価格は10-30%程度乖離する
- マンションは国交省「不動産取引価格情報検索」とREINSで相場確認
- 戸建ては土地部分(路線価・公示地価)と建物部分(再調達価格-減価)で評価
- 査定価格・売出価格・成約価格の違いを理解し、交渉余地を見極める
不動産価格を決める4つの要因
不動産の価格は、以下の4つの要因で決まります。
立地要因
立地は不動産価格に最も大きく影響します。
主な要素:
- 駅距離: 徒歩5分以内は高値、15分以上は大幅減価
- 周辺環境: 商業施設、学校、病院の近さ
- 都市計画: 用途地域(住居地域、商業地域等)、建蔽率・容積率
- 治安・災害リスク: ハザードマップでの位置
同じ間取り・築年数でも、駅徒歩5分と15分では価格が20-30%変わることもあります(一般的な相場として)。
物件特性
物件そのものの特性も価格に影響します。
主な要素:
- 築年数: 築浅ほど高値、築30年超は大幅減価
- 面積: 専有面積・土地面積が広いほど高値
- 間取り: ファミリー向け(3LDK以上)は需要が高い
- 設備: オートロック、宅配ボックス、床暖房等
- 管理状態: マンションの修繕状況、戸建ての外壁・屋根の状態
特にマンションは、管理状態が価格に大きく影響します。管理組合がしっかりしているマンションは、築年数が古くても高値で取引されることがあります。
市場環境
不動産市場全体の需給バランスも価格に影響します。
主な要素:
- 需給バランス: 買い手が多いと高値、売り手が多いと安値
- 金利動向: 住宅ローン金利が低いと需要増、高いと需要減
- 景気動向: 好景気は需要増、不景気は需要減
国土交通省の「不動産価格指数」によると、2010年を100とした場合、2024年7月時点でマンションは200を超えています。これは、低金利政策と需要増により、マンション価格が過去10年で2倍以上に上昇したことを示しています。
個別事情
売主・買主の個別事情も価格に影響します。
主な要素:
- 売主の売却理由: 急ぎで売りたい場合は値下げ、時間をかけられる場合は高値設定
- 買主の購入動機: 絶対に欲しい物件なら高値でも購入、代替物件があれば交渉
売主が転勤・離婚等で急いで売却したい場合、相場より10-20%安く売り出されることもあります。
公的価格と実勢価格の関係
不動産には、「一物四価」と呼ばれる4つの価格があります。
公示地価
国土交通省が毎年1月1日時点の標準地価格を3月に公表する価格です。不動産鑑定士2名が鑑定評価基準に基づき評価します。
用途: 土地取引の指標、公共用地取得の基準
路線価
国税庁が毎年7月に公表する、相続税・贈与税の土地評価額算定に使用する価格です。地価公示価格の約80%水準に設定されています。
用途: 相続税・贈与税の土地評価
固定資産税評価額
市町村が3年ごとに評価する、固定資産税・都市計画税の課税基準となる価格です。地価公示価格の約70%水準に設定されています。
用途: 固定資産税・都市計画税・不動産取得税の課税基準
実勢価格
実際の不動産取引で売買される価格です。公示地価・路線価とは異なり、市場の需給で変動します。
用途: 実際の売買
関係性:
| 価格種類 | 公示地価比 | 用途 | 
|---|---|---|
| 公示地価 | 100% | 土地取引の指標 | 
| 路線価 | 約80% | 相続税評価 | 
| 固定資産税評価額 | 約70% | 固定資産税課税 | 
| 実勢価格 | 110-130% | 実際の売買 | 
実勢価格は、公示地価より10-30%高いことが一般的です。ただし、立地・形状・接道等の個別要因により大きく変動します。
実勢価格の調べ方(物件種別)
実際の相場を調べる方法を、物件種別ごとに解説します。
マンションの相場調査
マンションは、同じマンション内または近隣の類似物件の成約価格を調べます。
調査方法:
- REINS Market Information: 国土交通省指定の流通機構による実際の成約価格データ。地域・築年数・面積等で検索可能。 
- 国交省「不動産取引価格情報検索」: 実際の取引価格を検索できる公的データベース。 
