不動産の価格はどう決まる?相場の調べ方と適正価格の見極め方を完全解説

公開日: 2025/10/27

不動産の価格はどう決まる?

不動産の売買を検討する際、「この価格は適正なのか」「相場がわからない」と不安を感じる方は少なくありません。不動産の価格は立地・物件特性・市場環境など複数の要因で決まるため、仕組みを理解しないと適正価格を見極めることができません。

この記事では、不動産価格を決める主要要因、公的価格と実勢価格の関係、マンション・戸建て・土地それぞれの価格調査方法を、国土交通省・国税庁の公式情報を元に解説します。

不動産の売買を検討している方が、相場を自分で調べ、提示価格が適正かどうか判断できるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産価格は立地・物件特性・市場環境・個別事情の4つの要因で決まる
  • 公的価格(公示地価・路線価)と実勢価格は10-30%程度乖離する
  • マンションは国交省「不動産取引価格情報検索」とREINSで相場確認
  • 戸建ては土地部分(路線価・公示地価)と建物部分(再調達価格-減価)で評価
  • 査定価格・売出価格・成約価格の違いを理解し、交渉余地を見極める

不動産価格を決める4つの要因

不動産の価格は、以下の4つの要因で決まります。

立地要因

立地は不動産価格に最も大きく影響します。

主な要素:

  • 駅距離: 徒歩5分以内は高値、15分以上は大幅減価
  • 周辺環境: 商業施設、学校、病院の近さ
  • 都市計画: 用途地域(住居地域、商業地域等)、建蔽率・容積率
  • 治安・災害リスク: ハザードマップでの位置

同じ間取り・築年数でも、駅徒歩5分と15分では価格が20-30%変わることもあります(一般的な相場として)。

物件特性

物件そのものの特性も価格に影響します。

主な要素:

  • 築年数: 築浅ほど高値、築30年超は大幅減価
  • 面積: 専有面積・土地面積が広いほど高値
  • 間取り: ファミリー向け(3LDK以上)は需要が高い
  • 設備: オートロック、宅配ボックス、床暖房等
  • 管理状態: マンションの修繕状況、戸建ての外壁・屋根の状態

特にマンションは、管理状態が価格に大きく影響します。管理組合がしっかりしているマンションは、築年数が古くても高値で取引されることがあります。

市場環境

不動産市場全体の需給バランスも価格に影響します。

主な要素:

  • 需給バランス: 買い手が多いと高値、売り手が多いと安値
  • 金利動向: 住宅ローン金利が低いと需要増、高いと需要減
  • 景気動向: 好景気は需要増、不景気は需要減

国土交通省の「不動産価格指数」によると、2010年を100とした場合、2024年7月時点でマンションは200を超えています。これは、低金利政策と需要増により、マンション価格が過去10年で2倍以上に上昇したことを示しています。

個別事情

売主・買主の個別事情も価格に影響します。

主な要素:

  • 売主の売却理由: 急ぎで売りたい場合は値下げ、時間をかけられる場合は高値設定
  • 買主の購入動機: 絶対に欲しい物件なら高値でも購入、代替物件があれば交渉

売主が転勤・離婚等で急いで売却したい場合、相場より10-20%安く売り出されることもあります。

公的価格と実勢価格の関係

不動産には、「一物四価」と呼ばれる4つの価格があります。

公示地価

国土交通省が毎年1月1日時点の標準地価格を3月に公表する価格です。不動産鑑定士2名が鑑定評価基準に基づき評価します。

用途: 土地取引の指標、公共用地取得の基準

路線価

国税庁が毎年7月に公表する、相続税・贈与税の土地評価額算定に使用する価格です。地価公示価格の約80%水準に設定されています。

用途: 相続税・贈与税の土地評価

固定資産税評価額

市町村が3年ごとに評価する、固定資産税・都市計画税の課税基準となる価格です。地価公示価格の約70%水準に設定されています。

用途: 固定資産税・都市計画税・不動産取得税の課税基準

実勢価格

実際の不動産取引で売買される価格です。公示地価・路線価とは異なり、市場の需給で変動します。

用途: 実際の売買

関係性:

価格種類 公示地価比 用途
公示地価 100% 土地取引の指標
路線価 約80% 相続税評価
固定資産税評価額 約70% 固定資産税課税
実勢価格 110-130% 実際の売買

(出典: 国土交通省, 国税庁

実勢価格は、公示地価より10-30%高いことが一般的です。ただし、立地・形状・接道等の個別要因により大きく変動します。

実勢価格の調べ方(物件種別)

実際の相場を調べる方法を、物件種別ごとに解説します。

マンションの相場調査

マンションは、同じマンション内または近隣の類似物件の成約価格を調べます。

調査方法:

  1. REINS Market Information: 国土交通省指定の流通機構による実際の成約価格データ。地域・築年数・面積等で検索可能。

  2. 国交省「不動産取引価格情報検索」: 実際の取引価格を検索できる公的データベース。

  3. 不動産ポータルサイト: SUUMO、HOME'S等で売出価格を確認(成約価格ではなく、売出価格の95-98%が成約価格の目安)。

: 同じマンションの同じ間取り(3LDK・70㎡)が過去1年で3件成約、平均3500万円なら、それが相場の目安です。

戸建ての相場調査

戸建ては、土地部分と建物部分を分けて評価します。

土地部分:

