投資不動産で節税する方法|減価償却・経費計上・リスクを解説

公開日: 2025/10/27

投資不動産で節税できる仕組み

不動産投資を検討する際、「節税効果がある」という話を耳にすることがあります。しかし、節税だけを目的とした投資はリスクが高く、本末転倒になる可能性があります。

この記事では、投資不動産による節税の仕組み、減価償却、経費計上の範囲、リスク・注意点について、国税庁等の公的機関の情報を元に解説します。

節税効果を正確に理解し、収益性を第一に考えた投資判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • 減価償却による帳簿上の赤字を給与所得等と損益通算することで、所得税・住民税が減少する
  • 減価償却は法定耐用年数で終了するため、節税効果は一時的(数年~十数年)
  • デッドクロス(ローン元本返済額が減価償却費を上回る状態)でキャッシュフローがマイナスになるリスク
  • 節税だけを目的とせず、立地・収益性を第一に考えることが重要

投資不動産で節税できる仕組みは、以下の3つです。

  1. 減価償却による帳簿上の赤字: 建物部分を法定耐用年数で按分し、毎年経費として計上
  2. 不動産所得の赤字を給与所得等と損益通算: 所得税・住民税が減少
  3. 経費計上: 減価償却費、修繕費、管理費、ローン金利、固定資産税等

国税庁によると、不動産所得は以下の計算式で求められます。

不動産所得 = 家賃収入 - 必要経費

必要経費には、減価償却費、修繕費、管理費、ローン金利、固定資産税等が含まれます。減価償却費は実際の支出を伴わない経費のため、帳簿上の赤字を作りやすくなります。

減価償却による節税効果

減価償却は、建物の購入価格を法定耐用年数で按分し、毎年経費として計上する会計処理です。

減価償却の計算方法(建物価格×償却率)

国税庁によると、減価償却費は定額法で計算します。

減価償却費 = 建物価格 × 償却率

償却率は、法定耐用年数により異なります。

法定耐用年数(木造22年・RC47年)

2025年時点での建物の構造により、法定耐用年数が異なります。

構造 法定耐用年数 償却率
木造 22年 0.046
鉄骨造(厚さ3mm以下) 19年 0.053
鉄骨造(厚さ3mm超4mm以下) 27年 0.038
鉄骨造(厚さ4mm超) 34年 0.030
RC造(鉄筋コンクリート) 47年 0.022

築古物件の耐用年数短縮

築古物件は、法定耐用年数を短縮できるため、減価償却費が大きくなり、節税効果が高まります。

中古物件の耐用年数は、以下の計算式で求められます。

耐用年数 = (法定耐用年数 - 経過年数) + 経過年数 × 0.2

例えば、築20年の木造物件の場合:

(22年 - 20年) + 20年 × 0.2 = 6年

耐用年数が短いほど、年間の減価償却費が大きくなり、節税効果が高まります。

経費として計上できるもの・できないもの

不動産投資では、様々な費用を経費として計上できます。ただし、計上できないものもあるため、注意が必要です。

計上できる経費(減価償却費、修繕費、管理費、ローン金利等)

国税庁によると、以下の費用を経費として計上できます。

  • 減価償却費: 建物の購入価格を法定耐用年数で按分
  • 修繕費: 建物・設備の修繕・維持管理費用
  • 管理費: 賃貸管理会社への手数料
  • ローン金利: 不動産購入のための借入金の金利
  • 固定資産税・都市計画税: 不動産に課税される税金
  • 火災保険料: 建物・家財の保険料
  • 税理士報酬: 確定申告の代行費用
  • 交通費: 物件の視察・管理のための交通費

計上できない経費(元本返済、土地の減価償却、プライベート使用分等)

以下の費用は経費として計上できません。

  • ローン元本返済: 借入金の元本部分(金利部分のみ経費)
  • 土地の減価償却: 土地は減価償却の対象外
  • プライベート使用分: 自己使用部分は経費外
  • 生活費: 生活に関する費用は経費外