- 不動産ポータルサイト: SUUMO、HOME'S等で売出価格を確認(成約価格ではなく、売出価格の95-98%が成約価格の目安)。 
例: 同じマンションの同じ間取り(3LDK・70㎡)が過去1年で3件成約、平均3500万円なら、それが相場の目安です。
戸建ての相場調査
戸建ては、土地部分と建物部分を分けて評価します。
土地部分:
- 路線価: 国税庁の路線価図で調べる。路線価÷0.8=公示地価相当、公示地価×1.1-1.3=実勢価格の目安。
- 公示地価: 国土交通省の地価公示で近隣の標準地価格を調べる。
- 実際の取引価格: 国交省「不動産取引価格情報検索」で近隣の土地取引価格を確認。
建物部分:
- 再調達価格: 同じ建物を新築する場合の価格(木造なら坪単価50-70万円程度、建築業界の一般的な相場として)
- 築年数減価: 木造は築20-25年で建物価値がほぼゼロになる(減価償却)
例: 土地100㎡、路線価20万円/㎡、築15年木造住宅の場合
- 土地: 20万円×100㎡÷0.8×1.2=3000万円(実勢価格)
- 建物: 再調達価格2000万円×(1-15年/25年)=800万円
- 合計: 3800万円が目安
土地の相場調査
土地は、公示地価・路線価・実際の取引価格の3つで相場を把握します。
調査方法:
- 公示地価: 国土交通省の地価公示で近隣の標準地価格を調べる。 
- 路線価: 国税庁の路線価図で調べる。路線価÷0.8=公示地価相当。 
- 実際の取引価格: 国交省「不動産取引価格情報検索」で近隣の土地取引価格を確認。 
注意点: 形状・接道・用途地域により、同じ地域でも価格が大きく変わります。角地は高値、旗竿地(接道が狭い)は安値になります。
査定価格・売出価格・成約価格の違い
不動産の価格には、3つの段階があります。
査定価格
不動産会社が算出する、3ヶ月程度で売れる想定価格です。周辺の成約事例、公示地価、物件特性を考慮して算定されます。
売出価格
査定価格に交渉余地を上乗せした公表価格です。一般的に、査定価格の102-105%程度に設定されます。
成約価格
実際の売買価格です。売出価格から値下げ交渉が入ることが多く、売出価格の95-98%程度が目安です。
例:
- 査定価格: 3000万円
- 売出価格: 3150万円(査定価格×105%)
- 成約価格: 3050万円(売出価格×97%)
買主の立場では、売出価格から2-5%の値下げ交渉が可能な場合が多いです。売主の立場では、査定価格より高く売り出しても、最終的に査定価格前後で成約することを想定しておきましょう。
2024-2025年の不動産市場動向
国土交通省の「不動産価格指数(2024年7月時点)」によると、マンション価格は2010年比で200超と、過去10年で2倍以上に上昇しています。
背景:
- 低金利政策(住宅ローン金利0.3-0.5%台)
- 需要増(テレワーク普及で広い住宅へのニーズ)
- 供給減(建築資材・人件費高騰で新築供給減少)
一方、2024年以降は金利上昇の兆しがあり、今後の価格動向は不透明です。不動産購入を検討する際は、「必ず値上がりする」と断定せず、長期保有を前提に判断することが重要です。
まとめ:相場を理解して適正価格を見極めよう
不動産価格は、立地・物件特性・市場環境・個別事情の4つの要因で決まります。公的価格(公示地価・路線価)は取引の指標ですが、実勢価格は10-30%高いことが一般的です。
マンションはREINSと国交省データで成約価格を確認、戸建ては土地部分(路線価・公示地価)と建物部分(再調達価格-減価)で評価、土地は公示地価・路線価・実際の取引価格の3つで相場を把握します。
査定価格・売出価格・成約価格の違いを理解し、売出価格から2-5%の値下げ交渉が可能な場合が多いことを覚えておきましょう。
次のアクションとして、国交省「不動産取引価格情報検索」とREINSで相場を調べ、複数の不動産会社で査定を受けて比較することをおすすめします。信頼できる専門家と相談しながら、適正価格を見極めて取引を進めましょう。