  • 路線価: 国税庁の路線価図で調べる。路線価÷0.8=公示地価相当、公示地価×1.1-1.3=実勢価格の目安。
  • 公示地価: 国土交通省の地価公示で近隣の標準地価格を調べる。
  • 実際の取引価格: 国交省「不動産取引価格情報検索」で近隣の土地取引価格を確認。

建物部分:

  • 再調達価格: 同じ建物を新築する場合の価格(木造なら坪単価50-70万円程度、建築業界の一般的な相場として)
  • 築年数減価: 木造は築20-25年で建物価値がほぼゼロになる(減価償却)

: 土地100㎡、路線価20万円/㎡、築15年木造住宅の場合

  • 土地: 20万円×100㎡÷0.8×1.2=3000万円(実勢価格)
  • 建物: 再調達価格2000万円×(1-15年/25年)=800万円
  • 合計: 3800万円が目安

土地の相場調査

土地は、公示地価・路線価・実際の取引価格の3つで相場を把握します。

調査方法:

  1. 公示地価: 国土交通省の地価公示で近隣の標準地価格を調べる。

  2. 路線価: 国税庁の路線価図で調べる。路線価÷0.8=公示地価相当。

  3. 実際の取引価格: 国交省「不動産取引価格情報検索」で近隣の土地取引価格を確認。

注意点: 形状・接道・用途地域により、同じ地域でも価格が大きく変わります。角地は高値、旗竿地(接道が狭い)は安値になります。

査定価格・売出価格・成約価格の違い

不動産の価格には、3つの段階があります。

査定価格

不動産会社が算出する、3ヶ月程度で売れる想定価格です。周辺の成約事例、公示地価、物件特性を考慮して算定されます。

売出価格

査定価格に交渉余地を上乗せした公表価格です。一般的に、査定価格の102-105%程度に設定されます。

成約価格

実際の売買価格です。売出価格から値下げ交渉が入ることが多く、売出価格の95-98%程度が目安です。

:

  • 査定価格: 3000万円
  • 売出価格: 3150万円(査定価格×105%)
  • 成約価格: 3050万円(売出価格×97%)

買主の立場では、売出価格から2-5%の値下げ交渉が可能な場合が多いです。売主の立場では、査定価格より高く売り出しても、最終的に査定価格前後で成約することを想定しておきましょう。

2024-2025年の不動産市場動向

国土交通省の「不動産価格指数(2024年7月時点)」によると、マンション価格は2010年比で200超と、過去10年で2倍以上に上昇しています。

背景:

  • 低金利政策(住宅ローン金利0.3-0.5%台)
  • 需要増(テレワーク普及で広い住宅へのニーズ)
  • 供給減(建築資材・人件費高騰で新築供給減少)

一方、2024年以降は金利上昇の兆しがあり、今後の価格動向は不透明です。不動産購入を検討する際は、「必ず値上がりする」と断定せず、長期保有を前提に判断することが重要です。

まとめ:相場を理解して適正価格を見極めよう

不動産価格は、立地・物件特性・市場環境・個別事情の4つの要因で決まります。公的価格(公示地価・路線価)は取引の指標ですが、実勢価格は10-30%高いことが一般的です。

マンションはREINSと国交省データで成約価格を確認、戸建ては土地部分(路線価・公示地価)と建物部分(再調達価格-減価)で評価、土地は公示地価・路線価・実際の取引価格の3つで相場を把握します。

査定価格・売出価格・成約価格の違いを理解し、売出価格から2-5%の値下げ交渉が可能な場合が多いことを覚えておきましょう。

次のアクションとして、国交省「不動産取引価格情報検索」とREINSで相場を調べ、複数の不動産会社で査定を受けて比較することをおすすめします。信頼できる専門家と相談しながら、適正価格を見極めて取引を進めましょう。

よくある質問

Q1公示地価と実際の取引価格はどれくらい違いますか?

A1公示地価は標準的な土地の評価額で、実際の取引価格(実勢価格)とは10-30%程度乖離することが多いです。立地・形状・接道等の個別要因により実勢価格は変動します。例えば、公示地価が30万円/㎡の場合、実勢価格は33-39万円/㎡程度が目安です。角地や駅近の好立地なら30%以上高く、旗竿地や接道不良なら公示地価を下回ることもあります。

Q2不動産ポータルサイトの売出価格は信用できますか?

A2売出価格は、実際の成約価格より2-5%高く設定されることが一般的です。売主が交渉余地を見込んで高めに設定しているためです。相場を調べる場合は、REINS Market Informationや国交省「不動産取引価格情報検索」で実際の成約価格を確認することをおすすめします。ポータルサイトの売出価格は参考程度に留め、成約価格ベースで判断しましょう。

Q3築年数が古い物件の価格はどう決まりますか?

A3マンションは築25年を過ぎると価格の下落が緩やかになり、管理状態・立地で評価されます。戸建ては木造の場合、築20-25年で建物価値がほぼゼロになり、土地価格のみで評価されます。ただし、リノベーション済み物件や管理が良好な物件は、築年数が古くても高値で取引されることがあります。築古物件を購入する場合は、修繕履歴と管理状態を重視しましょう。

Q4不動産鑑定士に価格査定を依頼すべきですか?

A4一般的な売買では不動産会社の無料査定で十分です。不動産鑑定士の鑑定評価は有料(20-30万円程度)で、相続・離婚・訴訟等で公的な評価額が必要な場合に利用されます。売買目的なら、複数の不動産会社に査定を依頼し、平均値を参考にする方が実務的です。3社以上に依頼し、極端に高い・低い査定は除外して判断しましょう。