ローン返済のうち、元本部分は経費計上できず、金利部分のみ経費として認められることに注意しましょう。

損益通算の仕組みと制限

不動産所得の赤字を給与所得等と損益通算することで、所得税・住民税が減少します。

不動産所得の赤字を給与所得等と通算

国税庁によると、不動産所得の赤字は、給与所得、事業所得等の他の所得と相殺できます。

例えば、以下のケースで損益通算すると、所得税・住民税が減少します。

項目 金額
給与所得 1,000万円
不動産所得 -100万円
課税所得 900万円

課税所得が900万円に減少するため、所得税・住民税が減少します。

土地取得に係る借入金利子は通算不可

国税庁によると、土地取得に係る借入金利子は、損益通算の対象外です。

不動産所得の赤字のうち、土地取得に係る借入金利子に相当する部分は、給与所得等と相殺できません。建物部分の借入金利子のみ損益通算できます。

投資不動産の節税リスク・注意点

投資不動産の節税には、以下のリスク・注意点があります。

デッドクロスとキャッシュフローのマイナス

デッドクロスとは、ローン元本返済額が減価償却費を上回る状態です。減価償却終了後に発生しやすく、帳簿上は黒字でもキャッシュフローがマイナスになるリスクがあります。

減価償却費は実際の支出を伴わないため、減価償却期間中は帳簿上の赤字でもキャッシュフローはプラスになります。しかし、減価償却終了後は帳簿上の黒字でも、ローン元本返済により実際のキャッシュフローがマイナスになる可能性があります。

減価償却は一時的(期間終了後の所得税増加)

減価償却は法定耐用年数で終了するため、節税効果は一時的(数年~十数年)です。減価償却終了後は、不動産所得が黒字になり、所得税・住民税が増加します。

永続的な節税効果ではなく、課税の繰延であることを理解しましょう。

売却時の譲渡所得税

減価償却費は、売却時の取得費から差し引かれます。そのため、譲渡所得が増加し、売却時に課税されます。

例えば、5,000万円で購入した建物を1,000万円減価償却した場合、売却時の取得費は4,000万円になります。5,000万円で売却すると、譲渡所得は1,000万円になり、譲渡所得税が課税されます。

節税効果は課税の繰延であり、永続的な利益ではないことを理解しましょう。

空室・金利上昇リスク

空室が続くと、家賃収入が減少し、キャッシュフローがマイナスになる可能性があります。また、変動金利でローンを組んでいる場合、金利上昇により返済額が増加し、キャッシュフローが悪化するリスクがあります。

節税だけを目的とせず、立地・収益性を第一に考え、空室リスク・金利上昇リスクを最小限に抑えることが重要です。

まとめ

投資不動産の節税は、減価償却による帳簿上の赤字と損益通算の仕組みです。経費計上の範囲を理解し、損益通算の制限も確認しましょう。

ただし、デッドクロス、減価償却期間終了後の所得税増加、売却時の譲渡所得税等のリスクがあるため、節税だけを目的とせず、収益性を第一に考えることが重要です。

不明点は税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1減価償却は何年間できますか?

A1法定耐用年数まで可能です。木造22年、鉄骨造34年、RC造47年です。築古物件は耐用年数が短縮され、減価償却期間も短くなります。期間終了後は減価償却できず、節税効果は終了します。減価償却は永続的な節税ではなく、一時的な課税の繰延であることを理解しましょう。

Q2デッドクロスとは何ですか?

A2ローン元本返済額が減価償却費を上回る状態です。減価償却終了後に発生しやすく、帳簿上は黒字でもキャッシュフローがマイナスになるリスクがあります。減価償却費は実際の支出を伴わないため、減価償却期間中は帳簿上の赤字でもキャッシュフローはプラスですが、終了後は逆転します。

Q3土地取得の借入金利子も経費計上できますか?

A3経費計上は可能ですが、不動産所得の赤字のうち土地取得に係る借入金利子は損益通算の対象外です。国税庁によると、給与所得等と相殺できません。建物部分の借入金利子のみ損益通算できるため、土地と建物の借入金を分けて管理することをおすすめします。

Q4売却時に減価償却した分はどうなりますか?

A4減価償却費は取得費から差し引かれ、譲渡所得が増加し、売却時に課税されます。例えば、5,000万円で購入した建物を1,000万円減価償却した場合、売却時の取得費は4,000万円になります。5,000万円で売却すると、譲渡所得は1,000万円になり、譲渡所得税が課税されます。

Q5節税目的だけで投資すべきですか?

A5節税だけを目的とした投資は本末転倒です。立地・収益性を軽視すると、空室リスクや維持管理コスト増大で損失を被る可能性があります。収益性を第一に考え、節税効果は副次的なメリットとして捉えることをおすすめします。税理士や不動産会社に相談しながら、総合的に判断しましょう。