土地は減価償却できる?建物との違い・非償却資産の理由を税務解説

公開日: 2025/10/31

土地は減価償却できる?結論と理由

不動産投資や事業用不動産を取得した際、「減価償却で節税効果が得られる」と聞いたものの、土地は減価償却できないという事実を知って混乱していませんか。

この記事では、土地が減価償却できない理由、建物との違い、土地・建物一括取得時の按分方法、税務上の扱いを、国税庁の公式情報を元に解説します。不動産投資家や事業者の方が、土地と建物の税務処理を正確に理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 土地は減価償却できない非償却資産(時の経過で価値が減少しないため)
  • 建物は減価償却の対象(構造別に耐用年数が定められている)
  • 土地・建物一括取得時は按分が必要(固定資産税評価額比・消費税逆算・鑑定評価)
  • 土地は取得時に資産計上し、保有時は固定資産税が経費、譲渡時に譲渡所得税が課税される

土地が減価償却できない理由【法令・会計の原則】

土地は非償却資産として、法人税法・所得税法で明確に規定されています。その理由は以下の3つです。

時の経過で価値が減少しない資産

減価償却は「時の経過で価値が減少する資産」の取得費を、耐用年数に応じて分割計上する会計処理です。建物は経年劣化により価値が減少しますが、土地は劣化しないため減価償却の対象外です。

耐用年数が設定できない

減価償却を計算するには耐用年数(資産を使用可能な期間)が必要です。建物は構造別に耐用年数が定められています(鉄筋コンクリート造47年・木造22年等)が、土地の使用可能期間は無限大のため耐用年数を設定できず、償却率の計算も不可能です。

法人税法・所得税法上の非償却資産

国税庁の法人税法基本通達で、土地は減価償却資産の範囲から明確に除外されています。骨董品・借地権等と同様に、時の経過で価値が減少しない資産として扱われます。

土地と建物の違い【減価償却の対象可否】

土地と建物では、減価償却の扱いが大きく異なります。以下の表で比較します。

項目 土地 建物 構築物
減価償却 対象外 対象 対象
耐用年数 設定不可 構造別に設定(鉄筋コンクリート造47年・木造22年等) 設備別に設定(アスファルト舗装15年等)
価値の減少 減少しない 経年劣化で減少 経年劣化で減少
税務上の扱い 非償却資産 償却資産 償却資産

(出典: 国税庁

建物は減価償却の対象

建物は構造別に耐用年数が定められており、減価償却の対象となります。例えば、鉄筋コンクリート造のマンションなら耐用年数47年、木造一戸建てなら22年で、取得費を各年度に分割計上できます。

構築物(駐車場設備・フェンス等)は償却可能

土地そのものは償却できませんが、駐車場のアスファルト舗装・フェンス・外構等は「構築物」として減価償却可能です。構築物の耐用年数は設備別に定められており(例:アスファルト舗装15年)、土地とは別に償却します。

土地上の附属設備の取り扱い

駐車場として整備した土地でも、土地本体は償却できません。ただし、舗装・照明・フェンス等の設備は構築物として償却可能です。取得時に土地と構築物を分けて会計処理する必要があります。

土地・建物一括取得時の按分方法

土地・建物を一括で取得した場合、総額を土地分と建物分に按分(分ける)必要があります。以下の3つの方法があります。

固定資産税評価額による按分

最も一般的な方法です。市区町村が決定する固定資産税評価額(固定資産税納税通知書に記載、算定方法は市区町村により異なる場合があります)の比率で按分します。

計算例:

  • 総額3,000万円
  • 土地評価額1,200万円、建物評価額800万円
  • 按分比率: 土地60%、建物40%
  • 土地1,800万円、建物1,200万円

消費税から逆算する方法

建物にのみ消費税が課税されることを利用し、消費税額から建物価格を逆算します。国税庁の課税標準に関する情報に基づく方法です。

計算例:

  • 総額3,000万円(税込)
  • 消費税額200万円
  • 建物価格: 200万円 ÷ 10% = 2,000万円
  • 土地価格: 3,000万円 - 2,000万円 = 1,000万円

不動産鑑定評価による按分

専門家(不動産鑑定士)に依頼し、土地と建物の時価を鑑定してもらう方法です。最も正確ですが、鑑定費用(20-50万円程度)がかかります。税務署から按分根拠を問われた際に、最も説得力がある方法です。

按分方法の選択基準:

  • 固定資産税評価額按分: 最も一般的で簡便
  • 消費税逆算: 新築物件で消費税が明確な場合
  • 不動産鑑定評価: 高額物件や税務署への説明が必要な場合

土地の税務上の扱いと不動産投資への影響

土地は減価償却できませんが、税務上の扱いを理解することで、不動産投資における土地の位置づけを正確に把握できます。

取得時の費用計上

土地の取得費用(本体価格・仲介手数料・登記費用等)は、土地の取得価額に含めて資産計上します。経費計上はできません。ただし、譲渡時に取得費として譲渡所得から差し引くことは可能です。

保有時の固定資産税

土地の保有時は、固定資産税・都市計画税が毎年発生し、経費計上可能です。賃貸用・事業用不動産の場合、固定資産税は損金算入できます。

譲渡時の課税(譲渡所得税)

土地を売却した際は、譲渡所得税が課税されます。譲渡益(売却価格 - 取得費 - 譲渡費用)に対し、保有期間に応じて以下の税率が適用されます(2025年時点)。最新の税率は国税庁のウェブサイトでご確認ください。

保有期間 税率
5年以下(短期譲渡) 39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
5年超(長期譲渡) 20.315%(所得税15.315%+住民税5%)

(出典: 国税庁

不動産投資における土地の位置づけ:

  • 減価償却できないため、建物に比べて節税効果は低い
  • キャッシュフローへの影響: 固定資産税が毎年発生
  • 出口戦略: 譲渡時に譲渡益が発生すれば、長期保有(5年超)で税率を抑えられる

まとめ:土地は減価償却できないが他の節税方法を活用しよう

土地は非償却資産で減価償却できません(法令上の規定)。建物は減価償却の対象で、構造別に耐用年数が定められています。土地・建物一括取得時は按分が必要で、固定資産税評価額比・消費税逆算・鑑定評価の3つの方法があります。

土地の税務上の扱いとして、取得時は資産計上、保有時は固定資産税が経費、譲渡時は譲渡所得税が課税されます。減価償却できないため建物に比べて節税効果は低いですが、長期保有で譲渡税率を抑える等の戦略が可能です。

次のアクションとして、①税理士に相談して土地・建物の按分方法を確認、②建物の減価償却計画を立てる、③土地の保有コスト(固定資産税)を把握することをおすすめします。信頼できる税理士に相談しながら、適切な税務処理を進めましょう。

よくある質問

Q1土地付き建物を購入した場合、全額減価償却できますか?

A1いいえ、土地部分は減価償却できません。建物部分のみが減価償却の対象です。土地・建物一括取得時は按分(固定資産税評価額比・消費税逆算等)で建物分を算出し、その金額のみ減価償却します。按分方法は固定資産税評価額による方法が最も一般的です。

Q2土地の市場価格が下落した場合、減価償却できますか?

A2できません。市場価格の変動(時価評価)と会計上の減価償却は別の概念です。土地の市場価格は需給で変動しますが、会計上は「時の経過で価値が減少しない非償却資産」として扱います。市場価格が下落しても、税務上は取得価額で評価され続けます。

Q3駐車場として整備した土地は減価償却できますか?

A3土地そのものは償却できませんが、駐車場設備(アスファルト舗装・フェンス・照明等)は構築物として減価償却可能です。構築物の耐用年数は設備別に定められており(例:アスファルト舗装15年)、土地とは別に償却します。取得時に土地と構築物を分けて会計処理してください。

Q4借地権は減価償却できますか?

A4原則として借地権は非償却資産です。ただし、定期借地権(契約期間が定められている)の場合は、契約期間を耐用年数として償却可能な場合があります。詳細は個別のケースにより異なるため、税理士にご相談ください。

Q5土地の取得費用(仲介手数料・登記費用等)は経費計上できますか?

A5土地の取得費用は土地の取得価額に含めて資産計上します(経費計上不可)。ただし、譲渡時に取得費として譲渡所得から差し引くことは可能です。保有時の固定資産税・都市計画税は毎年経費計上できます。取得費と保有費用を分けて処理してください。